この記事では「矢面に立つ」について解説する。

端的に言えば「矢面に立つ」の意味は「非難を受ける立場に立つこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

年間60冊以上本を読み込んでいるヤマゾーを呼んです。一緒に「矢面に立つ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマゾー

ビジネス本を中心に毎年60冊読破。本を通じて心に響く生きた日本語を学ぶ。誰にでも分かりやすい説明で慣用句を解説していく。

「矢面に立つ」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「矢面に立つ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「矢面に立つ」の意味は?

「矢面に立つ」には、次のような意味があります。

抗議・質問・非難などを受ける立場に立つ。 

出典:大辞林 第三版(三省堂)「矢面に立つ」

「矢面(やおもて)」とは、非難や抗議をまともに受ける立場のこと。そのような場所に「立つ」わけですから、「矢面に立つ」ということは、いかに勇気がいることか想像できるのではないでしょうか。たとえば、会社がなにか不祥事を起こした場合、上司やプロジェクトチームのリーダーなど、責任者が記者会見で質問に答える姿をニュースでみたことがあるかと思います。あのような役を務めることを「矢面に立つ」と表現することができますね。

また、「矢面に立つ」のは責任者だけとは限りません。とくに、組織で物事に取り組む場合、たった一人の社員の行動によって、世間を騒がす問題に発展するとは考えられません。つまり、問題を起こした張本人でなかったとしても、身代わりとなって質問に答える場合も十分にあり得るということです。組織を守るために、自ら敵の盾となる。そのような行動が「矢面に立つ」といえるでしょう。

「矢面に立つ」の語源は?

次に「矢面に立つ」の語源を確認しておきましょう。「矢面」の本来の意味は、敵の矢が飛んでくる正面のこと。そのため「矢面に立つ」とは、敵が放った矢から仲間を守るために、正面から立ちはだかる様子を差していました。しかし、当たり前のことではありますが、現在は戦国時代ではありません。「矢」が「非難」や「抗議」へと変化し、相手の攻撃を真正面から受ける立場のことを「矢面に立つ」というようになったのです。つまり、自分の背後に守るべきものがあるからこそ、「矢面に立つ」といえますね。

\次のページで「「矢面に立つ」の使い方・例文」を解説!/

「矢面に立つ」の使い方・例文

「矢面に立つ」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.不祥事により、責任者が矢面に立たされている。

2.矢面に立つと決心したはずの上司が、雲隠れしてしまった。

3.真相が究明されていない状態で、矢面に立つべきではない。

「矢面に立つ」は、自ら敵の矢を受け止めにいく場合にだけ使うとは限りません。本来であれば、不祥事を起こした場合、プロジェクトの責任者が「矢面に立つ」のが一般的といえます。しかし、本人が責任を取りたくないことから、逃げ回っていたとしましょう。そのような場合に「矢面に立つはずの上司が、質問を拒否している」などと表現してもよいですね。

また、近年では、些細な出来事に対しても世間が過敏に反応し、代表者を激しく非難することがあります。そのような状況では、大抵は誤解を解くために、記者会見などで真実を話すことが多いのではないでしょうか。ただし、安易に「自分たちが悪い」と認めてしまうと、関係者が傷つくだけの結果で終わるかもしれません。「今は矢面に立つべきではない」と、アドバイスとして使うこともできます。誰が責任をとるべきなのか、明確になった場合に「矢面に立つ」を使ってみてください。

「矢面に立つ」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

では、「矢面に立つ」の類義語をみていきましょう。

「難局に立つ」

「難局(なんきょく)」とは、困難な局面のこと。すなわち、重大な問題が迫っており、処理が難しくなっている場面を差しているといえますね。そのため「難局に立つ」とは、処理が難しい状況に立っているといえます。これからどのように進むべきか、それとも解決する方法はあるのか、非常に頭を悩ませている状態といえるでしょう。

「矢面に立つ」は、抗議を受ける立場のことでしたが、「難局に立つ」は、問題が解決できず立ち往生している状況といえます。しかし、難局に直面したとしても、解決策によっては状況が良くなるかもしれません。「難局に立つ」ことは、ある意味チャンスでもあり、決して悪いことばかりではないといえますね。

\次のページで「「非難を浴びる」」を解説!/

「非難を浴びる」

矢面に立ったならば、「非難を浴びる」ことは避けられないでしょう。「非難を浴びる」の「浴びる」は、感情的な発言や質問を続けて受けるという意味。「非難」とは、人の欠点や過失を責めることでしたよね。「非難を浴びる」は文字通り、相手の言葉を休む暇なく受け止め続ける状況を差します。

記者会見などで罵声が飛び交い、責任者が過失を責められ続けている状況を「非難を浴びた」などと表現するとよいでしょう。誰か非難を浴びているならば、なにか問題を起こした、もしくは過ちを犯した可能性があります。ニュースで「非難を浴びる」という言葉を見かけたら、ぜひ内容に注目してみてください。

「矢面に立つ」の対義語は?

