今回は、アルビノと白変種について説明していきます。ペットショップや動物園などで、通常の色と異なる全身白色の生き物を見たことがあるでしょうか。白いトカゲ、ヤマアラシを見たことがあるのですが、びっくりしたのと同時に美しさとはかなさを感じた。

なぜ色のついていない白い個体が生まれるかというと、遺伝子の変異があるからなんです。遺伝情報と形質発現の観点から白変種とアルビノについて医学系研究所の研究アシスタントで生物に詳しいライターmimosa(ミモザ)と一緒に解説していきます。

ライター/mimosa

もともと文系出身で、現在医学系研究所の研究アシスタントとして理系の世界へ飛び込んだ。理科が苦手な方へも興味を持ってもらうべくわかりやすい説明を心掛けている。

アルビノと白変種(リューシスティック)の違いとは?

アルビノも白変種も見た目は同じ白色個体なのですが、全く遺伝学的にも生理学的にも違うのですよ。以下、何が違うのか説明していきますね。

アルビノとは?

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アルビノ(白化個体)は、メラニンを作り出すことができません。メラニンの生合成に関わる遺伝情報の欠損により生まれつきメラニンが欠乏する遺伝子疾患です。毛細血管が透けて目が赤色に見えます。

写真はアルビノのワニです。ヘビやハリネズミ、実験用のマウスのアルビノ種は有名かと思いますよ。アルビノ個体なので、名前に「シロ○○」とは言いません。他にも、通称「白コリ」の名前で知られている熱帯魚のコリドラスのアルビノ種は大変人気です。

白変種とは?

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白変種とは、色素の減少によって体毛や皮膚が白くなった動物のことです。アルビノと異なる点は、白変種は色素が少ないだけでメラニンを生成することはできます。そのため、体が白くても鼻周りや目などは黒いのがわかるでしょう。なぜ白変種が存在するのか、これまでは遺伝子の突然変異だと考えられていました(諸説あり)。しかし現在では、遠い昔、氷河期の氷や雪で覆われていた頃に、真っ白な体は保護色になり、生きる上で天敵から身を守るために有利になっていました。進化の過程でその遺伝子が現在まで残っているという説が考えられています。

写真はシロクジャクです。他に白色の個体として有名なものとしてホワイトライオン、ホワイトタイガーなどがありますがこちらもアルビノではなく白変種ですよ。ちなみに、ホッキョクグマ、ホッキョクギツネ、ハクチョウなどのように、生息環境の影響から白変種が集団の中心となっているというものもあります。

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アルビノの特徴

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アルビノは生まれつきメラニンという色素をもっていないので、弱視などの視力障害をともなっていることが多いです。そのため、屋外での活動に制限があります。紫外線を吸収するメラニンという色素が欠乏しているので、他の人より日光をまぶしく感じますよ。普通、日光に当たり、日焼け程度で済むことろが、皮膚が真っ赤に腫れやけど状態になり、皮膚がんにかかるリスクも上がるのです。

見た目としては、肌は乳白色で、血液が透けて薄紅色に見え、目も毛細血管が透けて赤く見えます。体が白くて目立つので敵にねらわれやすいこと、紫外線からのダメージを大きく受けることなど、野生の中で生き抜くことは他の個体よりもハード。なので、人工飼育にしても他の個体よりは難しいのですよ。

アルビノにまつわる話

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そんな珍しい白色のアルビノの個体は昔から神聖な動物として扱われていました。シロヘビなどがその例ですね。

ヒトでもアルビノは昔から特別な存在として扱われていました。アフリカでは、その見た目の珍しさから、権力や幸福、健康を得るための薬の原料として殺害されているとのことです。これは俗にアルビノ狩りと言われています。残忍で悲しいことが今でもアフリカ東部では起きているのですよ。

アルビノの遺伝情報と形質発現

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アルビノ個体は、遺伝子の変異によって発現すると上記で述べましたが、遺伝子から形質がどのようにして発現するのか簡潔に説明しますね。まず、遺伝子DNAに書き込まれた遺伝暗号がRNAという物質へ写され(転写)、RNAに写された遺伝暗号(塩基配列)がアミノ酸の配列に読み替えられてタンパク質が合成される(翻訳)という順番で進みます。このことを、セントラルドグマといいますよ。

形質発現のためのタンパク質合成のためにRNAが使われます。RNAは働きによって、伝達RNA(mRNA)転移RNA(tRNA)リボソームRNA(rRNA)がありますよ。mRNAは、DNAの塩基配列を写し取り、タンパク質合成のアミノ酸配列の順序を伝達します。tRNAは、活性アミノ酸をリボソーム上へ運搬しますよ。mRNAは、タンパク質合成の場所ですよ。アミノ酸は形質発現のためのタンパク質を合成するのに必要不可欠ですね。

酵素タンパク質による形質発現

酵素タンパク質による形質発現

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できるタンパク質が酵素の場合には、その働きで物質代謝が行われ、特定の生成物が出来てそれによって形質発現します。1945年にアメリカのビードルとテイタムは、アカパンカビの突然変異株を用いて実験を行い、1つの遺伝子は1つの酵素合成を支配するという一遺伝子一酵素説を立てました。この学説は、ヒトのいくつかの遺伝病の原因解明に応用されてきました。

酵素だけでなく、生体を構成する様々なタンパク質も遺伝子から合成されている点を考慮し、1つの遺伝子は1種類のポリペプチド鎖の構造を決定するとした一遺伝子ポリペプチド説も後に提唱されました。

\次のページで「アルビノを含む遺伝子疾患治療への道」を解説!/

アルビノを含む遺伝子疾患治療への道

これまで説明してきたように、同じ白色の個体でも、環境に適合し生き延びるために進化の過程で受け継いだ白変種。逆に自然界で生きる上で困難を抱えるアルビノ。脊椎(セキツイ)動物であれば確率は低いですが生まれる可能性はあります。白い個体である同じ脊椎動物なのでヒトもそうです。肌の色で区別された、黒人、白人、私たちアジア人のような黄色人種。ヒトのアルビノは白人よりもずっと色素が薄いのです。

日本では眼皮膚白皮症として難病に指定されています。現在、治療法はありません。アルビノ以外にも難病に指定されている遺伝子疾患は存在します。様々な生物のフルゲノム解析が進む中、まだわかっていない遺伝子の謎が解けると治療法が見つかる可能性がありますよ。現在、未来の進行形の科学の力に期待することとしましょう。

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理科生物生物の分類・進化

3分で簡単にわかる「アルビノ」と「白変種」の違い!遺伝子と形質発現も医学系研究アシスタントがわかりやすく解説

アルビノを含む遺伝子疾患治療への道

これまで説明してきたように、同じ白色の個体でも、環境に適合し生き延びるために進化の過程で受け継いだ白変種。逆に自然界で生きる上で困難を抱えるアルビノ。脊椎(セキツイ)動物であれば確率は低いですが生まれる可能性はあります。白い個体である同じ脊椎動物なのでヒトもそうです。肌の色で区別された、黒人、白人、私たちアジア人のような黄色人種。ヒトのアルビノは白人よりもずっと色素が薄いのです。

日本では眼皮膚白皮症として難病に指定されています。現在、治療法はありません。アルビノ以外にも難病に指定されている遺伝子疾患は存在します。様々な生物のフルゲノム解析が進む中、まだわかっていない遺伝子の謎が解けると治療法が見つかる可能性がありますよ。現在、未来の進行形の科学の力に期待することとしましょう。

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