お前らは昆虫の『変態』を知っているか。 親が産んだ卵が幼虫からさなぎを経て成虫になる過程を変態と呼ぶ。しかし、世の中にはセミやトンボといったサナギを経由しない変態をする生き物もいる。なぜ生き物によって変態の仕方が異なるか疑問に思ったことはないでしょうか。人間にとって手のひらサイズの生き物には、まだ解明できていない神秘が詰まっている!
今回の記事では、 昆虫の変態に関して国立大学院で修士号(農学)を取得ているライターふくろう博士と一緒に解説していきます。

ライター/ふくろう博士

国立理系大学院で修士(農学)を取得し、現在は民間企業の研究職に従事している典型的な理系人間。「理系好きな学生を一人でも多く増やす」をキーワードにインターネットの世界で活躍中!自身のサイトでは大学生に役立つ情報を日々提供している。

昆虫によって変態の仕方は違う!

image by iStockphoto

私たちの身近に生息する生き物の一種に昆虫があります。 公園や草原で見かける美しいチョウなどもいれば、夜な夜な台所に出没するゴキブリなどの生き物のことですね。このように普段私たち人間が目にする昆虫の大半は『成虫』と呼ばれる段階に分類されます。全ての昆虫は卵から幼虫に成長しますが、種類によってはサナギを経由して成虫になるものとそうでないものの2種類に分かれるのです。

どうして昆虫によって変態の仕方が分かれるのでしょうか?実は、この違いは昆虫ごとのライフスタイルに強く影響を受けています。それでは、実際に昆虫の例を見ながら解説していきましょう。

昆虫には3種類の変態に分類できる

昆虫は発生の過程によって

無変態

不完全変態

完全変態

の三つのグループに分けることができます。

無変態とは、その名の通り変態(体の状態を変える)ことなく成虫になる生き物です。最も原始的な昆虫に見られる変態の仕方であり、シミやイシノミといった生き物が該当します。古い着物を長期間押し入れに保管していると、いつの間にかそれらを食料として繁殖している謎の虫たちのことです。昆虫ではないのですが、イメージとしてはダンゴムシに近いですね。これらの生き物は脱皮によって体を少しずつ大きくし、そのまま成虫へと成長します。

幼虫と成虫が大きさ以外で違いが見られないのであれば 、どのような基準で判断するのでしょうか?答えは『生殖機能があるかどうか』です。このような生き物は外気温や湿度が一定である場所に生息し、外敵が少ない場所を好む特徴があります。つまり、一生を同じ環境下で暮らす生き物に多い形態なのです。

Pedetontus unimaculatus 01 female.jpg
Takahashi - my own file, パブリック・ドメイン, リンクによる

\次のページで「不完全変態には2グループ存在する!」を解説!/

不完全変態には2グループ存在する!

サナギを経由せず、幼虫が直接成虫になることを不完全変態と呼ばれます。多くの昆虫に見られる基本的な様式であり、 ゴキブリやバッタ、カマキリ、セミ、カゲロウ、ハサミムシやナナフシなどが該当しますね。 サナギを経由しない不完全変態ですが、幼虫と成虫の外見の変化によって2種類の小グループに分類することができます。それでは、不完全変態の分類について見てきましょう!

その1.小変態

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幼虫と成虫の違いが翅の有無しかないような昆虫は『小変態』に分類されます。具体的な昆虫で言うと、バッタやカマキリ、ハサミムシ、ゴキブリなどですね。これらの生き物は幼虫と成虫でほぼ同じ生活様式をとり、生活空間を変化させないという特徴があります。また、複数回脱皮をするだけで成虫になるため、外敵から身を守る手段がないサナギになる必要がないといった利点も魅力的です。

一方で、極端な高温や低温状態には弱く、

卵を地下深く安定した外部環境で産卵する
卵を外敵や低温から守る卵鞘(らんしょう)を作る
一年中気温が安定する民家に潜む

といった生存戦略をとることで解決しています。

その2.前変態

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サナギを経由しない生き物の中で、幼虫と成虫の見た目が大きく異なる昆虫を『前変態』と呼びます。具体的には、トンボやカゲロウと言った水中に住む生き物などです。

トンボを例にとって解説しましょう。ヤゴと呼ばれる幼虫時代では、水中でボウフラやメダカといった小さな水生生物を食べて生活しています。水中という特殊な環境に適応するため、エラ呼吸を行い伸縮可能な下顎で生き物を捕食するのです。一方、成虫になると腹部の気門で呼吸を行い下顎は伸びません。しかし、複眼の形や 足の形状など基本的な構造は幼虫と成虫で大差ありません。

不完全変態のグループに共通することとして、 『幼虫と成虫で食べるものに大きな違いはない』ことがあげられます。カマキリは幼虫も成虫も肉食ですし、バッタは草食です。あくまでも幼虫の生活習慣の延長線上に成虫がいるといったイメージですね。しかし、次に紹介する完全変態のグループはそうではありません。それでは実際に完全変態のグループについて見ていきましょう。

