今回のテーマ「消化」と「吸収」について見ていこう。
普段何気なく食事をしているかもしれないが、食べたものがどのようにして消化・吸収されて自分の体を作る材料となっているか考えたことはあるでしょうか。
今回は、「消化」、「吸収」の2つの単語の意味を確認した後、食品に含まれる三代栄養素と呼ばれる炭水化物・たんぱく質・脂質のそれぞれがどのように消化・吸収されるかを、東大生物学科卒で人体の構造に詳しいライターAEON2と一緒に解説していきます。

ライター/AEON2

東京大学理学部生物学科出身で、在学中は塾講師として高校受験生物の指導をすること多数。また高校時代には、国際生物学オリンピックの国内選考で銅メダルを受賞した経験あり。趣味はボディビルディング。

「消化」と「吸収」の違いは?

まず初めに、「消化」と「吸収」の違いについて解説します。

消化とは、食べたものを様々な酵素によって処理することで、体が取り込めるように形を変えることです。口の中で小さく噛み砕くことも消化の一要素と言えるでしょう。

そして吸収とは、消化によって分解された栄養素を、主に小腸から取り込むことになります。小腸の壁に存在する絨毛(じゅうもう)という組織を通じて体は栄養素を取り込みますが、この絨毛にある細胞の膜を栄養素が通り抜けるためには、十分に小さくされていること(消化)が必要となるわけです。

炭水化物の消化・吸収

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それでは、食べ物に含まれる炭水化物の消化・吸収を見ていきましょう。

炭水化物の消化は主に、唾液、膵液のほか、小腸の消化酵素によって行われます。

唾液による炭水化物の消化

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炭水化物は口の中で噛み砕かれると同時に、唾液(消化液の1つ)に含まれるアルファ-アミラーゼという酵素によって最初の分解を受けます。

アルファ-アミラーゼの働きは、炭水化物中に豊富に含まれるデンプン(糖質とも呼ばれ、多数の糖分子が結合した構造を持っています)に対してハサミのように機能し、細かく切断することです。これにより、大きな分子であるデンプンが、糖の分子が2個結合した形であるマルトースや、3個結合した形であるマルトトリオースにまで分解されます。

膵液による炭水化物の消化

唾液によって多くのデンプンがマルトースとマルトトリオースにまで分解されますが、中にはまだ分解されきっていないデンプンも含まれており、そのようなデンプンは、嚥下されて胃を通過した後に、膵臓から分泌される膵液によってさらに分解されます。

膵液に含まれる消化酵素は膵液アルファ-アミラーゼと呼ばれ、唾液中のアルファ-アミラーゼ同様に、ハサミのように機能するというわけです。これにより、残存していたデンプンの大部分がより小さな分子であるマルトースとマルトトリオースまで分解されます。

\次のページで「小腸の消化酵素による炭水化物の消化と吸収」を解説!/

小腸の消化酵素による炭水化物の消化と吸収

唾液及び膵液に含まれる消化酵素であるアルファ-アミラーゼにより分解されたマルトースとマルトトリオースは、小腸の消化酵素によって最終段階の分解を受けます。

小腸の壁には、マルターゼグルコアミラーゼと呼ばれる消化酵素が存在し、この酵素が再びハサミのように機能することで、マルトースやマルトトリオースは、より小さな分子であるグルコースへと分解されるというわけです。分解されたグルコースは続いて小腸の壁にある絨毛から吸収され、肝臓を経由した後、静脈→動脈という流れに乗って身体全身へと運搬されていきます。

炭水化物に含まれるデンプンは、唾液や膵液の中のアミラーゼ及び小腸の消化酵素によって小さな分子であるグルコースに分解され、小腸の絨毛から吸収されました。

タンパク質の消化・吸収

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炭水化物に続き、次はタンパク質の消化・吸収について解説します。

炭水化物の消化には、唾液・膵液・小腸の消化酵素が重要でしたが、タンパク質の場合は違いがあるのかどうかを見ていきましょう

胃液によるタンパク質の消化

炭水化物の消化にはアルファ-アミラーゼが重要でしたが、タンパク質にはこのアルファ-アミラーゼは作用しません。

代わりにタンパク質に作用するのが、胃液中に含まれるペプシンです。口の中で噛み砕かれて小さくなったタンパク質(肉・魚・卵など)は、酸性の液体である胃液に触れることでその構造が変化し、その後、ペプシンによってより小さな分子へと分解されます。

膵液によるタンパク質の消化

胃液に含まれるペプシンによって小さな分子へと切断されたタンパク質は、続いて十二指腸へと運ばれます。

十二指腸には膵臓から分泌された膵液が流れ込みますが、この膵液中に含まれるトリプシンキモトリプシンペプチターゼ等の働きによって、さらにタンパク質は小さな分子へと切断されるのです。タンパク質は無数のアミノ酸が結合してできている高分子ですが、これらの酵素の働きにより、単体のアミノ酸や、アミノ酸が複数繋がった分子であるペプチドへと変化していきます。

\次のページで「小腸の消化酵素によるタンパク質の消化と吸収」を解説!/

小腸の消化酵素によるタンパク質の消化と吸収

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胃液、膵液の順で作用を受けたタンパク質は、最終的に小腸の消化酵素によって単体のアミノ酸にまで分解されます。

