
鉱物の多形
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鉱物の中には、化学組成が同じでも結晶構造が異なるものが少なくありません。この現象あるいはそれらの鉱物の関係を多形もしくは同質異像といいます。
鉱物の多形は、鉱物の結晶構造が化学組成だけでなく、鉱物の成長した環境の温度や圧力など物理条件にもよることを意味しているのです。上記の画像は、自然界に存在しないものも含んだ炭素の多形の結晶構造の模式図になります。
その1:多形関係にある代表的な鉱物
Anton – German Wikipedia, original upload 7. Feb 2004 by Anton, CC 表示-継承 3.0, リンクによる
多形関係にある代表的な鉱物には、炭素からなるダイヤモンドとグラファイト(石墨)、二酸化ケイ素からなる石英とその高圧相であるコーサイトやスティショバイト、ケイ酸アルミニウム鉱物である藍晶石・紅柱石・ケイ線石などがあります。
普通、ダイヤモンドはマントル内の150キロメートルより深部の高圧高温環境で生成し、地下浅部の環境ではグラファイトが安定です。しかし、マントル深部を起源とするアルカリ元素に富む超苦鉄質の噴出岩であるキンバーライト中のダイヤモンドは、爆発的なマグマの噴出にともない猛烈な勢いで地表に運ばれたため、グラファイトに転移する暇がなくダイヤモンドのまま地表に到達したと考えられています。上記の画像は、ダイヤモンドの結晶構造です。
その2:ステショバイト
Materialscientist (talk) – Materialscientist (talk) created this work, CC 表示-継承 3.0, リンクによる
また、スティショバイトのような下部マントルに存在するケイ酸塩鉱物は、石英のように四酸化ケイ素四面体ではなく、六酸化ケイ素八面体を結晶構造の基本単位としていると推定されているようです。ケイ酸アルミニウム鉱物は変成岩を産出する鉱物ですが、先ほど紹介した三つの多形の産状から変成作用の温度・圧力条件を推定することができます。上記の画像は、スティショバイトの結晶構造です。

化学組成、つまり構成している原子は同じでも、立体的配置がことなる物質を多形という。どの結晶構造をとっているかによって生成環境を推定できる場合があるぞ。
その1:固溶体とは
鉱物を構造だけでなく化学組成から調べることも重要です。ほとんどすべての鉱物は固溶体を形成しています。固溶体とは結晶構造を変えないまま、構成する原子の置換によってある範囲にわたって化学組成が連続的に変化する結晶相のことです。かつての鉱物の定義にあったある範囲で化学組成が一定というのは、この固溶による化学組成の幅を許容した範囲での均質を意味しています。上記の画像は、固溶体の模式図です。