\次のページで「完全変態と不完全変態の違い」を解説!/

完全変態と不完全変態の違い

不完全変態のグループは、幼虫と成虫の生活様式が同じであるということを紹介しました。しかし、完全変態のグループはそうではありません。アゲハチョウを例にとって説明しましょう。 成虫のアゲハチョウは花の蜜を吸って生活していますが、幼虫はミカンやサンショウといたミカン科の植物を食べて育ちます。きれいなチョウの仲間ではありますが、みかん農家の方にとっては憎き害虫なのです。

しかし、今回注目してほしいのは『幼虫と成虫で主食が違う』ことと『チョウと芋虫で形状が似ても似つかない』という点!完全変態を行うグループが成長過程で形状も食性もまるで違う理由には、実は昆虫たちのしたたかな生存戦略が関わっています。

実は大切!『サナギ』の役割

実は大切!『サナギ』の役割

image by Study-Z編集部

完全変態の幼虫段階は、 餌を食べて栄養を蓄えることに特化した形状に進化しています。アゲハチョウの場合、幼虫の期間で食べる葉の量はなんと500wp_^3とのこと!なぜ短期間でこれほどたくさん食べられるのかというと、幼虫の体が消化吸収に特化した形状をとっているためです。人間で言うと、口と胃腸といった消化管しかないようなイメージですね。こうすることで早く効率的に栄養を吸収し、短い期間で成虫になるために必要な準備を整わせることが出来ます。生活サイクルを速く回すことが出来るため、他のライバルより繁栄しやすいのです!

しかし、完全変態に分類される幼虫は効率よく栄養取れる反面、子孫を残すために移動する翅や生殖器官が備わっていません。この問題を解決するのが『サナギ』という訳です。サナギの中では、幼虫の体を一度ドロドロに溶かし、翅や生殖器官などを新しく再構築しています。また、さなぎの段階では寒い冬をこすことができるため、寒い地域でも繁殖できるメリットも享受できるのです。このように、サナギとは昆虫における素晴らしい発明の一つと言えるでしょう!

『昆虫』にはまだまだ秘密がたくさんある!

今回の記事では、『昆虫の変態』をテーマに記事を書きました。 普段の生活で何気なく目に映る昆虫ですが、詳しく調べてみるとこんなにも違いがあるのですね。しかし、このような不思議は探してみるとたくさんあります。興味が湧いた人は図書館やインターネットを使って調べてみるのもいいでしょう。

イラスト使用元:いらすとや

" /> 5分で分かる昆虫の「変態」完全変態と不完全変態について理系院卒ライターがわかりやすく解説 – Study-Z
理科生物生物の分類・進化

5分で分かる昆虫の「変態」完全変態と不完全変態について理系院卒ライターがわかりやすく解説

お前らは昆虫の『変態』を知っているか。 親が産んだ卵が幼虫からさなぎを経て成虫になる過程を変態と呼ぶ。しかし、世の中にはセミやトンボといったサナギを経由しない変態をする生き物もいる。なぜ生き物によって変態の仕方が異なるか疑問に思ったことはないでしょうか。人間にとって手のひらサイズの生き物には、まだ解明できていない神秘が詰まっている!
今回の記事では、 昆虫の変態に関して国立大学院で修士号(農学)を取得ているライターふくろう博士と一緒に解説していきます。

ライター/ふくろう博士

国立理系大学院で修士(農学)を取得し、現在は民間企業の研究職に従事している典型的な理系人間。「理系好きな学生を一人でも多く増やす」をキーワードにインターネットの世界で活躍中!自身のサイトでは大学生に役立つ情報を日々提供している。

昆虫によって変態の仕方は違う!

image by iStockphoto

私たちの身近に生息する生き物の一種に昆虫があります。 公園や草原で見かける美しいチョウなどもいれば、夜な夜な台所に出没するゴキブリなどの生き物のことですね。このように普段私たち人間が目にする昆虫の大半は『成虫』と呼ばれる段階に分類されます。全ての昆虫は卵から幼虫に成長しますが、種類によってはサナギを経由して成虫になるものとそうでないものの2種類に分かれるのです。

どうして昆虫によって変態の仕方が分かれるのでしょうか?実は、この違いは昆虫ごとのライフスタイルに強く影響を受けています。それでは、実際に昆虫の例を見ながら解説していきましょう。

昆虫には3種類の変態に分類できる

昆虫は発生の過程によって

無変態

不完全変態

完全変態

の三つのグループに分けることができます。

無変態とは、その名の通り変態(体の状態を変える)ことなく成虫になる生き物です。最も原始的な昆虫に見られる変態の仕方であり、シミやイシノミといった生き物が該当します。古い着物を長期間押し入れに保管していると、いつの間にかそれらを食料として繁殖している謎の虫たちのことです。昆虫ではないのですが、イメージとしてはダンゴムシに近いですね。これらの生き物は脱皮によって体を少しずつ大きくし、そのまま成虫へと成長します。

幼虫と成虫が大きさ以外で違いが見られないのであれば 、どのような基準で判断するのでしょうか?答えは『生殖機能があるかどうか』です。このような生き物は外気温や湿度が一定である場所に生息し、外敵が少ない場所を好む特徴があります。つまり、一生を同じ環境下で暮らす生き物に多い形態なのです。

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