今回は「波の干渉」について解説していきます。高校物理の教科書で波の干渉というとヤングの干渉実験や光の干渉について学んだと思う。ただし高校の考えが基本となり、実際は光だけではなく、ポンプの脈動による波や音波など多くに応用できる。是非この機会に波の干渉を学んでみてくれ。大学では熱流体工学関係の研究し、プラント関係で設計を行っているアヤコと一緒に解説していきます。

ライター/アヤコ

現役のプラントエンジニア。大学では熱流体分野の研究を行い、就職後もプラントエンジニアとして流体に関係する仕事を行っている。流体力学は多くの人が難しいと思い毛嫌いする分野の半面、身の回りの現象は多い。楽しく理解できるよう解説していく。

波の干渉とは?

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波の干渉とは波同士が重なることで波を強めたり、弱めたりする現象のことを言います。上の画像は2つの波源があり、それぞれの波が干渉して波面を形成している様子が描かれています。それらは、「山と山」「谷と谷」など波の位相が同じ地点では波が強め合い、逆に「山と谷」など位相が逆転している部分では弱め合います。またヤングは19世紀に波の干渉原理を応用し、光は波であることを証明するために光の干渉実験を行いました。

波の干渉については、ヤングの実験以外にも、ポンプの圧力脈動や、音波による干渉など様々な技術に応用されています。以降にそれらの技術を紹介しましょう。

光による干渉(ヤングの実験)

Ebohr1 IP.svg
By Stannered - File:Ebohr1.svg, CC BY-SA 3.0, Link

ヤングの実験は光源から1枚目のスリット(S1)を通し、穴(b,c)の開いた2枚目のスリット(S2)に光を通すと投影された壁(F)には縞模様の干渉縞が現れるという実験です。光が波であれば、波が拡がって進む回折現象が起こります。また二つのスリットから出た波は、穴bから壁までの距離と片方の穴cから壁までの距離の差に波長が整数倍の個数であれば、「山と山」のように強め合い、逆に半波長の奇数倍の個数であれば、「山と谷」のようになり弱め合い黒くなる現象が発生しているのです。通常、光が波でなければ、回折と干渉が生じないためこのような縞模様はできない=光が波であることの証明がされました。

脈動の波による干渉

この章で紹介する内容を簡単に作成してください。

その1.遠心ポンプの構造

Centrifugal pump volute Richards 1894.png
By John Richards - Centrifugal pumps: an essay on their construction and operation, and some account of the origin and development in this and other countries, Public Domain, Link

遠心ポンプは、電動機などの駆動機を使い遠心力を使い、流体流れに圧力を発生させる機械です。その構造は主に、流体を加速させる羽根車、羽根車から出た流体を渦巻状のケーシングボーリュート)で受け取り、その受け取った流体は吐出口に流れます。

図は、ポンプとボリュートを記載したものです。図の奥行方向の手前側から羽根車に水が入り、時計回りに羽根車が回転し、ボーリュートに沿って矢印の向きに吐き出されるが書かれております。

\次のページで「その2.遠心ポンプの脈動対策」を解説!/

その2.遠心ポンプの脈動対策

その2.遠心ポンプの脈動対策

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遠心ポンプの脈動の対策にも波の干渉が応用されます。脈動とはポンプの圧力や流量が大小変動する現象です。イメージとしては水道の蛇口を開いた時に、水の出が良かったり、悪くなったりする現象になります。プラントではポンプの脈動により、騒音や振動問題が発生してしまうため解決すべき問題です。この脈動の対策として図に示したような方法があります。対策の1つは、通常1枚の羽根車なのですが、2つの羽根車を背中合わせにし、羽根車の位相半分ずらす方法です。

これにより片側の羽根車から発生する脈動ともう一方の羽根車からの脈動位相が半分ずれるため、干渉による脈動の減衰が発生します。このように羽根車を2つ組合わして、それぞれから水を吸うポンプを両吸込渦巻ポンプと呼び、多くの施設に送水するような大流量、高圧力のポンプとして使われるのです。

対策の2つ目は、通常が遠心ポンプの構造で示したようなボリュートは1つのものになるのですが、図のようにケーシング内のボリュート部に壁を作ることにより、2つの出口(AとB)からの脈動が半波長分ずれることにより脈動を低減する方法になります。これはダブルボリュートと呼ばれるのです。

音波による干渉

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道を歩いていると車の音や、人の話し声などたくさんの音が聞こえます。これらは物理でいう音源であり、音源からは音波が出ているのです。音波は空気中の空気が粗密に変化(または圧力が変化)し、音速で伝わる波になります。音波は波のため干渉が起こります。次に音波の干渉技術の応用例を上げます。

その1.消音スピーカー(アクティブ騒音制御)について

Active Noise Reduction.svg
By Marekich - Own work, CC BY-SA 3.0, Link

工事現場や工場からの騒音は近隣住民に影響を与えることがあります。騒音の低減方法には、遮音や吸音など対策装置からは音を出さないパッシブ制御と、対策装置から音を出すアクティブ騒音制御があるのです。

アクティブ騒音制御は、対象とする騒音の位相と逆位相の音消音スピーカーから発生し重ね合わせて消音する波の干渉技術になります。応用例として、車や旅客機に設置されたものがありますが、集音マイクで音を拾い、その音に対し消音スピーカーから逆位相の音を出し、車内や機内の騒音を軽減する技術です。

その2.音響衝撃波について

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津波は誰もが知るように驚異的な水のエネルギーによって建設物を飲み込んでしまいます。沿岸に防波堤などを建設し、津波を食い止めようとするがそれにも限界があるのです。津波に対して音響衝撃波を沿岸部から発射し、津波を減衰させる技術が研究されています。津波は重力による作用と、空気と水の摩擦などの影響受けて波が作られ、その波は周期をもつのです。特定の周期をもつ津波干渉する音響衝撃波を沿岸位置から放ち、津波が沿岸部に到達する前に津波の振幅を小さくする技術になります。

\次のページで「「波の干渉」について理解を深めよう」を解説!/

「波の干渉」について理解を深めよう

この記事では波の干渉について、波の干渉についての基本的な考えを説明し、その応用例として、光に関してヤングの干渉実験、ポンプ脈動に関しての干渉、音に関しての干渉の応用技術を紹介しました。基本原理は同位相であれば強め合い、逆位相であれば弱め合うということです。また応用されている技術はどれも干渉波を作り出す工夫をしておりましたが、その背景には「波の干渉」が基本になっています。高校の教科書に記載されている「波の干渉」はあくまで基本概念です。流体力学による圧力の計算方法などを学び、高校で学んだ「波の干渉」を応用していくことが必要になります。この記事を読み、波の干渉について興味が湧いて頂けたら幸いです。

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流体力学物理理科

3分で簡単「波の干渉」ポンプ脈動や音波も含め現役プラントエンジニアが分かりやすくわかりやすく解説

今回は「波の干渉」について解説していきます。高校物理の教科書で波の干渉というとヤングの干渉実験や光の干渉について学んだと思う。ただし高校の考えが基本となり、実際は光だけではなく、ポンプの脈動による波や音波など多くに応用できる。是非この機会に波の干渉を学んでみてくれ。大学では熱流体工学関係の研究し、プラント関係で設計を行っているアヤコと一緒に解説していきます。

ライター/アヤコ

現役のプラントエンジニア。大学では熱流体分野の研究を行い、就職後もプラントエンジニアとして流体に関係する仕事を行っている。流体力学は多くの人が難しいと思い毛嫌いする分野の半面、身の回りの現象は多い。楽しく理解できるよう解説していく。

波の干渉とは?

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波の干渉とは波同士が重なることで波を強めたり、弱めたりする現象のことを言います。上の画像は2つの波源があり、それぞれの波が干渉して波面を形成している様子が描かれています。それらは、「山と山」「谷と谷」など波の位相が同じ地点では波が強め合い、逆に「山と谷」など位相が逆転している部分では弱め合います。またヤングは19世紀に波の干渉原理を応用し、光は波であることを証明するために光の干渉実験を行いました。

波の干渉については、ヤングの実験以外にも、ポンプの圧力脈動や、音波による干渉など様々な技術に応用されています。以降にそれらの技術を紹介しましょう。

光による干渉(ヤングの実験)

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By Stannered – File:Ebohr1.svg, CC BY-SA 3.0, Link

ヤングの実験は光源から1枚目のスリット(S1)を通し、穴(b,c)の開いた2枚目のスリット(S2)に光を通すと投影された壁(F)には縞模様の干渉縞が現れるという実験です。光が波であれば、波が拡がって進む回折現象が起こります。また二つのスリットから出た波は、穴bから壁までの距離と片方の穴cから壁までの距離の差に波長が整数倍の個数であれば、「山と山」のように強め合い、逆に半波長の奇数倍の個数であれば、「山と谷」のようになり弱め合い黒くなる現象が発生しているのです。通常、光が波でなければ、回折と干渉が生じないためこのような縞模様はできない=光が波であることの証明がされました。

脈動の波による干渉

この章で紹介する内容を簡単に作成してください。

その1.遠心ポンプの構造

Centrifugal pump volute Richards 1894.png
By John Richards – Centrifugal pumps: an essay on their construction and operation, and some account of the origin and development in this and other countries, Public Domain, Link

遠心ポンプは、電動機などの駆動機を使い遠心力を使い、流体流れに圧力を発生させる機械です。その構造は主に、流体を加速させる羽根車、羽根車から出た流体を渦巻状のケーシングボーリュート)で受け取り、その受け取った流体は吐出口に流れます。

図は、ポンプとボリュートを記載したものです。図の奥行方向の手前側から羽根車に水が入り、時計回りに羽根車が回転し、ボーリュートに沿って矢印の向きに吐き出されるが書かれております。

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