日本史

5分でわかる「太平記」軍記物語の一つ?どんな話?歴史オタクがわかりやすく解説

よぉ、桜木健二だ。室町時代につくられた「太平記」は鎌倉幕府の滅亡から、その後に起こった南北朝時代の戦乱など、混沌とした時代を舞台とする戦記物だ。しかし、軍記物語は「どこでこういう戦いがありました」と記すだけじゃない。それじゃあ教科書と変わらないだろう?「太平記」も例に漏れず読者が飽きて離れないような面白い構成になっているんだ。
今回はそんな「太平記」について歴史オタクのライターリリー・リリコと一緒に解説していくぞ。

解説/桜木建二

「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

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ライター/リリー・リリコ

興味本意でとことん調べつくすおばちゃん。座右の銘は「何歳になっても知識欲は現役」。大学の卒業論文は義経をテーマに執筆。軍記物語のなかでも特に『平家物語』について研究していた。今回はその延長上にある『太平記』についてまとめた。

1.文芸の一大ジャンル「軍記物語」とは

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歴史資料と物語の特性を併せ持つ「軍記物語」

歴史やその記録をありのまま順序を追って客観的に書いたものを「叙事文」といいます。はじめて聞く単語かもしれませんが、実はみなさんお馴染みの文章だったりするんですよ。

学校に持って行くかばんのなかか、本棚にしまってありませんか?「日本史の教科書」あるいは、「世界史の教科書」。そう。みなさんがもっとも触れる叙事文が、学校で使われる歴史の教科書なんです。「××年、○○で△△が起こった」とか書かれていますよね。それが叙事文です。

今回解説する「太平記」は、桜木先生が先におっしゃったように鎌倉幕府の滅亡から南北朝時代の争乱など、戦いを主軸とした社会情勢の変遷が記された「軍記物語」。歴史を書いたと聞くと、教科書のような叙事文のようなものをイメージしそうですよね。

しかし、「軍記物語」は合戦や社会の動乱を主軸にしながらも、それと関わる登場人物たちの逸話を読者を楽しませる「物語」です。史実でありながらときに虚構と思われる部分も含めつつ、動乱の渦中、あるいは動乱を生き延びた体験や、当時の見聞を元に説話風に書かれたことから、物語としての性格が浮き彫りになったのでした。

つまり、「軍記物語」は年代記としての性格を有しながらも物語としての面白さを持ち合わせたジャンルなのです。史料として、そして、文芸としての両側面は人々をひきつけ、今日まで大切にされて、現代の私たちにまで引き継がれてきたのでした。

代表的な「軍記物語」

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不明 – 「扇の的」平家物語絵巻, パブリック・ドメイン, リンクによる

せっかく「軍記物語」がどういうものか解説したので、名前を知っておいて損はない軍記物語の代表作品を二つご紹介しておきましょう。

まずは、軍記物語として一番最初に書かれた平将門を主役とした『将門記』。成立は鎌倉時代とされていますが、正確な成立年、および作者は不明とされています。原本が残っていないこと、また写本に欠けがあること、そして作者不明なことから『将門記』を歴史書というには疑問が残るかもしれません。しかし、『将門記』の中心となる「平将門の乱」について詳細に書かれていることから、史料として高い価値を得ています。

そして、平安時代末期の動乱を書いた『平家物語』。これは古典の教科書にもありませんか?「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」という美しい響きの一文を聞いたことがあると思います。

『平家物語』はいわゆる「源平合戦(治承・寿永の乱)」を主軸にした戦争の話ですが、一方で、盲目の僧侶「琵琶法師」らによって弾き語られていました。琵琶法師たちは『平家物語』に節をつけた歌「平曲」にし、町中で語って歩いていたのです。ある種の大道芸ですね。さらに、「平曲」は娯楽としてだけでなく、仏教文学としての側面もありました。僧侶たちに語らせることで、亡き平家への鎮魂の意味合いを果たしたのです。

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歴史を後世に残すだけなら、客観的な記録となる叙事文のほうが簡潔でいいかもしれない。だが、「軍記物語」は物語にすることでより人々の記憶に残って、現代に伝わるようになったんだ。

その「軍記物語」のはしりとなる『将門記』に、最も有名な『平家物語』。『太平記』と一緒に千年以上受け継がれてきたこのふたつは覚えておいて損はないぞ。

2.争い続く『太平記』の時代

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