この記事では「兜の緒を締める」について解説する。

端的に言えば兜の緒を締めるの意味は「気持ちを引き締めて用心する」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「兜の緒を締める」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「兜の緒を締める」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「兜の緒を締める」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「かぶとのおをしめる」です。意味を確認して、そのあと語源や使い方まで詳しくチェックしていきますよ。

「兜の緒を締める」の意味は?

「兜の緒を締める」には、次のような意味があります。まずは、辞書で正確な意味を確認してから、詳しい身を一緒に見ていきましょう。

1.気持ちを引き締めて用心する。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「兜の緒を締める」

兜の紐を締めなおすということから、気を引き締めること、用心すること、警戒することなどの意味合いにつながっています。

今までも一定の緊張状態ではあったものの、今後さらに気を引き締めなければならないといった意味合いで使える表現です。また、気が緩みそうな状況において、油断してはならないということで使うこともあります。この場合は、代表例として「勝って兜の緒を締めよ」という表現がありますね。

「兜の緒を締める」の語源は?

次に「兜の緒を締める」の語源を確認しておきましょう。

「兜の緒を締める」は、『平治(へいじ)物語』の一節に記されています。『平治物語』は、1159年に起きた平治の乱について書かれた軍記物で、作者は不詳となっているものです。

そこには、「大内には、定て今夜やよせんずらんとて、かぶとの緒をしめてまちあかす。」とあり、「御所では、きっと今晩のうちに押し寄せてくるだろうと、兜の緒を締めて夜が明けるまで待ち続けた」という意味になっています。敵が襲来し戦いの場となると予想されている場面でのことですから、「さあこれから気を引き締めて!」という場面ですね。

\次のページで「「兜の緒を締める」の使い方・例文」を解説!/

「兜の緒を締める」の使い方・例文

「兜の緒を締める」を含む例文を使って、さまざまな使い方の一部分を見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.日本の電池や電源関連の事業は成長著しい新興国に追い上げられているだけに、兜の緒を締めてさらに便利で機能が充実した製品を開発する必要がある。
2.この四半期は前年同期比で30%の増益と成功を収めており、株主や社員に利益を還元できそうだが、油断せず兜の緒を締めていきたい。

一つ目の例文では、常に油断なく取り組んでいる一方で追い上げも激しいことから、さらに警戒を強めていかなければいけないといった状況に「兜の緒を締める」を使っています。次の例文のほうは、すでに成功している状況です。うまくいっているときほど油断しやすいので、慢心のないように十分に用心していく必要があるというケースで使われています。

それぞれ、「さらに気を引き締める場面」と「成功のあとに油断をしていけないという場面」という二通りの例文でした。

「兜の緒を締める」の類義語は?違いは?

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それでは、「兜の緒を締める」の類義語についての説明です。「気を引き締める」とよく似た意味の表現がいくつかあるので、一緒に見ていきましょう。

「油断大敵」

「兜の緒を締める」の類義語には、「油断大敵(ゆだんたいてき)」があります。注意を怠れば思わぬ失敗を招くので、十分に気をつける必要であるという意味です。「油断」は抽象的な表現ですが、失敗の原因となるものなので、大きな敵だと思って警戒すべきだということに由来します。

「油断大敵」の代表例は、ウサギのカメの話です。しかし、「桶狭間の戦い」のように、油断した結果歴史が動いたケースもありますよ。

\次のページで「「心に垣をせよ」」を解説!/

「心に垣をせよ」

もう一つの類義語には、「心に垣(かき)をせよ」があります。意味は、油断をしないで用心せよという意味です。「垣」ということですから「垣根」や「石垣」などをつくること、つまり、場合によっては疑ってかかることも必要だということですね。

大丈夫だろうと楽観的に考えるのではなく、もしかすると何かあるかもしれないと用心を怠らないような心構えについての表現となっています。

「兜の緒を締める」の対義語は?

