今回は「電気伝導度」について勉強していこう。電気は固体や、液体を流れるぞ。それらの中をどのように電気が流れるのか。また流れやすさの違いはなにであるのか。この観点を踏まえながら
今回は、電気伝導度の原理から実用例まで理系大学院卒ライターこーじと一緒に解説していきます。

ライター/こーじ

元理系大学院卒。小さい頃から機械いじりが好きで、機械系を仕事にしたいと大学で工学部を専攻した。卒業後はメーカーで研究開発職に従事。物理が苦手な人に、答案の答えではわからないおもしろさを伝える。

電気伝導率とは

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電気伝導度は、物質中の電気伝導のしやすさを表す指標です。

導電率や電気伝導度とも呼ばれます。電気伝導度は、電気抵抗率の逆数です。電気の流れにくさの反対つまり電気の流れやすさを示しています。電気抵抗率の単位は、S(ジーメンス)です。こちらも電気抵抗Ω(オーム)の逆数になります。電気伝導度は物質ごとに値が異なる物性値です。そのため、金属では値が大きいが、絶縁体では非常に値が小さくなります。

金属は、自由電子が多く電流が流れやすく絶縁体は電子を流さない性質のためです。また、電気伝導度は固体物質のみではありません。液体のpH測定の際に使用されたり、農学の分野では土壌溶液などのイオンの総量を示す指標としても利用されます。

液体と固体の電気伝導率の違い

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電気が固体と液体を流れる場合は流れるものが違います。固体では自由電子が流れることにより、電流が流れ、液体では、陽イオンや陰イオンなどのイオンによるものです。液体が電気を流せる特徴を有している場合、その液体は電解質水溶液といい、溶けている物質は電解質になります。

導電度は、物質の中の電気の流れやすさです。そのため、固体では電子、液体ではイオンと電気のもととなるものが大きく違います。

固体の電気伝導率

固体の電気導電度は、主に電気抵抗を用いたオームの法則が使用されます。
オームの法則は、電圧Vは抵抗Rと電流Iの積である式です。オームの法則の抵抗Rを逆数にしたものが導電度になります。またJは電流密度、Eは電場、比例定数σが導電度です。

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電気伝導度は物質固有の値です。電子密度n、電荷e、緩和時間をτ、電子の質量をm、比抵抗をρとすると次の式になります。つまり、電気伝導度は、電子密度や緩和時間といった物質に特有の値です。そのため、電気伝導度は形状に依存しない物性になります。

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\次のページで「液体の電気伝導率」を解説!/

液体の電気伝導率

液体の電気伝導度もオームの法則と基本概念は同じです。オームの法則は、液体でも成立します。液体の場合は、電流を与える電極部のみ固体です。その間を液体が満たしてると考えます。

液体に電流が流れる時、液体は電解質です。電解質の水溶液はイオンが生じ電気を生み出します。このイオンは固体の電気の流れでいう電子の役割です。

例えば、NaCl(塩化ナトリウム)水溶液を考えてみましょう。塩化ナトリウムは水溶液では電離し、NaプラスイオンとClマイナスイオンになります。このイオンが動き電流が流れるのです。電解質中では、イオンの数が大きくなるほど電流を運ぶキャリアの数は多くなります。つまり、イオンの数が増えるほど電流は流れやすく電気伝導度は上がるのです。

液体の電気伝導度の測定方法の代表的な測定方法は交流二電極法です。交流二電極法は液体中に対向する電極の間に流れる電流を測定する方法になります。ここで、電極の面積A、電極間の距離L、伝導度Kとすると、伝導度は以下の式です。また、Jはセル定数と呼び検出器の形状で決まる固有の値になります。

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電気伝導度の温度依存性

電気伝導度は、温度によって値が変化します。その理由を固体、液体ともにみていきましょう。

金属などの固体の電気伝導度は、温度上昇によって小さくなります。すなわち電気抵抗が上がっているのです。これは、電子の運動で説明でき、金属や半導体でその傾向は真逆になります。

温度の上昇に伴い熱エネルギーを受けた電子は運動エネルギーが上昇するからです。金属系はこれにより、他の自由電子とぶつかることが多くなり、電子の動きが妨げられます。一方、半導体はもともと電子が少ないです。温度が上がると電子の動きが激しくなり電気を通りやすくします。

