最近、街の至る所にアルコール消毒液が設置されているな。街を歩けば人々は皆マスクをつけている。風邪やインフルエンザなどの感染症には誰だって罹りたくない。細菌やウイルスは当然目には見えないから、どうやったら接触しないで済むかわからない。自分が何かの感染症にかかっているかも潜伏期間があるのでわからない。感染症について考えると不安ですが、どのようにしたら感染症にかかるのか正しくこの機会に理解しよう。このことについて医学系研究アシスタントのmimosa(ミモザ)と一緒に解説していきます。

ライター/mimosa

もともと文系出身で、独学で生物学、分子生物学、微生物学を勉強し、現在医学系研究所の研究アシスタントとして理系の世界へ飛び込んだ。理科が苦手な方へも興味を持ってもらうべくわかりやすい説明を心掛けている。

感染と発症

image by iStockphoto

まず、感染症について説明しますね。感染とは、外部から病原体としての微生物が宿主(しゅくしゅ)となる生体内に侵入し、適所となる組織に定着後、そこで増殖する。このような状態を感染と言います。また、もともとヒトの体内に常在している微生物であっても、からだの免疫力が極度に下がるなど様々な原因によって宿主である体内で過剰に増加した場合でも感染したと言いますよ。

宿主で感染が成立し、感染部位を中心に機能的、生理的に変化が生じると病態が形成されて症状が現れます。このように臨床的症状(患者さんが訴える症状の他、医師の診察による所見など)が発現することを発症と言いますよ。発症が認められた感染を顕性感染と言って、顕性感染に伴う病的症状がいわゆる感染症となります。

感染源について

感染源とは、生体内に入り込んで定着し感染症になる原因の病原性のある微生物そのもの、もしくはその病原性のある微生物を持っている人や物(それに汚染された器具、食品など)のことを言いますよ。病原性のある微生物は主にウイルスや細菌です。この章では、ウイルスや細菌の特徴について説明していきますね。

ウイルスとは

ウイルスとは

image by Study-Z編集部

ウイルスとは、微細な粒子であり、自分と同じものをつくりだせる、自己複製能がありますよ。ウイルスの中には核酸があり、細胞膜で仕切られています。細胞壁はありません。大きさは、数十nm(ナノメートル)から数百nmですね。ちなみに1ナノメートルは、10億分の1メートルですよ。なかなかイメージしづらいと思いますが。ウイルスは自ら栄養摂取できないので、生物の細胞に寄生することによって自己複製が可能となります。

細菌とは

細菌とは

image by Study-Z編集部

細菌は、真核生物のように核膜に覆われた核を持たない原核生物です。ほとんどの細菌が細胞膜の外に細胞壁をもっています。細菌の細胞質は真核生物よりもずっとシンプルな構造で、細胞内小器官は存在しません。染色体DNAの他にプラスミドと呼ばれる環状の小さなDNAが存在することがあります。プラスミドには薬剤耐性や病原性に関わる遺伝情報を含んでいることが多いのです。

大きさは、球菌や桿(かん)菌というように形によって大きく異なりますが、ウイルスに比べたら大きく大腸菌、ビフィズス菌、結核菌、肺炎球菌などの細菌は1-4µ(マイクロ)mと言われていますよ。µはnの1000倍なのでウイルスよりかなり大きいですね。基本的には、細菌はウイルスと違って自ら栄養摂取ができます。なので、細胞を使わず細菌は寒天培地などで培養が可能なのですね。あと、自ら分裂して増殖を行っていくことも可能なのですよ。

\次のページで「感染経路について」を解説!/

感染経路について

感染症が成立するためには、感染源感染経路感受性宿主(その感染症にかかる可能性のある人)の3つが必要です。感染経路は横方向の広がりである水平感染と、母から子へと次の世代につながる垂直感染があります。垂直感染の方がずっと伝播力は高いのです。垂直感染は何によって感染源が媒介されるかによって、接触感染飛沫感染空気(飛沫核)感染血液・体液感染に分類されますが、その中でも飛沫感染と空気感染について説明していきますね。

飛沫感染について

飛沫とは、くしゃみや咳、つばと言った水分のことで、飛沫核はそれが乾燥し、病原菌だけが空中に浮遊している状態です。この飛沫は水分を含むため重くてすぐに落下するので約1メートルしか飛ぶことはありません。この飛沫を吸い込んでしまい感染症にかかってしまうことを飛沫感染と言いますよ。飛沫感染する感染症は、インフルエンザ、風邪ウイルス(ライノウイルス、コロナウイルスなど)ですね。

空気感染について

空気感染は、直径5µm以下の飛沫よりも小さく軽い飛沫核により感染することですよ。飛沫核は空気の流れで遠くまで運ばれるのでより広い範囲に感染が広がりますよ。現代で空気感染する感染症は、「麻疹(はしか)」、「水疱瘡」、「結核」の3つが挙げられます。

感染症予防について

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一般的な感染症予防で、手洗いの励行、咳エチケット、換気などを厚生労働省が呼びかけていますが、これとは別に飛沫感染と空気感染それぞれに分けて感染症予防策について説明していきますね。

飛沫感染予防策

飛沫を介した病原体の伝播(でんぱ)を防止するために医療従事者はサージカルマスク(医療現場や医療用に使用するマスクでドラッグストアやホームセンターなどでも販売されています。特徴としてはフィルターがあり、不織布で作られており、3枚重ねが主流です。使い捨てで鼻の部分にノーズクリップがあり、気密性があります。)を着用して患者の処置やケアに当たり、患者も病室の外に出るときは必ずサージカルマスクを着用しますよ。病室は個室にした方が望ましいのですが、個室が確保できない場合は、患者ベッド間隔を2メートル以上あけましょう。病室は特別な空調システムは必要ありません。

