今回は「電離度」について解説していきます。

電離度は、電解質が溶けた水溶液の状態を表す重要な数値です。電離度は物理化学の基本となる概念の1つで、ぜひ理解をしておきたい部分になる。多くの人がつまづく電離度ですが、この記事では具体例などを使って、わかりやすく説明することに努めた。ぜひ、この機会に電離度について理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

電離度について学ぼう!

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電離度は、水に物質を溶かした水溶液のある性質の度合を示す値です。この記事では、電離度の定義を学び、その後に電離度の大小を決定づける要因について説明していきますよ。また、電離度の説明の前に、電離についても簡単に復習しますね。

教科書や参考書では、電離度について説明がなされるときに、数式や図が多く使用されいます。そのため、一読しただけでは、電離度について完全に理解できないという場合が多いようです。そこで今回は、数式や図だけでなく、具体的な例も交えて説明することを心がけました。ぜひ、具体例についての説明も目を通してみてくださいね。

電離とは?

まず、電離について簡単に復習をしましょう水に物質を溶かしたときに、物質を構成する分子や結晶が、陽イオンと陰イオンに分離する現象のことを電離といいます。陽イオンは正の電気を帯びる粒子であり、陰イオンは負の電気を帯びる粒子です。そして、水に溶ける際に、電解するような物質のことを電解質といいます。

例えば、食塩の主成分である塩化ナトリウムは電解質です。塩化ナトリウムは、水に溶けるとナトリウムイオンと塩化物イオンに分離しますね。一方、水に溶ける際に電離しない物質もあり、そのような物質のことを非電解質といいます。砂糖の主成分であるスクロースは、非電解質です

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電離度とは?

それでは、電離度について学んでみましょう電離度とは、水に溶かした電解質の物質量に対する、実際に電離した電解質の物質量の割合を表しますよ

例えば、水に電解質Aを100粒子溶かしたとしますこのうち、20粒子の電解質Aが電離したとしましょう。このとき、電離度は20/100=0.2となります。水に電解質を溶かすと、すべての粒子が電離すると思ってしまいがちです。ですが、この例のように、一部の粒子のみが電離するということもありますよ

また、一般的に電離度は水溶液が平衡状態に至ったときの値を採用します平衡状態とは、見かけ上、電離の進行が止まって安定した状態のことをさしますよ。水に電解質を投入した瞬間は、多数の粒子が次々と電離します。しかしながら、投入から時間が経つと、見かけ上、粒子が新たに電離することはできなくなるのです。これが安定した状態ですね。

電離度の大小を決める要因

ここでは、電離度の大小がどのような要因によって決まるのかということを解説しますね電離度は、水溶液の置かれる環境や水溶液の状態によって、大きく変化します。つまり、電離度の値は一定ではないのです。この点を誤って覚えてしまうことがあるので、注意が必要ですよ。

それでは、電離度に影響を与える要素を、1つずつ紹介していきます。これらの事項は丸覚えするのではなく、必ずメカニズムについても理解しましょう

1.溶解した物質の種類

1.溶解した物質の種類

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1つ目に紹介する電離度に影響を与える要素は、溶解した物質の種類です。つまり、水に何を溶かすかによって、電離度は異なるということですね

例えば、強酸の塩酸や硫酸、強塩基(強アルカリ)の水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの電離度は1に近い数字になります。一方、弱酸の酢酸や硫化水素、弱塩基のアンモニアやアニリンの電離度は1よりも小さい値になりますよ

このように、酸や塩基の強弱によって、電離度の違いがあらわれます。このような例の他に、溶質となる原子や分子の結合力の大小によって、電離度が変化する場合もありますよ。このような理由から、各物質が固有の電離度もつことがわかります。

2.溶解した物質の濃度

2.溶解した物質の濃度

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溶解した物質の濃度も、電離度に影響を与えます。例えば、25℃の環境下において濃度が0.01[mol/L]である酢酸の電離度は0.051で、濃度が0.05[mol/L]である酢酸の電離度は0.023となりますよ。同じ物質を水に溶かした場合も、濃度が異なれば、電離度の大きさも変化するのですね。

一般的に、溶質の濃度が小さくなるほど、電離度は大きくなるとされています。溶質の濃度が小さいときには、溶質を構成する粒子1つあたりが占有できる水溶液の体積が大きくなりますよね。1つの粒子に空間的な余裕があると、その粒子は電離しやすくなるというイメージをすると理解しやすいかと思います。これが、溶質の濃度が小さいときに、電離度が大きくなる理由の説明の仕方の1つです。

