今回は「サーカディアン・リズム」について解説していきます。

サーカディアンリズムという言葉を初めて聞くという人もいるでしょう。簡単に言えば、人間の体内時計という意味になるな。俺たちは、おおよそ24時間のサイクルで活動している。そして1日のうちで決まった時間に眠くなったり、空腹を感じたりする。実は、これはサーカディアンリズムが影響しているからなんです。この記事では、サーカディアンリズムが調節される仕組みと関連する疾患について詳しく説明していく。ぜひ、この機会に学習していってくれ。

理系大学生のkaraageChuripと一緒に解説していきます。

ライター/karaageChurip

現役理系大学生。大学では日々保健について学んでいる。自分が疑問に思ったことを調べたり、それを他の人に伝えるのが好き。伝えたいことを分かりやすく説明する方法をいつも模索している。

サーカディアンリズムとは

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私たちはご飯の時間になるとだいたいいつもお腹が空き、夜になると同じ時間に眠くなります。逆に空腹を感じる時間の間隔がバラバラだったり、週に1回しか眠らないというような人はなかなかいませんよね。

このように毎日おなじ時間帯に決まった活動ができるのは、私たちの体内時計が「サーカディアンリズム」とよばれる機構によって調節されているからなんです。

サーカディアンリズムとはおおよそ1日周期の体内時計のことを意味し、別名「概日リズム」とも言われています。これは食事や運動、睡眠など日々の基本的な活動を生物が24時間周期でくり返していくために重要な機構です。サーカディアンリズムをつくりだしている主な場所は、脳内の間脳視床下部にある視交叉上核という部分で、ここからでる信号がカラダ全体の時間を同期しています。間脳視床下部の視交叉上核というとなにやらむずかしそうな専門用語のように聞こえますが、これは両目の裏側から出ている視神経という神経が交差する部分に存在する組織のことを指しているのですよ。そのため、サーカディアンリズムに影響する因子としては、起床・睡眠・食事・運動の他に昼夜の明暗などの視覚的な環境要因も含まれるのです。

では、このサーカディアンリズムがうまく機能しなくなると、いったいどのような不都合が現れるでしょうか。つぎの項で詳しく見ていきましょう。

サーカディアンリズムが乱れると出てくるへい害

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現代は夜でも街中は明るかったり、娯楽のために夜更かしをしたり、夜勤があったりとなかなか規則正しい生活が送れず、サーカディアンリズムが狂いやすい傾向にありますね。朝ごはんを抜いたり、徹夜をしてしまったり…。このような生活が続くと、眠る時間がどんどんずれていって概日リズム睡眠障害という状態に陥ったり、ホルモン分泌異常になったり、心血管疾患糖尿病の発症リスクが上昇してしまうなど、様々なデメリットが生じてしまうのです。

概日リズム睡眠障害

この障害を厚生労働省はつぎのように定義しています。

ヒトの体内時計の周期は約25時間であり、地球の周期とは約1時間のずれがあります。このずれを修正できず、睡眠・覚醒リズムに乱れが生じたために起こる睡眠の障害を概日リズム睡眠障害と呼びます。

 

引用:e-ヘルスネット(厚生労働省)「睡眠・覚醒リズム障害」

これは生活リズムが不規則になってしまった若者、特に中高生や大学生にも多い症状ではないでしょうか。わたしもストレス解消のため夜中に趣味に没頭してしまい、最終的に昼夜逆転生活におちいった過去があります。寝る前に”ちょっとだけ”のつもりで娯楽を始めると、いつの間にか何時間も過ぎていることってありますよね。

このように睡眠時間が後ろ倒しになってしまっている状態を睡眠相後退症候群、反対に睡眠時間が前のめりになっている状態のことを睡眠相前進症候群といいます。後者は高齢者におおく、早寝しすぎて夜中に目が覚め寝つけないことがよくあるようです。

他にも、勤務中に注意力低下と眠気がおこる交代勤務睡眠障害は看護師のような交代勤務のある人に、眠る時間が毎日30~60分ずつずれていく非24時間睡眠覚醒症候群は視覚障害者におおい傾向。完全に睡眠に規則性が見られなくなることは不規則型睡眠覚醒パターンといいます。