炭水化物の時と同様に、小腸の壁にある絨毛からは小さな分子しか吸収できないため、このように多数のステップを踏んでタンパク質をアミノ酸へと変化させていく必要があるというわけです。

タンパク質は、胃液や膵液によってアミノ酸に分解され、炭水化物同様に小腸の絨毛から吸収されましたね。

脂質の消化・吸収

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炭水化物、タンパク質ときて、最後は脂質の消化・吸収について解説します。

脂質の消化・吸収は他の2つの栄養素とはやや趣が異なるため、しっかりと理解しましょう。

胆汁酸による乳化

脂質は炭水化物やタンパク質と異なり、唾液や胃液の作用を受けません。

食事から取り込まれた脂質は、小腸において、胆嚢から分泌される胆汁酸と反応して乳化されます。乳化とは、水と油が細かく混ざり合った状態のことで、これにより脂質はこの先の工程で分解されやすくなるというわけです。

膵液による消化と吸収

乳化されて分解の準備のできた脂質は、膵液に含まれるリパーゼによってモノアシルグリセロール2分子の脂肪酸に分解されます。炭水化物やタンパク質同様に、大きな分子のままでは小腸の絨毛を通過できないため、このようにして小さな分子へと変化させる必要があるというわけです。

小腸で吸収されたモノアシルグリセロールと脂肪酸は、その後、再び結合し、元の脂質であるトリアシルグリセロールへと戻り、エネルギーとして体内で利用されたり、脂肪として蓄積されたりします。

\次のページで「消化・吸収は複数の臓器の協力で成り立つ」を解説!/

脂質は、胆汁酸によって乳化されることで分解されやすくなり、その後、小腸のリパーゼによって分解されて吸収されました。

image by Study-Z編集部

炭水化物 → 唾液、膵液、小腸の消化酵素

タンパク質 → 胃液、膵液、小腸の消化酵素

脂質 → 膵液(胆汁酸)、小腸の消化酵素

消化・吸収は複数の臓器の協力で成り立つ

今回は三大栄養素がどのようにして消化・吸収されるかについて解説しました。

複数の臓器が協力することで、食べたものが少しずつ分解されて吸収されやすくなることがご理解いただけたかと思います。

 

イラスト使用元:いらすとや

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タンパク質と生物体の機能理科生物

5分で分かる「消化」と「吸収」三代栄養素の消化・吸収についても東大生物学科卒が分かりやすくわかりやすく解説

今回のテーマ「消化」と「吸収」について見ていこう。
普段何気なく食事をしているかもしれないが、食べたものがどのようにして消化・吸収されて自分の体を作る材料となっているか考えたことはあるでしょうか。
今回は、「消化」、「吸収」の2つの単語の意味を確認した後、食品に含まれる三代栄養素と呼ばれる炭水化物・たんぱく質・脂質のそれぞれがどのように消化・吸収されるかを、東大生物学科卒で人体の構造に詳しいライターAEON2と一緒に解説していきます。

ライター/AEON2

東京大学理学部生物学科出身で、在学中は塾講師として高校受験生物の指導をすること多数。また高校時代には、国際生物学オリンピックの国内選考で銅メダルを受賞した経験あり。趣味はボディビルディング。

「消化」と「吸収」の違いは?

まず初めに、「消化」と「吸収」の違いについて解説します。

消化とは、食べたものを様々な酵素によって処理することで、体が取り込めるように形を変えることです。口の中で小さく噛み砕くことも消化の一要素と言えるでしょう。

そして吸収とは、消化によって分解された栄養素を、主に小腸から取り込むことになります。小腸の壁に存在する絨毛(じゅうもう)という組織を通じて体は栄養素を取り込みますが、この絨毛にある細胞の膜を栄養素が通り抜けるためには、十分に小さくされていること(消化)が必要となるわけです。

炭水化物の消化・吸収

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それでは、食べ物に含まれる炭水化物の消化・吸収を見ていきましょう。

炭水化物の消化は主に、唾液、膵液のほか、小腸の消化酵素によって行われます。

唾液による炭水化物の消化

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炭水化物は口の中で噛み砕かれると同時に、唾液(消化液の1つ)に含まれるアルファ-アミラーゼという酵素によって最初の分解を受けます。

アルファ-アミラーゼの働きは、炭水化物中に豊富に含まれるデンプン(糖質とも呼ばれ、多数の糖分子が結合した構造を持っています)に対してハサミのように機能し、細かく切断することです。これにより、大きな分子であるデンプンが、糖の分子が2個結合した形であるマルトースや、3個結合した形であるマルトトリオースにまで分解されます。

膵液による炭水化物の消化

唾液によって多くのデンプンがマルトースとマルトトリオースにまで分解されますが、中にはまだ分解されきっていないデンプンも含まれており、そのようなデンプンは、嚥下されて胃を通過した後に、膵臓から分泌される膵液によってさらに分解されます。

膵液に含まれる消化酵素は膵液アルファ-アミラーゼと呼ばれ、唾液中のアルファ-アミラーゼ同様に、ハサミのように機能するというわけです。これにより、残存していたデンプンの大部分がより小さな分子であるマルトースとマルトトリオースまで分解されます。

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