突然ですが、君はメンデルの法則を3つとも全て答えられるでしょうか?1つ目が優性の法則、2つ目が独立の法則、そして3つ目が今回のテーマである分離の法則です。
この分離の法則のおかげで君はお父さんとお母さん、2人の特徴を半々ずつ受け継ぐことができているんです。では分離の法則とは一体どのような法則なんでしょうか?

今回は生物に詳しいライターオリビンと一緒に解説していきます。

ライター/オリビン

理系大学院を卒業した後、医学部のバイオ系研究室で実験助手をしている。毎日DNAの解析を行い、遺伝による疾患を見つけるための実験をしているため、遺伝の法則については熟知している。

遺伝とは

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分離の法則について解説する前に、遺伝についてお話します。遺伝という用語は理科で習っているはずですので、聞いたことのある人も多いでしょう。念の為このキーワードについて説明すると、遺伝とは生殖によって親の特徴が子へ受け継がれることです。親の特徴といっても顔立ちや手足の長さなどは受け継がれますが、記憶や知識は受け継がれません。顔立ちの特徴のように、遺伝によって受け継がれる特徴のことを形質や遺伝形質と言います。

1857年にメンデルが遺伝の法則を発見してから約150年で、実に多くの人々が遺伝について理解し、生活に活用するようになりました。その中の一つがペットの品種改良です。より美しかったり、日本の環境につよい品種を作るためには遺伝の法則について理解する必要があるため、沢山の人が遺伝について勉強するようになってきました。

メンデルの法則

メンデルの法則

image by Study-Z編集部

遺伝といえば必ずと行っていいほど耳にする法則がメンデルの法則ですね。メンデルより前にも親の形質は遺伝によって子に伝わるんじゃないかと疑問に思った研究者はたくさんいました。しかし、メンデルは執念深く研究方法にこだわり、隙きのない遺伝実験を行ったため遺伝の法則性を見つかることができたのです。メンデルといえばエンドウマメを使った実験が有名ですよね。他の研究者は雑種のエンドウマメを交配していたため、はっきりとした法則性は見いだせませんでしたが、メンデルはまずそれぞれの形質の純系を作ることで実験を成功させました。この実験で明らかになったのがメンデルの法則です。しかし、メンデルの法則が発見されてすぐは学会で注目されていませんでした。その後の研究で、メンデルの法則は細胞分裂や遺伝子の構造とも矛盾がないことが確認され、研究者たちの間に一気に広がりました。

メンデルの法則は優性の法則、独立の法則、分離の法則の3つから成り立っています。では一つずつ解説していきますね。

優性(顕性)の法則

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親から子へ遺伝によって受け継がれる特徴は形質と呼ばれますが、その形質には子に表れやすいものと表れにくいものがあります。両親からそれぞれ表れやすい形質(優性)と表れにくい形質(劣性)を1つずつ受け継いだ時、子には表れやすい方の形質が表れるのです。これを優性の法則と呼びます。ちなみに子に表れた形質を表現型と言うんですよ。遺伝子は染色体上にありますが、染色体の中の遺伝情報が存在する部分にある遺伝子は、両親それぞれから受け継がれるため、片方の染色体には母親由来の遺伝子、もう片方の染色体には父親由来の遺伝子が存在することになります。このとき、異なる遺伝子情報を持っているけれど染色体上の位置が同じ遺伝子が対立遺伝子です。

優性、劣性というような表現をするとどちらかが優れていてどちらかが劣っているという印象を抱く場合があるため2017年から優性は顕性、劣性は潜性という表現へ変わりました。

\次のページで「独立の法則」を解説!/

独立の法則

独立の法則とは、配偶子へ遺伝子が分離して入る時互いに影響を及ぼさないという法則です。もう少し詳しくこの言葉を説明すると、2組の対立遺伝子がそれぞれ別の染色体上に存在している場合、配偶子(卵や精子のこと)にはそれぞれが干渉されることなく独立して入ります。

なので、対立遺伝子をヘテロで持っている場合は、優性の遺伝子を受け継いだ生殖細胞と劣性の遺伝子を受け継いだ生殖細胞は必ず1:1の割合でできるのです。

分離の法則

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1つの遺伝子を表すためには2つの遺伝子(対立遺伝子)が関係しているんですよ。この対立遺伝子は1対の染色体のそれぞれに存在していて、配偶子を作るときに分離してそれぞれ別の配偶子に入ります。これが分離の法則です。遺伝について考える上で最も基本的で大切なことなので必ず覚えましょう。しかし、分離の法則を理解するためには生殖細胞を作るための細胞分裂である減数分裂について理解する必要があります。次の項で減数分裂と分離の法則について詳しく見ていきましょう。

分離の法則と減数分裂

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生物の体を作っている体細胞の中には相同染色体といって、同じ外形の染色体が2本ずつあります。これは一方が母親から、もう一方を父親から引き継いだためです。減数分裂とは、受精によって母親からの染色体と父親からの染色体が合わさるため、予め染色体の数を半分に減らす細胞分裂をいいます。つまり、相同染色体は減数分裂によって2つの細胞へ別々に引き離されるのです。これを分離の法則といいます。

分離の法則が成立しないパターン

メンデルの法則が成立している場合、ある純系同士の子(F1)ではすべてヘテロ接合体になり、ヘテロ同士の掛け合わせである雑種第2代(F2)では優性ホモ:ヘテロ:劣性ホモ=1:2:1になります。しかし、1905年ベーツソンとパネットはスイートピーの実験でその比がメンデルの法則で示される比にならないことを発見しました。これはどういうことでしょうか?

2遺伝子雑種の場合、純系同士の交雑から生まれたF1同士をさらに交配すると、F2で得られる子の表現型は9:3:3:1になるはずです。しかし、ベーツソンとパネットが行ったスイートピーの実験では2.77:0.77:0.23:0.23となりました。これは、交さという現象によるものです。交さとは、染色体の数が倍になるときに元の1対の染色体が交差して染色体の一部を交換しながら倍になります。交さが起こらなければ母親か父親の染色体ごと受け継がれることになるため、母親か父親のどちらかにだけ似ることになってしまうのです。

分離の法則は分子生物学を発展させた基本定義

分離の法則とは減数分裂によって染色体の数が半分になるときに、相同染色体がそれぞれ別々の細胞へ分けられることでした。これによって対立遺伝子が引き離されるため、様々な表現型の子が生まれるのですね。

メンデルが分離の法則を発見したおかげで、配偶子を作る際の細胞分裂の様子やDNAの構造まで多くの研究が進みました。メンデルの法則は分子生物学での中でも基礎といえる定義ですね。今後の分子生物学分野の発展に期待しましょう。

" /> メンデルの法則の1つ、「分離の法則」とは何か?医学部研究室の実験助手が5分でわかりやすく解説 – Study-Z
理科生物細胞・生殖・遺伝

メンデルの法則の1つ、「分離の法則」とは何か?医学部研究室の実験助手が5分でわかりやすく解説

突然ですが、君はメンデルの法則を3つとも全て答えられるでしょうか?1つ目が優性の法則、2つ目が独立の法則、そして3つ目が今回のテーマである分離の法則です。
この分離の法則のおかげで君はお父さんとお母さん、2人の特徴を半々ずつ受け継ぐことができているんです。では分離の法則とは一体どのような法則なんでしょうか?

今回は生物に詳しいライターオリビンと一緒に解説していきます。

ライター/オリビン

理系大学院を卒業した後、医学部のバイオ系研究室で実験助手をしている。毎日DNAの解析を行い、遺伝による疾患を見つけるための実験をしているため、遺伝の法則については熟知している。

遺伝とは

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分離の法則について解説する前に、遺伝についてお話します。遺伝という用語は理科で習っているはずですので、聞いたことのある人も多いでしょう。念の為このキーワードについて説明すると、遺伝とは生殖によって親の特徴が子へ受け継がれることです。親の特徴といっても顔立ちや手足の長さなどは受け継がれますが、記憶や知識は受け継がれません。顔立ちの特徴のように、遺伝によって受け継がれる特徴のことを形質や遺伝形質と言います。

1857年にメンデルが遺伝の法則を発見してから約150年で、実に多くの人々が遺伝について理解し、生活に活用するようになりました。その中の一つがペットの品種改良です。より美しかったり、日本の環境につよい品種を作るためには遺伝の法則について理解する必要があるため、沢山の人が遺伝について勉強するようになってきました。

メンデルの法則

メンデルの法則

image by Study-Z編集部

遺伝といえば必ずと行っていいほど耳にする法則がメンデルの法則ですね。メンデルより前にも親の形質は遺伝によって子に伝わるんじゃないかと疑問に思った研究者はたくさんいました。しかし、メンデルは執念深く研究方法にこだわり、隙きのない遺伝実験を行ったため遺伝の法則性を見つかることができたのです。メンデルといえばエンドウマメを使った実験が有名ですよね。他の研究者は雑種のエンドウマメを交配していたため、はっきりとした法則性は見いだせませんでしたが、メンデルはまずそれぞれの形質の純系を作ることで実験を成功させました。この実験で明らかになったのがメンデルの法則です。しかし、メンデルの法則が発見されてすぐは学会で注目されていませんでした。その後の研究で、メンデルの法則は細胞分裂や遺伝子の構造とも矛盾がないことが確認され、研究者たちの間に一気に広がりました。

メンデルの法則は優性の法則、独立の法則、分離の法則の3つから成り立っています。では一つずつ解説していきますね。

優性(顕性)の法則

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親から子へ遺伝によって受け継がれる特徴は形質と呼ばれますが、その形質には子に表れやすいものと表れにくいものがあります。両親からそれぞれ表れやすい形質(優性)と表れにくい形質(劣性)を1つずつ受け継いだ時、子には表れやすい方の形質が表れるのです。これを優性の法則と呼びます。ちなみに子に表れた形質を表現型と言うんですよ。遺伝子は染色体上にありますが、染色体の中の遺伝情報が存在する部分にある遺伝子は、両親それぞれから受け継がれるため、片方の染色体には母親由来の遺伝子、もう片方の染色体には父親由来の遺伝子が存在することになります。このとき、異なる遺伝子情報を持っているけれど染色体上の位置が同じ遺伝子が対立遺伝子です。

優性、劣性というような表現をするとどちらかが優れていてどちらかが劣っているという印象を抱く場合があるため2017年から優性は顕性、劣性は潜性という表現へ変わりました。

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