この記事では「尻馬に乗る」について解説する。

端的に言えば「尻馬に乗る」の意味は「無判断に人のあとについていくこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「尻馬に乗る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「尻馬に乗る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「尻馬に乗る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「尻馬に乗る」の意味は?

「尻馬(しりうま)に乗る」には、次のような意味があります。

分別もなく他人の言動に同調して、軽はずみなことをする。人のあとについて、調子に乗ってそのまねをする。「―・って騒ぐ」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「尻馬に乗る」

この言葉は、「疑うこともなく、他人の後について物事をしたり、言説に乗ること」を意味する慣用表現です。

現代でも、人の意見などに「乗っかって」などと言われることはありますよね。タダ乗りや、調子よく合わせているだけのような、ちょっと小ズルいイメージがないでしょうか。「尻馬に乗る」とはまさにこのようなニュアンスです。

何か動作をする人に対して使われる表現ですが、良い意味では捉えられないため使い方には注意してください。

「尻馬に乗る」の語源は?

次に「尻馬に乗る」の語源を確認しておきましょう。「尻馬」とは「人が乗っている馬の後部。またはそこに乗ること」、「前を行く馬の後ろを行くこと」を意味します。このことから「(人の馬に)相乗りさせてもらっている、タダ乗りしている」や、「誰かの通った道を同じように通る」というイメージがわかるのではないでしょうか。

自分で手綱を握らなかったり、人に付いていくだけだとしたら、なんとも無責任ですね。馬が移動手段としてメジャーだった時は、なおさらそんな行動に対する批判が生まれるでしょう。この慣用句は、そんな風に自分の意志を表明しない人への戒めも含まれているのかもしれません。

\次のページで「「尻馬に乗る」の使い方・例文」を解説!/

「尻馬に乗る」の使い方・例文

「尻馬に乗る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・偉い先生が話したことの尻馬に乗って、まるで自分が偉いかのように相手に振舞う彼は、周りから白い目で見られていることに気付いていない。

・勉強も仕事も他人の尻馬に乗ってやっているだけだと、言い訳ばかりになったり、ミスを連発したりしてしまうことに気が付いた。

・何かあるごとに誰かの尻馬に乗って自分で判断をしないでいると、自身の意思が感じられないとお叱りを受けてしまうだろう。

自分で考えず、他人の考えや言動についていく」というイメージが付きますでしょうか。

重要なのはこの「自分で考えず」というニュアンス。自分なりに考えて誰かについていくのであれば「尻馬に乗る」とは言われないはず。この慣用句には、そうした無考えさや、無責任な感じへの、話し手の批判や問題視する姿勢が表れることが多いでしょう。

「あの人はすぐ尻馬に乗る」や「また尻馬に乗って~」などと言うと、いかにも誰かに対して文句を言っているようになりますね。読解問題では、人の行動や感情を読み解くポイントにもなる慣用句。しっかり読み込むようにしてください。

「尻馬に乗る」の類義語は?違いは?

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「尻馬に乗る」の類義語は「付和雷同」や「人の褌(ふんどし)で相撲を取る」がいいでしょう。

「付和雷同」

「付和雷同」は、「自分の考えがなく、ただ他の意見や行動に賛成すること」。

「尻馬に乗る」の、便乗してやろうという以前に、全然自分の意見がないというニュアンスがより強く、さらに歓迎されない態度と言えるでしょう。意見がないときは、意見がないという意思表明をしたほうがいいですね。

\次のページで「「人の褌で相撲を取る」」を解説!/

母が自治会の会議に出席したのだが、みんな会長の意見に付和雷同で全然有益ではなく、良い歳したオトナなのにと憤っていた。

「人の褌で相撲を取る」

これは「他人の物を上手く使って、自分の利益になるように図ること」を意味する慣用表現です。

読んで字のごとく、他人の褌を使って競技の場に立っていたら、「自分のを使え」と怒られてしまうのは当たり前ですね。ちゃっかりしているというか、自分の道具を使わないなんてプライドはないのかと、プロなら批判されてしまうでしょう。

これが転じて、スポーツに限らず様々なシーンで使われる言葉になりました。現代的に言えば「パクり」問題などもありますね。盗用でなかったとしても、本来の権利を持っている人の許可を得ていなかったら問題です。ニュースなどでも耳にする言葉かもしれません。押さえておきましょう。

あの批評家は、無批判なのをいいことに人の褌で相撲を取ってばかりいたら、著作権の問題で多くの権利者からついに訴えられてしまった。

「尻馬に乗る」の対義語は?