\次のページで「空気感染予防策」を解説!/

空気感染予防策

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空気感染予防においては、飛沫感染時よりも飛沫核が小さいので、飛沫感染予防よりもより厳しく統制された対策が必要になってきます。飛沫核を有する病原体の封じ込めに徹さなくてはなりません。そのために患者の周囲の区域に対して、陰圧に設定された個室で管理する必要がありますよ。さらに病室内では、医療従事者や面会者はN95型微粒子用マスクを着用する必要があります。このマスクは一時期ニュースでも話題になりましたね。画像はN95マスクですよ。患者にはN95マスクは着用させず、サージカルマスクを着用します。

これまでの感染症との戦いの歴史

これまでの人類の歴史で感染症との戦いはたくさん繰り返されてきました。科学や医学が全然進歩していなかった昔は、疫病が神々の力や祟りとも思われていました。19世紀にパスツールによる微生物が自然に発生しないことを実験で証明し、さらにコッホが細菌の研究で炭そ菌、結核菌、コレラ菌を発見しました。19世紀から20世紀にかけて近代医学は発展しました。現代ではさらに医学が進歩し、たくさんの疾病予防や治療法が確立しましたが、医学の進歩がはるかに進歩しても、いつの時代も私たちは感染症の脅威にさらされます。

感染症にかからないようにするためには正しく敵を知ること

未知の新型の感染症が流行すれば、まず新たな病原体の正体を掴むことも簡単ではありません。予防策や治療薬、治療法の確立にもはかなりの年月がかかります。新たな感染症の脅威にさらされると、社会は混乱し、うその情報も飛び交うことがありますが、そこにはきちんと根拠に基づいたエビデンスベーストの情報があるはずです。情報を吟味し、情報の参考文献や監修元をきちんと確認をしましょう。敵(病原体)を正しく知ることで自分や周りの人を守ることができますよ。感染症や生体防御について正しく学べば、感染症はこわくない!

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理科環境と生物の反応生物

3分で簡単「飛沫感染」「空気感染」の違い!医学系研究アシスタントがわかりやすく解説

最近、街の至る所にアルコール消毒液が設置されているな。街を歩けば人々は皆マスクをつけている。風邪やインフルエンザなどの感染症には誰だって罹りたくない。細菌やウイルスは当然目には見えないから、どうやったら接触しないで済むかわからない。自分が何かの感染症にかかっているかも潜伏期間があるのでわからない。感染症について考えると不安ですが、どのようにしたら感染症にかかるのか正しくこの機会に理解しよう。このことについて医学系研究アシスタントのmimosa(ミモザ)と一緒に解説していきます。

ライター/mimosa

もともと文系出身で、独学で生物学、分子生物学、微生物学を勉強し、現在医学系研究所の研究アシスタントとして理系の世界へ飛び込んだ。理科が苦手な方へも興味を持ってもらうべくわかりやすい説明を心掛けている。

感染と発症

image by iStockphoto

まず、感染症について説明しますね。感染とは、外部から病原体としての微生物が宿主(しゅくしゅ)となる生体内に侵入し、適所となる組織に定着後、そこで増殖する。このような状態を感染と言います。また、もともとヒトの体内に常在している微生物であっても、からだの免疫力が極度に下がるなど様々な原因によって宿主である体内で過剰に増加した場合でも感染したと言いますよ。

宿主で感染が成立し、感染部位を中心に機能的、生理的に変化が生じると病態が形成されて症状が現れます。このように臨床的症状(患者さんが訴える症状の他、医師の診察による所見など)が発現することを発症と言いますよ。発症が認められた感染を顕性感染と言って、顕性感染に伴う病的症状がいわゆる感染症となります。

感染源について

感染源とは、生体内に入り込んで定着し感染症になる原因の病原性のある微生物そのもの、もしくはその病原性のある微生物を持っている人や物(それに汚染された器具、食品など)のことを言いますよ。病原性のある微生物は主にウイルスや細菌です。この章では、ウイルスや細菌の特徴について説明していきますね。

ウイルスとは

ウイルスとは

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ウイルスとは、微細な粒子であり、自分と同じものをつくりだせる、自己複製能がありますよ。ウイルスの中には核酸があり、細胞膜で仕切られています。細胞壁はありません。大きさは、数十nm(ナノメートル)から数百nmですね。ちなみに1ナノメートルは、10億分の1メートルですよ。なかなかイメージしづらいと思いますが。ウイルスは自ら栄養摂取できないので、生物の細胞に寄生することによって自己複製が可能となります。

細菌とは

細菌とは

image by Study-Z編集部

細菌は、真核生物のように核膜に覆われた核を持たない原核生物です。ほとんどの細菌が細胞膜の外に細胞壁をもっています。細菌の細胞質は真核生物よりもずっとシンプルな構造で、細胞内小器官は存在しません。染色体DNAの他にプラスミドと呼ばれる環状の小さなDNAが存在することがあります。プラスミドには薬剤耐性や病原性に関わる遺伝情報を含んでいることが多いのです。

大きさは、球菌や桿(かん)菌というように形によって大きく異なりますが、ウイルスに比べたら大きく大腸菌、ビフィズス菌、結核菌、肺炎球菌などの細菌は1-4µ(マイクロ)mと言われていますよ。µはnの1000倍なのでウイルスよりかなり大きいですね。基本的には、細菌はウイルスと違って自ら栄養摂取ができます。なので、細胞を使わず細菌は寒天培地などで培養が可能なのですね。あと、自ら分裂して増殖を行っていくことも可能なのですよ。

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