今回は「アレニウスの式」について解説していきます。

アレニウスの式は、反応速度論という学問を勉強すると目にする公式の1つです。この式は、化学反応が進行する速度の大小を表す指標となる反応速度定数を、簡単な計算で求めることのできるものです。アレニウスの式は、工業製品の製造プロセスなどで利用される重要な式でもある。ぜひこの機会に、アレニウスの式についての理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。環境中における物質の流れや変化について学習する機会があったことから、反応速度論についても深く理解している。

アレニウスの式について学ぶ前に

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アレニウスの式は、物理化学の反応速度論という学問の中で登場する式です。反応速度論は、化学反応の速さについて数式などを用いて定量的に考察する学問ですよ。そして、アレニウスの式は、反応速度論の中でも発展的な内容となっています

それゆえ、アレニウスの式について学習する前に、反応速度論における基本的な用語の意味や概念を理解しておく必要がありますよ。以下では、なぜ反応速度論という学問が存在するのかということを説明します。そして、反応速度・活性化エネルギーという2つのおさえておくべき重要な概念を中心に解説をしていきますね、

なぜ反応速度を考えるのか?

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そもそも反応速度論という学問が存在し、発展してきたのはなぜでしょうか。それは、計算によって化学反応の速さを予測することができると非常に役立つという場面が多いからです。特に、製品製造や材料設計のプロセスで反応速度論は活躍しています。

例えば、プラスチック用の瞬間接着剤の固まる速度をコントロールするためには、反応速度論の知識が必要ですよ固まるのが遅すぎたり、極端に速くなったりということがないように、接着剤の成分を決定しているのです。また、接着後の劣化(強度が低下するなど)に至るまでの時間などを予測するという場合にも、反応速度論の考え方が役に立ちます

このように、接着剤の製造だけであっても、反応速度論という学問がいかに役に立っているかということを実感することができますよね。反応速度論は、以上のような分野だけでなく、環境学やプラント設計などでも利用されていますよ人間の体内で生じている化学反応にも、反応速度論は適応可能です

反応速度定数について

反応速度定数について

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ここでは、反応速度の大小を表す指標になる反応速度定数について解説していきます。例として、反応物AおよびBから、生成物CおよびDが生じるという化学反応(aA+bB→cC+dD)について考えてみましょう。また、a、b、c、dは係数です。

一般的に、この化学反応の反応速度vは、v=k[A]n[B]mと表すことができると知られています。[A]は物質Aの濃度、[B]は物質Bの濃度を表していますよ。この式の比例定数kの値のことを、反応速度定数といいます反応速度定数kが大きいほど、反応速度vは大きくなりますよ。反応速度定数kの単位は、反応速度vの式の形によって異なります。

反応速度定数kは、同一温度条件において各反応に固有な値をとりますよ。ただし、温度条件が変化すると、反応速度定数の値も変化します。この点は勘違いしやすい部分なので、注意が必要です。

\次のページで「活性化エネルギーについて」を解説!/

活性化エネルギーについて

化学反応が進行するとき、各物質がもつ化学エネルギー(ポテンシャルエネルギー)の収支だけでは説明がつかない余分なエネルギーが関与することが知られています。このエネルギーが活性化エネルギーです。原子や分子同士が衝突し、結合反応などを生じるとき、活性化エネルギーが必要になります

また、活性化エネルギーは、反応速度と密接な関係をもっていますよ。温度の上昇に伴い、原子や分子のもつ運動エネルギーが大きくなり、活性化エネルギー以上のエネルギーをもつ原子や分子が増えます。これに伴い、反応速度は大きくなるのです。

アレニウスの式について学ぼう

ここからは、本題であるアレニウスの式についての解説を進めていきますアレニウスの式は、反応速度定数を理論的に求めるための式です。この式によって、任意の温度条件における各反応の反応速度定数を計算によって求めることができます。

また、アレニウスの式は、先ほど説明した活性化エネルギーと反応速度の関係を法則化(定式化)したものとして捉えることもできますよ。それでは、アレニウスの式についての詳しい説明をはじめます。

アレニウスの式とは?

アレニウスの式とは?

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k=Aexp(-Ea/RT)という式が、アレニウスの式となります。ここで、kは反応速度定数Aは頻度因子Eaは活性化エネルギーRは気体定数Tは絶対温度を表していますよ。exp(x)という表記は見慣れない方もいるかもしれません。一般的に、exp(x)はexと同義です。また、eとは自然対数の底であり、近似値は2.72となります。

そして、頻度因子Aは、原子や分子の衝突回数に関連する値ですこの値は、各反応に対して固有であり、温度とは無関係な値ですよ。以上のことから、注目する化学反応の頻度因子Aと活性化エネルギーEa、反応が生じる絶対温度T、気体定数Rから、反応速度係数kが求められることがわかりました。

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アレニウスの式を直感的に理解しよう!