次に、「兜の緒を締める」の対義語についての説明です。気を引き締めるという意味合いの「兜の緒を締める」ですから、油断がある状況を表す表現について見ていきましょう。

「不覚を取る」

「兜の緒を締める」の対義語には、「不覚を取る(ふかくをとる)」があります。意味は、油断して失敗することです。「覚」には「はっきりわかる、さとる」という意味があるので、「不覚」とはそれができていない状態のことを表しています。

また、油断して失敗した結果、恥をかくという意味合いまで含めて使うこともありますよ。集中力を欠いていたり、情報不足であったり、事前の心構えや準備などが不十分だと「不覚を取る」ことになるわけです。

「蟻の穴から堤も崩れる」

もう一つの対義語には、「蟻の穴から堤も崩れる(ありのあなからつつみもくずれる)」があります。ほんのわずかな油断や不注意から、大きな災いを招くことがあるという意味です。中国戦国時代の法家である韓非の著書『韓非子(かんぴし)』では、「千丈の堤も蟻の穴から崩れる」とあり、大きな堤でも蟻の穴のように小さい穴が原因で崩れてしまうことがある」という意味を表しています。

蟻の穴ほどに思えるような些細なことにも気を配っていなければ安泰といえないということですね。

「兜の緒を締める」の英訳は?

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最後に、「兜の緒を締める」の英訳についての説明です。より近い意味が伝わるように、キーワードとなる英単語を使った表現を見ていきましょう。

「tighten the strings of a helmet」

「兜の緒を締める」の英訳には、「tighten the strings of a helmet」があります。直訳すると、もとの意味そのままに「兜の緒を締める」です。「tighten」は「しっかり締める」という意味があるので、ここでの表現にはあてはまります。

その他、よく使われる「勝って兜の緒を締めよ」の場合であれば、「tighten the strings of a helmet after winning」と後ろに「勝ったあと」という表現を付け加えて使うことができますよ。

\次のページで「「兜の緒を締める」を使いこなそう」を解説!/

「兜の緒を締める」を使いこなそう

今回の記事では「兜の緒を締める」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「兜の緒を締める」の基本の意味は、気を引き締めて用心することです。兜の緒を締めていなかったり緩んでいれば、兜が揺れたり落ちたりする可能性があるので、いざというときにはしっかり締めなければなりません。

しかし、そこから意味が転じているということは、戦に向けての儀式やルーティーンの意味合いで兜の緒を締めていたということがあったのかもしれませんね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「兜の緒を締める」の意味や使い方は?例文や類語などを現役塾講師がわかりやすく解説!

この記事では「兜の緒を締める」について解説する。

端的に言えば兜の緒を締めるの意味は「気持ちを引き締めて用心する」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「兜の緒を締める」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「兜の緒を締める」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「兜の緒を締める」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「かぶとのおをしめる」です。意味を確認して、そのあと語源や使い方まで詳しくチェックしていきますよ。

「兜の緒を締める」の意味は?

「兜の緒を締める」には、次のような意味があります。まずは、辞書で正確な意味を確認してから、詳しい身を一緒に見ていきましょう。

1.気持ちを引き締めて用心する。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「兜の緒を締める」

兜の紐を締めなおすということから、気を引き締めること、用心すること、警戒することなどの意味合いにつながっています。

今までも一定の緊張状態ではあったものの、今後さらに気を引き締めなければならないといった意味合いで使える表現です。また、気が緩みそうな状況において、油断してはならないということで使うこともあります。この場合は、代表例として「勝って兜の緒を締めよ」という表現がありますね。

「兜の緒を締める」の語源は?

次に「兜の緒を締める」の語源を確認しておきましょう。

「兜の緒を締める」は、『平治(へいじ)物語』の一節に記されています。『平治物語』は、1159年に起きた平治の乱について書かれた軍記物で、作者は不詳となっているものです。

そこには、「大内には、定て今夜やよせんずらんとて、かぶとの緒をしめてまちあかす。」とあり、「御所では、きっと今晩のうちに押し寄せてくるだろうと、兜の緒を締めて夜が明けるまで待ち続けた」という意味になっています。敵が襲来し戦いの場となると予想されている場面でのことですから、「さあこれから気を引き締めて!」という場面ですね。

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