
地獄は1つじゃない?
仏教に登場する地獄は「無間地獄」や「阿鼻地獄」と呼ばれていますが、実際にはほかの呼び名で呼ばれる別の地獄があるとされています。
すべての地獄の最下層に位置するのが阿鼻地獄で、その上に大焦熱、焦熱、大叫喚、叫喚、衆合、黒縄、等活という7つの地獄があるのです。これらは八大地獄と呼ばれ、それぞれ罪人の性質が異なるとされています。また、この八大地獄にはそれぞれ4つの門があり、それぞれの門に4つずつ小地獄があるそうです。この小地獄と八大地獄を合わせて百三十六地獄と呼ばれています。
一般的に「地獄に落ちる」などとひとくくりにされていますが、実際にはここまで細かく細分化されているのですね。ちなみに、牛頭馬頭はこの中のどの地獄にも現れるようです。
動物をモチーフにした神話

牛頭馬頭はそれぞれ、牛の頭、馬の頭をした空想上の人物です。洋の東西を問わず、動物がモチーフになった神話の登場人物はいくつもあり、中には牛や馬をモチーフにした牛頭馬頭以外のものもあります。特に、牛をモデルにした怪物は多く見られるようです。いくつかみていきましょう。
「牛鬼」
日本の昔話に登場する鬼で、おそらく牛頭馬頭から派生したものと考えられます。
牛の頭に鬼の体をもつ鬼で、体の部分は蜘蛛として描かれることもあるようです。牛頭とよく似ていますが、こちらはあくまでも現世に現れる鬼とされています。各地にたくさんの伝承が残っていますが、多くは水辺にゆかりのある物語です。これは、牛が水田での作業に使われていたことが影響していると考えられているようですね。
多くの場合、残忍で気性が荒く恐ろしい鬼として描かれており、そのあたりも地獄の獄卒である牛頭に由来していることがうかがえます。
「馬鬼」
馬もまた、馬頭ではなく鬼として描かれている伝承があります。
ただし、牛鬼とは違い、武将の馬が霊となって現れたものを馬鬼と呼んでいました。そのため、絵画などに描かれる姿も人の形ではなく、異形の馬である場合がほとんどです。
また、馬鬼とは違いますが、馬頭も地獄の獄卒ではなく百鬼夜行の一員として徘徊する妖怪のひとつとして描かれていることもあります。
「ミノタウロス」
こちらは日本ではなく、ギリシャ神話に登場する牛の怪物です。
牛頭と同じく、頭部が牛、体が人間の姿で描かれており、神話では恐ろしい暴君とされています。あまりに凶暴なため、父親であるミノス王に迷宮へ幽閉されたのち、英雄テセウスに退治されてしまったそうです。
「ケンタウロス」
ミノタウロスと同じくギリシャ神話に登場する怪物で、馬の下半身に人の上半身が合体した姿をしています。特定の人物を指す言葉ではなく、半人半獣の種族の名前として、ケンタウロス族と呼ばれています。好色で野蛮な者が多いとされていますが、賢者として讃えられる者もおり、必ずしも恐ろしい怪物ではありません。
興味深いことに、哲学者として知られるイタリアのダンテが著した叙事詩「神曲」地獄篇では、ケンタウロスは地獄の獄卒として描かれています。東洋文化である馬頭と共通していますが、その姿は馬頭とは反対です。
\次のページで「「猪八戒」」を解説!/