今回は「煙突効果」について解説していきます。
誰しも経験したことがあると思うが、小学生時代、低学年の教室よりも高学年の教室のほうが冬は温かったことを覚えているか。高学年になると教室の階は上がっていたと思う。これは煙突効果によるものです。今回は煙突効果の原理とその応用について解説します。
大学では熱流体工学関係の研究し、プラント関係で設計を行っているアヤコと一緒に解説していきます。

ライター/アヤコ

現役のプラントエンジニア。大学では熱流体分野の研究を行い、就職後もプラントエンジニアとして流体に関係する仕事を行っている。流体力学は多くの人が難しいと思い毛嫌いする分野の半面、身の回りの現象は多い。楽しく理解できるよう解説していく。

煙突効果について

image by iStockphoto

煙突からはモクモクと白い煙が出ています。この煙はどうして下から上に上がるのでしょうか。答えは浮力が生じるからです。煙突効果はこの浮力の作用により冷たい空気を下から取り入れ温かい空気を上から排出する現象になります。この現象は浮力の理解が必要です。

浮力の起源

Principio di Archimede galleggiamento.png
Public Domain, Link

浮力の起源はギリシャ時代のアルキメデスによって発見されます。彼は王冠が金属から作られているかを調べるために、冠を水に沈めて浮力を使い質量を調べました。この時、水中に入れた物体が水を排除した水の重量と同じ大きさで浮力が作用することが容易に分かったのです。これをアルキメデスの原理と言います。
上図のFAが浮力です。浮力FAは物体の水に沈んでいる部分の体積水の密度重力加速度を掛けたものになります。

浮力の利用例①温度による浮力効果-ガリレオ温度計

Galileo-thermometer-fig4-celsius.svg
Bub's - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

ガリレオ温度計は、浮力の原理を使った温度計です。ガラス管内に液体(エタノールなどの有機化合物)と小さなガラス(上記の絵では四角のもの)が入っており、小さなガラスの中には着色された液体が入っています。その小さなガラスはそれぞれ異なる重さであり、ある温度になると温度に対応した小さなガラスが浮くか沈むのです。
例えば図では、24度と21度ですが、24度の時のように対応した小さなガラスがあると
上下にスペースができるので、24度と分かるのですが、21度のように上下で分かれてしまう場合は、その平均をとります。
ガリレオ温度計の原理ですが、温度が上がると液体の密度は下がるため、小さなガラスの浮力は減るのです。そのため、小さなガラスの重量の方が浮力よりも上回ると小さなガラスは降下します。ここで覚えておいてほしいことは、液体は温度変化により密度が変わりそれにより浮力が生じるということです。

浮力の利用例②気体における浮力- 熱気球

Infarot 9.jpg
By Luftfahrer, CC BY-SA 3.0, Link

熱気球はなぜ空を飛べるのでしょうか。熱気球は球皮と呼ばれる袋の中のエアをガスバーナで着火することにより、高温にし外気よりも密度を軽くすることで、浮力により飛行するのです。先ほどのガリレオ温度計では、小さなガラスの外の液体が温度により密度が変わりましたが、熱気球は外ではなく気球内の空気の温度を変えることにより、密度が変わり上下運動をします。およそ空気の密度は、1.2kg/m3 (20℃)、0.95kg/m3(99度)、0.90kg/m3(120度)で、空気も温度を上げるほど密度は下がるのです。
ここで覚えていてほしいことは、気体は温度変化によって密度が変わり浮力が発生し、浮力による流れができ、この流れを自然対流と言います。上図のように気球内の温度変化は下部が温度は低く上部のほうが温度は高くなっており、外部と内部の境界は黄色である内外部の中間温度くらいになっているのです。つまり気球内部でも温度変化量が場所によって異なり浮力の量も変わっていきます。温度変化量がある頂点付近が浮力が大きく下部のほうが浮力が弱いと考えられるため、下部から上部への加速するような対流が発生するのです。

煙突効果の原理

Chimney effect.svg
By No machine-readable author provided. Kimbar assumed (based on copyright claims). - No machine-readable source provided. Own work assumed (based on copyright claims)., CC BY-SA 3.0, Link

熱気球の例は煙突効果の原理に関連しています。気球は袋で空気が閉じ込められていましたが、煙突効果の場合は袋の頂点に穴を開けた時を想像してください。
上図は色の変化温度に、メーターは圧力計灰色の矢印速度を表しているのです。まず煙突には煙突下部頂点部の屋外の気温温度差が付きますので、気球で説明したような下部から上部への対流が発生します。頂点部は高さがあるので圧力が低く上昇する流れになるので下部の圧力は頂点部より高くなるのです。次に上昇気流により煙突下部の空気がなくなってしまいますので、下部側面、または建物入口などから空気が供給されるので、下部外部の圧力は煙突下部の圧力よりも高くなります。
まとめると、煙突内部の浮力に誘発され、外部から空気が供給されるのです。煙突の内部と外部の温度差があるほど、また高さがあるほど浮力により対流加速され、外部からの空気の供給も大きくなります。

煙突効果の応用例

Stripped-computer-case.JPG
パブリック・ドメイン, リンク

煙突効果の原理が理解できた後は、応用例を紹介します。誰もが見たことがある、マザーボード、CPU、ドライブを収納するPCケース。PCケースが主に求められる性能は、コンパクト性、頑丈性、そして冷却性です。複数のPCパーツからの発熱をファンだけはでは冷却は不十分の場合があります。そのため煙突効果による浮力により排気し、外気を取り入れる方法を利用したPCケースがあるのです。

\次のページで「PCケースによる煙突効果」を解説!/

PCケースによる煙突効果

PCケースによる煙突効果

image by Study-Z編集部

上図のように、PCケースの構造下部にファンが設置されており、上部はメッシュにし煙突効果を利用することで、ケース内の熱を上部から排気し、下部から吸気することにより冷却性能を高める対策がとられています。PCケースは高さ約600mm程度ですが、通常PCケースの表面温度は約40度、内部の最適温度は50度以下になるのです。外気温が20℃の時、理論上の計算では吸気の流速約1m/sにもなりますが、ファンがついているため、より速い速度になると思います。PCの高さを加味すると適切な速度であり、煙突効果は充分発揮されているでしょう。

「煙突効果」について理解を深めよう

この記事では、「煙突効果」の原理を説明し、その応用例としてPCケースを上げました。煙突効果は浮力を使った現象であり、内部と外気の温度差とその高さにより、効果が強く発揮されます。またPCケースのように、煙突と比べて小さい物でも充分な温度差を確保した状態であれば発生する現象です。煙突効果および浮力の現象は、世の中に多くありますので、今回この記事を読み興味が湧いた方は、是非応用例を調べてみてください。

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流体力学物理理科

5分で分かる「煙突効果」どんな効果のこと?何に利用されてる?現役プラントエンジニアがわかりやすく解説

今回は「煙突効果」について解説していきます。
誰しも経験したことがあると思うが、小学生時代、低学年の教室よりも高学年の教室のほうが冬は温かったことを覚えているか。高学年になると教室の階は上がっていたと思う。これは煙突効果によるものです。今回は煙突効果の原理とその応用について解説します。
大学では熱流体工学関係の研究し、プラント関係で設計を行っているアヤコと一緒に解説していきます。

ライター/アヤコ

現役のプラントエンジニア。大学では熱流体分野の研究を行い、就職後もプラントエンジニアとして流体に関係する仕事を行っている。流体力学は多くの人が難しいと思い毛嫌いする分野の半面、身の回りの現象は多い。楽しく理解できるよう解説していく。

煙突効果について

image by iStockphoto

煙突からはモクモクと白い煙が出ています。この煙はどうして下から上に上がるのでしょうか。答えは浮力が生じるからです。煙突効果はこの浮力の作用により冷たい空気を下から取り入れ温かい空気を上から排出する現象になります。この現象は浮力の理解が必要です。

浮力の起源

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浮力の起源はギリシャ時代のアルキメデスによって発見されます。彼は王冠が金属から作られているかを調べるために、冠を水に沈めて浮力を使い質量を調べました。この時、水中に入れた物体が水を排除した水の重量と同じ大きさで浮力が作用することが容易に分かったのです。これをアルキメデスの原理と言います。
上図のFAが浮力です。浮力FAは物体の水に沈んでいる部分の体積水の密度重力加速度を掛けたものになります。

浮力の利用例①温度による浮力効果-ガリレオ温度計

Galileo-thermometer-fig4-celsius.svg
Bub’s投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

ガリレオ温度計は、浮力の原理を使った温度計です。ガラス管内に液体(エタノールなどの有機化合物)と小さなガラス(上記の絵では四角のもの)が入っており、小さなガラスの中には着色された液体が入っています。その小さなガラスはそれぞれ異なる重さであり、ある温度になると温度に対応した小さなガラスが浮くか沈むのです。
例えば図では、24度と21度ですが、24度の時のように対応した小さなガラスがあると
上下にスペースができるので、24度と分かるのですが、21度のように上下で分かれてしまう場合は、その平均をとります。
ガリレオ温度計の原理ですが、温度が上がると液体の密度は下がるため、小さなガラスの浮力は減るのです。そのため、小さなガラスの重量の方が浮力よりも上回ると小さなガラスは降下します。ここで覚えておいてほしいことは、液体は温度変化により密度が変わりそれにより浮力が生じるということです。

浮力の利用例②気体における浮力- 熱気球

熱気球はなぜ空を飛べるのでしょうか。熱気球は球皮と呼ばれる袋の中のエアをガスバーナで着火することにより、高温にし外気よりも密度を軽くすることで、浮力により飛行するのです。先ほどのガリレオ温度計では、小さなガラスの外の液体が温度により密度が変わりましたが、熱気球は外ではなく気球内の空気の温度を変えることにより、密度が変わり上下運動をします。およそ空気の密度は、1.2kg/m3 (20℃)、0.95kg/m3(99度)、0.90kg/m3(120度)で、空気も温度を上げるほど密度は下がるのです。
ここで覚えていてほしいことは、気体は温度変化によって密度が変わり浮力が発生し、浮力による流れができ、この流れを自然対流と言います。上図のように気球内の温度変化は下部が温度は低く上部のほうが温度は高くなっており、外部と内部の境界は黄色である内外部の中間温度くらいになっているのです。つまり気球内部でも温度変化量が場所によって異なり浮力の量も変わっていきます。温度変化量がある頂点付近が浮力が大きく下部のほうが浮力が弱いと考えられるため、下部から上部への加速するような対流が発生するのです。

煙突効果の原理

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By No machine-readable author provided. Kimbar assumed (based on copyright claims). – No machine-readable source provided. Own work assumed (based on copyright claims)., CC BY-SA 3.0, Link

熱気球の例は煙突効果の原理に関連しています。気球は袋で空気が閉じ込められていましたが、煙突効果の場合は袋の頂点に穴を開けた時を想像してください。
上図は色の変化温度に、メーターは圧力計灰色の矢印速度を表しているのです。まず煙突には煙突下部頂点部の屋外の気温温度差が付きますので、気球で説明したような下部から上部への対流が発生します。頂点部は高さがあるので圧力が低く上昇する流れになるので下部の圧力は頂点部より高くなるのです。次に上昇気流により煙突下部の空気がなくなってしまいますので、下部側面、または建物入口などから空気が供給されるので、下部外部の圧力は煙突下部の圧力よりも高くなります。
まとめると、煙突内部の浮力に誘発され、外部から空気が供給されるのです。煙突の内部と外部の温度差があるほど、また高さがあるほど浮力により対流加速され、外部からの空気の供給も大きくなります。

煙突効果の応用例

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煙突効果の原理が理解できた後は、応用例を紹介します。誰もが見たことがある、マザーボード、CPU、ドライブを収納するPCケース。PCケースが主に求められる性能は、コンパクト性、頑丈性、そして冷却性です。複数のPCパーツからの発熱をファンだけはでは冷却は不十分の場合があります。そのため煙突効果による浮力により排気し、外気を取り入れる方法を利用したPCケースがあるのです。

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