コンタミネーションとは、よく食品加工、石油燃料、バイオ実験で使われる言葉です。英語でcontaminationであり、日本語訳すると「汚染」でありますが、一般的な「汚染」とは意味が異なる。実験例を通してこのことについて、医学系研究所のアシスタントである、生物に詳しいライターmimosa(ミモザ)と一緒に解説していきます。

ライター/mimosa

もともと文系出身で、独学で生物学、生化学を勉強し、現在医学系研究所の研究アシスタントとして理系の世界へ飛び込んだ。理科が苦手な方へも興味を持ってもらうべくわかりやすい説明を心掛けている。

コンタミネーションとは?

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コンタミネーションとは、冒頭でも説明したように、「汚染」という意味で、よく略して「コンタミ」と言いますよ。「実験汚染」「実験室汚染」「試料汚染」の意味を持ちます。さらにコトバンクでの意味は、「化学物質などによる汚染科学実験における雑菌や異物の混入食品加工におけるアレルギー物質の混入などをいう。」とあります。単体では危害のないものでも、時として重篤な事故を引き起こすことがあるのですよ。具体的にどのようなコンタミすることによる危険性があるのか以下、説明していきますね。

食品製造過程でのコンタミ

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食物アレルギーがある方はいつも気にされているかと思いますが、食品や料理へのアレルゲン物質混入。工場などで食品を生産する際に、原材料としては使っていないが、アレルゲンとなりうる特定原材料などが意図せず混入することを指します。製造ラインを共有することや調理段階でコンタミが発生するかもしれません。

また、飲食店でのコンタミネーションに関しては、加工食品よりも危険性が高く、実際に事故の報告もあげられていますので、また別の問題ととらえて頂いた方がいいでしょう。調理に使用する調味料の原料、成分にも十分に注意を払う必要があります。

石油系燃料でのコンタミ

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私たちが身近に使用する灯油、ガソリンなどの石油系燃料はガソリンスタンドで購入することが出来ます。ガソリンスタンドで扱っているのは、ガソリン、軽油、灯油です。これらはもともとは石油で、石油の原油を蒸留してつくられています。蒸留によって沸点温度が違う成分ごとに分離されますよ。気化しやすい順番に、LPガスガソリン灯油軽油重油に分けられますよ。

それぞれ成分が違いますので、指定された燃料を入れないと機械や車の故障の原因になりますよ。セルフスタンドの事故でよく聞かれるのが、間違って軽自動車に軽油を入れてしまったというものです。軽油は別名ディーゼル燃料とも呼ばれ、ディーゼルエンジンの燃料として使用されます。決して軽油は軽自動車に使用するための燃料という意味ではありません。

バイオ実験においてのコンタミ

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バイオサイエンスの進歩は、医療の発展や環境問題の解決などに役立ちます。これらに貢献するために新しい技術開発は、研究データの蓄積が要になりますよ。そのデータが誤った結果のデータだとしたら大変なことになりますね。バイオ実験でのコンタミは、容器や飼料の中に誤って本来存在していないはずの物質(菌、細胞、核酸、酵素など)が混入することを指しますよ。

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クロスコンタミネーション

クロスコンタミネーション

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クロスコンタミネーションとは、日本語に訳すると交差汚染、二次汚染とも言います。食品関係では、調理済みの食品が原材料と交わって、微生物や病原体によって汚染されることを指しますよ。例えば、まな板や包丁などの調理器具を使いまわしたり、人間の手を介して(人間の手にはただでさえ黄色ブドウ球菌などの細菌がいますよ)ある食品(生肉から野菜など)から微生物が移行する場合を指しますよ。また、食品・飼料製造の際に他の食品・飼料向けの原材料や汚染物質などが混入した場合にも用います。

バイオ実験でのクロスコンタミネーション

バイオサイエンスの分野では、細胞培養や細菌を培養するときに、代々株を継代培養していき、データをとったりしますよ。その時に、例えば、A菌を思ってずっと培養してデータを取っていたのに、実はB菌というちがうものだったという事例です。また臨床サンプルを使用するときに、ある患者から採取した遺伝子サンプルに別の患者の遺伝子サンプルがごく微量でも混入してしまえばクロスコンタミネーションが起こります。誤った臨床データになってしまいますよ。実際に論文投稿後に発覚することも起きているようですね。 これでは、長年の研究が水の泡になってしまうどころか、もっと恐ろしいことが起こりますよね。感度が高いものを扱うときは、ディスポーザブルタイプのもの、さらにエアロゾルが発生しないようにフィルター付きを使用するとクロスコンタミネーションのリスクは下がると思いますよ。

どのようにしてコンタミ事故を防ぐのか

よくコンタミ事故の原因として挙がるのが、確認ミス、伝達ミスなどのヒューマンエラーによるものです。そして、コンタミは、目には見えない微量、微細なものでも混入してしまえば大災難になってしまいます。食品関係のコンタミ事故防止策としては、まな板や包丁などの調理器具を使いまわさないことですよ。ただ普通に洗浄するだけでは汚染物質が完全に排除されないこともあるので注意が必要です。また容器を物質ごとに別に分けて互いに混入しないようにするのは言うまでもありません。

