今回は「酸化銅の還元」について解説していきます。

酸化銅の還元実験は、中学や高校の教科書にも載っていて、非常に有名な実験です。ですが、そのメカニズムについてや複数の実験方法があることは、詳しく説明されていない教科書や参考書も多い。今回は、そのような部分についても、詳しく解説をします。ぜひ、この機会に酸化銅の還元について理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

酸化銅の還元について学ぶ前に

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酸化銅の還元について詳しく学ぶ前に、銅と酸化銅について簡単に復習しておきましょう。ここでは、銅および酸化銅の化学的な性質や特徴、両者の違いについて確認します。酸化銅の還元について、本質な理解をするためには、これらの知識は必要不可欠となりますよ

理論の説明だけで理解しずらい部分は、具体的な例なども交えながら解説を進めます。ぜひ、理論だけでなく、具体例も頭に入れてみてください。それでは、銅および酸化銅についての説明をはじめます。

銅とは?

銅は単体の金属で、電線や配管の材料となるような物質です。また、500円玉、100円玉、50円玉、10円玉、5円玉の材料にも、銅が含まれています。このように、銅は身近なところで、活躍しているのです。銅には、金属光沢電気伝導性熱伝導性展性延性といった性質があります。

金属光沢は、銅の表面が輝く現象のことをさしています。また、電気伝導性は電気をよく通す性質のことをさし、熱伝導性は熱をよく伝える性質のことをさします。展性および延性は銅を叩いたり、引っ張ったりしたときに、銅が変形することを意味します。

酸化銅とは?

銅の粉末を、ガスバーナーなどで高温になるまで加熱すると、真っ黒な固体に変化します。この真っ黒な固体が、酸化銅なのです。銅が熱されることで、空気中に存在する酸素と結合し、酸化物である酸化銅となります

酸化銅は、銅がもっていた金属光沢、電気伝導性、熱伝導性、展性、延性といった性質をすべて失っています。つまり、酸化銅は表面が輝いておらず、電気や熱を伝えずらくなってしまうのですね。そして、展性や延性が失われることで、酸化銅はもろくなってしまいます。

酸化銅の還元実験について学ぼう!

それでは、酸化銅の還元実験について詳しく学んでいきます。端的に表現すると、酸化銅の還元とは、酸化銅を銅に戻す反応のことです。酸化銅を還元する方法はいくつか存在しますが、ここでは、代表的なものを3つ紹介します。

実験装置についてや化学変化の様子などに注目して、3つの酸化銅の還元方法について学んでみてください。これらの実験について理解が深まれば、酸化銅の還元についての知識がしっかりと身に付きますよ。

炭素を用いる実験

炭素を用いる実験

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はじめに、炭素を用いて酸化銅を還元する方法を紹介しますね試験管の中に、酸化銅と粉末状の炭素を入れて、ガスバーナーなどで加熱します。このようにすると、試験管の中に金属光沢をもつ銅が生じます酸化銅に含まれていた酸素が炭素によって、取り去られて、銅が試験管の中に残ったのですね。このように、何らかの物質を用いて酸化物から酸素を取り去ることで、還元反応を進行させるのです

炭素が酸化銅から酸素を取り去るとき、炭素と酸素は結合し、二酸化炭素になります。そのため、試験管内から出てくる気体を導管に通して石灰水に送り込むと、石灰水は白く濁るのです。発生した二酸化炭素は、空気中に放出されるので、試験管内に存在する物質の質量は減少します。

\次のページで「水素を用いる実験」を解説!/

水素を用いる実験

水素を用いる実験

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次に、水素を用いた酸化銅の還元方法を学びます。この方法では、あらかじめ試験管や集気びんの中に水素を充満させておきます。水素を発生させる方法としては、薄い塩酸に亜鉛を加えるというものや薄い水酸化ナトリウムにアルミニウムを加えるというものなどがありますよね。また、水素を収集するときには、上方置換法を用います。

水素で満たされた試験管や集気びんの中に、高温になるまで加熱した酸化銅を入れると、金属光沢をもつ銅に変化します。このとき、水素分子が酸化銅に含まれる酸素原子を取り去り、銅が生じるのです。そして、水素分子と酸素原子が結合して水が生じます。そのため、試験管や集気びんの壁面に、小さな水滴が付着している様子が観察できます

メタノールを用いる実験

メタノールを用いる実験

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続いて、メタノールを用いた酸化銅の還元方法を考えてみましょう。この方法では、加熱された高温の酸化銅を、メタノールの液面に近づけます。この際、酸化銅がメタノールに接触しないようにしましょう。メタノールの液面付近に近づけた酸化銅は、金属光沢が現れ、銅に変化します

この還元反応では、メタノールの蒸気が、酸化銅に含まれる酸素を取り去るのです。メタノールと酸素が反応すると、水とホルムアルデヒドが生じますホルムアルデヒドは刺激臭のある無色の気体ですホルムアルデヒドは、シックハウス症候群の原因とされている物質で、人体に悪い影響を及ぼします。そのため、この実験は換気が十分になされた実験室で行う必要がありますよ。