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ホルモン分泌異常

体内時計の調節には、ホルモンもかかわっています。「メラトニン」というホルモンは夜になるとたくさん分泌され、催眠効果を発揮するのです。昼間は太陽の光を浴びることで「セロトニン」というホルモンが作られますね。セロトニンはメラトニンの材料となるホルモンなので、この2つのホルモンの分泌量は光の量によって調整されているのです。ところが、睡眠障害や昼夜逆転など極端な生活で体が光を感じられなくなると、セロトニン合成→メラトニン合成の流れが止まり、夜になっても眠れず、症状が悪化してしまいます。

サーカディアンリズムの乱れは血糖値にも悪影響を与えるのですよ。食後、生物の血糖値は上昇しますが通常はこれを「インスリン」というホルモンが抑制し、血糖値を健康的なレベルに保っています。インスリンは食事時間が乱れると分泌能力が低下し、これにより血糖値の急激な上昇がおこってしまうのです。ある研究では、体内時計をコントロールしている遺伝子が各細胞内に存在しており、この遺伝子が発現していない個体ではインスリン分泌が食事時刻にマッチせず高血糖になりやすいということが分かっています。ご存じのように、高血糖であることは糖尿病発症リスクが高いということですよね。つまり、体内時計が壊れていると肥満や糖尿病になりやすいということですね。

食欲、食事時間に加えホルモンの分泌量・時間が合わさっていると、効果的に消化吸収が行われ各種臓器に負担をかけずに健康的な生活ができるというわけです。

心血管疾患

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人間の血圧は夜になると下がり、朝になると上昇していきます。夜間は安静状態で副交感神経優位となるため血圧が下がり、朝は起床後の活動に向けて交感神経優位となりそれに伴って血圧が上昇するからです。交感神経・副交感神経とは自律神経のことですが、サーカディアンリズムが乱れるとこの自律神経が乱れ、血圧上昇・低下ののタイミングが崩れてしまいます。このときに問題となるのは、夜間の高血圧です。高血圧は動脈硬化症や心筋梗塞などの心臓と血管の病気の原因になることが多いのですよ。

高血圧と聞くとつい食塩の過剰摂取のことばかり気になってしまいますが、合わせて体内時計が大きく乱れていないかということにも注意を向けていたいものです。

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\次のページで「サーカディアンリズムをリセットする方法」を解説!/

サーカディアンリズムをリセットする方法

サーカディアンリズムのリセットで重要なポイントは、ズバリ「睡眠ホルモン」です。体内時計は光に感受性があり、それに身体が同調するように調整されていることはもう学習しましたね。

身体が寝るモード・起きてるモードを決めるには、光によって変化するホルモン量がカギとなるのです。

太陽光を浴びる

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朝日を浴びると身体が起きるモードに切り替わり、反対に夕方の太陽光は身体を徐々に寝るモードへ変化させるということが分かっています。また、睡眠ホルモン「メラトニン」のもとになる幸せホルモン「セロトニン」は、太陽光に当たると活発に生成されますね。メラトニンの合成には必ずセロトニンを要しますから、昼間のうちにお日さまの光を浴びておいてたくさんセロトニンを作っておきましょう。

食事を抜かない、きちんと食べる

食事も体内時計の同期に寄与していることはお話ししましたね。毎日3食きっちり食べる人はインスリンが多く放出される時間帯も食事の時間帯に同調しているため、食後に効率よく血糖値を下げることができています。とくに朝ごはんを食べるとインスリン分泌のリズムが整いますよ。忙しい朝はついつい食事を抜いてしまうものですが、せめて簡単にバナナと牛乳だけでも取るのがオススメ。これらの食材にはセロトニンのもとになるトリプトファンが多く含まれますから、摂食してから昼間は明るい場所で活動することで夜のメラトニン合成に役立ちます。

明るい夜を避ける

明るい夜を避けるとは、電子機器の液晶画面や強い照明など人工の光に囲まれた環境に遅くまで身を置かないようにしよう、という意味です。世間でも質の高い睡眠を求めて、スマホやパソコンから距離を置くデジタルデトックスがはやっていますね。これらの液晶画面やLEDライトから発せられている光にはブルーライトが含まれます。ブルーライトは太陽光にも多く含まれているため、夜間に目がブルーライトを受容すると「今は昼間なのかな?」と誤った情報が身体に伝わってしまい、メラトニン分泌が抑制され眠らない方向へシフトしてしまうのです。

デジタルデトックスとまではいかなくても、眠る1~2時間前から「明るい夜」を控えれば規則正しい睡眠時間がえられるかもしれません。

治療が必要な場合は病院受診を

上記でサーカディアンリズムの乱れによるへい害やサーカディアンリズムのリセット法を紹介してきました。「単なる生活リズムの乱れでしょ」と甘く見ずに、不規則な生活を続けるのは体に悪いのだということが理解できましたね。健康な人で、最近夜更かしが続いているとか昨日食事を抜いてしまったという人は、ぜひ何度かリセット方法を試してみてください。

すでに重とくな睡眠障害やホルモン分泌異常になってしまった人は工夫だけで治していくのは困難です。眠りにつく時間が明らかにおかしい場合は、ぜひ病院を受診してください。

サーカディアンリズムがあるおかげで、日々健康的に過ごしていられることが分かったと思います。私たちの生活には、間違いなく必要不可欠な機能ですよね。ぜひこの機会に、私たちの体に対する理解を深めてみてください。

イラスト使用元:いらすとや

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理科環境と生物の反応生物

3分で簡単「サーカディアン・リズム」生活リズムが崩れると危険?理系大学生が分かりやすく説明

今回は「サーカディアン・リズム」について解説していきます。

サーカディアンリズムという言葉を初めて聞くという人もいるでしょう。簡単に言えば、人間の体内時計という意味になるな。俺たちは、おおよそ24時間のサイクルで活動している。そして1日のうちで決まった時間に眠くなったり、空腹を感じたりする。実は、これはサーカディアンリズムが影響しているからなんです。この記事では、サーカディアンリズムが調節される仕組みと関連する疾患について詳しく説明していく。ぜひ、この機会に学習していってくれ。

理系大学生のkaraageChuripと一緒に解説していきます。

ライター/karaageChurip

現役理系大学生。大学では日々保健について学んでいる。自分が疑問に思ったことを調べたり、それを他の人に伝えるのが好き。伝えたいことを分かりやすく説明する方法をいつも模索している。

サーカディアンリズムとは

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私たちはご飯の時間になるとだいたいいつもお腹が空き、夜になると同じ時間に眠くなります。逆に空腹を感じる時間の間隔がバラバラだったり、週に1回しか眠らないというような人はなかなかいませんよね。

このように毎日おなじ時間帯に決まった活動ができるのは、私たちの体内時計が「サーカディアンリズム」とよばれる機構によって調節されているからなんです。

サーカディアンリズムとはおおよそ1日周期の体内時計のことを意味し、別名「概日リズム」とも言われています。これは食事や運動、睡眠など日々の基本的な活動を生物が24時間周期でくり返していくために重要な機構です。サーカディアンリズムをつくりだしている主な場所は、脳内の間脳視床下部にある視交叉上核という部分で、ここからでる信号がカラダ全体の時間を同期しています。間脳視床下部の視交叉上核というとなにやらむずかしそうな専門用語のように聞こえますが、これは両目の裏側から出ている視神経という神経が交差する部分に存在する組織のことを指しているのですよ。そのため、サーカディアンリズムに影響する因子としては、起床・睡眠・食事・運動の他に昼夜の明暗などの視覚的な環境要因も含まれるのです。

では、このサーカディアンリズムがうまく機能しなくなると、いったいどのような不都合が現れるでしょうか。つぎの項で詳しく見ていきましょう。

サーカディアンリズムが乱れると出てくるへい害

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現代は夜でも街中は明るかったり、娯楽のために夜更かしをしたり、夜勤があったりとなかなか規則正しい生活が送れず、サーカディアンリズムが狂いやすい傾向にありますね。朝ごはんを抜いたり、徹夜をしてしまったり…。このような生活が続くと、眠る時間がどんどんずれていって概日リズム睡眠障害という状態に陥ったり、ホルモン分泌異常になったり、心血管疾患糖尿病の発症リスクが上昇してしまうなど、様々なデメリットが生じてしまうのです。

概日リズム睡眠障害

この障害を厚生労働省はつぎのように定義しています。

ヒトの体内時計の周期は約25時間であり、地球の周期とは約1時間のずれがあります。このずれを修正できず、睡眠・覚醒リズムに乱れが生じたために起こる睡眠の障害を概日リズム睡眠障害と呼びます。

 

引用:e-ヘルスネット(厚生労働省)「睡眠・覚醒リズム障害」

これは生活リズムが不規則になってしまった若者、特に中高生や大学生にも多い症状ではないでしょうか。わたしもストレス解消のため夜中に趣味に没頭してしまい、最終的に昼夜逆転生活におちいった過去があります。寝る前に”ちょっとだけ”のつもりで娯楽を始めると、いつの間にか何時間も過ぎていることってありますよね。

このように睡眠時間が後ろ倒しになってしまっている状態を睡眠相後退症候群、反対に睡眠時間が前のめりになっている状態のことを睡眠相前進症候群といいます。後者は高齢者におおく、早寝しすぎて夜中に目が覚め寝つけないことがよくあるようです。

他にも、勤務中に注意力低下と眠気がおこる交代勤務睡眠障害は看護師のような交代勤務のある人に、眠る時間が毎日30~60分ずつずれていく非24時間睡眠覚醒症候群は視覚障害者におおい傾向。完全に睡眠に規則性が見られなくなることは不規則型睡眠覚醒パターンといいます。

image by Study-Z編集部

ホルモン分泌異常

体内時計の調節には、ホルモンもかかわっています。「メラトニン」というホルモンは夜になるとたくさん分泌され、催眠効果を発揮するのです。昼間は太陽の光を浴びることで「セロトニン」というホルモンが作られますね。セロトニンはメラトニンの材料となるホルモンなので、この2つのホルモンの分泌量は光の量によって調整されているのです。ところが、睡眠障害や昼夜逆転など極端な生活で体が光を感じられなくなると、セロトニン合成→メラトニン合成の流れが止まり、夜になっても眠れず、症状が悪化してしまいます。

サーカディアンリズムの乱れは血糖値にも悪影響を与えるのですよ。食後、生物の血糖値は上昇しますが通常はこれを「インスリン」というホルモンが抑制し、血糖値を健康的なレベルに保っています。インスリンは食事時間が乱れると分泌能力が低下し、これにより血糖値の急激な上昇がおこってしまうのです。ある研究では、体内時計をコントロールしている遺伝子が各細胞内に存在しており、この遺伝子が発現していない個体ではインスリン分泌が食事時刻にマッチせず高血糖になりやすいということが分かっています。ご存じのように、高血糖であることは糖尿病発症リスクが高いということですよね。つまり、体内時計が壊れていると肥満や糖尿病になりやすいということですね。

食欲、食事時間に加えホルモンの分泌量・時間が合わさっていると、効果的に消化吸収が行われ各種臓器に負担をかけずに健康的な生活ができるというわけです。

心血管疾患

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人間の血圧は夜になると下がり、朝になると上昇していきます。夜間は安静状態で副交感神経優位となるため血圧が下がり、朝は起床後の活動に向けて交感神経優位となりそれに伴って血圧が上昇するからです。交感神経・副交感神経とは自律神経のことですが、サーカディアンリズムが乱れるとこの自律神経が乱れ、血圧上昇・低下ののタイミングが崩れてしまいます。このときに問題となるのは、夜間の高血圧です。高血圧は動脈硬化症や心筋梗塞などの心臓と血管の病気の原因になることが多いのですよ。

高血圧と聞くとつい食塩の過剰摂取のことばかり気になってしまいますが、合わせて体内時計が大きく乱れていないかということにも注意を向けていたいものです。

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