ヘリコプターの操作
By FOX 52 – recreated from this Bell 206 Cockpit, CC BY 3.0, Link
迎角と揚力の関係や、ヘリコプターの姿勢の名称が分かった後は、操縦装置により、ヘリコプターの姿勢がどのようになるかを説明しましょう。ヘリコプターには主に3つの操縦装置があります。1つは、主翼のロータの根本にあるスウォッシュプレートの向きを変えることによりピッチングとローリングを制御するサイクリック・スティックです。2つ目のコレクティブ・レバーはスウォッシュプレートを全体的に上下させることにより、主翼すべてのブレードの迎角を変え、揚力を増減させます。3つ目は、主翼の回転によるトルクを打ち消すためにテールのプロペラのピッチ角を変え、ヨーイングを制御するアンチトルクペダルです。
サイクリック・スティックの原理
image by Study-Z編集部
説明図に記したようにサイクリック・スティックは固定された下部スウォッシュプレートの傾きを変えることにより、ベアリングを介し、ロータシャフトと一緒に回転する上部スウォッシュプレートを傾斜させます。上部スウォッシュプレートは、翼とロッドで連結されているため、上部スウォッシュプレートが傾くと翼に迎角がつくのです。この原理により、下記の上面図に記したように、一方向の迎角を多方向よりも大きくし、揚力の大小をつけることにより、ヘリコプターの姿勢を変えられます。
ジャイロモーメントの利用
image by Study-Z編集部
前進する場合はどのように揚力を作用させればよいと考えますか。通常テール部の揚力を上げ、前進方向にトルクを出すのではないかと考えますが、この場合は右方向にローリングするような力が発生してしまいます。翼は時計回りに回転しているため、その回転軸を傾けようとすると、傾けようとする方向に直交する方向(この場合、進行方向と右側)へのジャイロモーメントが発生するのです。そのため、進行方向と左向きに軸を傾けようとしなければ前方への推力は発生しません。ヘリコプターが移動するには、このジャイロモーメントを利用するのです。
ジャイロモーメントが働く例としては、図のようにホイールを回転させ、ホイールの軸の一端を紐で吊るします。重力により回転軸が倒れる方向にトルクが働きますが、それらに直交するようにジャイロモーメントが働くため、紐を中心に円運動するのです。ホイールの例では重力によって回転軸を倒す方向に力が作用することに対し、ヘリコプターでは翼の揚力差により回転軸を傾ける力が発生します。これらは類似した例なのでヘリコプターに作用するジャイロモーメントの理解が難しい場合は、ホイールの例で考えるとよいでしょう。
ヘリコプターの原理について理解を深めよう!
ヘリコプターの飛行原理を理解するポイントとして簡単にまとめると、揚力の発生原理と、ピッチング、ヨーイングを行うサイクリック・スティックでのコントロールです。揚力の発生では、迎角を大きくすることにより揚力が発生します。ただし迎角を大きくしすぎて失速の発生には注意しなければなりません。またサイクリック・スティックにより翼が回転する一か所での揚力を上げ、ジャイロモーメントを使って移動することを忘れないでください。最近、ドローンや空飛ぶ車がメディアで見られますが、飛行原理はほぼ同様です。最後に、揚力の発生原理として翼周りの流れについて説明しましたが、さらに理論を学びたい方は是非、流体力学の専門書で学んでみてください。