酸化銅の還元反応が役立つ場面

最後に、酸化銅の還元反応がどのような場面で役立つのかを紹介します。教科書や参考書に載っているような理論や実験についての知識だけなく、酸化銅の還元反応がどのようなところで役に立っているのかを知ることで、酸化銅の還元反応についての理解はきっと深まるはずです。

ここでは、酸化銅の還元反応が利用されている工業技術について考えてみましょう。ここまで学んだことを、紹介する技術と結び付けて考えてみてくださいね。

\次のページで「銅の精錬」を解説!/

銅の精錬

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先ほど述べたように、銅は電線、配管、硬貨の材料などに用いられており、私たちの生活を支える重要な材料の1つです。ですが、単体の銅は、自然界にはほとんど存在しません。そのため、不純物が含まれた銅鉱物から、銅成分のみを取り出す精練と呼ばれる作業が必要になりますよ

銅鉱物には、銅のほかに、酸化物イオン・塩化物イオン・硫化物イオン・水酸化物イオンなどが含まれています。これらを除去するために、酸化銅の還元反応と同様の反応が用いられます何らかの物質を加え、それが不要な物質を取り去ることで、純粋な銅が取り出せるのです

酸化銅の還元のメカニズムを理解しよう!

酸化銅の還元実験は、中学校の理科の授業で学ぶ内容で、多くの人が見覚えのあるものではないかと思います。ですが、還元反応のメカニズムや複数の実験方法があるということはあまり知られていません。今回は、このようにあまり知られていない部分まで、徹底的に解説をしました。

せっかく学習するのであれば、知らない人が多い豆知識的な部分も理解すると面白いですよ。ぜひ、この機会に酸化銅の還元について学んでみてくださいね。大人の方も、豆知識として学びなおしをしてみると、楽しいと思います。

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化学理科

3分で簡単酸化銅の還元!実験の方法とは?原理は?理系学生ライターがわかりやすく解説!

今回は「酸化銅の還元」について解説していきます。

酸化銅の還元実験は、中学や高校の教科書にも載っていて、非常に有名な実験です。ですが、そのメカニズムについてや複数の実験方法があることは、詳しく説明されていない教科書や参考書も多い。今回は、そのような部分についても、詳しく解説をします。ぜひ、この機会に酸化銅の還元について理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

酸化銅の還元について学ぶ前に

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酸化銅の還元について詳しく学ぶ前に、銅と酸化銅について簡単に復習しておきましょう。ここでは、銅および酸化銅の化学的な性質や特徴、両者の違いについて確認します。酸化銅の還元について、本質な理解をするためには、これらの知識は必要不可欠となりますよ

理論の説明だけで理解しずらい部分は、具体的な例なども交えながら解説を進めます。ぜひ、理論だけでなく、具体例も頭に入れてみてください。それでは、銅および酸化銅についての説明をはじめます。

銅とは?

銅は単体の金属で、電線や配管の材料となるような物質です。また、500円玉、100円玉、50円玉、10円玉、5円玉の材料にも、銅が含まれています。このように、銅は身近なところで、活躍しているのです。銅には、金属光沢電気伝導性熱伝導性展性延性といった性質があります。

金属光沢は、銅の表面が輝く現象のことをさしています。また、電気伝導性は電気をよく通す性質のことをさし、熱伝導性は熱をよく伝える性質のことをさします。展性および延性は銅を叩いたり、引っ張ったりしたときに、銅が変形することを意味します。

酸化銅とは?

銅の粉末を、ガスバーナーなどで高温になるまで加熱すると、真っ黒な固体に変化します。この真っ黒な固体が、酸化銅なのです。銅が熱されることで、空気中に存在する酸素と結合し、酸化物である酸化銅となります

酸化銅は、銅がもっていた金属光沢、電気伝導性、熱伝導性、展性、延性といった性質をすべて失っています。つまり、酸化銅は表面が輝いておらず、電気や熱を伝えずらくなってしまうのですね。そして、展性や延性が失われることで、酸化銅はもろくなってしまいます。

酸化銅の還元実験について学ぼう!

それでは、酸化銅の還元実験について詳しく学んでいきます。端的に表現すると、酸化銅の還元とは、酸化銅を銅に戻す反応のことです。酸化銅を還元する方法はいくつか存在しますが、ここでは、代表的なものを3つ紹介します。

実験装置についてや化学変化の様子などに注目して、3つの酸化銅の還元方法について学んでみてください。これらの実験について理解が深まれば、酸化銅の還元についての知識がしっかりと身に付きますよ。

炭素を用いる実験

炭素を用いる実験

image by Study-Z編集部

はじめに、炭素を用いて酸化銅を還元する方法を紹介しますね試験管の中に、酸化銅と粉末状の炭素を入れて、ガスバーナーなどで加熱します。このようにすると、試験管の中に金属光沢をもつ銅が生じます酸化銅に含まれていた酸素が炭素によって、取り去られて、銅が試験管の中に残ったのですね。このように、何らかの物質を用いて酸化物から酸素を取り去ることで、還元反応を進行させるのです

炭素が酸化銅から酸素を取り去るとき、炭素と酸素は結合し、二酸化炭素になります。そのため、試験管内から出てくる気体を導管に通して石灰水に送り込むと、石灰水は白く濁るのです。発生した二酸化炭素は、空気中に放出されるので、試験管内に存在する物質の質量は減少します。

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