今回は地層について解説していきます。

地層という言葉は聞いたことがある人も多いでしょう。地層は地球の歴史を知るのには欠かせないものです。地層について学んでみよう。

今回は物理学科出身のライター・トオルと解説していきます。

ライター/トオル

物理学科出身のライター。広く科学一般に興味を持つ。初学者でも理解できる記事を目指している。

地層と堆積岩

image by iStockphoto

地層とは簡単に言えば堆積岩が層になったもののことです。

また、堆積岩とは、既存の岩石が、風化・浸食されてできた礫・砂・泥、または火山灰や生物遺骸などの堆積物が、海底・湖底などの水底または地表に堆積し、それらが固結して岩石になったものになります。地表面に色々なものが集まってできるのが堆積岩ですので、それを分析することにより地表面に何があったか推測できるのです。

その1:地層の成因

Quebrada de Cafayate, Salta (Argentina).jpg
travelwayoflife - https://www.flickr.com/photos/travelwayoflife/6164348161/in/photostream/, CC 表示-継承 2.0, リンクによる

堆積岩は地球の歴史アーカイブであり、地球史の時間目盛りとなります。砕屑物は一般に水中でゆっくり流されながら重力のもとで沈積し、最終的には海底などに水平に堆積し、比較的均質な砕屑物からなる地層(単層)を作るのです。ちなみに、最初は水平に堆積することを初源水平の法則といいます。単層と単層の境界面が層理面です。沈降中に淘汰作用が働き、粒度の違いによって層状に堆積することが多くなります。上記の画像は、アルゼンチンにある地層です。

その2:層序と層序区分

一般に、層状に積み重なった一連の堆積岩は、上位の地層は下位の地層よりも新しいという時間の概念を示しており、それらの分布の広がりには限りがあります。このように、分布の時空間的概念を含む堆積岩が地層です。

地層の積み重なりの順序を層序といいます。積み重なった地層を、岩石としての性質や含まれている化石などをもとにまとめて、いくつかの単位に分割することが層序区分です。異なる地域の地層の同時代性を決めて、あちこちの地域の層序区分を統合すると、広域的な層序区分を作ることができ、さらに地球規模の層序区分を作成することができます。

その3:地層累重の法則

層序区分や地層対比を行い、広域的に地史を組み立てるには、地層累重の法則と化石による地層同定の法則がその基礎になっています。地層累重の法則とは、一覧の地層において上位の地層は下位の地層よりも新しいという原理で、17世紀中頃にデンマークのステノが提唱し、19世紀初めに地質学の父といわれるイギリスのスミスがこの法則を確立しました。

その4:化石による地層同定の法則

Grand Staircase-big.jpg
パブリック・ドメイン, リンク

スミスは土木技師としての経験から、遠く離れた地域の地層どうしをその岩質だけで対比することは困難であることを知り、ある地層にのみ含まれその上下の地層には産出しない特定の化石、つまり、示準化石や標準化石を利用して地層を対比する方法を見出しました。これを化石による地層同定の法則といいます。

この二つの原理により、地層を広域的に対比して地層の時空的相互関係を捉えることができるようになり、地層の形成順序を編む層序学が誕生しました。上記の画像は、アメリカのグランド・ステアケースの地層図です。

\次のページで「その5:鍵層について」を解説!/

その5:鍵層について

Lake shikotsu landsat.jpg
GFDL, リンク

地層を対比するには示準化石を利用するほか、時代のわかっている特徴ある地層である鍵層を使う場合もあります

とくにもっとも新しい地質時代である第四紀の地層では、火山灰が使われることが多いようです。たとえば、約4万年前の支笏火山の火山灰は北海道各地の新しい地層に挟まれており、4万年前を示す鍵層として有名な地層になります。ちなみに、この噴火のカルデラ跡が現在の支笏湖です。

地層や岩石の相互関係

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層序学は層序区分ができる地層に関わる分野ですが、岩石には堆積岩のほかにマグマ活動による火成岩や変成作用による変成岩も存在します。地層や岩石の野外での産出状況や相互関係、つまり整合・不整合・断層・貫入などを産状というのです。基本的な産状について紹介してみましょう。

その1:整合と不整合

火山灰が陸上に降り積もる場合は地形面にそってほぼ平行に堆積しますが、砕層物が水中で堆積する時は、一般的にほぼ水平に堆積します。その堆積速度はいろいろですが、おおむね時間的に連続して堆積しているのです。

このように上下の地層が連続的に堆積しているとき、両者は整合となります。一方、上下の地層の間に非常に長い時間的間隙があるときは、上下の地層は不整合です。そして、両者の境界面は不整合面となります。

その2:不整合ができる理由

Agiospavlos DM 2004 IMG003 Felsenformation nahe.JPG
CC 表示-継承 3.0, リンク

地層の欠如はたまたまその間その地域で堆積が無かったことによる場合もありますが、一般的には、その間その地域が堆積場つまり海域ではなく浸食場、陸域であったことを示しています。

不整合上下の地層はともにほぼ平行に堆積していることもありますが、一般には下位の地層はより傾斜したり、褶曲したりしていて、上位の若い地層と平行でないことが多いようです。不整合の存在は、その地域が海域→隆起運動→陸域→沈降運動→海域と変化したことを示しており、地層欠如の大きな傾斜不整合は大規模な上昇・陸化、すなわち地殻変動の証拠であると考えられます。上記の画像は、褶曲の画像です。

その3:貫入と断層

Extensional fault array Clarke Head.png
Mikenorton - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

野外露頭において、地層や岩石が切ったり、切られたりして脈状になっている様子が観察できることがありますこれを貫入といいます。また、地層に力が加わって割れ、割れた面に沿ってずれ動いて食い違いが生じている状態が断層です。

