
1-2.ミセルの成り立ち

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界面活性剤を水中に溶かし込むと、ある濃度までは親水基を水側に、疎水基を空気側にむけた状態で、水と空気の界面に存在しています。このまま界面活性剤の濃度を高めていくと何が起こるでしょうか?
まず、水と空気の界面が界面活性剤で覆われ、これ以上、整列することができない状態になってしまいました。そうすると親水基のある界面活性剤は、仕方なく水中に溶け込んでいきますね。しかし、界面活性剤には親水基だけでなく疎水基が存在します。するとどうでしょう?水中の界面活性剤の疎水基どうしが引きつけあい、会合が起こるのです。これにより、外側が親水基で囲まれ、内部は親油性となる球状の物質ができますね。これこそがミセルです。
1-3.乳化

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ではミセルには一体どのような作用があるでしょうか?一言で言うと、ミセルを利用するとものすごく混ざりにくい物どうしをスムーズに混ぜ合わせることができます。
水と油が入ったコップを思い浮かべて下さい。油は水よりも比重が軽いので、水に浮かんだ状態になっていますね。これをかき混ぜると一時的に混ざった状態になりますが、混ぜるのをやめてしまうと次第に2層に分離してしまいます。この現象の原因は表面張力。水と油の界面では表面張力により界面を出来るだけ小さくしようという力が働くため、分離が起こってしまうのです。
では次は、界面活性剤を水に加えてから混ぜあわせてみましょう。先ほどは最終的に2層に分離してしましましたが、最後には均一な白い溶液になり、うまく混ぜ合わせることができました。このように混ざりにくい2種類の液体が混ざりあって、白くなる現象を「乳化」といいます。ちなみに、乳化が起こると溶液が白くなりますが、これは溶液中に大量に発生したミセルの粒子が光を散乱させるためです。このような溶液をコロイド溶液といいます。
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1-4.ミセルの作用

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水と油が乳化したとき、コップの中では何が起きていたでしょうか?
先ほど説明したように水中の界面活性剤がある一定濃度以上になると水中にミセルが発生します。この状態で混ぜ合わせることでミセルの中に油が入り、乳化が起きるのです。この現象の理由は、ミセルの内部が親油性=油と相性がいいため。さらに、ミセルの外殻が親水基であるため、通常だと水に溶けにくい油も溶媒である水に溶け込むことができます。加えて、水と油の界面に存在した界面活性剤も、混ぜ合わせの作用により疎水基が油に引き寄せられ、吸着し、新たなミセルを形成。これらの作用により水と油をうまく混合することができるんですね。
ちなみに、界面活性剤の種類や溶液の状態によって、油の中に水を溶かし込むという逆のパターンが発生することもありますよ。この場合のミセルは逆ミセルと呼ばれます。いずれにせよ、混ざりにくい性質の液体が上手に混ざっている時はミセルが発生していると考えると良いですね。

天然の乳化物の代表は牛乳だ。牛乳の主成分は水分、脂肪、タンパク質、乳糖などだ。水と油が入っているな。牛乳の場合はタンパク質であるカゼイン(リン酸化タンパク質)がカゼインミセルを形成し、牛乳の水と脂をうまく混ぜあわせている。
2.生活の中で活躍する界面活性剤
さて、ここまでの内容でミセルの成り立ちや作用についてはだいぶ理解できてきましたか?ここからはミセルを形成する界面活性剤が、生活の中でどのように使われているかについて学んでいきましょう。
界面活性剤はイオン性によって大きく4つに分類されます。アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤です。それぞれ日常的に使用するものに使われているので、例をあげながら解説していきます。
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