この記事では「愁眉を開く」について解説する。

端的に言えば「愁眉を開く」の意味は「安心すること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「愁眉を開く」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「愁眉を開く」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「愁眉(しゅうび)を開く」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「愁眉を開く」の意味は?

「愁眉を開く」には、次のような意味があります。

心配がなくなって、ほっとした顔つきになる。「無事下山の報に―・く」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「愁眉を開く」

この言葉は「それまでの心配がなくなって、安心する。その顔つき」という意味の慣用表現です。

ポイントなのは「愁眉」と言う言葉。「愁」は「愁える(うれえる)」とも読み、「憂い」と同じ「嘆く、悲しむ、不満を持つ」という意味を持っています。「眉」は目の上の「まゆ」のことで「愁眉」で悲しい顔・表情ということ。そんな悲しい表情が「開く」のですから「安心した」ということになるのですね。

他に眉を使った単語で「秀眉(しゅうび)」というものもあります。こちらは「優れた=美しい眉」という褒め言葉です。読みも同じなので、混同しないように注意してくださいね。

「愁眉を開く」の語源は?

次に「愁眉を開く」の語源を確認しておきましょう。ここで使われている「愁眉」という言葉は中国唐代の詩人、劉兼の詩『春遊』に見ることができます。

その頃の中国では、女性がお化粧のため、愁いを帯びたような細く曲がった眉を描いたと言われており、感情を表現したり想いを伝えるのに広く使われていた方法なのかもしれません。

みなさんも、古い絵で女性が悲しそうに佇んでいる表情や、マンガなどで「悲しそうな顔」の記号として、眉が下げて描かれているのを見たことがあるでしょうか。「愁眉」とはそのようなイメージです。

そんな悲しみに暮れていた顔は、ぎゅっと縮こまって緊張しているはず。それが解けるということで「愁眉を開く」という言葉が生まれたのだと考えられます。

\次のページで「「愁眉を開く」の使い方・例文」を解説!/

「愁眉を開く」の使い方・例文

「愁眉を開く」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・おじさんは、娘さんが帰省中に事故に巻き込まれたというニュースを聞いてずっと心配していたが、電話がかかってきて無事とわかり、愁眉を開いた。

・仕事での新サービスがうまくいくかでこれからの人生や生活が決まってしまう、と夜も眠れない状況が続いていたが、なんとか軌道に乗り愁眉を開くことができた。

・飛行機がとてつもなく苦手な私は、離陸の間ずっと不安で動揺しており、機体が安定してからようやく愁眉を開いた。

心配事や不安なことが解決して、安心した」というニュアンスが伝わりますでしょうか。

語源の項で解説した通り、「愁眉」とは眉が下がって悲しさが伝わってくる表情。眉間にしわもぎゅっと寄っているでしょうか。長く苦しんでいたというニュアンスも感じられますね。ちょっとした心配事に対して使うのは、表現が強くてあまり適切ではないでしょう。

悲しいことに限らず心配事に対して広く使うことができますので、どんな不快な状況が好転したのか文章からしっかり読み解きましょう。人物の心理描写に関わる箇所になりますので、読解問題でのポイントとなります。

「愁眉を開く」の類義語は?違いは?

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「愁眉を開く」の類義語には「胸をなでおろす」などが考えられます。

「胸をなでおろす」

「胸をなでおろす」は、「ほっと安心する、安堵(あんど)する」という意味の慣用句。みなさんも、何か心配事から解放されたとき「あーよかった」と胸に手を当てる動作などはよくわかると思います。その時に大きく息を吐き出すため、肩が下がり胸も「なでおろす」ことになるのです。

大きくゆっくり息を吐くと緊張が解けるため、安心・リラックスできます。何か知らせを聞いて「愁眉を開いた」人も、きっと大きく息を吐き出して安心していることでしょう。

\次のページで「「愁眉を開く」の対義語は?」を解説!/

編集者として働いていた時、原稿が無くなる事態が発生して大騒ぎになったが、結局作家さんがまだ送っていなかったことが判明して、みんな胸をなでおろした。

「愁眉を開く」の対義語は?