このような理論を、数学的に定式化する学問分野があります。その分野では、同じ温度条件において、溶質の濃度によらず一定となる電離定数(解離定数)という値を用いることが主流です。電離定数からは、電離度が簡単に計算できますよ。

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3.水溶液の温度

3.水溶液の温度

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電離度に影響を与える要素の1つとして、水溶液の温度を挙げることができます。実際、25℃の環境下における酢酸の電離度よりも、70℃の環境下における酢酸の電離度のほうが大きな値をとるのです。ほとんどの物質では、水溶液の温度を高くするほど、電離度は大きくなりますよ

ただし、稀に水溶液の温度上昇にともない、電離度が小さくなる場合もあるので注意が必要ですよ。

一般的に、電解質が水に溶けて電離するという反応は、吸熱反応です。つまり、電離するためには、外部からエネルギーが供給される必要があります。また、温度が上昇すると物質がもつエネルギーは大きくなりますよね。このことによって、水溶液の温度が上昇すると、電離するためのエネルギーをより多く供給することができるようになるのです。以上が、水溶液の温度を高くするほど、電離度が大きくなる理由ですよ。

4.水溶液に含まれる不純物の量

4.水溶液に含まれる不純物の量

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最後に説明する電離度に影響を与える要素は、水溶液に含まれる不純物の量です。例えば、水素イオンを不純物として含む水に、酢酸を溶かした場合について考えてみましょう

酢酸は電離する際に、水素イオンを放出します。ですが、水はすでに水素イオンを含んでいる状態です。そのため、水に含まれている水素イオンに邪魔をされて、酢酸はほとんど電離することができなくなります。これが、水溶液に含まれる不純物が電離度に影響を与える理論です。

このような性質を利用した技術があります。それは、緩衝液です。緩衝液は、酸や塩基を少し加えてもpHがほとんど変動しない特殊な液体で、医療現場などで活躍しています。緩衝液は、弱酸や弱塩基にあえて不純物を入れて、電離度をコントロールすることで作られるのです。

電離度について学ぶ意義

電離度は、直感的に理解できない部分があり、学習中につまづきやすい部分でもあります。ですが、電離度について理解を深めると、水溶液についてより現実に近づいた数値的な考察および分析ができるようになりますよ。

この記事でも少し紹介しましたが、より発展的な内容として、電離平衡や緩衝液といった分野があります。このような物理化学の分野を勉強するためには、電離度の理解は必須となるのです。ぜひ、この機会に物理化学の基本である電離度について学んでみてください。

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3分で簡単にわかる!電離度とは?定義や具体例も理系学生ライターがわかりやすく解説

今回は「電離度」について解説していきます。

電離度は、電解質が溶けた水溶液の状態を表す重要な数値です。電離度は物理化学の基本となる概念の1つで、ぜひ理解をしておきたい部分になる。多くの人がつまづく電離度ですが、この記事では具体例などを使って、わかりやすく説明することに努めた。ぜひ、この機会に電離度について理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

電離度について学ぼう!

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電離度は、水に物質を溶かした水溶液のある性質の度合を示す値です。この記事では、電離度の定義を学び、その後に電離度の大小を決定づける要因について説明していきますよ。また、電離度の説明の前に、電離についても簡単に復習しますね。

教科書や参考書では、電離度について説明がなされるときに、数式や図が多く使用されいます。そのため、一読しただけでは、電離度について完全に理解できないという場合が多いようです。そこで今回は、数式や図だけでなく、具体的な例も交えて説明することを心がけました。ぜひ、具体例についての説明も目を通してみてくださいね。

電離とは?

まず、電離について簡単に復習をしましょう水に物質を溶かしたときに、物質を構成する分子や結晶が、陽イオンと陰イオンに分離する現象のことを電離といいます。陽イオンは正の電気を帯びる粒子であり、陰イオンは負の電気を帯びる粒子です。そして、水に溶ける際に、電解するような物質のことを電解質といいます。

例えば、食塩の主成分である塩化ナトリウムは電解質です。塩化ナトリウムは、水に溶けるとナトリウムイオンと塩化物イオンに分離しますね。一方、水に溶ける際に電離しない物質もあり、そのような物質のことを非電解質といいます。砂糖の主成分であるスクロースは、非電解質です

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