「尻馬に乗る」の対義語は「傍若無人(ぼうじゃくぶじん)」などがいいでしょう。

「傍若無人」

これは「人前でも気にせず、勝手気ままに振舞うこと」。

漢字を分解すると「傍らに人無きが若(ごと)し」で、「そばにまるで誰もいないように」行動するということで、誰かについていこうとする「尻馬に乗る」とは逆の意味になるでしょう。

ただし「傍若無人」も、わがままや自分勝手さのニュアンスもあり、あまりいい意味では使われません。どちらがいいのか、なかなか難しいものですね。

傍若無人な彼女はほとんど他人の話を聞いておらず、サバサバしているのだが何かとそのせいでトラブルを起こす。

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「尻馬に乗る」の英訳は?

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「尻馬に乗る」の英語訳は「imitate others blindly」で表すことができます。

「imitate others blindly」

これは直訳すれば「他者を盲目的にまねする」ということ。盲目的にと言うところがポイントで、これで「自分の意見がない」というニュアンスが表されています。

英語表現でもこんな慣用句があるということは面白いところ。どの世界でも、そんな態度は問題視されているということがわかるようです。

Whenever he asked for an opinion, imitate others blindly.
意見を求められるといつも、彼は他人の尻馬に乗る。

「尻馬に乗る」を使いこなそう

この記事では「尻馬に乗る」の意味・使い方・類語などを説明しました。

現代でも「誰かの意見に乗っかって~」などと言われるように、そのような態度は考える姿勢を放棄しているようで、嫌がられてしまうのかもしれません。

もちろん誰かの意見に賛成、ということはあるはずですから、どうして賛成なのかを述べることで「尻馬に乗ってる」と言われることはなくなるでしょう。

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国語言葉の意味

【慣用句】「尻馬に乗る」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「尻馬に乗る」について解説する。

端的に言えば「尻馬に乗る」の意味は「無判断に人のあとについていくこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「尻馬に乗る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「尻馬に乗る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「尻馬に乗る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「尻馬に乗る」の意味は?

「尻馬(しりうま)に乗る」には、次のような意味があります。

分別もなく他人の言動に同調して、軽はずみなことをする。人のあとについて、調子に乗ってそのまねをする。「―・って騒ぐ」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「尻馬に乗る」

この言葉は、「疑うこともなく、他人の後について物事をしたり、言説に乗ること」を意味する慣用表現です。

現代でも、人の意見などに「乗っかって」などと言われることはありますよね。タダ乗りや、調子よく合わせているだけのような、ちょっと小ズルいイメージがないでしょうか。「尻馬に乗る」とはまさにこのようなニュアンスです。

何か動作をする人に対して使われる表現ですが、良い意味では捉えられないため使い方には注意してください。

「尻馬に乗る」の語源は?

次に「尻馬に乗る」の語源を確認しておきましょう。「尻馬」とは「人が乗っている馬の後部。またはそこに乗ること」、「前を行く馬の後ろを行くこと」を意味します。このことから「(人の馬に)相乗りさせてもらっている、タダ乗りしている」や、「誰かの通った道を同じように通る」というイメージがわかるのではないでしょうか。

自分で手綱を握らなかったり、人に付いていくだけだとしたら、なんとも無責任ですね。馬が移動手段としてメジャーだった時は、なおさらそんな行動に対する批判が生まれるでしょう。この慣用句は、そんな風に自分の意志を表明しない人への戒めも含まれているのかもしれません。

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