ガソリンスタンドでの給油の事故防止策としては、ガソリンスタンドでは、必ず油種ごとに名前が書かれていたりノズルが色分けされていたりします。ディーゼル車には軽油を、軽自動車や普通自動車などにはガソリンというように、車の種類と専用の油種の確認を事前にきちんとしておきましょう。正しい知識が油種間違いの事故を防ぎます。

バイオ実験でのコンタミ防止策で、無菌操作は必要不可欠です。クリーンベンチや安全キャビネット内での作業、さらに使用するピペットや培地の瓶などの器具の滅菌作業(その都度バーナーで軽くあぶる)を行うことが大切ですよ。目には見えないエアロゾルという微細な物質を介してもコンタミは発生するので、知らないうちに白衣や手袋についたまま部屋を移動して、きれいな実験室が汚染われることもあるのですよ。

コンタミの危険性についてただしく理解を

これまで食品関係、燃料関係、バイオ実験でのコンタミについてみてきました。たとえごく微量の異物混入でも大きな損害を受けてしまいますね。どの分野にしても、ヒューマンエラーによるコンタミ事故が多いと思うので、ヒューマンエラーを減らし、コンタミに対する正しい知識を持つことで予防できると思いますよ。ヒューマンエラーを減らすためには、異物混入しないために情報伝達をしっかり行うこと、ダブルチェックの徹底などを行うと良いと思いますよ。

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理科環境と生物の反応生物

3分で簡単「コンタミネーション」コンタミネーションとは?医学系研究アシスタントがわかりやすく解説

コンタミネーションとは、よく食品加工、石油燃料、バイオ実験で使われる言葉です。英語でcontaminationであり、日本語訳すると「汚染」でありますが、一般的な「汚染」とは意味が異なる。実験例を通してこのことについて、医学系研究所のアシスタントである、生物に詳しいライターmimosa(ミモザ)と一緒に解説していきます。

ライター/mimosa

もともと文系出身で、独学で生物学、生化学を勉強し、現在医学系研究所の研究アシスタントとして理系の世界へ飛び込んだ。理科が苦手な方へも興味を持ってもらうべくわかりやすい説明を心掛けている。

コンタミネーションとは?

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コンタミネーションとは、冒頭でも説明したように、「汚染」という意味で、よく略して「コンタミ」と言いますよ。「実験汚染」「実験室汚染」「試料汚染」の意味を持ちます。さらにコトバンクでの意味は、「化学物質などによる汚染科学実験における雑菌や異物の混入食品加工におけるアレルギー物質の混入などをいう。」とあります。単体では危害のないものでも、時として重篤な事故を引き起こすことがあるのですよ。具体的にどのようなコンタミすることによる危険性があるのか以下、説明していきますね。

食品製造過程でのコンタミ

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食物アレルギーがある方はいつも気にされているかと思いますが、食品や料理へのアレルゲン物質混入。工場などで食品を生産する際に、原材料としては使っていないが、アレルゲンとなりうる特定原材料などが意図せず混入することを指します。製造ラインを共有することや調理段階でコンタミが発生するかもしれません。

また、飲食店でのコンタミネーションに関しては、加工食品よりも危険性が高く、実際に事故の報告もあげられていますので、また別の問題ととらえて頂いた方がいいでしょう。調理に使用する調味料の原料、成分にも十分に注意を払う必要があります。

石油系燃料でのコンタミ

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私たちが身近に使用する灯油、ガソリンなどの石油系燃料はガソリンスタンドで購入することが出来ます。ガソリンスタンドで扱っているのは、ガソリン、軽油、灯油です。これらはもともとは石油で、石油の原油を蒸留してつくられています。蒸留によって沸点温度が違う成分ごとに分離されますよ。気化しやすい順番に、LPガスガソリン灯油軽油重油に分けられますよ。

それぞれ成分が違いますので、指定された燃料を入れないと機械や車の故障の原因になりますよ。セルフスタンドの事故でよく聞かれるのが、間違って軽自動車に軽油を入れてしまったというものです。軽油は別名ディーゼル燃料とも呼ばれ、ディーゼルエンジンの燃料として使用されます。決して軽油は軽自動車に使用するための燃料という意味ではありません。

バイオ実験においてのコンタミ

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バイオサイエンスの進歩は、医療の発展や環境問題の解決などに役立ちます。これらに貢献するために新しい技術開発は、研究データの蓄積が要になりますよ。そのデータが誤った結果のデータだとしたら大変なことになりますね。バイオ実験でのコンタミは、容器や飼料の中に誤って本来存在していないはずの物質(菌、細胞、核酸、酵素など)が混入することを指しますよ。

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