今回は植物ホルモンの「オーキシン」について勉強します。我々ヒトを含む動物と同じように植物にも、植物の体内で分泌され、様々な器官に作用し一定の変化を与えるホルモンが存在する。その中でも、「オーキシン」という植物ホルモンは植物の成長をつかさどる重要な植物ホルモンなんです。オーキシンが植物体に複雑に作用することによって、植物の成長が支えられているんです。作用は複雑だけれども、これらのことをやさしい言葉で詳しく、生物に詳しいライターのmimosaと一緒に解説していきます。

ライター/mimosa

幼いころから地方の自然豊かな環境で育ってきたので、自然が大好き。もともと文系出身で、独学で生物学、分子生物学、微生物学を勉強し、現在医学系研究所の研究アシスタントとして理系の世界へ飛び込んだ。理科が苦手な方へも興味を持ってもらうべくわかりやすい説明を心掛けている。

植物ホルモンとは

植物ホルモンとは

image by Study-Z編集部

植物ホルモンとは、植物体内で作られ、植物の成長や働きを調整する物質の事を指します。その中でもオーキシンといつ植物ホルモンは、植物の成長にかかせない植物ホルモンですので、次章以降で詳しく説明しますね。

オーキシンとは

オーキシンとは

image by Study-Z編集部

オーキシンとはギリシャ語で「成長」を意味し、茎・根の伸長成長、頂芽の成長、果実の肥大、発根、組織分化などの促進、側芽の成長、果実、葉の脱離などを阻害する作用のある植物ホルモンです。そもそもオーキシンの実体は何かと言うと、インドール酢酸と言う物質であることがわかりました。補足ですが、合成オーキシンを除草剤に利用しています。天然のオーキシンは分解されやすくすぐ不活化してしまうのですが、人工的に合成されたナフタレン酢酸や2,4-D(2,4-ジクロロフェノキシ酢酸)は、安定してオーキシンの作用が得られますよ。イネ科植物に無害の濃度でも、広葉の雑草には強く作用するので、よく水田や麦畑で除草剤として使われていますよね。

オーキシンはどこでつくられているか

オーキシンはどこでつくられているか

image by Study-Z編集部

オーキシンは、若い時期もしくは茎や葉の先端部などの若い組織で多く分泌され、成長部位に運ばれて成長します。

屈性について説明していきますが、屈性には光屈性と重力屈性がありますよ。まず、光屈性(図1,2)について説明しますね。幼葉鞘(子葉の一部)の先端部でつくられたオーキシンは、光の当たらない側に輸送され、その後さらに基部に向って輸送されますよ。そのため、オーキシンは、光の当たる側と当たらない側で、濃度が異なりますよ。上記でも説明したように、オーキシンには細胞の成長を促進する働きがあるので、オーキシン濃度の高い方(陰側)は、光が当たるオーキシンの濃度の低い方よりも成長が促進されます。その結果、光屈性が起きますよ。

次に重力屈性(図1右)についてですが、植物を水平に倒しておくと、重力によってオーキシンが下の方へ移動して濃度が濃くなります。すると、茎は重力の方向とは反対の方向に屈曲。(負の重力屈性)一方、根では、高濃度のオーキシンがあり、成長を抑制するので、重力の方向に屈曲しますよ。(正の重力屈性

次に極性移動(図2)について説明しますね。極性移動とは、物質の移動に方向性があることを意味します。幼葉鞘の先端部でつくられたオーキシンは、下方に移動しますが、逆方向へは移動しません。

最後に頂芽優勢(図3)について説明しますよ。茎(頂芽)で成長が促進される濃度では、側芽の成長は抑制されます。図3のような実験から、頂芽で作られたオーキシンがそれより下の側芽の成長を抑制していると考えられますね。これを頂芽優勢と言いますよ。

\次のページで「オーキシン以外の他の主な植物ホルモン」を解説!/

オーキシン以外の他の主な植物ホルモン

image by iStockphoto

代表的な植物ホルモンの種類と働きについて説明していきますね。まず、ジベレリンについてです。稲の馬鹿苗病の研究過程で日本人によって発見されたもので、茎、根を細長く伸ばすのが主な特徴ですよ。他にも落葉抑制などがあります。また、種子の発芽や茎の成長、花芽の形成、子房の成長などを促す働きがあり、落葉抑制作用もありますよ。

次はサイトカイニンについてです。細胞分裂を促進する化合物の総称ですよ。カルス(未分化の細胞塊)の形成根の生長阻害、側芽の成長、細胞の拡大クロロフィル合成促進、種子発芽と休眠打破、老化と離層形成の制御単為結実の促進果実の生長の促進がありますよ。

アブシジン酸についてですが、落葉などの脱離誘導、休眠誘導、種子発芽抑制、気孔の開閉調節による水不足の対応などがありますよ。エチレンは、発芽、開花、果実の成熟、落葉などの脱離、老化の促進と細胞分裂阻害、伸長成長阻害(一部の植物では成長促進)があり、主に、果実成熟促進の作用がありますよ。

ブラシノステロイドは、茎などの伸長、葉の拡大、根の伸長など植物全体を大きくします。さらに老化の促進、温度ストレス、化学薬剤の薬害、塩害に強くなるなどがありますよ。ブラシノステロイドは単独で作用することもありますが、他のホルモンと関連して働くことが多いようです。

定番の植物ホルモンでは上記の五つが良く知られていますが、最後にブラシノステロイドについても挙げてみました。最近では上記に加えてジャスモン酸、フロリゲン、ストリゴラクトンなども植物ホルモンとして扱われていますよ。

ホルモン同士の関係

ホルモン同士の作用で、ある作用が促進されたり抑制されたりしますよ。ジベレリンとオーキシンの組み合わせでジベレリンは、一般的にオーキシンの作用を高めますよ。反対に、アブシジン酸とオーキシンでは、オーキシンの作用を抑制しますよ。

アブシジン酸は、オーキシンによる子葉の伸長を阻害したり、ジベレリンによる幼植物の伸長を阻害したりして、他のホルモン類との拮抗作用が見られますよ。アブシジン酸は、乾燥、渇水、高温、低温、養分欠乏などの不良環境条件下で生成が増大します。

オーキシンとエチレンの組み合わせでは、高濃度のオーキシンはエチレン合成を阻害しますし、逆にそうでなければ、エチレンはオーキシンの生成と移動に阻害的に働きますよ。オーキシンの高濃度処理や組織の切断、病害、薬品傷害、塩害、冷害など普通の生理条件から著しく不適当な条件下になると、エチレンの生成が激増しますよ。収穫後、果実内にエチレン生成が活発になると、果実の呼吸が高まり、二次的にエチレン生成が高くなり、成熟、軟化が進みます。

オーキシン以外の組み合わせでアブシジン酸とエチレンにおいては、アブシジン酸は「脱離」の意味からきていますが、アブシジン酸によってエチレンが働き脱離させていますよ。

植物ホルモンはまだわからないことだらけ

オーキシンは、最も古くから研究されている植物ホルモンの1つですが、今でも解明されていないことが多いので研究が続いています。最新の研究(2020.5月現在)で、神戸大学、京都大学、Wageningen大学、ALBAシンクロトロンの研究で、オーキシンに対する応答機構の基本原理が明らかになりました。従来のモデル植物では高度な遺伝子重複のためその解明は容易ではありませんでしたが、コケ植物の一種のゼニゴケを用いることで、オーキシン依存的に遺伝子発現の活性化因子と、競合的に働く抑制因子の二つによって感度が調整されるという仕組みがオーキシン応答の根底にあることを見出しました。また、これらの因子の分布パターンの違いにより、オーキシン応答性の異なる発生ゾーンが作られることが示唆されました。

今後この成果をもとに、より複雑なオーキシン応答機構をもつ農作物などにおける仕組みを解析することで、植物の成長や形態を効率的に制御する技術につながると期待されますよ。

" /> 3分で簡単「オーキシン」植物の成長に欠かせない植物ホルモン?理系ライターがわかりやすく解説 – Study-Z
理科生物生物の分類・進化

3分で簡単「オーキシン」植物の成長に欠かせない植物ホルモン?理系ライターがわかりやすく解説

今回は植物ホルモンの「オーキシン」について勉強します。我々ヒトを含む動物と同じように植物にも、植物の体内で分泌され、様々な器官に作用し一定の変化を与えるホルモンが存在する。その中でも、「オーキシン」という植物ホルモンは植物の成長をつかさどる重要な植物ホルモンなんです。オーキシンが植物体に複雑に作用することによって、植物の成長が支えられているんです。作用は複雑だけれども、これらのことをやさしい言葉で詳しく、生物に詳しいライターのmimosaと一緒に解説していきます。

ライター/mimosa

幼いころから地方の自然豊かな環境で育ってきたので、自然が大好き。もともと文系出身で、独学で生物学、分子生物学、微生物学を勉強し、現在医学系研究所の研究アシスタントとして理系の世界へ飛び込んだ。理科が苦手な方へも興味を持ってもらうべくわかりやすい説明を心掛けている。

植物ホルモンとは

植物ホルモンとは

image by Study-Z編集部

植物ホルモンとは、植物体内で作られ、植物の成長や働きを調整する物質の事を指します。その中でもオーキシンといつ植物ホルモンは、植物の成長にかかせない植物ホルモンですので、次章以降で詳しく説明しますね。

オーキシンとは

オーキシンとは

image by Study-Z編集部

オーキシンとはギリシャ語で「成長」を意味し、茎・根の伸長成長、頂芽の成長、果実の肥大、発根、組織分化などの促進、側芽の成長、果実、葉の脱離などを阻害する作用のある植物ホルモンです。そもそもオーキシンの実体は何かと言うと、インドール酢酸と言う物質であることがわかりました。補足ですが、合成オーキシンを除草剤に利用しています。天然のオーキシンは分解されやすくすぐ不活化してしまうのですが、人工的に合成されたナフタレン酢酸や2,4-D(2,4-ジクロロフェノキシ酢酸)は、安定してオーキシンの作用が得られますよ。イネ科植物に無害の濃度でも、広葉の雑草には強く作用するので、よく水田や麦畑で除草剤として使われていますよね。

オーキシンはどこでつくられているか

オーキシンはどこでつくられているか

image by Study-Z編集部

オーキシンは、若い時期もしくは茎や葉の先端部などの若い組織で多く分泌され、成長部位に運ばれて成長します。

屈性について説明していきますが、屈性には光屈性と重力屈性がありますよ。まず、光屈性(図1,2)について説明しますね。幼葉鞘(子葉の一部)の先端部でつくられたオーキシンは、光の当たらない側に輸送され、その後さらに基部に向って輸送されますよ。そのため、オーキシンは、光の当たる側と当たらない側で、濃度が異なりますよ。上記でも説明したように、オーキシンには細胞の成長を促進する働きがあるので、オーキシン濃度の高い方(陰側)は、光が当たるオーキシンの濃度の低い方よりも成長が促進されます。その結果、光屈性が起きますよ。

次に重力屈性(図1右)についてですが、植物を水平に倒しておくと、重力によってオーキシンが下の方へ移動して濃度が濃くなります。すると、茎は重力の方向とは反対の方向に屈曲。(負の重力屈性)一方、根では、高濃度のオーキシンがあり、成長を抑制するので、重力の方向に屈曲しますよ。(正の重力屈性

次に極性移動(図2)について説明しますね。極性移動とは、物質の移動に方向性があることを意味します。幼葉鞘の先端部でつくられたオーキシンは、下方に移動しますが、逆方向へは移動しません。

最後に頂芽優勢(図3)について説明しますよ。茎(頂芽)で成長が促進される濃度では、側芽の成長は抑制されます。図3のような実験から、頂芽で作られたオーキシンがそれより下の側芽の成長を抑制していると考えられますね。これを頂芽優勢と言いますよ。

\次のページで「オーキシン以外の他の主な植物ホルモン」を解説!/

次のページを読む
1 2
Share: