この記事では「脱兎」について解説する。

端的に言えば「脱兎」意味は「動作が速いこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「脱兎」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「脱兎」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「脱兎(だっと)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「脱兎」の意味は?

「脱兎」には、次のような意味があります。

逃げていくウサギ。非常に速いことのたとえ。「脱兎の勢い」「脱兎の如く駆け出す」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「脱兎」

この言葉は主に、「動作がとても迅速なこと、そのたとえ」を意味する慣用表現です。漢字そのまま「逃げ出すうさぎ」を意味することもできますが、慣用表現としてはまず前者の使われ方をするでしょう。

「素早いこと」を意味する場合には必ずしも「逃げる」という意味を含まないこともポイントです。漢字から判断してしまいがちのため、気を付けましょう。

用法としては、「脱兎の如く(ごとく)」「脱兎のような」といった使われ方をすることがほとんどです。「脱兎の如く」で辞書に載っているものもありました。それくらい一般的に定着している慣用句は国語の問題でも頻出です。読み方も含めてしっかりと覚えるようにしてくださいね。

「脱兎」の語源は?

次に「脱兎」の語源を確認しておきましょう。この言葉は、中国春秋時代の兵法書『孫子』に見ることができます。「始めは処女の如く、後は脱兎の如し」という記述で、「最初は丁寧にゆっくりと、そのあとは素早く攻撃するのだ(そうすると、相手が油断するため攻めやすい)」という教えです。

由来からしても、脱兎に「逃げる」という意味は含まれておらず、前向きな使われ方をしていたことがわかりますね。その頃の中国では、野生のウサギは素早く捕まえにくい、生命力にあふれた存在と考えられていたのかもしれませんね。

現代でもこの慣用句を使う場合、兵法書の戦術で示されるような素早さとはどんなものか、考えてみるのも面白いでしょう。

\次のページで「「脱兎」の使い方・例文」を解説!/

「脱兎」の使い方・例文

「脱兎」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・人気イラストレーターがオリジナルキャラクターを作ってくれると発信したら、女性ファンたちが脱兎の如き勢いで押し寄せて管理が大変だったらしい。

・世界中で資源がなくなるという情報がSNSに投稿されて、限定販売の食料品に人々は脱兎の如き勢いで群がった。

・クリエイター同士で集まる会があったのだが、そのうち一人が無断転載をしていたことがわかって、そいつはバレた途端、脱兎の如く逃げ出した。

動作が迅速であること」のイメージが伝わりますでしょうか。文章によっては、ただ素早いだけではなく勢いもあることが感じられるでしょう。

語源の項で記載した通り、この言葉自体には「逃げる」という意味は含まれていません。「あのスポーツ選手は脱兎の如き勢いで他の選手を追い抜いた」のように、単純に速さを表すのに使うことができます。

一方で、例文を探してみるとそのイメージからか、やはり「逃げる」という言葉とセットで使われているものも多くありました。読解問題で出題された場合、慌てて解釈するのではなく、何がどのように「脱兎」の如く動いているのかしっかりと読み取るようにしましょう。

「脱兎」の類義語は?違いは?

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「脱兎」の類義語は「疾風迅雷(しっぷうじんらい)」や「電光石火(でんこうせっか)」などがいいでしょう。

「疾風迅雷」「電光石火」

「疾風迅雷」は「強い風と激しい雷のように、素早く激しいこと」。「電光石火」は「稲妻や火打石の火が閃くような瞬間、非常に素早い様子」を意味します。

これらは漢字が持つイメージからか、強くて勇ましい感じもありますね。「脱兎」と入れ替えて使うことも出来ますが、自分なりに適していると思う表現を選べるとなお良いでしょう。

\次のページで「「脱兎」の対義語は?」を解説!/

・生き方はみんな人それぞれだが、たくさんの失敗や失業を経て、僕は疾風迅雷の如く生きて行こうと決めた。

・地元の定食屋は、注文してから電光石火のスピードで料理が提供されるので、忙しいサラリーマンに大人気だ。

「脱兎」の対義語は?