「矢面に立つ」の意味は「抗議や避難を受ける立場に立つこと」でした。反対の意味となると、そのような立場を「避ける」となるはずです。そこで今回は、責任から「逃れる」もしくは「隠れる」といった意味合いで「矢面に立つ」の対義語をみていきましょう。

「矛先をかわす」

「矛先」とは、「矛」と呼ばれる刃物の先端のこと。矛先を向けるということは、敵を「攻撃している」ということになりますね。そのような様子から転じて、「矛先」は「攻撃」もしくは「攻撃の方向」を差すようになりました。「矛先をかわす」とは、非難や抗議などから逃れること。問い詰められていたとしても、上手く反論して攻撃を避ける様子を想像するとよいでしょう。

ちなみに、「矛先」は「攻撃」という意味であることから、その他にも様々な場面で使われています。たとえば、攻撃することを「矛先を向ける」といいますし、抗議などの勢いが弱まることを「矛先が鈍る」と表現してもよいでしょう。抗議を上手に論破する人をみかけたら「矛先をかわす」を使ってみてください。

「雲隠れ」

「雲隠(くもがく)れ」には、3つの意味があります。まず1つ目は文字通り、雲の中に隠れること。2つ目は、高貴な人が亡くなること。3つ目の意味は、行方をくらますことです。そのため、責任者が「雲隠れ」してしまったら大変ですよね。代理で誰かが矢面に立たなければいけなくなるでしょう。

言葉の並びからして、美しい自然風景を思い浮かべるかもしれませんが、「雲隠れ」という行動は感心できるものでありません。「雲隠れしている」と言われているならば、「責任逃れをしている」と言われているようなものです。自己の責任であるならば、「雲隠れ」だけは避けるべきでしょうね。

「矢面に立つ」の英訳は?

image by iStockphoto

では、「矢面に立つ」を英語訳すると、どのような表現があるのでしょうか。

「bear the brunt of」

「bear」という単語は「クマ」を差しているわけではありません。「bear」は「出産」という意味のほかに、「抱く」や「耐える」という意味もあります。「brunt」は「矛先」という意味であり、つまり「攻撃」を差しているといえますね。「bear the brunt of~」で「~の矢面に立つ」として使うことができるでしょう。たとえば「He has borne the  brunt of criticism」といえば「彼は批判の矢面に立っている」と伝えることができます。

\次のページで「「矢面に立つ」を使いこなそう」を解説!/

「矢面に立つ」を使いこなそう

この記事では「矢面に立つ」の意味・使い方・類語などを説明しました。「矢面に立つ」は、追い込まれた状況を表すのに便利な慣用句です。やはり、多くの物事に関わっている人ほど、責任を問われる機会は多くなるもの。「矢面に立つ」という大変さは、経験した人でしか分からないかもしれません。しかし、規模関係なく、SNSの普及により、誰もが「矢面に立つ」機会が増えてきたといえます。

批判や抗議を真正面から受け止めるということは、あなたの背後に守りたい何かがあるからこそといえるでしょう。守りたいものが自身のプライドなのか、それとも家族や仲間のためなのか、敵と戦うのには必ず理由があるはずです。責任を取るとは一体どういうことなのか、「矢面に立つ」を使って、この機会に一度考えてみてはいかがでしょうか。

" /> 【慣用句】「矢面に立つ」の意味や使い方は?例文や類語を本の虫ライターがわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

【慣用句】「矢面に立つ」の意味や使い方は?例文や類語を本の虫ライターがわかりやすく解説!

この記事では「矢面に立つ」について解説する。

端的に言えば「矢面に立つ」の意味は「非難を受ける立場に立つこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

年間60冊以上本を読み込んでいるヤマゾーを呼んです。一緒に「矢面に立つ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマゾー

ビジネス本を中心に毎年60冊読破。本を通じて心に響く生きた日本語を学ぶ。誰にでも分かりやすい説明で慣用句を解説していく。

「矢面に立つ」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「矢面に立つ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「矢面に立つ」の意味は?

「矢面に立つ」には、次のような意味があります。

抗議・質問・非難などを受ける立場に立つ。 

出典:大辞林 第三版(三省堂)「矢面に立つ」

「矢面(やおもて)」とは、非難や抗議をまともに受ける立場のこと。そのような場所に「立つ」わけですから、「矢面に立つ」ということは、いかに勇気がいることか想像できるのではないでしょうか。たとえば、会社がなにか不祥事を起こした場合、上司やプロジェクトチームのリーダーなど、責任者が記者会見で質問に答える姿をニュースでみたことがあるかと思います。あのような役を務めることを「矢面に立つ」と表現することができますね。

また、「矢面に立つ」のは責任者だけとは限りません。とくに、組織で物事に取り組む場合、たった一人の社員の行動によって、世間を騒がす問題に発展するとは考えられません。つまり、問題を起こした張本人でなかったとしても、身代わりとなって質問に答える場合も十分にあり得るということです。組織を守るために、自ら敵の盾となる。そのような行動が「矢面に立つ」といえるでしょう。

「矢面に立つ」の語源は?

次に「矢面に立つ」の語源を確認しておきましょう。「矢面」の本来の意味は、敵の矢が飛んでくる正面のこと。そのため「矢面に立つ」とは、敵が放った矢から仲間を守るために、正面から立ちはだかる様子を差していました。しかし、当たり前のことではありますが、現在は戦国時代ではありません。「矢」が「非難」や「抗議」へと変化し、相手の攻撃を真正面から受ける立場のことを「矢面に立つ」というようになったのです。つまり、自分の背後に守るべきものがあるからこそ、「矢面に立つ」といえますね。

\次のページで「「矢面に立つ」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: