流体力学物理理科

「油圧の仕組み」油圧ショベルはなぜ掘れる?現役プラントエンジニアが解説!

油圧を使用する産業機器は多い。フォークリフト、油圧ダンパ、そして油圧ショベルなどである。エンジニアであれば油圧を避けては通れないだろう。しかし油圧と聞いて原理が難しく、苦手意識を持つ人が多いのではないかと思う。この記事では、油圧の原理を説明し、油圧ショベルでの応用例について解説した。是非この機会に学んでみてくれ。
大学では機械工学を専攻とし、現在ではプラント関係の設計を行っているアヤコと一緒に解説していくぞ。

解説/桜木建二

「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/アヤコ

現役のプラントエンジニア。大学では熱流体分野の研究を行い、就職後もプラントエンジニアとして流体に関係する仕事を行っている。流体力学は多くの人が難しいと思い毛嫌いする分野の半面、身の回りの現象は多い。楽しく理解できるよう解説していく。

油圧の原理

image by iStockphoto

油圧あるいは油圧システムは、を使用し、小さい力で大きい力を出す、いわゆる「てこの原理」のような動力伝達を行うシステムです。油圧システムは、フォークリフトや、油圧ダンパ、ジャッキ、油圧ショベルなど多くの産業用機械に使われています。まずはその原理を解説しましょう。

パスカルの原理

Working principle of a hydraulic jack.svg
By Olivier CleynenOwn work, CC0, Link

てこの原理のような動力伝達システムとはどういうことでしょうか。ここで流体の圧力を応用するパスカルの原理を使います。密閉した容器において、ある面に加えた圧力は他の面でも同じ圧力が生じるということです。

具体例としては、上記のようなに密閉容器に流体を入れ、小さな面(断面積A)にハンドルが付いたおもり(質量Mg)を置き、片側の4倍の断面積(4A)に重さが4倍の車(4Mg)を置くとします。圧力は力を断面積で割った値ですので、大きな面の圧力は質量(4Mg)を断面積(4A)で割りMg/Aです。パスカルの原理により、大きい面の圧力(Mg/A)が小さい面に伝わることになります。小さい面の圧力もまたMg/Aとなりますので、力が釣り合い、同じ高さで静止するのです。因みにもし小さいほうの重さが半分になった場合は、大きい面での圧力と小さい面での圧力がバランスするように、大きいほうが少し下がり、小さいほうが上がるといった高低差ができます。

ここで分かって頂きたいことは、密閉容器おいて重いものであっても断面積が大きいところに乗せれば小さい断面積かつ小さい力でも持ち上げられると考えられるのです。

なぜ油?

なぜ油?

image by Study-Z編集部

パスカルの原理は分かりましたが、なぜ水や空気ではいけないのでしょうか。

主に2つの理由を記載します。1つは作動流体が水であると金属を錆びつかせてしまう危険性があるからです。そのため錆びつかせにくい油が望まれます。次に、作動流体は適度な粘度を持つことです。粘度が高い場合動作不良エネルギ―を無駄に消費してしまいます。また粘度が低い場合油漏れや、金属の摺動部で油膜を形成がされ難くなってしまうのです。そのため、粘度の低い空気は適しません

油圧システムについて

油圧システムについて

image by Study-Z編集部

どのようなシステムが作られているでしょうか。まずはパスカルの原理て使った図のハンドルをピストンに変え、ピストンを押す力を油圧制御することを考えるのです。これはポンプにより圧力を加えることにします。またポンプが一定の油を供給できるように吸込タンクが必要です。このままポンプだけでは、どんどん車が上昇してしまうので、降下もできるような制御にするため方向弁を設置しポンプ保護のために安全弁を設置します。

このシステムでどのような制御をできると思いますか。ケース1は車の高さを変えない時です。タンクから油を吸ったポンプは、方向弁を経由してタンクに戻されます。ケース2は方向弁を切り替え車を持ち上げる時です。タンクから油を吸い、ポンプにより方向弁を経由し、シリンダーに送られます。これによりピストンが押し下げられ、ピストン下部の油はタンクに戻る循環する流れを作るのです。車が重すぎてポンプの圧力を超えてしまう場合は、安全弁が開きタンクに油を戻す流れを作ります。ケース3は車を下げる時です。これは方向弁を切り替えるだけで、流れはケース2とほぼ同様となります。

no-img2″>
 <figcaption class=桜木建二

油圧システムの基本は、タンクから油を吸込んできたポンプが方向弁を経由してシリンダーに送り、シリンダーの送られなかった方の油が方向弁を経由してタンクに戻るという循環システムが一般的だ。因みにポンプは容積型の歯車ポンプ、ベーンポンプ、プランジャーポンプを通常使われるぞ。容積型のポンプは遠心ポンプと違い、負荷がポンプの許容圧力を超えなければ、負荷に関わらず流量を一定にできる特徴があるぞ。そのためどんな負荷でも一定の速度でピストンを動かせるのだ。ただし例えば、負荷が重すぎてポンプの最高圧力を超えてしまった場合は、ポンプが流量を出せない運転(締切状態と言う)になってしまい故障してしまうのだ。そのため安全弁を設置することにより、通常は安全弁は閉じている状態だが、許容圧力を超えそうな時は安全弁の機能でタンクに戻し、ポンプを保護するのだ。

次のページを読む
1 2
Share: