高校化学で習う単語の中には、「言葉は覚えたけれど詳しくは理解できていない」といったものがあると思う。『臨界点』という単語もその一つでしょう。このようなわかりづらい概念も、日常生活と関連させることで理解が早くなっていく。

今回の記事は「臨界点」という概念の詳細について国立大学院で修士号(農学)を取得しているライターふくろう博士と一緒に解説していきます。

ライター/ふくろう博士

国立理系大学院で修士(農学)を取得し、現在は民間企業の研究職に従事している典型的な理系人間。「理系好きな学生を一人でも多く増やす」をキーワードにインターネットの世界で活躍中!自身のサイトでは大学生に役立つ情報を日々提供している。

臨界点を知るためには「物質の三態」を理解しよう!

image by iStockphoto

臨界点とはどういった意味の言葉なのでしょうか? なんとなくアニメや漫画で登場するような単語ですよね。 また、「怒りが臨界点を突破する」といった使い方をされる単語でもあり ます。一つ確認しておきたいのが、このような慣用句的な意味と科学的な意味での『臨界点』は全く異なる概念なので、そこを最初に理解していきたいですね。

科学的な意味での臨界点は、物質の三態と深く関連しています。難しく聞こえるかもしれませんが、簡単に言うと気体・固体・液体といった状態のことですね! まずは物質の三態についておさらいしていきましょう!

物質の三態とは?

そもそも、 液体や固体、液体などの状態はどのようにして区別されているのでしょうか? 一般的に、物質の状態はエネルギーと強い相関関係を持っていることが知られています。しかし、理系の教師が説明する 「固体の持つエネルギー量は小さく、気体の持つエネルギー量は大きい」といった説明を理解できなかった方も多いでしょう。

今回は、私たちにとって身近な存在である「水(H2O)」を例にとってわかりやすく解説していくので難しく考えずに読み進めてみてください!きっと直感的に理解できると思います。

その1.固体ってどんな状態?

image by iStockphoto

冷凍庫の中に水道水を入れると、数時間もすると氷になっています。 固体の状態では、水分子はほとんど運動を停止した状態です。 しかし、完全に運動が停止されているわけではなくわずかに動いています。この振動による運動が0になった時を絶対零度といい、すべての物質はこれ以上低い温度にはなりません。

固体の状態は、人間の例で例えると「授業中の教室」にたとえることができます。生徒は机の前に固定されていますが、体を揺らしたりしゃべったりすることでわずかに振動している状態です。遊びたい盛りの生徒たちにとって、机の前で授業することは退屈でつまらない。この状態を科学的にはエネルギー量が低いと表現します。

\次のページで「その2.液体ってどんな状態?」を解説!/

その2.液体ってどんな状態?

image by iStockphoto

川や海など、普段の生活で目にする水は液体の状態となっています。液体の特徴としては、 粒子が流動的で器に合わせて形を変化させる点があげられるでしょう。

人間の例で例えると、昼休みの学校のようなものです。生徒は学校内を自由に歩き回りますが、学校の中という器から外に出ることはできません。この状態は教室で授業を受けているときよりも自由度が高いため、固体よりも液体の方がエネルギー量が大きいといえます

その3.気体ってどんな状態?

image by iStockphoto

やかんを用いて水を高温で沸騰させるとき、白い水蒸気が出る直前の部分に目に見えない透明な部分を観察することができます。 この部分には気体となった水分子が存在しており、私たちの目では直接見ることはできません。自然条件でも、直射日光によって暖められた水分子の一部が気体となって蒸発しています。単位量当たりの体積が最も大きくなるのも特徴です。 

人間の例で例えると、休日の生徒達が当てはまります。 部活動のために学校に来る子もいれば、家族全員で海外に旅行する子もいる状態です。 液体の状態よりもはるかに自由度が高くなるため、物質の三態のなかでは気体が最もエネルギー量が高いと表現できます。

物質の三態は「圧力」と「温度」で決定される!

物質の三態と言われる「気体」「液体」「固体」は異なるエネルギー量を持つことが分かりました。 それでは、物質の状態は何によって決まるのでしょうか?

一つ目は温度によるものです。これは直感的に理解できますね!水の場合100°という高温で沸騰させれば気体となり、0°から100°の間は液体、0度以下に冷媒させれば固体となる性質を持ちます。 

二つ目は圧力によるものです。これは少し分かりにくい概念ですね。先ほどの人間社会の例に戻って考えてみましょう。せっかくの休日に学校から「土曜日にも学校に来て授業を受けるように」 と圧力をかけられたとします。そうすると、本来学校外に散らばって遊んでいるはずの生徒達が教室で授業を受けることになりますね。これが圧力による相変化です。 好き勝手散らばっている気体分子も、加圧によって液体や固体に変化します。逆もまた然りです。

状態曲線から臨界点を探そう!

状態曲線から臨界点を探そう!

image by Study-Z編集部

物質の三態が「圧力」と「温度」によって決定されることが理解できたかと思われます。科学が発展した現代では、研究の成果により物質の状態を「気相」「液相」「固相」に分類した状態曲線が考案されているのです。科学の発展ってすごいですね!それでは、今回のテーマにもなっている臨界点を状態曲線から探してみましょう!

