今回は「ヘリコプターの飛行原理」について解説していきます。
近年はドローンや空飛ぶ車といったヘリコプターで使われる飛行原理を使った機械が注目されてきているな。ヘリコプターの原理を理解するには、流体力学で学ぶ揚力について学ぶ必要があるぞ。この記事では、揚力の発生原理と揚力の利用され方の説明を通して飛行原理を解説した。これらに興味がある方は是非この記事を読んでみてくれ。

大学では熱流体工学関係の研究し、プラント関係で設計を行っているアヤコと一緒に解説していきます。

ライター/アヤコ

現役のプラントエンジニア。大学では熱流体分野の研究を行い、就職後もプラントエンジニアとして流体に関係する仕事を行っている。流体力学は多くの人が難しいと思い毛嫌いする分野の半面、身の回りの現象は多い。楽しく理解できるよう解説していく。

ヘリコプターとは

image by iStockphoto

飛行機にはできない、滑走器が不要離陸、着陸、空中で停止(ホバリングという)できるヘリコプター。上記写真のようにヘリコプターは、メインの回転翼により揚力、推力、機体が回転するトルクを発生します。回転翼によるトルクを打ち消すために、ヘリコプターのテール小型のプロペラが設置されているのです。このタイプのヘリコプターをシングルロータヘリコプターと呼びます。この記事ではシングルロータタイプに焦点を当てて説明しましょう。

揚力の原理

揚力の原理

image by Study-Z編集部

ヘリコプターの揚力はその翼回りの気流により生み出されるのです。その原理は、翼の上面では空気の流れが加速し、下面での圧力より下がり翼を揚げる向きに力が働きます。イメージとしては、上記の図です。図のように流れに翼を置き、その翼を傾けていきましょう。この時の角度を迎角と言います。離陸時のように迎角を傾けるほど、上面での速度が速くなり揚力が増えるのです。しかし、ある角度になると、速度が速すぎてしまい、流れが乱れてしまいます(流れの剥離と言う)。迎角が大きく、剥離が発生する時の現象を失速(ストール)と言い、ヘリコプターは失速が発生しない範囲で迎角を制御して飛行します。

ヘリコプターの飛行原理

Leonardo helicopter.JPG
レオナルド・ダ・ヴィンチ - Bortolon, The Life and Times of Leonardo, Paul Hamlyn, パブリック・ドメイン, リンクによる

人類が飛行の研究を始めたのは1400年代前からのようです。上図はレオナルドダビンチが残したメモで、ヘリコプターの起源になったものと言われています。メモには空気ねじと記されていたようです。レオナルドダビンチはものを回転させて空を飛ぶことを考えられていたと分かります。次に飛行原理について学んでいきましょう。

ヘリコプターの姿勢

Flight dynamics with text.png
ZeroOne - self-made using Blender, CC 表示 3.0, リンクによる

まずはヘリコプターの姿勢について、次の名称を覚えてください。図は飛行機の絵になっておりますが、以下の名称はヘリコプターも同様に使用されるのです。水平面内で頭を左右に振る方向の動きをヨーイング頭が上下に動く方向ピッチング頭が反転するような動きローリングと言います。

\次のページで「ヘリコプターの操作」を解説!/

ヘリコプターの操作

Helicopter controls layout.svg
By FOX 52 - recreated from this Bell 206 Cockpit, CC BY 3.0, Link

迎角と揚力の関係や、ヘリコプターの姿勢の名称が分かった後は、操縦装置により、ヘリコプターの姿勢がどのようになるかを説明しましょう。ヘリコプターには主に3つの操縦装置があります。1つは、主翼のロータの根本にあるスウォッシュプレートの向きを変えることによりピッチングとローリングを制御するサイクリック・スティックです。2つ目のコレクティブ・レバースウォッシュプレートを全体的に上下させることにより、主翼すべてのブレードの迎角を変え、揚力を増減させます。3つ目は、主翼の回転によるトルクを打ち消すためにテールのプロペラのピッチ角を変え、ヨーイングを制御するアンチトルクペダルです。

サイクリック・スティックの原理

サイクリック・スティックの原理

image by Study-Z編集部

説明図に記したようにサイクリック・スティックは固定された下部スウォッシュプレートの傾きを変えることにより、ベアリングを介し、ロータシャフトと一緒に回転する上部スウォッシュプレートを傾斜させます。上部スウォッシュプレートは、翼とロッドで連結されているため、上部スウォッシュプレートが傾くと翼に迎角がつくのです。この原理により、下記の上面図に記したように、一方向の迎角を多方向よりも大きくし、揚力の大小をつけることにより、ヘリコプターの姿勢を変えられます。

ヘリコプターの動作原理

ジャイロモーメントの利用

ジャイロモーメントの利用

image by Study-Z編集部

前進する場合はどのように揚力を作用させればよいと考えますか。通常テール部の揚力を上げ前進方向にトルクを出すのではないかと考えますが、この場合は右方向にローリングするような力が発生してしまいます。翼は時計回りに回転しているため、その回転軸を傾けようとすると、傾けようとする方向に直交する方向(この場合、進行方向と右側)へのジャイロモーメントが発生するのです。そのため、進行方向と左向きに軸を傾けようとしなければ前方への推力は発生しません。ヘリコプターが移動するには、このジャイロモーメントを利用するのです。

ジャイロモーメントが働く例としては、図のようにホイールを回転させ、ホイールの軸の一端を紐で吊るします。重力により回転軸が倒れる方向にトルクが働きますが、それらに直交するようにジャイロモーメントが働くため、紐を中心に円運動するのです。ホイールの例では重力によって回転軸を倒す方向に力が作用することに対し、ヘリコプターでは翼の揚力差により回転軸を傾ける力が発生します。これらは類似した例なのでヘリコプターに作用するジャイロモーメントの理解が難しい場合は、ホイールの例で考えるとよいでしょう。

ヘリコプターの原理について理解を深めよう!

ヘリコプターの飛行原理を理解するポイントとして簡単にまとめると、揚力の発生原理と、ピッチング、ヨーイングを行うサイクリック・スティックでのコントロールです。揚力の発生では、迎角を大きくすることにより揚力が発生します。ただし迎角を大きくしすぎて失速の発生には注意しなければなりません。またサイクリック・スティックにより翼が回転する一か所での揚力を上げ、ジャイロモーメントを使って移動することを忘れないでください。最近、ドローンや空飛ぶ車がメディアで見られますが、飛行原理はほぼ同様です。最後に、揚力の発生原理として翼周りの流れについて説明しましたが、さらに理論を学びたい方は是非、流体力学の専門書で学んでみてください。

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流体力学物理理科

5分で分かる「ヘリコプターの原理」滑走不要で離陸できるのはなぜ?プラントエンジニアがわかりやすく解説!

ヘリコプターの操作

Helicopter controls layout.svg
By FOX 52 – recreated from this Bell 206 Cockpit, CC BY 3.0, Link

迎角と揚力の関係や、ヘリコプターの姿勢の名称が分かった後は、操縦装置により、ヘリコプターの姿勢がどのようになるかを説明しましょう。ヘリコプターには主に3つの操縦装置があります。1つは、主翼のロータの根本にあるスウォッシュプレートの向きを変えることによりピッチングとローリングを制御するサイクリック・スティックです。2つ目のコレクティブ・レバースウォッシュプレートを全体的に上下させることにより、主翼すべてのブレードの迎角を変え、揚力を増減させます。3つ目は、主翼の回転によるトルクを打ち消すためにテールのプロペラのピッチ角を変え、ヨーイングを制御するアンチトルクペダルです。

サイクリック・スティックの原理

サイクリック・スティックの原理

image by Study-Z編集部

説明図に記したようにサイクリック・スティックは固定された下部スウォッシュプレートの傾きを変えることにより、ベアリングを介し、ロータシャフトと一緒に回転する上部スウォッシュプレートを傾斜させます。上部スウォッシュプレートは、翼とロッドで連結されているため、上部スウォッシュプレートが傾くと翼に迎角がつくのです。この原理により、下記の上面図に記したように、一方向の迎角を多方向よりも大きくし、揚力の大小をつけることにより、ヘリコプターの姿勢を変えられます。

ヘリコプターの動作原理

ジャイロモーメントの利用

ジャイロモーメントの利用

image by Study-Z編集部

前進する場合はどのように揚力を作用させればよいと考えますか。通常テール部の揚力を上げ前進方向にトルクを出すのではないかと考えますが、この場合は右方向にローリングするような力が発生してしまいます。翼は時計回りに回転しているため、その回転軸を傾けようとすると、傾けようとする方向に直交する方向(この場合、進行方向と右側)へのジャイロモーメントが発生するのです。そのため、進行方向と左向きに軸を傾けようとしなければ前方への推力は発生しません。ヘリコプターが移動するには、このジャイロモーメントを利用するのです。

ジャイロモーメントが働く例としては、図のようにホイールを回転させ、ホイールの軸の一端を紐で吊るします。重力により回転軸が倒れる方向にトルクが働きますが、それらに直交するようにジャイロモーメントが働くため、紐を中心に円運動するのです。ホイールの例では重力によって回転軸を倒す方向に力が作用することに対し、ヘリコプターでは翼の揚力差により回転軸を傾ける力が発生します。これらは類似した例なのでヘリコプターに作用するジャイロモーメントの理解が難しい場合は、ホイールの例で考えるとよいでしょう。

ヘリコプターの原理について理解を深めよう!

ヘリコプターの飛行原理を理解するポイントとして簡単にまとめると、揚力の発生原理と、ピッチング、ヨーイングを行うサイクリック・スティックでのコントロールです。揚力の発生では、迎角を大きくすることにより揚力が発生します。ただし迎角を大きくしすぎて失速の発生には注意しなければなりません。またサイクリック・スティックにより翼が回転する一か所での揚力を上げ、ジャイロモーメントを使って移動することを忘れないでください。最近、ドローンや空飛ぶ車がメディアで見られますが、飛行原理はほぼ同様です。最後に、揚力の発生原理として翼周りの流れについて説明しましたが、さらに理論を学びたい方は是非、流体力学の専門書で学んでみてください。

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