「愁眉を開く」の対義語は「眉をひそめる」「眉をしかめる」があります。

「眉をひそめる」「眉をしかめる」

これらは、「心配や危ぶむことがあって顔をしかめる」「他人の行為に対して不快に思って顔をしかめる」と言う慣用句です。

どちらかと言えば、後者の「他人の言動を嫌に思う」という使われ方のほうが一般的でしょうか。前者の「心配なことがある」という場合にも使えることを押さえておきましょう。

眉や顔に関する言葉は多く、他にも「眉根を寄せる」「しかめ面をする」なども聞いたことがあるかと思います。日本語では色々な表現を用いて感情を表現しようとしてきたことがわかりますね。

・怪我が完治していないのに、学生時代最後だからと試合に出た選手をサポートしていたものの、内面では眉をひそめずにはいられなかった。

・いつでも無理を押し通して会議を終わらせてしまう議長のやり方に、みんなが眉をしかめている。

「愁眉を開く」の英訳は?

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「愁眉を開く」の英語訳は「be relieved」がいいでしょう。

「be relieved」

「be relieved」で、「ほっとした、安心の」という意味になります。

「眉が開いて表情が変化する」という日本語の微細なニュアンスは伝わりにくいですが、後ろに「at」「to do」「that」などを伴なって理由も説明することができる使いやすいフレーズです。

日本語訳をする場合には、何にでも「愁眉を開く」とするとちょっと大げさかもしれません。安心した理由として、長く・深く心配していた内容であれば適していると言えるでしょう。

\次のページで「「愁眉を開く」を使いこなそう」を解説!/

He was relieved to hear that his daughter was safe.
彼は娘が無事だったと聞いて愁眉を開いた。

「愁眉を開く」を使いこなそう

この記事では「愁眉を開く」の意味・使い方・類語などを説明しました。

眉や表情に関する慣用表現はとてもたくさんあり、調べてみるととても面白いものです。現代でも、「眉をしかめる」や「頬を緩ませる」など、日常的に耳にするものもあるかもしれませんね。

そうした言葉は意味が想像しやすく慣用表現とも捉えられていないかもしれません。ただ、時には難解な表現や、勘違いをしていることもあるため、気づいた時に一度は意味を調べておくといいでしょう。

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国語言葉の意味

【慣用句】「愁眉を開く」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「愁眉を開く」について解説する。

端的に言えば「愁眉を開く」の意味は「安心すること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「愁眉を開く」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「愁眉を開く」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「愁眉(しゅうび)を開く」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「愁眉を開く」の意味は?

「愁眉を開く」には、次のような意味があります。

心配がなくなって、ほっとした顔つきになる。「無事下山の報に―・く」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「愁眉を開く」

この言葉は「それまでの心配がなくなって、安心する。その顔つき」という意味の慣用表現です。

ポイントなのは「愁眉」と言う言葉。「愁」は「愁える(うれえる)」とも読み、「憂い」と同じ「嘆く、悲しむ、不満を持つ」という意味を持っています。「眉」は目の上の「まゆ」のことで「愁眉」で悲しい顔・表情ということ。そんな悲しい表情が「開く」のですから「安心した」ということになるのですね。

他に眉を使った単語で「秀眉(しゅうび)」というものもあります。こちらは「優れた=美しい眉」という褒め言葉です。読みも同じなので、混同しないように注意してくださいね。

「愁眉を開く」の語源は?

次に「愁眉を開く」の語源を確認しておきましょう。ここで使われている「愁眉」という言葉は中国唐代の詩人、劉兼の詩『春遊』に見ることができます。

その頃の中国では、女性がお化粧のため、愁いを帯びたような細く曲がった眉を描いたと言われており、感情を表現したり想いを伝えるのに広く使われていた方法なのかもしれません。

みなさんも、古い絵で女性が悲しそうに佇んでいる表情や、マンガなどで「悲しそうな顔」の記号として、眉が下げて描かれているのを見たことがあるでしょうか。「愁眉」とはそのようなイメージです。

そんな悲しみに暮れていた顔は、ぎゅっと縮こまって緊張しているはず。それが解けるということで「愁眉を開く」という言葉が生まれたのだと考えられます。

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