\次のページで「化石年代」を解説!/

化石年代

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地層を調べる上で重要なものが化石です。化石とはもちろん生物の死骸が残ったものになります。生物は非常に多種多様であり進化もしますので、化石によって年代の特定やその化石が存在したときの周辺環境の特定が可能になるのです。

その1:化石年代の時代区分

地層の上下関係と古生物の発生・絶滅や進化をもとにした地球の地質時代区分は化石年代、もしくは相対年代といい、古いほうから大きく先カンブリア時代・古生代・中生代・新生代に分けられています。

代はそれぞれ紀という単位に分けられ、紀はさらに世に細分されるのです。かつては、古生代より古い時代には化石はほとんど産出しないと考えられ、先カンブリア時代と一括にされていました。しかし、放射年代測定法の出現により、先カンブリア時代は古いほうから、冥王代・始生代・原生代に分けられ、最近ではさまざまな微小化石やバクテリア化石が先カンブリア時代の地層から報告されています。

その2:示準化石

Index fossils.gif
United States Geological Survey - http://pubs.usgs.gov/gip/geotime/fossils.html, パブリック・ドメイン, リンクによる

時代区分に使われる、特定の時代の地層にのみ含まれる化石を示準化石、もしくは標準化石と言います。示準化石は、産出数が多く、生存期間が短い、またいろいろな環境に適応できる生物が適しているのです。古生代の三葉虫、中生代のアンモナイトや恐竜、新生代のゾウやウマなどが代表的な示準化石になります。上記の画像は、代表的な示準化石の画像です。

その3:化石年代

生物には一般にそれぞれに適した生息環境がありますが、ある限定された環境で生存するものもあります。そのような生物が、死後その場所から遠くに運ばれずに埋没して化石化すると、その化石の産出により、それを含む地層の堆積環境、つまり気温や水温や海水深度などを知ることができるのです。このような、地層の堆積環境を知るのに有効な化石を示相化石といいます。暖かい浅い海に生息するサンゴはその代表例です。

\次のページで「長い地球の歴史」を解説!/

長い地球の歴史

長い地球の歴史

image by Study-Z編集部

地層の順序や化石の分布などを丹念に調べることにより、過去の地球の歴史が少しずつ明らかになっていきます。さらに、20世紀の登場した放射年代測定法によって、より細かく地球の歴史が理解できるようになりました。しかし、地球の歴史は約46億年もありますので、まだまだ分かっていないこともたくさんあります。これからも、多くの研究者の努力によってより詳しい地球の歴史が明らかにされていくことでしょう。

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地学地質・歴史理科

3分で簡単「地層」地層のでき方や化石年代について理系ライターがわかりやすく解説

今回は地層について解説していきます。

地層という言葉は聞いたことがある人も多いでしょう。地層は地球の歴史を知るのには欠かせないものです。地層について学んでみよう。

今回は物理学科出身のライター・トオルと解説していきます。

ライター/トオル

物理学科出身のライター。広く科学一般に興味を持つ。初学者でも理解できる記事を目指している。

地層と堆積岩

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地層とは簡単に言えば堆積岩が層になったもののことです。

また、堆積岩とは、既存の岩石が、風化・浸食されてできた礫・砂・泥、または火山灰や生物遺骸などの堆積物が、海底・湖底などの水底または地表に堆積し、それらが固結して岩石になったものになります。地表面に色々なものが集まってできるのが堆積岩ですので、それを分析することにより地表面に何があったか推測できるのです。

その1:地層の成因

堆積岩は地球の歴史アーカイブであり、地球史の時間目盛りとなります。砕屑物は一般に水中でゆっくり流されながら重力のもとで沈積し、最終的には海底などに水平に堆積し、比較的均質な砕屑物からなる地層(単層)を作るのです。ちなみに、最初は水平に堆積することを初源水平の法則といいます。単層と単層の境界面が層理面です。沈降中に淘汰作用が働き、粒度の違いによって層状に堆積することが多くなります。上記の画像は、アルゼンチンにある地層です。

その2:層序と層序区分

一般に、層状に積み重なった一連の堆積岩は、上位の地層は下位の地層よりも新しいという時間の概念を示しており、それらの分布の広がりには限りがあります。このように、分布の時空間的概念を含む堆積岩が地層です。

地層の積み重なりの順序を層序といいます。積み重なった地層を、岩石としての性質や含まれている化石などをもとにまとめて、いくつかの単位に分割することが層序区分です。異なる地域の地層の同時代性を決めて、あちこちの地域の層序区分を統合すると、広域的な層序区分を作ることができ、さらに地球規模の層序区分を作成することができます。

その3:地層累重の法則

層序区分や地層対比を行い、広域的に地史を組み立てるには、地層累重の法則と化石による地層同定の法則がその基礎になっています。地層累重の法則とは、一覧の地層において上位の地層は下位の地層よりも新しいという原理で、17世紀中頃にデンマークのステノが提唱し、19世紀初めに地質学の父といわれるイギリスのスミスがこの法則を確立しました。

その4:化石による地層同定の法則

Grand Staircase-big.jpg
パブリック・ドメイン, リンク

スミスは土木技師としての経験から、遠く離れた地域の地層どうしをその岩質だけで対比することは困難であることを知り、ある地層にのみ含まれその上下の地層には産出しない特定の化石、つまり、示準化石や標準化石を利用して地層を対比する方法を見出しました。これを化石による地層同定の法則といいます。

この二つの原理により、地層を広域的に対比して地層の時空的相互関係を捉えることができるようになり、地層の形成順序を編む層序学が誕生しました。上記の画像は、アメリカのグランド・ステアケースの地層図です。

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