今回は「活性化エネルギー」について解説していきます。

活性化エネルギーは、化学反応をエネルギー収支の視点から考察するときに、重要になる概念です。今回は、活性化エネルギーについて理解するために必要不可欠な重要な関連用語の意味などにも言及し、丁寧な解説を心掛けた。ぜひ、この機会に活性化エネルギーについての理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学を専攻しており、このような学問への興味は人一倍強い。環境中における物質の流れなどを解析することができるようになるために、化学全般を勉強している。

化学反応とエネルギーの関係

image by iStockphoto

活性化エネルギーは、化学反応に関連する重要なパラメーターの一つとなっています。このようなことから、活性化エネルギーについて理解するためには、化学反応とエネルギーの関係性を知っておく必要があるのです

そこで、活性化エネルギーについての解説を始める前に、化学反応とエネルギーの関係性を簡潔にまとめることにしました。それでは早速、説明を始めていきますね。

原子や分子がもつエネルギー

原子は、陽子と中性子からなる原子核とその周りをまわっている電子で構成されています。また、分子は複数の原子が結合したものです。そして、原子核は正の電気を帯びており、電子は負の電気を帯びています。それゆえ、原子核と電子の間には、引き合う力が生じるのです

この引き合う力は、静電気力(クーロン力)に起因するもので、ポテンシャルエネルギーが生じることが知られています。ポテンシャルエネルギーは、正の電荷と負の電荷が完全にくっついているときに最小となり、正の電荷と負の電荷が離れるほど大きくなりますよ。

各原子および分子は、それぞれ異なる構造をもっています。ゆえに、それぞれが異なるポテンシャルエネルギーをもちますよ。これが、原子や分子がもつエネルギーなのですこのエネルギーの量は、量子力学の理論に基づき計算することができます。ちなみに、量子力学は、電子などの小さい粒子の挙動を考察するための学問ですよ。

化学反応によるエネルギーの放出と吸収

化学反応によるエネルギーの放出と吸収

image by Study-Z編集部

続いて、化学反応と先ほど解説した原子や分子がもつエネルギーの間にどのような関係があるのかを解説していきます。例として、プロパン(C3H8)の燃焼反応を考えてみましょう化学反応式で表現するとC3H8+5O2→3CO2+4H2Oとなりますね

この反応に関与する原子および分子のもつエネルギーを考えてみます。この反応では、反応物(1つのC3H8と5つのO2)の総ポテンシャルエネルギーが、生成物(3つのCO2と4つのH2O)の総ポテンシャルエネルギーよりも大きくなりますよ反応物と生成物のポテンシャルエネルギーの差分が、反応熱として放出されます

逆に、反応物のポテンシャルエネルギーが、生成物のポテンシャルエネルギーよりも小さい場合がありますよ。この場合は、反応物と生成物のポテンシャルエネルギーの差分が吸収されるのです。このような反応のことを吸熱反応と呼びます

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活性化エネルギーについて詳しく学ぼう!

ここまで、原子や分子がもつエネルギーと化学反応の関係を説明してきましたこれらの知見を用いると、化学反応とエネルギーについて完全に説明できそうに思われますが、実はそうではありません

化学反応とエネルギーの関係性を完全に説明するためには、原子や分子ポテンシャルエネルギーに加えて、活性化エネルギーという概念を導入する必要があります。以下では、本題である活性化エネルギーについて詳しく説明していきますね。

活性化エネルギーとは?

活性化エネルギーとは?

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反応物の総ポテンシャルエネルギーよりも生成物の総ポテンシャルエネルギーのほうが小さいとき、発熱反応となり、ポテンシャルエネルギーの差分は反応熱として放出されます。この説明を聞く限り、反応はひとりでに進行するように思われますよね物体が高い場所から低い場所に落下するという現象ように、化学物質もポテンシャルエネルギーが低い状態に遷移するように考えるのが自然です

ですが、実際は発熱反応であっても一時的に外部からエネルギーを供給しなければ、反応は進みません。このエネルギーが、活性化エネルギーなのです。物質が反応するためには、原子および分子同士が衝突し、その上でさらにエネルギーを受け取る必要があります原子および分子が衝突後に、高いエネルギーを有している状態のことを活性化状態といいますよ

また、活性化エネルギーは吸熱反応の場合にも存在し、活性化エネルギーは反応熱の絶対値よりも大きくなることが多いです。活性化エネルギーは、各反応に対して固有の値として存在します。活性化エネルギーの単位にはkJ/molが頻繁に使用されますよ。

活性化エネルギーと反応速度の関係

活性化エネルギーと反応速度の関係

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一般的に、化学反応の速度は高温条件において増大するという傾向があるとされています。この理由を考えてみましょう。原子や分子の熱運動は、温度の上昇に伴って、激しくなります。そして、熱運動が激しくなることは、原子や分子の運動エネルギーが上昇するということに相当するのです。

原子や分子のもつ運動エネルギーが大きくなるほど、衝突時に反応物が活性化エネルギー以上のエネルギーを獲得できる可能性は高まります。その結果、多くの原子や分子が立て続けに反応し、反応速度が大きくなるのです。

反応速度論という化学反応の速さを考察する学問を勉強する際に目にするアレニウスの式は、以上の内容を数式化しています。アレニウスの式は、反応速度の大小の指標となる反応速度定数を、活性化エネルギーの値を用いて求めるためのものです。

活性化エネルギーを下げる方法は?

