
濡れとは一見、身近なものであるようで現象としてはとても難しい。傘の水のはじき方や車のフロントガラスの液体の挙動と多種多様です。
今回は濡れの評価手法から、種類、制御方法について、原理から実用例まで理系大学院卒ライターこーじと一緒に解説していきます。
ライター/こーじ
元理系大学院卒。小さい頃から機械いじりが好きで、機械系を仕事にしたいと大学で工学部を専攻した。卒業後はメーカーで研究開発職に従事。
物理が苦手な人に、答案の答えではわからないおもしろさを伝える。
濡れとは

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濡れとは、固体表面に液体が広がる現象です。
産業上では、液体の広がりやすさの観点で議論されます。コーティングや接着などの分野でも重要なテーマです。例えば、はんだ接合の分野では電子部品の電極に対するはんだの濡れ性があげられます。溶融した半田は、基材上にまんべんなく固体表面を覆ってほしいからです。
このように、液体とは水に限らず溶融した金属が他の金属表面に濡れ広がる現象も含んでいます。
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表面と界面
濡れを議論する際、表面と界面の違いをはっきり区別させる必要があります。
表面とは液体や固体が気体の層と接している面のことです。フライパンの金属面、人間の皮膚があげられます。一方、界面とは液体と固体が接している境界です。例えば、フライパンに引いた油とフライパン金属部分の接している面。保湿クリームと皮膚が接している面です。
この界面と表面の違いをしっかり区別しましょう。そうすれば「濡れ」の議論をますます深めることができます。
表面張力とは

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表面張力は液体にも固体にも存在する縮む力のことです。すべての物質は、一番エネルギーが小さくなる状態になろうとします。
では、エネルギーが小さくなるとはどのようなことでしょうか?液体の場合で考えてみましょう。分子レベルで考えると、分子間では分子間力が働きます。表面の分子は、釣り合いが取れていません。液体分子一個に着目し相互間力のベクトルを合成すると液体内部方向に向かいます。このベクトルの大きさを最小にするための力が表面張力です。一方で液体内部の分子は、互いに隣接している分子間と釣り合っています。そのため、力の釣り合いが取れておりエネルギーが最小です。
この観点で固体の表面も考えてみましょう。液体と同様に固体表面の分子は固体内部に向かうベクトルが働きます。この力が固体の表面張力です。このように表面張力は、固体・液体の表面における分子間力の不釣り合いから発生します。
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濡れの評価方法は
濡れは定量的にどのように測定するのでしょうか?代表的な指標に接触角測定があります。この測定でその液体の固体に対する濡れ性を評価可能です。では、接触角について説明していきます。
接触角とは
竹内彩乃 – 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, リンクによる
接触角とは、固定表面に液滴を滴下した場合、液体と固体面の接線方向のなす角度(θ)のことです。接触角は、3つの表面張力の釣り合いの式で表されます。その3つは液体の表面張力、固体の表面張力、固体と液体の界面の界面張力です。この式は「Youngの式」といい、3つの張力が接触角の値を決めていることを示しています。
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