3分で簡単活性化エネルギー!具体例を交えて原理などを理系学生ライターがわかりやすく解説
活性化エネルギーについて詳しく学ぼう!
ここまで、原子や分子がもつエネルギーと化学反応の関係を説明してきました。これらの知見を用いると、化学反応とエネルギーについて完全に説明できそうに思われますが、実はそうではありません。
化学反応とエネルギーの関係性を完全に説明するためには、原子や分子ポテンシャルエネルギーに加えて、活性化エネルギーという概念を導入する必要があります。以下では、本題である活性化エネルギーについて詳しく説明していきますね。
活性化エネルギーとは?
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反応物の総ポテンシャルエネルギーよりも生成物の総ポテンシャルエネルギーのほうが小さいとき、発熱反応となり、ポテンシャルエネルギーの差分は反応熱として放出されます。この説明を聞く限り、反応はひとりでに進行するように思われますよね。物体が高い場所から低い場所に落下するという現象ように、化学物質もポテンシャルエネルギーが低い状態に遷移するように考えるのが自然です。
ですが、実際は発熱反応であっても一時的に外部からエネルギーを供給しなければ、反応は進みません。このエネルギーが、活性化エネルギーなのです。物質が反応するためには、原子および分子同士が衝突し、その上でさらにエネルギーを受け取る必要があります。原子および分子が衝突後に、高いエネルギーを有している状態のことを活性化状態といいますよ。
また、活性化エネルギーは吸熱反応の場合にも存在し、活性化エネルギーは反応熱の絶対値よりも大きくなることが多いです。活性化エネルギーは、各反応に対して固有の値として存在します。活性化エネルギーの単位にはkJ/molが頻繁に使用されますよ。
活性化エネルギーと反応速度の関係
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一般的に、化学反応の速度は高温条件において増大するという傾向があるとされています。この理由を考えてみましょう。原子や分子の熱運動は、温度の上昇に伴って、激しくなります。そして、熱運動が激しくなることは、原子や分子の運動エネルギーが上昇するということに相当するのです。
原子や分子のもつ運動エネルギーが大きくなるほど、衝突時に反応物が活性化エネルギー以上のエネルギーを獲得できる可能性は高まります。その結果、多くの原子や分子が立て続けに反応し、反応速度が大きくなるのです。
反応速度論という化学反応の速さを考察する学問を勉強する際に目にするアレニウスの式は、以上の内容を数式化しています。アレニウスの式は、反応速度の大小の指標となる反応速度定数を、活性化エネルギーの値を用いて求めるためのものです。
活性化エネルギーを下げる方法は?
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活性化エネルギーは、各反応に対して固有の値として存在するということを述べました。ですが、ある工夫をすることで活性化エネルギーを下げ、化学反応を促進させることができる方法が実際にあります。それは、触媒を用いるというものです。
触媒は、反応物と一時的に結合し、中間体というものをつくります。この中間体という形を経由することで、反応を生じやすくさせるのです。これによって、活性化エネルギーを下げることができます。触媒は、あくまでも反応物と一時的に結合するだけであり、反応に直接的な影響を与えません。
今日、化学工業分野において生産性を向上させるために、触媒は大きな役割を担っているといえますよ。その他にも、触媒が活躍している場面があります。人間の体内に存在する酵素は、タンパク質で構成される触媒です。ただし、酵素は一部の温度領域やpH領域でのみ、触媒としての効果を発揮します。それ以外の領域では、タンパク質の構造が変化し、触媒としての機能が失われるのです。
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