今回は「ファラデーの法則」について勉強していこう。
君たちは、マクスウェルの方程式を知っているか?マクスウェルの方程式は電磁気学の基礎となる有名な方程式です。その中の一つにファラデーの電磁誘導の法則があるぞ。今回はファラデーの法則を電磁誘導の観点や歴史的背景を含めて理系大学院卒ライターこーじと一緒に解説していきます。

ライター/こーじ

元理系大学院卒。小さい頃から機械いじりが好きで、機械系を仕事にしたいと大学で工学部を専攻した。卒業後はメーカーで研究開発職に従事。物理が苦手な人に、答案の答えではわからないおもしろさを伝える。

電磁誘導とは

image by iStockphoto

電磁誘導とは、磁界の変化によって電流が生まれる現象です。ファラデーは、この現象を実験的に明らかにしました。実験方法はいたって単純です。1巻のコイルを電流計につなぎます。コイルの中に磁石を通過させ、その時の電流計の値を読み取る実験です。

これにより、磁石が動いている場合は、電流が流れ止まっているときは流れません。この現象が電磁誘導です。電磁誘導の際に発生する電流を誘導電流といい、コイルが電流を発生させようとする起電力を誘導起電力といいます。

磁束と磁束密度

磁石をコイルに近づけた際、コイルを貫く磁力線の本数を磁束といいます。磁束は記号φで表し、単位は(Wb)です。また、単位面積当たりの磁束を磁束密度といい、記号Bで表します。単位は(Wb/m^2)です。電磁誘導は、コイルを貫く磁束の変化が重要になります。

電磁誘導の特徴

電磁誘導の特徴を説明していきましょう。1つ目は、コイルに磁石を近づけた一瞬だけ電磁誘導現象が起こります。これは、少しでも磁石が動いてないと誘導電流は流れないということです。

2つ目は磁石の速度が速いほど誘導電流の値は大きくなります。電磁誘導は、磁界の変化によって電流が生まれる現象です。それは、ある時間における磁束の変化量が大きいほど誘導電流が大きくなることを示しています。3つ目は磁石のN極とS極を近づけた際は、誘導電流の向きが逆転することです。これはレンツの法則により説明できます。

\次のページで「レンツの法則」を解説!/

レンツの法則

磁石のS極、N極の違いで誘導電流の向きが逆転することはレンツの法則によって説明されます。レンツの法則は、磁束の変化を妨げる向きに電流が発生するというものです。

磁石の磁力線の向きはN極からS極へと向かいます。例えば、N極を近づけた場合は、N極からコイルに向かって磁力線は遠ざかる方向です。一方で、S極の場合を考えてみましょう。磁力線の向きはコイルからS極の方向です。そのため、レンツの法則によりN極、S極における磁束の変化を妨げる向きは逆転します。そのため、コイルを貫く磁力線の向きが変わり、誘導電流の向きも逆転するのです。

ファラデーの法則とは

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ファラデーの法則は、「電磁誘導により発生する起電力は、その回路を貫く単位時間当たりの磁束の変化に比例する」というものです。高校物理の電磁気学でもなじみのある法則になります。

簡単に説明すると、「磁界の変化が、電場を作る。」ということです。具体的に考えてみましょう。アンペールの法則では、電流を導体に流せばその周りに磁界が発生するというものでした。ファラデーの法則はこの逆となり、磁界が発生すれば電流が発生するということです。

ファラデーの法則の公式

ファラデーの法則の公式

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例えば、コイルに磁石を近づける。その場所で止める。放すという3手順で考えましょう。磁石を近づけていくとコイルの断面を通る磁束は相対的に増加し、電流が流れます。

では、近づけた後に止めた場合は、磁束は変化しないため電流は流れません。最後に、磁石を放すと相対的にコイルを横切る磁束は減少しコイルに電流は流れます。この現象を定式化したものが上の式です。Eは誘導起電力、Nは、コイルの巻き数、Δφは磁束の変化量、Δtは時間の変化量になります。

ファラデーとは

Michael Faraday 001.jpg
National Portrait Gallery - http://www.npg.org.uk/collections/search/largerimage.php?search=ap&npgno=269, パブリック・ドメイン, リンクによる

マイケルファラデーは、イギリスの科学者・物理学者です。特に、電磁気学や電気化学の分野での貢献には目覚ましいものがあります。電気化学の分野では、「イオン」や「電気分解」という言葉を最初に提案したのはファラデーです。