臨界点はどこ?

image by iStockphoto

上の図から臨界点がどこか分かったでしょうか?状態曲線の見方を確認するためにも、(1)~(7)番で物質はどのような状態を示しているか見ていきましょう!

\次のページで「超臨界流体は食品加工に役立っている!」を解説!/

(1) 固体
(2) 固体+液体
(3) 液体
(4) 液体+気体
(5) 気体
(6) 固体+液体+気体(三重点)
(7) 臨界点

以上から分かる通り、気体と液体の境界線の延長線上にある(7)番が正解でした。 臨界点を超えた地点は超臨界流体と呼ばれ、気体と液体の両方の性質を示すことが知られています。

超臨界流体は食品加工に役立っている!

液体のような溶解性(物質を溶かす力)と気体のような拡散性(物質を遠くへ運ぶ力)をもつ超臨界流体ですが、私たちの身近な暮らしに役立っています。

その一つが「食品加工」の分野です。あなたの家族でコーヒーが好きな方はいますか? 最近のコーヒーには健康を意識したカフェイン抜きのコーヒーが販売されていますが、このコーヒーを作る技術に超臨界流体が役立っています。

カフェインは低温では水に溶けにくく、それ単体で除去することが難しい物質です。温度を上げることによって昇華(固体から気体にすること)による除去が可能ですが、コーヒーに含まれる旨味成分まで失くしてしまいます。そこで活躍するのが超臨界流体!液体では解けないカフェインも超臨界流体には解けるのです。これによって、体に優しいコーヒーを作り出すことができています。

身近に役立つ『臨界点』という概念

今回の記事では『臨界点』についてわかりやすく解説しました。自然界で私たちが目にする状態は、『気体』『液体』『固体』のいずれかに分類されるため、『超臨界流体』と言う状態を知らなかった方も多いと思います。このような現象は化学工学会をはじめとした化学・工学分野の研究室で日々研究されており、まだまだ謎の深い分野です。この記事を読んで少しでも「面白い」と感じてくれた方は、このような学科に進むといいかもしれませんね!

" /> 3分で簡単にわかる「臨界点」!意味や例題・超臨界流体も理系院卒ライターがわかりやすく解説! – Study-Z
化学物質の状態・構成・変化理科

3分で簡単にわかる「臨界点」!意味や例題・超臨界流体も理系院卒ライターがわかりやすく解説!

高校化学で習う単語の中には、「言葉は覚えたけれど詳しくは理解できていない」といったものがあると思う。『臨界点』という単語もその一つでしょう。このようなわかりづらい概念も、日常生活と関連させることで理解が早くなっていく。

今回の記事は「臨界点」という概念の詳細について国立大学院で修士号(農学)を取得しているライターふくろう博士と一緒に解説していきます。

ライター/ふくろう博士

国立理系大学院で修士(農学)を取得し、現在は民間企業の研究職に従事している典型的な理系人間。「理系好きな学生を一人でも多く増やす」をキーワードにインターネットの世界で活躍中!自身のサイトでは大学生に役立つ情報を日々提供している。

臨界点を知るためには「物質の三態」を理解しよう!

image by iStockphoto

臨界点とはどういった意味の言葉なのでしょうか? なんとなくアニメや漫画で登場するような単語ですよね。 また、「怒りが臨界点を突破する」といった使い方をされる単語でもあり ます。一つ確認しておきたいのが、このような慣用句的な意味と科学的な意味での『臨界点』は全く異なる概念なので、そこを最初に理解していきたいですね。

科学的な意味での臨界点は、物質の三態と深く関連しています。難しく聞こえるかもしれませんが、簡単に言うと気体・固体・液体といった状態のことですね! まずは物質の三態についておさらいしていきましょう!

物質の三態とは?

そもそも、 液体や固体、液体などの状態はどのようにして区別されているのでしょうか? 一般的に、物質の状態はエネルギーと強い相関関係を持っていることが知られています。しかし、理系の教師が説明する 「固体の持つエネルギー量は小さく、気体の持つエネルギー量は大きい」といった説明を理解できなかった方も多いでしょう。

今回は、私たちにとって身近な存在である「水(H2O)」を例にとってわかりやすく解説していくので難しく考えずに読み進めてみてください!きっと直感的に理解できると思います。

その1.固体ってどんな状態?

image by iStockphoto

冷凍庫の中に水道水を入れると、数時間もすると氷になっています。 固体の状態では、水分子はほとんど運動を停止した状態です。 しかし、完全に運動が停止されているわけではなくわずかに動いています。この振動による運動が0になった時を絶対零度といい、すべての物質はこれ以上低い温度にはなりません。

固体の状態は、人間の例で例えると「授業中の教室」にたとえることができます。生徒は机の前に固定されていますが、体を揺らしたりしゃべったりすることでわずかに振動している状態です。遊びたい盛りの生徒たちにとって、机の前で授業することは退屈でつまらない。この状態を科学的にはエネルギー量が低いと表現します。

\次のページで「その2.液体ってどんな状態?」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: