今回は「ミセル」について勉強していこう。
ミセルっていうのは界面活性剤が水中でつくる、目に見えない球状物質のことです。お前たちも生活の中で知らず知らずのうちに利用しているものです。ミセルについて理解するためには界面活性剤のもつ「親水性」や「親油性」についての理解が必要です。
筋金入りの理系一家で育ち、企業研究員になったライターN.Miki.と一緒に解説していきます。

ライター/N.Miki.

母親は理科教師、父は電気工学専門。兄弟も理系に進学し、自身も化学の道へ。工業高等専門学校へ進学後、大学院卒業まで研究に明け暮れる毎日を過ごす。現在は一般企業にフィールドを移した化学大好き人間が生活に身近な化学についてわかりやすく解説します。

1.ミセルとは

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ミセルとは、水に界面活性剤をある濃度以上に溶かし込んだ時にできる、極小の球状物質のことです。ハッキリと目に見えるわけではありませんが、ミセルは私たちが生活に使用するものにたくさん利用されています。

では、ミセルがどのような仕組みでできるか、生活のどのような部分で活用されているかを学んでいきましょう。

1-1.界面活性剤

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ミセルについて理解するためには、まずは界面活性剤について理解する必要があります。

界面活性剤は、親水基と疎水基が1つの分子中に存在する化合物(両親媒性物質)のことです。親水基は水と相性がよく(親水性)疎水基は油と相性が良い(親油性)、という性質があります。この相反する性質を1つの分子に持っているため、界面活性剤は水中でミセルを形成することができるのです。

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1-2.ミセルの成り立ち

1-2.ミセルの成り立ち

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界面活性剤を水中に溶かし込むと、ある濃度までは親水基を水側に、疎水基を空気側にむけた状態で、水と空気の界面に存在しています。このまま界面活性剤の濃度を高めていくと何が起こるでしょうか?

まず、水と空気の界面が界面活性剤で覆われ、これ以上、整列することができない状態になってしまいました。そうすると親水基のある界面活性剤は、仕方なく水中に溶け込んでいきますね。しかし、界面活性剤には親水基だけでなく疎水基が存在します。するとどうでしょう?水中の界面活性剤の疎水基どうしが引きつけあい、会合が起こるのです。これにより、外側が親水基で囲まれ、内部は親油性となる球状の物質ができますね。これこそがミセルです。

1-3.乳化

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ではミセルには一体どのような作用があるでしょうか?一言で言うと、ミセルを利用するとものすごく混ざりにくい物どうしをスムーズに混ぜ合わせることができます

水と油が入ったコップを思い浮かべて下さい。油は水よりも比重が軽いので、水に浮かんだ状態になっていますね。これをかき混ぜると一時的に混ざった状態になりますが、混ぜるのをやめてしまうと次第に2層に分離してしまいます。この現象の原因は表面張力。水と油の界面では表面張力により界面を出来るだけ小さくしようという力が働くため、分離が起こってしまうのです。

では次は、界面活性剤を水に加えてから混ぜあわせてみましょう。先ほどは最終的に2層に分離してしましましたが、最後には均一な白い溶液になり、うまく混ぜ合わせることができました。このように混ざりにくい2種類の液体が混ざりあって、白くなる現象を「乳化」といいます。ちなみに、乳化が起こると溶液が白くなりますが、これは溶液中に大量に発生したミセルの粒子が光を散乱させるためです。このような溶液をコロイド溶液といいます。

1-4.ミセルの作用

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水と油が乳化したとき、コップの中では何が起きていたでしょうか?

先ほど説明したように水中の界面活性剤がある一定濃度以上になると水中にミセルが発生します。この状態で混ぜ合わせることでミセルの中に油が入り、乳化が起きるのです。この現象の理由は、ミセルの内部が親油性=油と相性がいいため。さらに、ミセルの外殻が親水基であるため、通常だと水に溶けにくい油も溶媒である水に溶け込むことができます。加えて、水と油の界面に存在した界面活性剤も、混ぜ合わせの作用により疎水基が油に引き寄せられ、吸着し、新たなミセルを形成。これらの作用により水と油をうまく混合することができるんですね。

ちなみに、界面活性剤の種類や溶液の状態によって、油の中に水を溶かし込むという逆のパターンが発生することもありますよ。この場合のミセルは逆ミセルと呼ばれます。いずれにせよ、混ざりにくい性質の液体が上手に混ざっている時はミセルが発生していると考えると良いですね。

2.生活の中で活躍する界面活性剤

さて、ここまでの内容でミセルの成り立ちや作用についてはだいぶ理解できてきましたか?ここからはミセルを形成する界面活性剤が、生活の中でどのように使われているかについて学んでいきましょう。

界面活性剤はイオン性によって大きく4つに分類されます。アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤です。それぞれ日常的に使用するものに使われているので、例をあげながら解説していきます。

\次のページで「2-1.せっけん、シャンプー、食器用洗剤、洗濯用洗剤」を解説!/

イオン性:化学結合における電荷の偏りのこと。アニオン(ー)、カチオン(+)などで表現する。電気的なものを思い浮かべると理解しやすい。

2-1.せっけん、シャンプー、食器用洗剤、洗濯用洗剤

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石けんやシャンプー、各種洗剤などには、アニオン界面活性剤が使用されています。アニオン界面活性剤とは、水中で親水基がマイナスイオンに電離する界面活性剤のことです。洗浄力が強く、泡立ちがいいのが特徴ですよ。

石けんなどに使用される界面活性剤の作用は、まさに前述したミセルによる洗浄作用です。水中に溶け込んだ界面活性剤は、疎水基を汚れに吸着させます。そのまま汚れを内部に取り込み、ミセルを形成。その後、ミセル ごと洗い流されることで繊維の汚れをスッキリ落としてくれるんですね。

2-2.柔軟剤、トリートメント

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柔軟剤、トリートメントなどには、カチオン界面活性剤が使用されています。先ほどのアニオン界面活性剤とは逆で、親水基がプラスイオンに電離するのが特徴です。

水中に存在する繊維は、マイナスの電気を帯びています。そのため、カチオン界面活性剤は、親水基のプラスイオン性で繊維に吸着。そうすると繊維の表面には、疎水基が並んだ状態になりますね。疎水基は油と相性が良い性質なので、自身も滑らかな性質を持っています。繊維の表面が疎水基でコーティングされた状態になるので、柔軟剤を使用すると非常に滑らかな手触りになるのです。

カチオン界面活性剤は一部、殺菌剤などに使用されているものがあります。そのため、人体への刺激が強い場合があるのですが、市販の柔軟剤やトリートメントには使用されていませんので安心ください。

2-3.ベビーソープ、化粧品、食品用乳化剤

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ベビーソープや化粧品などに使用される両性イオン界面活性剤は、ほぼ刺激のない化合物として知られています。プラスイオンとマイナスイオンの両方を帯びる部分を持つのが、前述の2つの界面活性剤と違うところですね。

界面活性剤のプラスイオン部分とマイナスイオン部分が中和し合うため、人体への刺激が非常に弱くなります。pHにより洗浄剤になったり、柔軟剤になったりするのも特徴的ですね。

非常に安全な物質なので、化粧品や食品用乳化剤として使用されることがありますよ。マヨネーズは水と油と卵からできていますが、卵に含まれるレシチンは非常に有名な両性イオン界面活性剤です。

2-4.化粧品、食品用乳化剤、洗浄助剤

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最後は、ノニオン界面活性剤。これは電荷を帯びない界面活性剤で、ほぼ無刺激性の化合物です。そのため、多くの化粧品に使用されています。

化粧品の界面活性剤の作用はなんでしょうか?それは乳化だけでなく、含有成分の肌への浸透性を高めるため。ノニオン界面活性剤は、人体への刺激がほぼ無い成分です。しかし、それでも濃度が高いと、化粧品に添加されている防腐剤などの浸透が高まり、肌に刺激を感じる場合があるとのこと。ですが、各化粧品メーカーでは日々、界面活性剤の添加量を下げる努力を行っています。なので、そんなに心配しなくても大丈夫。ただし、お肌の弱い方は少しだけ気にしてみるといいかもしれませんね。

\次のページで「意外と身近な存在だった「ミセル」」を解説!/

意外と身近な存在だった「ミセル」

ミセルの成り立ちを知ると洗濯で汚れが落ちる仕組みがよくわかりますね。手を洗うとき、食事でドレッシングやマヨネーズを使う時、化粧品を使うとき、いつでもあなたの側にミセルが存在します。

界面活性剤についても学習することで、『なんとなく怖いな…』という考えも少し和らいだのでは無いでしょうか?重要なのは必要な時に、必要な種類を、必要な量だけ使うこと。必要以上に怖がらず、上手に利用していきましょう!

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化学理科

「ミセル」って何?素朴な疑問を現役の企業研究員がわかりやすく解説

1-2.ミセルの成り立ち

1-2.ミセルの成り立ち

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界面活性剤を水中に溶かし込むと、ある濃度までは親水基を水側に、疎水基を空気側にむけた状態で、水と空気の界面に存在しています。このまま界面活性剤の濃度を高めていくと何が起こるでしょうか?

まず、水と空気の界面が界面活性剤で覆われ、これ以上、整列することができない状態になってしまいました。そうすると親水基のある界面活性剤は、仕方なく水中に溶け込んでいきますね。しかし、界面活性剤には親水基だけでなく疎水基が存在します。するとどうでしょう?水中の界面活性剤の疎水基どうしが引きつけあい、会合が起こるのです。これにより、外側が親水基で囲まれ、内部は親油性となる球状の物質ができますね。これこそがミセルです。

1-3.乳化

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ではミセルには一体どのような作用があるでしょうか?一言で言うと、ミセルを利用するとものすごく混ざりにくい物どうしをスムーズに混ぜ合わせることができます

水と油が入ったコップを思い浮かべて下さい。油は水よりも比重が軽いので、水に浮かんだ状態になっていますね。これをかき混ぜると一時的に混ざった状態になりますが、混ぜるのをやめてしまうと次第に2層に分離してしまいます。この現象の原因は表面張力。水と油の界面では表面張力により界面を出来るだけ小さくしようという力が働くため、分離が起こってしまうのです。

では次は、界面活性剤を水に加えてから混ぜあわせてみましょう。先ほどは最終的に2層に分離してしましましたが、最後には均一な白い溶液になり、うまく混ぜ合わせることができました。このように混ざりにくい2種類の液体が混ざりあって、白くなる現象を「乳化」といいます。ちなみに、乳化が起こると溶液が白くなりますが、これは溶液中に大量に発生したミセルの粒子が光を散乱させるためです。このような溶液をコロイド溶液といいます。

1-4.ミセルの作用

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水と油が乳化したとき、コップの中では何が起きていたでしょうか?

先ほど説明したように水中の界面活性剤がある一定濃度以上になると水中にミセルが発生します。この状態で混ぜ合わせることでミセルの中に油が入り、乳化が起きるのです。この現象の理由は、ミセルの内部が親油性=油と相性がいいため。さらに、ミセルの外殻が親水基であるため、通常だと水に溶けにくい油も溶媒である水に溶け込むことができます。加えて、水と油の界面に存在した界面活性剤も、混ぜ合わせの作用により疎水基が油に引き寄せられ、吸着し、新たなミセルを形成。これらの作用により水と油をうまく混合することができるんですね。

ちなみに、界面活性剤の種類や溶液の状態によって、油の中に水を溶かし込むという逆のパターンが発生することもありますよ。この場合のミセルは逆ミセルと呼ばれます。いずれにせよ、混ざりにくい性質の液体が上手に混ざっている時はミセルが発生していると考えると良いですね。

2.生活の中で活躍する界面活性剤

さて、ここまでの内容でミセルの成り立ちや作用についてはだいぶ理解できてきましたか?ここからはミセルを形成する界面活性剤が、生活の中でどのように使われているかについて学んでいきましょう。

界面活性剤はイオン性によって大きく4つに分類されます。アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤です。それぞれ日常的に使用するものに使われているので、例をあげながら解説していきます。

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