では、液体の電気伝導度はどうなのでしょうか。液体の電気伝導度は、半導体の挙動と似ています。液体の電気伝導はイオンの移動です。電気を発生させる媒体であるイオンの動きが活発になり電流は流れやくなります。つまり、温度の増加に伴い電気伝導度は上昇するのです。

電気伝導度の実用例

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固体の電気伝導度は、基本的にはテスターで抵抗を測定します。なぜなら、電気を流して機器を動作させるという特性上、電気が流れにくいと困るからです。例えば、テスターでは短絡、導通が切れるとブザーが鳴ります。このように電気伝導度の概念はあるものの機能において、抵抗と電気伝導度どちらを使用するかは異なるのです。

色々な分野の伝導度測定

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電気伝導度測定は一般的に導電率計を用います。

例えば、環境測定や排水管理、塩分測定です。環境測定は雨水や河川水などに対する汚染の指標として測定されます。排水管理は汚れの指標です。塩分測定では、塩化ナトリウムの量を伝導度から算出しています。どの溶液も導電率を測定し、それぞれの指標に変化し評価するのです。例えば、みそ汁等の電導度を図った場合、濃度が高ければ塩化ナトリウムすなわち塩分の量が多いことになります。このように、液体の伝導度を測定し、その値を種々の指標にし、応用していることが多いです。

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電気伝導率は固体、液体共通の指標

電気伝導度は、電気の流れやすさを表しています。固体では、電子、液体では電解質のイオンの電導度です。
電気伝導度と聞くと、金属の抵抗が真っ先に思いつくかもしれません。身の回りの水質調査も電気伝導度を応用しています。このように、一つの概念が異なる状態においても同様の指標と用いられることは多いです。一つの側面にとらわれず複数の側面をとらえるようにしましょう。

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化学理科

3分で簡単電気伝導度!どんな原理?何に使われてる?理系大学院卒ライターがわかりやすく解説

今回は「電気伝導度」について勉強していこう。電気は固体や、液体を流れるぞ。それらの中をどのように電気が流れるのか。また流れやすさの違いはなにであるのか。この観点を踏まえながら
今回は、電気伝導度の原理から実用例まで理系大学院卒ライターこーじと一緒に解説していきます。

ライター/こーじ

元理系大学院卒。小さい頃から機械いじりが好きで、機械系を仕事にしたいと大学で工学部を専攻した。卒業後はメーカーで研究開発職に従事。物理が苦手な人に、答案の答えではわからないおもしろさを伝える。

電気伝導率とは

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電気伝導度は、物質中の電気伝導のしやすさを表す指標です。

導電率や電気伝導度とも呼ばれます。電気伝導度は、電気抵抗率の逆数です。電気の流れにくさの反対つまり電気の流れやすさを示しています。電気抵抗率の単位は、S(ジーメンス)です。こちらも電気抵抗Ω(オーム)の逆数になります。電気伝導度は物質ごとに値が異なる物性値です。そのため、金属では値が大きいが、絶縁体では非常に値が小さくなります。

金属は、自由電子が多く電流が流れやすく絶縁体は電子を流さない性質のためです。また、電気伝導度は固体物質のみではありません。液体のpH測定の際に使用されたり、農学の分野では土壌溶液などのイオンの総量を示す指標としても利用されます。

液体と固体の電気伝導率の違い

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電気が固体と液体を流れる場合は流れるものが違います。固体では自由電子が流れることにより、電流が流れ、液体では、陽イオンや陰イオンなどのイオンによるものです。液体が電気を流せる特徴を有している場合、その液体は電解質水溶液といい、溶けている物質は電解質になります。

導電度は、物質の中の電気の流れやすさです。そのため、固体では電子、液体ではイオンと電気のもととなるものが大きく違います。

固体の電気伝導率

固体の電気導電度は、主に電気抵抗を用いたオームの法則が使用されます。
オームの法則は、電圧Vは抵抗Rと電流Iの積である式です。オームの法則の抵抗Rを逆数にしたものが導電度になります。またJは電流密度、Eは電場、比例定数σが導電度です。

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電気伝導度は物質固有の値です。電子密度n、電荷e、緩和時間をτ、電子の質量をm、比抵抗をρとすると次の式になります。つまり、電気伝導度は、電子密度や緩和時間といった物質に特有の値です。そのため、電気伝導度は形状に依存しない物性になります。

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