アレニウスの式を直感的に理解しよう!

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アレニウスの式がどのような形であるかは先ほど紹介しました。ですが、アレニウスの式が、なぜk=Aexp(-Ea/RT)となるのかということを理解できたという方は多くはないはずですそこで、アレニウスの式と化学反応のメカニズムを直感的に結びつけることのできる解釈の方法を説明しようと思います。これを理解することができれば、アレニウスの式を丸覚えする必要はなくなりますよ。

アレニウスの式は、原子や分子の衝突回数を表す部分(A)原子や分子が活性化エネルギー以上のエネルギーを獲得する確率を表す部分(exp(-Ea/RT))に分けて考えることができます。化学反応が生じる条件は、「原子や分子が衝突したときに活性化エネルギー以上のエネルギーを獲得していること」です。アレニウスの式は、衝突回数と活性化エネルギー以上のエネルギーを獲得する確率の積であり、これは化学反応が生じる確率に一致します

アレニウスの式について学ぶ意義

反応速度論という学問は、工業分野で非常に役に立っており、実用性が高いと言えます。それゆえ、反応速度論は、私たちの生活を支えてくれている学問だと考えることができますよね。アレニウスの式は、この反応速度論の理論を支える重要な式の1つです。

ですから、アレニウスの式についての雑学を持っていることで、決して損をすることはありません。ぜひ、この記事を読み、アレニウスの式についての理解を深めてみてください。

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化学化学平衡理科

3分で簡単アレニウスの式!反応速度論や活性化エネルギー・計算式も理系学生ライターがわかりやすく解説

今回は「アレニウスの式」について解説していきます。

アレニウスの式は、反応速度論という学問を勉強すると目にする公式の1つです。この式は、化学反応が進行する速度の大小を表す指標となる反応速度定数を、簡単な計算で求めることのできるものです。アレニウスの式は、工業製品の製造プロセスなどで利用される重要な式でもある。ぜひこの機会に、アレニウスの式についての理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。環境中における物質の流れや変化について学習する機会があったことから、反応速度論についても深く理解している。

アレニウスの式について学ぶ前に

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アレニウスの式は、物理化学の反応速度論という学問の中で登場する式です。反応速度論は、化学反応の速さについて数式などを用いて定量的に考察する学問ですよ。そして、アレニウスの式は、反応速度論の中でも発展的な内容となっています

それゆえ、アレニウスの式について学習する前に、反応速度論における基本的な用語の意味や概念を理解しておく必要がありますよ。以下では、なぜ反応速度論という学問が存在するのかということを説明します。そして、反応速度・活性化エネルギーという2つのおさえておくべき重要な概念を中心に解説をしていきますね、

なぜ反応速度を考えるのか?

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そもそも反応速度論という学問が存在し、発展してきたのはなぜでしょうか。それは、計算によって化学反応の速さを予測することができると非常に役立つという場面が多いからです。特に、製品製造や材料設計のプロセスで反応速度論は活躍しています。

例えば、プラスチック用の瞬間接着剤の固まる速度をコントロールするためには、反応速度論の知識が必要ですよ固まるのが遅すぎたり、極端に速くなったりということがないように、接着剤の成分を決定しているのです。また、接着後の劣化(強度が低下するなど)に至るまでの時間などを予測するという場合にも、反応速度論の考え方が役に立ちます

このように、接着剤の製造だけであっても、反応速度論という学問がいかに役に立っているかということを実感することができますよね。反応速度論は、以上のような分野だけでなく、環境学やプラント設計などでも利用されていますよ人間の体内で生じている化学反応にも、反応速度論は適応可能です

反応速度定数について

反応速度定数について

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ここでは、反応速度の大小を表す指標になる反応速度定数について解説していきます。例として、反応物AおよびBから、生成物CおよびDが生じるという化学反応(aA+bB→cC+dD)について考えてみましょう。また、a、b、c、dは係数です。

一般的に、この化学反応の反応速度vは、v=k[A]n[B]mと表すことができると知られています。[A]は物質Aの濃度、[B]は物質Bの濃度を表していますよ。この式の比例定数kの値のことを、反応速度定数といいます反応速度定数kが大きいほど、反応速度vは大きくなりますよ。反応速度定数kの単位は、反応速度vの式の形によって異なります。

反応速度定数kは、同一温度条件において各反応に固有な値をとりますよ。ただし、温度条件が変化すると、反応速度定数の値も変化します。この点は勘違いしやすい部分なので、注意が必要です。

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