この記事では「狼煙を上げる」を勉強していきます。

「狼煙を上げる」は「のろしをあげる」と読むんです。意味は「大きな動きを起こすきっかけとなる行動をすること」です。ところで、狼煙に”狼”という字が用いられているのはなぜか、気にならないか?今回は言葉の由来までしっかり押さえていけ。

正しく自信を持って使えるように、「狼煙を上げる」の使い方や言葉の意味について、現役日本語教師のスヨメナと一緒に解説していきます。

ライター/スヨメナ

現役日本語教師。対面、オンライン問わず、世界中の国の人に日本語を教えている。ブログでも相手の立場に立って考え、わかりやすく発信していく。

「狼煙を上げる」の意味・由来は?

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ここでは「狼煙を上げる」の言葉の意味と由来を覚えていきましょう。

「狼煙を上げる」の意味は「大きな動きのはじまりとなる行動を起こすこと」

まず辞書で意味を確認してみましょう。

1.合図のため、のろしの煙をあげる。
2.大きな動きのきっかけとなる行動を起こす。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「狼煙を上げる」

まず「狼煙(のろし)」の意味は、”合図のために薪などを燃やして上がっていく煙”のことです。「狼煙」は古くから戦いにおいて、連絡用の合図として用いられました。中国や日本だけでなくヨーロッパやアメリカでも使われていたそうです。「狼煙」が行動の合図ですから、転じて「狼煙を上げる」とは、”大きな動きのはじまりとなる行動を起こすこと”の意味になりますね。

なぜ”狼”の字が使われている?由来も知りたい!

「狼煙(のろし)」には、”狼”(オオカミ)という字が使われいます。なぜ”狼”が使われているのでしょうか。それは昔、中国で「狼の糞を火種にすると、強い風が吹いても煙がまっすぐ上がる」と言われており、煙を上げるときには実際に狼の糞を利用してきたからです。意外だったでしょうか。狼の煙で「狼煙」、これがこの言葉の由来です。

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「狼煙を上げる」の使い方は?

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「狼煙を上げる」の意味が理解できたところで、使い方を解説します。

例文で「狼煙を上げる」の使い方をチェック!

いくつか「狼煙を上げる」を使った例文に触れていきましょう。

1.あきらめムードの中、代打者が打った球がホームランとなり、逆転の狼煙を上げた。
2.スランプ続きの彼であったが、人生を賭けた作品により復活の狼煙を上げて、人気を取り戻した。
3.商店街のチーム力で企画したイベントが、この町の再生の狼煙を上げました。

1は、野球のこと。負けがほぼ確実になり、あきらめかけた試合の中、ホームランが逆転という大きな動きに結びついたわけですね。2は、人生を賭けた作品が復活の引き金となり、彼の人気が再び出てきたという意味になります。

3は、寂しくなった町を盛り上げようと商店街というチームでイベントを企画しました。そのイベントが町の再生の契機となったということですね。町の再生は、とても大きな出来事でしょう。このように「狼煙を上げる」は、日常的にも「逆転」「復活」「再生」などの大きな場面で使うのがふさわしいですね。

「狼煙を上げる」と似たような意味を持つ言葉は?

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「狼煙を上げる」と似たような言葉があるので、一緒に覚えてしまいましょう。

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「火蓋を切る」:争いごとなどの行動を始めること

「火蓋を切る(ひぶたをきる)」の「火蓋」とは、火縄銃の火薬を入れる口を覆う蓋のことです。発砲するときには、火蓋を開いて火薬に点火します。つまり”火蓋を開くことは、戦いを始める”という意味です。したがって、「火蓋を切る」とは、”競争などの行動を開始すること”になります。

例えば「甲子園への出場をかけた予選決勝の火蓋が切られた」は、予選決勝という争いが始まったの意味です。

「幕を切って落とす」:はなばなしく物事を開始すること

「幕を切って落とす」は”はなばなしく物事を始めること”です。「幕を切って落とす」は、元々は歌舞伎の言葉で、舞台の幕を一気に落として演目を始めることから、”何かをはなばなしく開始する”ときに使います。たとえば「陸上競技大会は、割れんばかりの拍手により幕を切って落とした」であれば、拍手で盛り上がっているなか、盛大に大会が始まったという意味です。

「御輿を上げる」:事に取りかかること

「御輿を上げる(みこしをあげる)」は、”腰を上げて物事に取りかかること”の意味です。御輿を担ぎ上げるには、腰を上げなくてはなりません。その様子から生まれた慣用句です。例えば「長年避けてきた昇進試験を御輿を上げて受けることにした」であれば、長い間挑戦してこなかった昇進試験をようやく受ける決心をしたという意味になります。

「狼煙を上げる」と反対の意味を持つ言葉は?

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「狼煙を上げる」と反対の意味を持つ言葉は何があるのでしょうか。いくつか見ていきましょう。

「矛を収める」:争いや攻撃をやめること

「矛を収める(ほこをおさめる)」とは、武器となる矛をしまうという意味から”争いや攻撃をやめること”です。例えば「つまらない口論は時間の無駄ですから、お互いに矛を収めましょう」であれば、言葉という武器をしまって口論をやめましょうという意味になります。

「ピリオドを打つ」:続いてきた事柄を終わりにすること

「ピリオドを打つ」のピリオドとは、英文などで文の終わりに付ける符号のことで、日本文でいう句点「。」です。ピリオドを打って文を終わらせるという語源から、”続けてきた事柄を終わりにする”という意味になります。たとえば「長く勤めたこの会社とも今年いっぱいでピリオドを打つことにしました」であれば、長く続けてきたこの会社を年内で辞めるということです。

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「けりを付ける」:問題ごとに決着をつけること

「けりを付ける」は、”問題ごとに決着をつける”という意味です。この「けり」とは、キックする「蹴り」のことではありません。実は昔、古文で使われていた助動詞「けり」のことなのです。「けり」は俳句や和歌などで、「〜だなぁ」のような感動を表す意味で、文末によく使われていました。そのようなことから「けりを付ける」は”終わりを迎える”ことを表すようになったのです。

例えば、「この仕事は長引く前に、早めにけりを付けたほうが無難だ」は、この仕事は長引かせると大変そうだから、早く終わらせたほうがいいだろうの意味になります。

「狼煙を上げる」の意味を理解して正しく使ってみよう!

この記事では「狼煙を上げる(のろしをあげる)」の意味や由来・使い方・類語・対義語などを説明しました。「狼煙を上げる」は、「狼の糞を火種とした煙を合図に行動した」という由来から生まれた”何か大きな動きのきっかけとなる行動を起こす”という意味の言葉でしたね。

ほかにも「火蓋を切る」「幕を切って落とす」などのはじまりを表す類語、「ピリオドを打つ」「けりを付ける」などのおわりを意味する反対の言葉も勉強しました。生きていれば、沢山のおわりとはじまりがあるでしょう。「狼煙を上げる」と併せて、場面に応じてぜひ使ってみてください。

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なぜ”狼”?「狼煙を上げる」の正しい意味や由来・使い方・類語など現役日本語教師がわかりやすく解説

この記事では「狼煙を上げる」を勉強していきます。

「狼煙を上げる」は「のろしをあげる」と読むんです。意味は「大きな動きを起こすきっかけとなる行動をすること」です。ところで、狼煙に”狼”という字が用いられているのはなぜか、気にならないか?今回は言葉の由来までしっかり押さえていけ。

正しく自信を持って使えるように、「狼煙を上げる」の使い方や言葉の意味について、現役日本語教師のスヨメナと一緒に解説していきます。

ライター/スヨメナ

現役日本語教師。対面、オンライン問わず、世界中の国の人に日本語を教えている。ブログでも相手の立場に立って考え、わかりやすく発信していく。

「狼煙を上げる」の意味・由来は?

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ここでは「狼煙を上げる」の言葉の意味と由来を覚えていきましょう。

1.合図のため、のろしの煙をあげる。
2.大きな動きのきっかけとなる行動を起こす。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「狼煙を上げる」

まず「狼煙(のろし)」の意味は、”合図のために薪などを燃やして上がっていく煙”のことです。「狼煙」は古くから戦いにおいて、連絡用の合図として用いられました。中国や日本だけでなくヨーロッパやアメリカでも使われていたそうです。「狼煙」が行動の合図ですから、転じて「狼煙を上げる」とは、”大きな動きのはじまりとなる行動を起こすこと”の意味になりますね。

なぜ”狼”の字が使われている?由来も知りたい!

「狼煙(のろし)」には、”狼”(オオカミ)という字が使われいます。なぜ”狼”が使われているのでしょうか。それは昔、中国で「狼の糞を火種にすると、強い風が吹いても煙がまっすぐ上がる」と言われており、煙を上げるときには実際に狼の糞を利用してきたからです。意外だったでしょうか。狼の煙で「狼煙」、これがこの言葉の由来です。

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