「脱兎」の対義語は「牛歩(ぎゅうほ)」がいいでしょう。

「牛歩」

「牛歩」は「牛のように歩きが遅いこと」。転じて、「物事が遅々として進まない様子」を意味する表現です。「脱兎」と同様に動物がモチーフとなっていますが、こちらは牛のイメージで「遅い」というニュアンスになっていますね。

具体的なスピードと、状況などの抽象的な変化のどちらに対しても使えることを押さえておきましょう。例文で使い方を確認してみてください。

・個々人でコースを走るフリーマラソンを企画したのだが、人が分散しすぎてしまって、最後に牛歩状態でやって来る人たちを待つのにとても時間がかかった。

・豚肉の熟成料理が流行っているからと後追いでビジネスを始めたのだが、必要なものは既に多くの専門店に独占されていて、準備が牛歩の如く進まない。

「脱兎」の英訳は?

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「脱兎」の英語訳は「with lightning speed」や「run like a rabbit」がいいでしょう。

「with lightning speed」「run like a rabbit」

直訳すれば「with lightning speed」は「電光石火のスピードで」。「とにかく早く~する」と言うことができればいいため、「with high speed(高速で)」など、速度を強調する語句を入れ替えても構いません。

「run like a rabbit」は「兎のように逃げる」。「rabbit」が「臆病さ」を連想させる単語のためでしょうか、こちらは「逃げる」意味合いが強く、辞書にもそのまま掲載されています。より意味を限定したい場合は、こちらのフレーズを使ってみましょう。

\次のページで「「脱兎」を使いこなそう」を解説!/

・She overtook all other players with lightning speed.
彼女は他のすべての選手を、脱兎の如く追い抜いた。

・Suddenly he met his first love, and he ran like a rabbit.
急に初恋の相手に出会って、彼は脱兎の如く逃げ出した。

「脱兎」を使いこなそう

この記事では「脱兎」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「脱兎」や「牛歩」など、動物に関する慣用表現も多くあります。人々が身近なものから連想して言葉を作っていたことがわかり、面白いものです。興味があればぜひ調べてみましょう。思わず納得してしまうような表現がみつかるかもしれませんよ。

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国語言葉の意味

【慣用句】「脱兎」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「脱兎」について解説する。

端的に言えば「脱兎」意味は「動作が速いこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「脱兎」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「脱兎」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「脱兎(だっと)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「脱兎」の意味は?

「脱兎」には、次のような意味があります。

逃げていくウサギ。非常に速いことのたとえ。「脱兎の勢い」「脱兎の如く駆け出す」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「脱兎」

この言葉は主に、「動作がとても迅速なこと、そのたとえ」を意味する慣用表現です。漢字そのまま「逃げ出すうさぎ」を意味することもできますが、慣用表現としてはまず前者の使われ方をするでしょう。

「素早いこと」を意味する場合には必ずしも「逃げる」という意味を含まないこともポイントです。漢字から判断してしまいがちのため、気を付けましょう。

用法としては、「脱兎の如く(ごとく)」「脱兎のような」といった使われ方をすることがほとんどです。「脱兎の如く」で辞書に載っているものもありました。それくらい一般的に定着している慣用句は国語の問題でも頻出です。読み方も含めてしっかりと覚えるようにしてくださいね。

「脱兎」の語源は?

次に「脱兎」の語源を確認しておきましょう。この言葉は、中国春秋時代の兵法書『孫子』に見ることができます。「始めは処女の如く、後は脱兎の如し」という記述で、「最初は丁寧にゆっくりと、そのあとは素早く攻撃するのだ(そうすると、相手が油断するため攻めやすい)」という教えです。

由来からしても、脱兎に「逃げる」という意味は含まれておらず、前向きな使われ方をしていたことがわかりますね。その頃の中国では、野生のウサギは素早く捕まえにくい、生命力にあふれた存在と考えられていたのかもしれませんね。

現代でもこの慣用句を使う場合、兵法書の戦術で示されるような素早さとはどんなものか、考えてみるのも面白いでしょう。

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