活性化エネルギーを下げる方法は?

image by Study-Z編集部

活性化エネルギーは、各反応に対して固有の値として存在するということを述べました。ですが、ある工夫をすることで活性化エネルギーを下げ、化学反応を促進させることができる方法が実際にあります。それは、触媒を用いるというものです。

触媒は、反応物と一時的に結合し、中間体というものをつくりますこの中間体という形を経由することで、反応を生じやすくさせるのです。これによって、活性化エネルギーを下げることができます。触媒は、あくまでも反応物と一時的に結合するだけであり、反応に直接的な影響を与えません。

今日、化学工業分野において生産性を向上させるために、触媒は大きな役割を担っているといえますよ。その他にも、触媒が活躍している場面があります。人間の体内に存在する酵素は、タンパク質で構成される触媒です。ただし、酵素は一部の温度領域やpH領域でのみ、触媒としての効果を発揮します。それ以外の領域では、タンパク質の構造が変化し、触媒としての機能が失われるのです。

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活性化エネルギーについて理解を深めよう!

この記事では、活性化エネルギーとそれに関連する触媒についての解説をしました。これらは、エネルギー収支に着目して、化学反応について考察する際に重要な概念になってきます。また、これらは多くの教科書や参考書に掲載されている内容でもあり、試験などにも頻繁に出題されるテーマとなっていますよ。

ですから、活性化エネルギーについての知識を身に着けることは、決して損ではありません。ぜひ、この機会に、活性化エネルギーについて理解を深めてみてくださいね。

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化学物質の状態・構成・変化理科

3分で簡単活性化エネルギー!具体例を交えて原理などを理系学生ライターがわかりやすく解説

活性化エネルギーについて詳しく学ぼう!

ここまで、原子や分子がもつエネルギーと化学反応の関係を説明してきましたこれらの知見を用いると、化学反応とエネルギーについて完全に説明できそうに思われますが、実はそうではありません

化学反応とエネルギーの関係性を完全に説明するためには、原子や分子ポテンシャルエネルギーに加えて、活性化エネルギーという概念を導入する必要があります。以下では、本題である活性化エネルギーについて詳しく説明していきますね。

活性化エネルギーとは?

活性化エネルギーとは?

image by Study-Z編集部

反応物の総ポテンシャルエネルギーよりも生成物の総ポテンシャルエネルギーのほうが小さいとき、発熱反応となり、ポテンシャルエネルギーの差分は反応熱として放出されます。この説明を聞く限り、反応はひとりでに進行するように思われますよね物体が高い場所から低い場所に落下するという現象ように、化学物質もポテンシャルエネルギーが低い状態に遷移するように考えるのが自然です

ですが、実際は発熱反応であっても一時的に外部からエネルギーを供給しなければ、反応は進みません。このエネルギーが、活性化エネルギーなのです。物質が反応するためには、原子および分子同士が衝突し、その上でさらにエネルギーを受け取る必要があります原子および分子が衝突後に、高いエネルギーを有している状態のことを活性化状態といいますよ

また、活性化エネルギーは吸熱反応の場合にも存在し、活性化エネルギーは反応熱の絶対値よりも大きくなることが多いです。活性化エネルギーは、各反応に対して固有の値として存在します。活性化エネルギーの単位にはkJ/molが頻繁に使用されますよ。

活性化エネルギーと反応速度の関係

活性化エネルギーと反応速度の関係

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一般的に、化学反応の速度は高温条件において増大するという傾向があるとされています。この理由を考えてみましょう。原子や分子の熱運動は、温度の上昇に伴って、激しくなります。そして、熱運動が激しくなることは、原子や分子の運動エネルギーが上昇するということに相当するのです。

原子や分子のもつ運動エネルギーが大きくなるほど、衝突時に反応物が活性化エネルギー以上のエネルギーを獲得できる可能性は高まります。その結果、多くの原子や分子が立て続けに反応し、反応速度が大きくなるのです。

反応速度論という化学反応の速さを考察する学問を勉強する際に目にするアレニウスの式は、以上の内容を数式化しています。アレニウスの式は、反応速度の大小の指標となる反応速度定数を、活性化エネルギーの値を用いて求めるためのものです。

活性化エネルギーを下げる方法は?

活性化エネルギーを下げる方法は?

image by Study-Z編集部

活性化エネルギーは、各反応に対して固有の値として存在するということを述べました。ですが、ある工夫をすることで活性化エネルギーを下げ、化学反応を促進させることができる方法が実際にあります。それは、触媒を用いるというものです。

触媒は、反応物と一時的に結合し、中間体というものをつくりますこの中間体という形を経由することで、反応を生じやすくさせるのです。これによって、活性化エネルギーを下げることができます。触媒は、あくまでも反応物と一時的に結合するだけであり、反応に直接的な影響を与えません。

今日、化学工業分野において生産性を向上させるために、触媒は大きな役割を担っているといえますよ。その他にも、触媒が活躍している場面があります。人間の体内に存在する酵素は、タンパク質で構成される触媒です。ただし、酵素は一部の温度領域やpH領域でのみ、触媒としての効果を発揮します。それ以外の領域では、タンパク質の構造が変化し、触媒としての機能が失われるのです。

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