端的に言えば「九十九髪」の意味は「女性の白髪のこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「九十九髪」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/やぎしち
雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。
「九十九髪」の意味は?
「九十九髪」には、次のような意味があります。
老女の白髪、また、その老女をいう。
「百年(ももとせ)に一年(ひととせ)たらぬ―我を恋ふらし面影に見ゆ」〈伊勢・六三〉
[補説]白髪が水草のツクモに似ているところからいう。また一説に、「百年に一年たらぬ」とあるところから、「つくも」を九十九の意とし、これを「百」の字に一画たりない「白」の字に代用し、白髪を「つくも(九十九)髪」といったとも。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「九十九髪」
この言葉は「年老いた女性の白髪」を意味する四字熟語です。「九十九」で「つくも」という読み方もしっかり押さえましょう。また、実際に九十九歳ではなくても構わないこともポイントです。
なぜこのような意味を持ったかの由来は語源の項でご紹介しますので、ここでは言葉のもとになっている「つくも」について。
これは植物の名前でもあり、現代では「フトイ」と呼ばれているもののことです。稲に似て背が高く群生し、枯れて白っぽくなる様子が白髪を連想させたのでは、と考えられています。興味のある方はぜひ画像検索もしてみてくださいね。
この植物「つくも」を漢字にして、「江浦草髪(つくも髪)」と書き表すことも可能です。この漢字はあて字に近いため、問題ではまず問われません。参考までにご紹介します。
「九十九髪」の語源は?
次に「九十九髪」の語源を確認しておきましょう。この言葉は平安時代の歌物語『伊勢物語』の中、在五中将という人物が詠んだ歌で、恋をする老女を指して使われています。
なぜそのように使われたのかというと、「つくも」は「つぐもも=次百」、つまり「百に一足りないが、それほど高齢である」という意図の表現なのです。
さらに「百」という漢字から、一番上の「一」を抜いてみると「白」という漢字になりますね。先に述べた植物の「つくも」のイメージもあって、「老齢」だけでなく「白髪」を意味するようになったのでしょう。
洒落のきいた表現ですが、女性の年齢に関することのため、「何歳」や「年老いている」など直接的な言い方ではなく、解釈が出来る人にはわかる知的な表現とも言えますね。
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