温度計について
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温度計の性能の一つに熱平衡のなりやすさがあります。熱平衡になりにくいと、計測体の温度になるまでに時間がかかり、使い難いからです。熱平衡になりやすくするには、熱伝導がよく、熱容量が小さいもの(計測体より熱容量が小さいと計測体の温度が平衡時の温度になりやすい)で接触させるとよいとされます。それではなぜ水銀式の体温計が主に使われていたのでしょうか。
水銀は主に金やアルミニウムと比べて熱容量が小さいことが分かります。一方で金やアルミニウムよりは熱伝導率が劣りますが、ガラスや水、空気よりは熱伝導率は大きいです。つまり水銀は熱伝導が小さくなく、熱容量が小さいために計測体の温度と近い温度になりやすい、言い換えると平衡になりやすいため体温計で使われていたと言えます。
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過熱と過冷却
Georg Wiora (Dr. Schorsch) – self made drawing, CC 表示-継承 3.0, リンクによる
熱の交換が可能な物体間に、熱の移動がなく、相の変化がないときに熱平衡と言い、熱平衡の状態を安定な状態ともいいます。またゆっくりと平衡状態で温度を上げた場合に沸点よりも高い温度になり気体にならずに液体の状態となり、これを過熱と言うのです。熱を加えておりますが、この状態は加熱ではなく、過熱と言い、この状態を準安定状態といいます。その理由は、安定しているのですが、衝撃などが起こった場合にすぐに沸騰が発生してしまうからです。上図は、1が過熱の状態であり、衝撃を加えられ、2のエネルギーを超えてしまうと、そのまま3の沸騰の状態が発生するイメージなります。
また冷却も同様に、液体が凝固点よりも温度が下がっても固体にならずに液体を維持する状態を過冷却と言うのです。この場合も衝撃を加えると固体になりはじめます。
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突沸(とっぷつ)について
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電子レンジなどでお味噌汁を温め、かき混ぜようとしたときに泡がでてきたことはありませんか。これは突沸という現象です。これは味噌汁が過熱状態にあり、かき混ぜるという振動を加えたために過熱状態から突沸が発生した例になります。カレーなどの粘性が高い食品を加熱する場合は、特にカレー内の対流が起こりにくいため、よく混ぜなければ局所的に高温部となり、低温部により沸騰が起こりにくくなることから過熱現象が発生することがあるのです。つまり、カレーの中でも過熱現象が発生する過程で熱平衡になります。
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過冷却のできる冷蔵庫について
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皆さんも飲んだことがあるかもしれませんが、過冷却されたビールや炭酸飲料があります。これは、過冷却のできる冷蔵庫によって冷やされたものです。およそ0から-7℃の温度で時間をかけ、均一的に冷却することにより、凍結するときに発生する氷の種(氷核)を生成しないため、液体の状態を維持したまま冷却できるようです。つまり飲み物をゆっくりと冷却し過冷却にする過程でも、熱平衡が取り入れられているということです。
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