今回は「遺伝子組み換え」について詳しく勉強していこう。

遺伝子組み換え食品や遺伝子組み換え作物という言葉を聞いたことがあるでしょう。技術は発展しているものの、人体への安全性についての議論が続いているものです。

そこで今回は遺伝子組み換えについて生物化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.生物に含まれる遺伝子情報

そもそもの話になりますが、ヒトやその他の動物は遺伝情報をもつDNAというものを持っていますよね。細胞1つ1つに核というものが存在し、その中の染色体にDNAが含まれています。そのDNAを解析するとそれぞれの個体の遺伝情報がみえてくるというわけです。

ところで、このDNA、植物にも含まれていることはご存知ですよね?

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ある程度の知識を持っている人からすれば当たり前に思うでしょう。しかし「遺伝子組み換え作物ってなに?!」「野菜にDNAなんて気持ち悪い…」という人がいるのが現状です。考えてみてください。より甘く大きい実がなるように品種改良されたイチゴに対して気持ち悪いという人はいないといってもいいでしょう。品種改良は異なる種を交配させることでより優れた性質を継ぐ品種をつくり出すという技術です。それぞれの遺伝子が混ざり合うことで新たな遺伝情報をもつ種が生まれるのですから、まさにDNAが関与しているのがわかるでしょう。この例からもわかるように、遺伝子組み換えイコール「悪」「危険」というイメージは一度取っ払って解説を聞いてくださいね。

2.品種改良と遺伝子組み換え

まず知ってもらいたいのは、広義では品種改良も遺伝子組み換え技術に含まれます。先述したように、農作物の品種改良は珍しくなく、品種改良後の品種がメジャーになっているものも少なくありません。では、品種改良は積極的に行われる反面、遺伝子組み換えにマイナスイメージが定着してしまったのはなぜでしょうか。それぞれの違いについて見ていきましょう。

2-1.品種改良

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品種改良植物だけでなく家畜にも用いられる農業技術です。異なる種を人為的に交配させることにより、優れた性質をもつ品種をつくり出しています。人の手が加わることのなかった大昔から動植物は自然交配によって異なる種が交配したり、突然変異によって多くの種が生まれてきました。これを人為的に行うことで、より美味しいもの、より美しいもの、環境の変化に対応できるもの、育てやすいもの…と改良していく中で品種改良の技術も向上し、今では多くの食品が世に出回っています。

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2-2.遺伝子組み換え

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遺伝子組み換え食品としては遺伝子組み換え大豆を用いて作ったしょうゆや納豆、味噌などが一般的でしょう。遺伝子組み換えとは、生物の細胞から目的となる性質をもつ遺伝子のみを取り出し、別の個体の遺伝子に組み込むことで新しい性質をもたせることをいいます。

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例えば、「美味しいが乾燥に弱いA」をもとに「美味しくて乾燥に強いA'」をつくりたいとしましょう。これを品種改良でやろうとすると、「美味しいが乾燥に弱いA」と「味は良くないが乾燥に強いB」から「味はまあまあで乾燥にはそこそこ強いC」ができる可能性がありますよね。これでは効率が悪く、「美味しくて乾燥に強いA'」ができるまでには時間がかかってしまうのです。

そこで「美味しいが乾燥に弱いA」に「味は良くないが乾燥に強いB」から乾燥に強くなる遺伝子のみを取り出します。これを直接Aの遺伝子として組み込むことができれば効率的でより目的に近い品種が得られるというわけです。

3.身近な遺伝子組み換え技術を利用した農作物

それでは身近にどのような農作物に遺伝子組み換えがなされているかを見ていきましょう。遺伝子組み換えによってどんな性質がプラスされたのかについても解説していきます。

大豆:害虫に強く特定の除草剤で枯れない
菜種:特定の除草剤で枯れない
とうもろこし:害虫に強く特定の除草剤で枯れない
じゃがいも:害虫やウイルス病に強い
パパイヤ:ウイルス病に強い

農作物を育てるうえで天敵となるのが葉や実を食べてしまう害虫やウイルスや菌による病気、栄養を奪う雑草です。対策として殺虫剤や除草剤といった農薬を使用することがありますが、それによって農作物自体がダメージをおってしまうことも少なくありません。そこで農作物そのものに害虫やウイルスへの抵抗性をもたせ、除草剤にも耐えられる性質をもたせたものが遺伝子組み換え作物です。これによって効率よく栽培が可能になるので安定した流通を保てることになり、その結果安価で質の良い作物が市場に出回るようになります。

4.遺伝子組み換えによる安全性

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ここまで見ると遺伝子組み換えによるメリットは非常に大きいのがわかりますね。しかし気になるのはその安全性でしょう。害虫やウイルスに強いということは、害虫やウイルスにとって何らかのダメージとなる成分が含まれている、つまり人が食べても健康に影響が出るのでは?と気になる人もいるでしょう。

例えば遺伝子組み換えとうもろこしにはある特定のたんぱく質を含ませることで害虫対策としています。このたんぱく質は害虫が摂取すると死んでしまいますが、ヒトを含む哺乳類や鳥類が摂取しても胃液で分解され、吸収されることはないので心配には及びません。また、たんぱく質はアレルギーの原因となる可能性がありますが、これについても厳しくチェックされています。

国内外を問わず様々な遺伝子組み換え農作物やそれを利用した製品がつくられていますが、国内で流通しているものはどれも厳しい検査をクリアしたものです。これを聞いてもなお別の品種から遺伝子の一部を切り取って組み込むことになんだか抵抗を感じるという人もいるかもしれません。(科学的根拠を知っても生理的に受け付けないという人は一定数いるものです。)遺伝子組み換え作物を選ばないという選択もあります。国内で主に流通しているのは大豆の遺伝子組み換え製品ですから、「遺伝子組み換え〇〇を使用しています/していません」という表記をチェックするのがいいでしょう。

今回解説した遺伝子組み換え作物については厚生省のサイトでも詳しく解説されています。こちらの資料も参考にしてみてくださいね。

遺伝子組み換え食品は表示をチェック!

「遺伝子組み換え」とつく食品はなんだか体に悪そうだというイメージを持っている人は少なくありません。その理由は「植物に遺伝子・DNAが含まれるなんて…」という知識不足による誤解や「人為的に作られたものだから危なそう」という先入観によるものがほとんどでしょう。

たしかによく知られている品種改良よりは人の手が大きく関わっていること、実験室で作られるために従来の農業のイメージとは異なる科学技術を用いた品種であることは事実です。しかし今やより美味しく、美しく、生産効率のいい品種を求める上でなくてはならない技術になってきています。もちろん遺伝子組み換え作物を使った食品を選ぶかどうかは消費者の自由です。知識不足による思い込みや勘違いをしないためにも、積極的に情報を取り込んでいきましょう。

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理科生物細胞・生殖・遺伝

3分で簡単「遺伝子組み換え」農作物の安全性を元塾講師がわかりやすく解説

今回は「遺伝子組み換え」について詳しく勉強していこう。

遺伝子組み換え食品や遺伝子組み換え作物という言葉を聞いたことがあるでしょう。技術は発展しているものの、人体への安全性についての議論が続いているものです。

そこで今回は遺伝子組み換えについて生物化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.生物に含まれる遺伝子情報

そもそもの話になりますが、ヒトやその他の動物は遺伝情報をもつDNAというものを持っていますよね。細胞1つ1つに核というものが存在し、その中の染色体にDNAが含まれています。そのDNAを解析するとそれぞれの個体の遺伝情報がみえてくるというわけです。

ところで、このDNA、植物にも含まれていることはご存知ですよね?

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ある程度の知識を持っている人からすれば当たり前に思うでしょう。しかし「遺伝子組み換え作物ってなに?!」「野菜にDNAなんて気持ち悪い…」という人がいるのが現状です。考えてみてください。より甘く大きい実がなるように品種改良されたイチゴに対して気持ち悪いという人はいないといってもいいでしょう。品種改良は異なる種を交配させることでより優れた性質を継ぐ品種をつくり出すという技術です。それぞれの遺伝子が混ざり合うことで新たな遺伝情報をもつ種が生まれるのですから、まさにDNAが関与しているのがわかるでしょう。この例からもわかるように、遺伝子組み換えイコール「悪」「危険」というイメージは一度取っ払って解説を聞いてくださいね。

2.品種改良と遺伝子組み換え

まず知ってもらいたいのは、広義では品種改良も遺伝子組み換え技術に含まれます。先述したように、農作物の品種改良は珍しくなく、品種改良後の品種がメジャーになっているものも少なくありません。では、品種改良は積極的に行われる反面、遺伝子組み換えにマイナスイメージが定着してしまったのはなぜでしょうか。それぞれの違いについて見ていきましょう。

2-1.品種改良

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品種改良植物だけでなく家畜にも用いられる農業技術です。異なる種を人為的に交配させることにより、優れた性質をもつ品種をつくり出しています。人の手が加わることのなかった大昔から動植物は自然交配によって異なる種が交配したり、突然変異によって多くの種が生まれてきました。これを人為的に行うことで、より美味しいもの、より美しいもの、環境の変化に対応できるもの、育てやすいもの…と改良していく中で品種改良の技術も向上し、今では多くの食品が世に出回っています。

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