また、電磁気学の分野では「電磁回転装置」を作りました。電気と磁気から動力を得る「世界で初めての電動機」を作る偉業をなしとげています。さらに、電流が磁界を生み出すアンペールの法則から、磁界から電流を生み出すことが可能なのではないかと着想し発見されたのが「ファラデーの電磁誘導の法則」です。

ファラデーの法則の実用例

では、最後にファラデーの電磁誘導の法則を用いた産業機器の実用例を紹介します。

1.発電機

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発電機は、動力を加えて電気を取り出す装置です。水力発電や火力発電、原子力発電がこれに当たります。発電機の原理は、電磁誘導です。具体的には磁石のN極、S極に挟まれたコイルを外力によって回し、コイル内の磁束変化が生じさせ誘導電流を発生させています。

例えば、コイルの開口面がN極からS極の向きと平行の場合は磁束は最小です。一方で、垂直の場合は最大になります。つまり、コイルを回転させれば磁束は常に変化するので電流は流れつつけるということです。

2.金属材料の焼き入れ

電磁誘導を利用して加熱する方法は、電磁誘導加熱があります。交流電源に接続されたコイルに電流を流し、周りに磁力線を発生させる手法です。

コイルの中心や周りに金属を置くと、磁束が変化し誘導電流が流れジュール熱により加熱されます。焼き入れはジュール熱による金属組織の変化です。

金属製品の焼き入れは、コイル中心に非加熱物を設置します。一番磁束変化が大きいのは、コイルの中心だからです。また、交流電流を流すことにより、金属の表面にしか電流は流れません。これは表皮効果によるものです。交流電源の周波数が高周波になればなるほど、表面にしか電流は流れないため極めて薄い表層しか加熱されません。

IHヒーターも同様の原理です。コイルの外側に発生する磁界を利用し、金属製の鍋に電流を発生させジュール熱により加熱しています。

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電磁気学の常識を変えたファラデーの法則

ファラデーの法則は、磁束から電流は発生しないという当時の常識を打ち破るものでした。このようなブレイクスルーにより、社会は目覚ましい発展を遂げます。物理に興味がないというあなたも、ブレイクスルーを目指して日々学習していきましょう

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物理理科電磁気学・光学・天文学

3分で簡単にわかるファラデーの法則!電磁誘導の原理や活用例も理系大学院卒ライターがわかりやすく解説

今回は「ファラデーの法則」について勉強していこう。
君たちは、マクスウェルの方程式を知っているか?マクスウェルの方程式は電磁気学の基礎となる有名な方程式です。その中の一つにファラデーの電磁誘導の法則があるぞ。今回はファラデーの法則を電磁誘導の観点や歴史的背景を含めて理系大学院卒ライターこーじと一緒に解説していきます。

ライター/こーじ

元理系大学院卒。小さい頃から機械いじりが好きで、機械系を仕事にしたいと大学で工学部を専攻した。卒業後はメーカーで研究開発職に従事。物理が苦手な人に、答案の答えではわからないおもしろさを伝える。

電磁誘導とは

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電磁誘導とは、磁界の変化によって電流が生まれる現象です。ファラデーは、この現象を実験的に明らかにしました。実験方法はいたって単純です。1巻のコイルを電流計につなぎます。コイルの中に磁石を通過させ、その時の電流計の値を読み取る実験です。

これにより、磁石が動いている場合は、電流が流れ止まっているときは流れません。この現象が電磁誘導です。電磁誘導の際に発生する電流を誘導電流といい、コイルが電流を発生させようとする起電力を誘導起電力といいます。

磁束と磁束密度

磁石をコイルに近づけた際、コイルを貫く磁力線の本数を磁束といいます。磁束は記号φで表し、単位は(Wb)です。また、単位面積当たりの磁束を磁束密度といい、記号Bで表します。単位は(Wb/m^2)です。電磁誘導は、コイルを貫く磁束の変化が重要になります。

電磁誘導の特徴

電磁誘導の特徴を説明していきましょう。1つ目は、コイルに磁石を近づけた一瞬だけ電磁誘導現象が起こります。これは、少しでも磁石が動いてないと誘導電流は流れないということです。

2つ目は磁石の速度が速いほど誘導電流の値は大きくなります。電磁誘導は、磁界の変化によって電流が生まれる現象です。それは、ある時間における磁束の変化量が大きいほど誘導電流が大きくなることを示しています。3つ目は磁石のN極とS極を近づけた際は、誘導電流の向きが逆転することです。これはレンツの法則により説明できます。

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