今回のテーマ「体細胞分裂」について見ていこう。
中学校の理科で観察したり、高校の生物で学習したりしたために、用語は覚えているが、詳しい内容までは覚えていないという人もいるのではないでしょうか。
今回は、そんな体細胞分裂ついて、時系列的に追いながら、東大生物学科卒で生物に詳しいライターAEON2と一緒に解説していきます。

ライター/AEON2

東京大学理学部生物学科出身で、在学中は塾講師として高校受験生物の指導をすること多数。また高校時代には、国際生物学オリンピックの国内選考で銅メダルを受賞した経験あり。趣味はボディビルディング。

体細胞分裂とは?

image by iStockphoto

今回は、体細胞分裂をテーマに見ていきましょう。

体細胞分裂では1つの細胞が2つの細胞に分裂しますが、初めに核が分裂し、続いて細胞質の分裂が起こります。細胞の分裂を時系列的に見ていく前に、まずは核分裂と細胞質分裂について簡単に解説していきますね。

核分裂とは?

image by iStockphoto

体細胞分裂の最初に起こるのが核分裂です。

核の中には生物の設計図となる遺伝子DNAという物質からなる)が、染色体として格納されています。核分裂で起こる主なイベントは、この染色体の複製と分離です。1つの細胞が2つの細胞へと分裂していくため、分裂前には、一通りの染色体のセットが揃った核を2つ用意しておく必要があります。

細胞質分裂とは?

細胞質分裂とは?

image by Study-Z編集部

次に細胞質分裂についての解説です。

核分裂を終えて、染色体の入った核2つを手に入れた細胞は、続いて2つへと分裂していきます。動物細胞の場合は、細胞の真ん中あたりがくびれてきて、最終的には、細胞膜が部分的に切断されることで2つの細胞へと分裂する一方、植物細胞の場合は、細胞の中心に細胞板と呼ばれる構造が出現し、それが細胞壁と融合することで細胞が2つに分けられるというわけです。この際、核分裂で2つになった核がそれぞれの細胞に分配されることに加え、その他の細胞小器官も複製されて分配されます。分裂後2つになったそれぞれの細胞のことを娘細胞と言いますね。

\次のページで「時系列で見る体細胞分裂」を解説!/

時系列で見る体細胞分裂

image by iStockphoto

体細胞分裂を構成する核分裂と細胞質分裂の概要が分かったところで、今度は体細胞分裂の過程を時系列的に見ながら解説していきます。どのような反応が、どのタイミングで行われているかに注意して見ていきましょう。

間期とは?

体細胞分裂の準備は、間期と呼ばれる状態の時に起こります。間期には、前述の核分裂のための準備が行われ、DNA量が2倍、すなわち染色体の数も2倍となった状態が作られるというわけです。

ヒトをはじめとする哺乳類では、この間期にかかる時間は約24時間とされています。

前期とは?

前期は分裂の最初の段階であり、核の中で2倍量となった染色体を等しく分配するための準備期間というわけです。

まずは中心体と呼ばれる構造が細胞の端と端へ移動していきますが、この中心体にはその後、微小管と呼ばれる構造が結合し、紡錘体という構造へと形を変えます。この紡錘体が、後に染色体を引っ張ることで、染色体の等しい分配が起こるというわけです。

前中期とは?

続いて起こる前中期では、染色体を包んでいた核膜が崩壊し、いよいよ染色体が分裂する準備が行われます。紡錘体からは紡錘糸と呼ばれる細い構造が伸びてきて、染色体のちょうど真ん中あたりに存在する動原体に結合することで染色体の移動を可能にするというわけです。

中期とは?

中期には、紡錘糸の結合した染色体が、細胞のちょうど真ん中である赤道面に並び、中期プレートが形成されます。全ての染色体が正しく赤道面に並ぶことが非常に重要で、これを経て、染色体は細胞の両極へと分配されるというわけです。染色体が適切に分配されないということが起こらないようにするために、紡錘体チェクポイントという機構が働いていることも覚えておきましょう。

後期とは?

続く後期には、赤道面に並んでいた染色体が紡錘体に引っ張られることで細胞の両極へと移動していきます。この引っ張られる機構は、動原体に結合した紡錘糸が切れたりくっついたりを繰り返しながら短くなっていることに由来するというわけです。

\次のページで「終期とは?」を解説!/

終期とは?

終期には、移動を終えた染色体が解けて細い紐状になったり、消失していた核膜が再生したりします。これらのステップを終えることで、ようやく細胞全体の分裂である細胞質分裂に進むことができるというわけです。

間期 → DNA量(染色体)が2倍になる期間です。

前期 → 染色体の移動に必要な紡錘体が形成されます。

前中期 → 紡錘体から伸びる紡錘糸が、染色体の動原体に結合するのが前中期です。

中期 → 染色体が赤道面に並びます。

後期 → 染色体が細胞の両極へと移動する期間でした。

終期 → 染色体が紐状になり、核膜が再生します。

細胞質分裂期とは?

