今回のテーマ「動脈」と「静脈」について見ていこう。
人間の身体には多くの血液が存在してるが、それがどのような仕組みで全身に運ばれているかを知っているでしょうか。
今回は、血流の循環に重要な、動脈と静脈に毛細血管を加えた3種の血管について、東大生物学科卒で人体の構造に詳しいライターAEON2と一緒に解説していきます。

ライター/AEON2

東京大学理学部生物学科出身で、在学中は塾講師として高校受験生物の指導をすること多数。また高校時代には、国際生物学オリンピックの国内選考で銅メダルを受賞した経験あり。趣味はボディビルディング。

動脈とは?

image by iStockphoto

まず初めに動脈についてです。

今回は、動脈の持つ機能(はたらき)と、動脈内部に流れる動脈血とは何かについて簡単に解説します。

後半で解説する静脈や毛細血管とはどのような違いがあるかについて、よく理解できると良いでしょう。

動脈の機能

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動脈の機能は、心臓から押し出された血液を全身へ送り届けることです。

肺で酸素をたっぷりと取り込んだ血液は、心臓の左心房と呼ばれる部位に流れ込み、その後、左心室と呼ばれる部位からポンプの作用で押し出されます。この時、血液には強い圧力(血圧)がかかるため、動脈はそれに耐えるために柔軟性と伸長性に富む構造からできているのです。具体的には、内膜・中膜・外膜という3層の構造からなり、これにより、静脈や毛細血管にはない力づよさとしなやかさを手に入れています。

動脈は末梢に近づくほど細くなりますが、それにつれて太い部分の持っていた力強さは失われ、平滑筋(筋肉の一種で、内臓の壁を構成します)によって構成される部分が増えていくことも知っておきましょう。抹消まで達した動脈は、毛細血管を経由して静脈へと繋がっています。

動脈血について

動脈に流れている血液のことを動脈血と呼び、これに対して静脈に流れている血液は静脈血と言います。

動脈血の特徴は、肺で供給された酸素を豊富に含むことです。血液中には様々な栄養・ホルモンに加えて酸素と二酸化炭素が含まれていますが、この中の酸素と二酸化炭素の割合が、動脈血と静脈血では異なります。動脈は全身の細胞に酸素を運ぶ役割を持っているため、主として動脈血がその内部には流れていることを覚えておくと良いでしょう。

通常、イラスト等では、動脈が赤く書かれ、静脈が青く書かれることが多いですが、これは酸素を多く含む動脈血は鮮やかな赤色に見えることが由来です。

動脈は、心臓から送られる血液の強い圧力に耐えるために、弾力性と収縮性に富む構造をしていました。そしてその機能は、全身の組織へ酸素や栄養素のたくさん含まれた血液を運ぶことでした。

\次のページで「静脈とは?」を解説!/

静脈とは?

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続いて、静脈について解説します。

動脈とはどのような点が異なるかに注意して見ていきましょう。

静脈の機能

静脈は、動脈によって全身に運ばれた血液を心臓へ回収する逆方向のルートを担当します。

静脈も動脈のように3層の構造を持っていますが、その厚みは動脈に比べると薄く、弾性的な性質は動脈よりも小さいです。また静脈に特徴的な構造として「弁」があります。動脈は心臓から強い圧力のかかった血液が流れているため、なかなか逆流することがありません。しかしながら、静脈は血液を心臓に回収するルートなので、その圧力(収縮力)が小さくなり、逆流しやすくなっています。そこで、血管内部に弁を設けることで、逆流しにくくする工夫があるのですね。

動脈が抹消にたどり着くと毛細血管へと分岐し、それが今度は静脈につながるという形で、全身の血液循環ルートが構成されています。

静脈血について

動脈血の章で簡単に触れましたが、静脈に流れる血液は静脈血です。

勘の良い方はお気づきかと思いますが、動脈血が酸素を豊富に含む血液であったのに対し、静脈血は二酸化炭素を多く含む血液からなっています。これは、細胞に動脈から酸素が届けられるのと同時に、不要となった二酸化炭素を回収しているからです。

基本的には動脈が酸素を含む様々な物質を供給するための経路で、静脈は不要となった老廃物を回収する経路と覚えておくと良いでしょう(例外として、小腸で吸収された栄養素は一旦静脈へ最初へ流れ込みます)。

静脈は、動脈で全身へ運んだ血液を回収するルートにあたる血管でした。それゆえに血液が流れる際の圧力が小さくなり、逆流しやすくなっていますが、それを防ぐために弁という構造を持っていました。静脈に流れるのは静脈血で、二酸化炭素や各組織で生じた老廃物を多く含んでいることも思い出しておきましょう。

毛細血管とは?

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最後に毛細血管について解説します。

これまでに紹介した動脈や静脈とは少し異なる性質を持っているのが毛細血管ですので、比較しながら理解すると良いでしょう。

\次のページで「毛細血管の機能と特徴」を解説!/

毛細血管の機能と特徴

毛細血管の機能は、抹消の組織の隅々までに酸素や栄養素を運搬すると同時に、不要になった老廃物を回収することです。

動脈は、抹消までたどり着くと細動脈と呼ばれる細い血管へと分岐していきます。これが毛細血管とつながることで、心臓から押し出された血液が長い旅を終えて各組織に運ばれるというわけです。毛細血管は静脈とも結合していますが、この結合したての細い静脈のことを細静脈と呼びます。細静脈は心臓へ向かうにつれて他の細静脈と合流し、より太い静脈へと形を変えていくのです。

また、毛細血管は、動脈や静脈が3層の構造でできていたのに対し、1層の構造からなっており、これにより各組織とスムーズに物質交換ができるようになっています。

毛細血管のもう1つの特徴は、その呼び名の通り、非常に細い血管であるということです。太さは5マイクロメートルから20マイクロメートルとされており、一番太い動脈の太さが2センチメートルから3センチメートルあることと比較すると、その細さがより際立って分かるでしょう。

毛細血管ですが、これは動脈や静脈と抹消の各組織の間で物質の交換を行う役割がありました。必要なものは動脈から組織へ運搬され、不要なものは静脈へと排出されるというわけです。

image by Study-Z編集部

動脈 → 3層構造・弾力性に富む・酸素、栄養素を運ぶ・流れるのは動脈血

静脈 → 3層構造・弾力性が乏しい・二酸化炭素・老廃物を運ぶ・流れるのは静脈血

毛細血管 → 1層構造・動脈と静脈を末端でつなぐ・細胞と直接物質の交換を行う

動脈・静脈・毛細血管について調べてみよう!

今回は、動脈、静脈に加え、それを連結する毛細血管について、それぞれの特徴や役割に触れながら解説しました。役割に応じて様々な機能を持っている点は、非常に興味深いことではないでしょうか。

全身どのように血液が循環しているかについて、この記事で少しでもご理解いただけると嬉しいです。

イラスト使用元:いらすとや

" /> 5分で分かる「動脈」と「静脈」血液はどのように全身に運ばれる?毛細血管って?東大生物学科卒が分かりやすくわかりやすく解説 – Study-Z
タンパク質と生物体の機能理科生物

5分で分かる「動脈」と「静脈」血液はどのように全身に運ばれる?毛細血管って?東大生物学科卒が分かりやすくわかりやすく解説

今回のテーマ「動脈」と「静脈」について見ていこう。
人間の身体には多くの血液が存在してるが、それがどのような仕組みで全身に運ばれているかを知っているでしょうか。
今回は、血流の循環に重要な、動脈と静脈に毛細血管を加えた3種の血管について、東大生物学科卒で人体の構造に詳しいライターAEON2と一緒に解説していきます。

ライター/AEON2

東京大学理学部生物学科出身で、在学中は塾講師として高校受験生物の指導をすること多数。また高校時代には、国際生物学オリンピックの国内選考で銅メダルを受賞した経験あり。趣味はボディビルディング。

動脈とは?

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まず初めに動脈についてです。

今回は、動脈の持つ機能(はたらき)と、動脈内部に流れる動脈血とは何かについて簡単に解説します。

後半で解説する静脈や毛細血管とはどのような違いがあるかについて、よく理解できると良いでしょう。

動脈の機能

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動脈の機能は、心臓から押し出された血液を全身へ送り届けることです。

肺で酸素をたっぷりと取り込んだ血液は、心臓の左心房と呼ばれる部位に流れ込み、その後、左心室と呼ばれる部位からポンプの作用で押し出されます。この時、血液には強い圧力(血圧)がかかるため、動脈はそれに耐えるために柔軟性と伸長性に富む構造からできているのです。具体的には、内膜・中膜・外膜という3層の構造からなり、これにより、静脈や毛細血管にはない力づよさとしなやかさを手に入れています。

動脈は末梢に近づくほど細くなりますが、それにつれて太い部分の持っていた力強さは失われ、平滑筋(筋肉の一種で、内臓の壁を構成します)によって構成される部分が増えていくことも知っておきましょう。抹消まで達した動脈は、毛細血管を経由して静脈へと繋がっています。

動脈血について

動脈に流れている血液のことを動脈血と呼び、これに対して静脈に流れている血液は静脈血と言います。

動脈血の特徴は、肺で供給された酸素を豊富に含むことです。血液中には様々な栄養・ホルモンに加えて酸素と二酸化炭素が含まれていますが、この中の酸素と二酸化炭素の割合が、動脈血と静脈血では異なります。動脈は全身の細胞に酸素を運ぶ役割を持っているため、主として動脈血がその内部には流れていることを覚えておくと良いでしょう。

通常、イラスト等では、動脈が赤く書かれ、静脈が青く書かれることが多いですが、これは酸素を多く含む動脈血は鮮やかな赤色に見えることが由来です。

動脈は、心臓から送られる血液の強い圧力に耐えるために、弾力性と収縮性に富む構造をしていました。そしてその機能は、全身の組織へ酸素や栄養素のたくさん含まれた血液を運ぶことでした。

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