今回のテーマ「三大栄養素の消化」について見ていこう。
三大栄養素とは、炭水化物、たんぱく質、脂質の3種類の栄養素のことを言うが、これらは全て違った経路で消化されているのは知っているでしょうか。
今回は、三大栄養素の消化について、東大生物学科卒で生物に詳しいライターAEON2と一緒に解説していきます。

ライター/AEON2

東京大学理学部生物学科出身で、在学中は塾講師として高校受験生物の指導をすること多数。また高校時代には、国際生物学オリンピックの国内選考で銅メダルを受賞した経験あり。趣味はボディビルディング。

炭水化物の消化

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最初に炭水化物の消化について解説していきます。

炭水化物の中には、ヒトが消化できない食物繊維と、消化できる糖質が含まれていることはご存知でしょうか。今回は食物繊維の消化と糖質の消化のそれぞれについて見ていきます。

1-1食物繊維とは?

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食物繊維とは、ヒトの消化酵素では消化することが難しかったり不可能であったりする難消化性成分の総称で、一般的には、植物や菌類(キノコ等)の細胞壁からなります。成分としては、野菜等に豊富に含まれるセルロース、ゴボウに含まれるイヌリン、こんにゃくに含まれるグルコマンナン等がありますね。

1-2食物繊維の消化

ヒトの体は、糖質を消化するための消化酵素はたくさん持っているものの、食物繊維を消化するための消化酵素は持っておらず、その消化は主に大腸の腸内細菌に頼る形になっています。

大腸内の腸内細菌は、酸素を用いない嫌気発酵を行うことで、食物繊維を、短鎖脂肪酸やメタン、二酸化炭素、水素などに分解することができるのです。短鎖脂肪酸には、酢酸プロピオン酸酪酸等が含まれ、これらは大腸より吸収され、体内でエネルギーとして活用されます。

大腸に存在する腸内細菌の働きにより、食物繊維は発酵されて、ヒトが使用できる物質に変化します。

2-1糖質とは?

糖質とは、炭水化物のうち、ヒトが消化酵素の働きにより分解・吸収できるもののことを指し、一般的には単糖類多糖類が含まれます。糖の分子が単独で存在するものを単糖類と呼び、それらがたくさん結合してできている高分子を多糖類というのですね。

今回はこの糖質のうち、食品に多く含まれるデンプンの消化について解説していきます。

\次のページで「2-2デンプンの消化」を解説!/

2-2デンプンの消化

食べ物に含まれるデンプンは、まずはだ液中に含まれるアルファアミラーゼという酵素によって分解されます。デンプンは糖分子が多数結合した高分子であるため、そのままでは吸収することができません。そこで、だ液中に含まれるアルファアミラーゼがハサミのように機能して、分子を小さくすることが重要となります。アルファアミラーゼの働きにより、デンプンは糖分子が2個結合した物質であるマルトース麦芽糖)へと分解されるというわけです。

続いて、だ液中のアルファアミラーゼのみでは分解しきれなかったデンプンは、膵液に含まれる膵液アルファアミラーゼの働きを受けます。これににより、残っていたデンプンもマルトースへと分解されるというわけです。

マルトースまで分解されたデンプンが小腸へ運ばれると、続いて小腸の壁に存在する消化酵素であるマルターゼグルコアミラーゼの働きを受け、さらに小さい分子であるグルコースブドウ糖)へと分解されます。グルコースまで分解されることで、小腸の壁に存在する絨毛じゅうもう)から吸収されることが可能となり、吸収後は肝臓を経て全身へと運ばれていくのですね。

以下を確認しておきましょう。

だ液 → アルファアミラーゼ

膵液 → アルファアミラーゼ

小腸の消化酵素 → マルターゼ、グルコアミラーゼ

タンパク質の消化

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続いてはタンパク質の消化についてです。炭水化物の消化とどのような違いがあるのかに注意して見ていきましょう。

タンパク質が吸収されるまで

口の中で噛み砕かれたタンパク質は、まずは胃液の中に含まれるペプシンによって分解されます。胃液が酸性であることは、このペプシンの活性を高めることに役立っているのと同時に、食べたものの表面を変形させて、より消化されやすくする役目があるのです。タンパク質はアミノ酸が多数結合した高分子ですが、ペプシンがアミラーゼの時のようにハサミとして機能することで、アミノ酸が少量結合したペプチドという物質まで小さくされます。

胃液の作用を受けたタンパク質やペプチドは続いて十二指腸へ運ばれ、膵臓から分泌される、トリプシンキモトリプシンペプチターゼといった消化酵素の働きを受けて、より小さな分子へと変化させられるのです。

これらの消化酵素の働きにより小さなくなったペプチドやアミノ酸は、最終的には小腸の壁に存在する消化酵素の働きにより、単一のアミノ酸まで分解されます。このアミノ酸という最小単位になることで、初めて小腸の絨毛から吸収できるようになるというわけです。

\次のページで「脂質の消化」を解説!/

脂質の消化

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最後に紹介するのは脂質の消化です。炭水化物やタンパク質の消化とはどのような違いがあるのでしょうか。

脂質が吸収されるまで

食事に含まれる脂質は、小腸内部において、胆嚢から分泌される胆汁酸と混ぜ合わされます。これにより、脂質と水分がともに小さくなって混ざり合う、乳化という現象が起こり、その後の消化に役立ってくるというわけです。

乳化されて分解されやすくなった状態の脂質は、続いて膵液に含まれるリパーゼという消化酵素の作用を受けます。脂質(脂肪)は通常、1分子のグリセリンと3分子の脂肪酸が結合してできていますが、リパーゼもやはりこの結合を切断する働きがあり、最終的に、1分子のグリセリンと1分子の脂肪酸が結合したモノアシルグリセロールと、2分子の脂肪酸に分解されるというわけです。

これらのモノアシルグリセロールと脂肪酸は、小腸の絨毛を通過したのちに再び元どおりに合成され、脂質となって体内を運搬されていきます。

image by Study-Z編集部

三大栄養素以外の消化吸収も調べてみましょう

今回は、三大栄養素である炭水化物、タンパク質、脂質の消化吸収について解説しました。

生命を維持するための一番の基本となるのが三大栄養素ですが、実はこれ以外にも、野菜に含まれるビタミンや、海藻や小魚などに豊富に含まれるミネラルなど、様々な栄養素があります。興味のある方は、是非、それらの栄養素がどのようにして体内で消化吸収されるかについて調べてみてくださいね。

イラスト使用元:いらすとや

" /> 5分で分かる「三大栄養素の消化」消化の仕組みを知ろう!東大生物学科卒が分かりやすくわかりやすく解説 – Study-Z
タンパク質と生物体の機能理科生物

5分で分かる「三大栄養素の消化」消化の仕組みを知ろう!東大生物学科卒が分かりやすくわかりやすく解説

今回のテーマ「三大栄養素の消化」について見ていこう。
三大栄養素とは、炭水化物、たんぱく質、脂質の3種類の栄養素のことを言うが、これらは全て違った経路で消化されているのは知っているでしょうか。
今回は、三大栄養素の消化について、東大生物学科卒で生物に詳しいライターAEON2と一緒に解説していきます。

ライター/AEON2

東京大学理学部生物学科出身で、在学中は塾講師として高校受験生物の指導をすること多数。また高校時代には、国際生物学オリンピックの国内選考で銅メダルを受賞した経験あり。趣味はボディビルディング。

炭水化物の消化

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最初に炭水化物の消化について解説していきます。

炭水化物の中には、ヒトが消化できない食物繊維と、消化できる糖質が含まれていることはご存知でしょうか。今回は食物繊維の消化と糖質の消化のそれぞれについて見ていきます。

1-1食物繊維とは?

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食物繊維とは、ヒトの消化酵素では消化することが難しかったり不可能であったりする難消化性成分の総称で、一般的には、植物や菌類(キノコ等)の細胞壁からなります。成分としては、野菜等に豊富に含まれるセルロース、ゴボウに含まれるイヌリン、こんにゃくに含まれるグルコマンナン等がありますね。

1-2食物繊維の消化

ヒトの体は、糖質を消化するための消化酵素はたくさん持っているものの、食物繊維を消化するための消化酵素は持っておらず、その消化は主に大腸の腸内細菌に頼る形になっています。

大腸内の腸内細菌は、酸素を用いない嫌気発酵を行うことで、食物繊維を、短鎖脂肪酸やメタン、二酸化炭素、水素などに分解することができるのです。短鎖脂肪酸には、酢酸プロピオン酸酪酸等が含まれ、これらは大腸より吸収され、体内でエネルギーとして活用されます。

大腸に存在する腸内細菌の働きにより、食物繊維は発酵されて、ヒトが使用できる物質に変化します。

2-1糖質とは?

糖質とは、炭水化物のうち、ヒトが消化酵素の働きにより分解・吸収できるもののことを指し、一般的には単糖類多糖類が含まれます。糖の分子が単独で存在するものを単糖類と呼び、それらがたくさん結合してできている高分子を多糖類というのですね。

今回はこの糖質のうち、食品に多く含まれるデンプンの消化について解説していきます。

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