核分裂を終えた細胞は、いよいよ2つに分裂する細胞質分裂を行います。

前述したように、動物細胞では、細胞の中心がくびれて切断されることで細胞が2分されますが、これには、多数のタンパク質からなる収縮環と呼ばれる構造が大きく関わっており、この収縮環が細胞膜との間で相互作用することで、くびれを引き起こす元となる収縮や、分裂のための溝が形成されるというわけです。

植物細胞では動物細胞とは異なり、細胞がくびれて切断されるということは起こりません。細胞のちょうど真ん中あたりに、しきりとなる細胞板が形成され、これが細胞壁と合体することで完全に細胞を2分するというわけです。この細胞板は、ゴルジ体に由来するエンドソーム(細胞外の物質を細胞内へ輸送する役割を持つ)が細胞内に細胞壁を運び込むことで作られます。

細胞分裂の観察

image by iStockphoto

最後に、簡単に細胞分裂の観察ができる方法を紹介しますね。

観察する資料としては、通常は玉ねぎの根の先端部分が使われます。玉ねぎの根の先端部分では、根を伸ばすために非常に盛んに分裂が行われており、このため、細胞分裂の様々なフェイズを確認することが容易であることが資料に選ばれる理由です。

玉ねぎの根の先端を回収したら、まずは60度程度に温めた塩酸に浸します。これにより、細胞どうしの結合が弱まり、バラバラになった細胞を観察しやすくなるというわけです。続いて、染色体に色をつけるための染色液(酢酸オルセイン液等)を用います。最後に、スライドガラスとカバーガラスで挟んでプレパラートを作れば終了です。これを光学顕微鏡で観察すると、細胞分裂の様々なフェイズを見ることができます。

正しい細胞分裂には複数の過程が必要

今回は体細胞分裂について解説しました。

分裂後の細胞それぞれが正しく機能するためには、分裂の段階で様々なステップを経ることが重要でした。それらの意味をよく理解すると、細胞分裂の全体像がより頭に入ってくるかもしれないですね。

イラスト利用元:いらすとや

" /> 5分で分かる「体細胞分裂」細胞分裂中には何が起こる?東大生物学科卒が分かりやすくわかりやすく解説 – ページ 3 – Study-Z
理科生物細胞・生殖・遺伝

5分で分かる「体細胞分裂」細胞分裂中には何が起こる?東大生物学科卒が分かりやすくわかりやすく解説

終期とは?

終期には、移動を終えた染色体が解けて細い紐状になったり、消失していた核膜が再生したりします。これらのステップを終えることで、ようやく細胞全体の分裂である細胞質分裂に進むことができるというわけです。

間期 → DNA量(染色体)が2倍になる期間です。

前期 → 染色体の移動に必要な紡錘体が形成されます。

前中期 → 紡錘体から伸びる紡錘糸が、染色体の動原体に結合するのが前中期です。

中期 → 染色体が赤道面に並びます。

後期 → 染色体が細胞の両極へと移動する期間でした。

終期 → 染色体が紐状になり、核膜が再生します。

細胞質分裂期とは?

核分裂を終えた細胞は、いよいよ2つに分裂する細胞質分裂を行います。

前述したように、動物細胞では、細胞の中心がくびれて切断されることで細胞が2分されますが、これには、多数のタンパク質からなる収縮環と呼ばれる構造が大きく関わっており、この収縮環が細胞膜との間で相互作用することで、くびれを引き起こす元となる収縮や、分裂のための溝が形成されるというわけです。

植物細胞では動物細胞とは異なり、細胞がくびれて切断されるということは起こりません。細胞のちょうど真ん中あたりに、しきりとなる細胞板が形成され、これが細胞壁と合体することで完全に細胞を2分するというわけです。この細胞板は、ゴルジ体に由来するエンドソーム(細胞外の物質を細胞内へ輸送する役割を持つ)が細胞内に細胞壁を運び込むことで作られます。

細胞分裂の観察

image by iStockphoto

最後に、簡単に細胞分裂の観察ができる方法を紹介しますね。

観察する資料としては、通常は玉ねぎの根の先端部分が使われます。玉ねぎの根の先端部分では、根を伸ばすために非常に盛んに分裂が行われており、このため、細胞分裂の様々なフェイズを確認することが容易であることが資料に選ばれる理由です。

玉ねぎの根の先端を回収したら、まずは60度程度に温めた塩酸に浸します。これにより、細胞どうしの結合が弱まり、バラバラになった細胞を観察しやすくなるというわけです。続いて、染色体に色をつけるための染色液(酢酸オルセイン液等)を用います。最後に、スライドガラスとカバーガラスで挟んでプレパラートを作れば終了です。これを光学顕微鏡で観察すると、細胞分裂の様々なフェイズを見ることができます。

正しい細胞分裂には複数の過程が必要

今回は体細胞分裂について解説しました。

分裂後の細胞それぞれが正しく機能するためには、分裂の段階で様々なステップを経ることが重要でした。それらの意味をよく理解すると、細胞分裂の全体像がより頭に入ってくるかもしれないですね。

イラスト利用元:いらすとや

1 2 3
Share: