今回のテーマ「スポーツウォーミングアップ」を見ていこう。
スポーツ競技においては、練習や大会の前にウォーミングアップをすることが必須ですが、間違った方法でウォーミングアップをすると逆効果のこともあるんです。
アスリートに限らず、一般レベルでも、試合本番でベストな身体の状態を作るために、今回は、柔軟性、筋肉や心臓の活動性の2点に焦点を当てながら、それぞれのウォーミングアップについて、東大生物学科卒で筋肉に詳しいライターAEON2と一緒に解説していきます。

ライター/AEON2

東京大学理学部生物学科出身で、在学中は塾講師として高校受験生物の指導をすること多数。また高校時代には、国際生物学オリンピックの国内選考で銅メダルを受賞した経験あり。趣味はボディビルディング。

スポーツとウォーミングアップ

image by iStockphoto

運動を行う前のウォームアップと言えば、柔軟体操軽いジョギングストレッチを想像する人が多いかと思います。

正しい方法で行うウォーミングアップはパフォーマンスの向上に非常に役立ちますが、そうでない場合は、逆にパフォーマンスを下げる要因にもなりかねません。特に、手軽に行えるために習慣化している人も多そうなストレッチについては、複数のストレッチ法が存在し、その効果もそれぞれ異なるため、よく理解して実施する必要があります。

今回は、柔軟性筋肉の活動性及び心肺機能の2点に的を当てて、それぞれに適したウォーミングアップ法を解説しますので、是非見てみてください。

ウォーミングアップと柔軟性の関係について

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ウォーミングアップと聞いて誰もがまず一番最初に想像するのがストレッチだと思いますが、実は、効果的な方法でストレッチを行わないと、スポーツパフォーマンスを低下させる要因になりかねません。

今回は、スタティックストレッチ(静的ストレッチ)バリスティックストレッチダイナミックストレッチ(動的ストレッチ)の3種のストレッチについて、簡単にまとめて紹介します。ストレッチと聞くと柔軟性の向上がメインの効能と思われがちですが、それ以外の効能を狙ったストレッチも存在することを見ていきましょう。

スタティックストレッチ

スタティックストレッチ静的ストレッチとも呼ばれますが、これは一般の方がストレッチと聞いて想像する、関節を固定して筋肉を伸ばした状態をキープするストレッチ法です。筋肉の柔軟性を高めて怪我を防止するのと同時に、関節の可動域を広げる働きもあります。これらはスタティックストレッチのメリットですが、残念ながらデメリットもがあるのも事実です。

筋肉には、その伸び縮みを感知するとことで、正しく力発揮を行えるようにする筋紡錘という器官がありますが、静的ストレッチを繰り返すとこの筋紡錘が正しく機能しなくなり、結果として発揮できる筋力が下がるということが起きてしまいます。強い力発揮が必要なスポーツや筋トレの前には、スタティックストレッチは避けるべきでしょう。

バリスティックストレッチ

バリスティックストレッチは、筋肉を伸ばすという意味ではスタティックストレッチと同じですが、勢いをつけてストレッチ動作を行う点が異なります。例を挙げるならば、小学校の体操で行うアキレス腱伸ばしなどです。スタティックストレッチと同じメリットを持ちますが、やはり筋肉の発揮できる力が落ちてしまうというデメリットがあります。

ダイナミックストレッチ

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ダイナミックストレッチ動的ストレッチとも呼ばれ、スタティックストレッチやバリスティックストレッチと異なり、筋肉を伸ばすことそのものに意識を向けるのではなく、より競技に近いような運動を行う中で、自然と筋肉を伸ばしていこうとするタイプのストレッチになります。ラジオ体操やジャンプ動作等がこれに該当し、実施する中で筋肉が温まったり、心拍数を上昇させたりすることが効果の1例です。

筋肉を長時間引き伸ばす動作がないため、スタティックストレッチやバリスティックストレッチのように発揮できる筋力が低下することがありません。ストレッチを導入する目的によっても異なりますが、アクティブな運動を行う前ならば、このダイナミックストレッチがオススメです。

\次のページで「ウォーミングアップと筋肉、心臓の活動性について」を解説!/

ウォーミングアップと筋肉、心臓の活動性について

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続いては、ウォーミングアップを行うことで、筋肉や心臓の活動性がどのように変化するかについて見ていきましょう。

運動と体温(筋温)の関係

生物の体の中では、様々な酵素反応が行われており、その結果として私たちの生命は維持されていますが、この酵素反応は、温度に依存してその効率が変動します。

私たちの体は35度から37度程度に常に体温が維持されていますが、これは、あまりに高温になると、酵素反応を担うタンパク質が壊れてしまうからです(このように体温を含めた体の状態を一定に保つ働きのことをホメオスタシスと言います)。しかしながら、タンパク質が壊れない温度を上限として体温を高めていくと、筋肉や心臓の活動を維持する酵素が活発になり、運動のパフォーマンスを高める効果が期待できます。これはすなわち、強い力を発揮できたり、全身に血液を送る能力を高めることができるということです。

体温を高めるのにおすすめのウォーミングアップ法は?

体温が高まることでスポーツパフォーマンスが上がることが分かりましたが、それでは、具体的にはどのようなウォーミングアップ法が良いのでしょうか。

この回答としては、ダイナミックストレッチをここでは挙げたいと思います。ダイナミックストレッチの項で解説したように、ダイナミックストレッチは筋温を高めたり心拍数を高めたりする効果があるため、スポーツ前のウォーミングアップ種目には最適だと言えるでしょう。

メインの運動の前に、10分ほどジャンピングや軽いジョギングを行うことで、パフォーマンスの向上が期待できるでしょう。

image by Study-Z編集部

ストレッチとウォーミングアップの関係まとめ

それでは改めて、ストレッチとウォーミングアップの関係について簡単に振り返ってみましょう。

スタティック(静的)ストレッチは、筋肉を伸ばした状態を維持するストレッチ法で、柔軟性を高めるのに非常に効果的でしたが、筋肉が発揮できる力を低下させてしまうというデメリットがありました。

バリスティックストレッチは、勢いを加えながら筋肉を伸ばすタイプのストレッチ法で、筋肉の柔軟性を高めるものの、やはり筋力を低下させてしまうデメリットがあります。

他の2種のストレッチと異なり、ダイナミック(動的)ストレッチは、実際のスポーツ動作に近い動きで行うストレッチ(ウォーミングアップ)でした。ダイナミックストレッチでは、筋力の低下は起こらないばかりか、体温の上昇により、筋肉や心臓が最大限のパフォーマンスを発揮できるようになるというメリットがありました。強度の高いスポーツや筋トレの前には、ウォーミングアップとして、ジャンプ動作やジョギング、またはこれから行う運動を低強度で行うというのがおすすめです。

\次のページで「ウォーミングアップには適切な方法を!」を解説!/

ウォーミングアップには適切な方法を!

今回は、ウォーミングアップの中でも、特に皆さんがイメージしやすいと思われるストレッチについて解説しました。3種のストレッチの特徴が理解できたのではないかと思います。

運動の種類を理解し、適切なウォーミングアップを選択すると、これまでよりも良いパフォーマンスを発揮できるかもしれませんね。

イラスト使用元:いらすとや

" /> 5分で分かる適切なスポーツ前の「ウォーミングアップ」どんな種類がある?東大生物学科卒が分かりやすくわかりやすく解説 – Study-Z
タンパク質と生物体の機能理科生物

5分で分かる適切なスポーツ前の「ウォーミングアップ」どんな種類がある?東大生物学科卒が分かりやすくわかりやすく解説

今回のテーマ「スポーツウォーミングアップ」を見ていこう。
スポーツ競技においては、練習や大会の前にウォーミングアップをすることが必須ですが、間違った方法でウォーミングアップをすると逆効果のこともあるんです。
アスリートに限らず、一般レベルでも、試合本番でベストな身体の状態を作るために、今回は、柔軟性、筋肉や心臓の活動性の2点に焦点を当てながら、それぞれのウォーミングアップについて、東大生物学科卒で筋肉に詳しいライターAEON2と一緒に解説していきます。

ライター/AEON2

東京大学理学部生物学科出身で、在学中は塾講師として高校受験生物の指導をすること多数。また高校時代には、国際生物学オリンピックの国内選考で銅メダルを受賞した経験あり。趣味はボディビルディング。

スポーツとウォーミングアップ

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運動を行う前のウォームアップと言えば、柔軟体操軽いジョギングストレッチを想像する人が多いかと思います。

正しい方法で行うウォーミングアップはパフォーマンスの向上に非常に役立ちますが、そうでない場合は、逆にパフォーマンスを下げる要因にもなりかねません。特に、手軽に行えるために習慣化している人も多そうなストレッチについては、複数のストレッチ法が存在し、その効果もそれぞれ異なるため、よく理解して実施する必要があります。

今回は、柔軟性筋肉の活動性及び心肺機能の2点に的を当てて、それぞれに適したウォーミングアップ法を解説しますので、是非見てみてください。

ウォーミングアップと柔軟性の関係について

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ウォーミングアップと聞いて誰もがまず一番最初に想像するのがストレッチだと思いますが、実は、効果的な方法でストレッチを行わないと、スポーツパフォーマンスを低下させる要因になりかねません。

今回は、スタティックストレッチ(静的ストレッチ)バリスティックストレッチダイナミックストレッチ(動的ストレッチ)の3種のストレッチについて、簡単にまとめて紹介します。ストレッチと聞くと柔軟性の向上がメインの効能と思われがちですが、それ以外の効能を狙ったストレッチも存在することを見ていきましょう。

スタティックストレッチ

スタティックストレッチ静的ストレッチとも呼ばれますが、これは一般の方がストレッチと聞いて想像する、関節を固定して筋肉を伸ばした状態をキープするストレッチ法です。筋肉の柔軟性を高めて怪我を防止するのと同時に、関節の可動域を広げる働きもあります。これらはスタティックストレッチのメリットですが、残念ながらデメリットもがあるのも事実です。

筋肉には、その伸び縮みを感知するとことで、正しく力発揮を行えるようにする筋紡錘という器官がありますが、静的ストレッチを繰り返すとこの筋紡錘が正しく機能しなくなり、結果として発揮できる筋力が下がるということが起きてしまいます。強い力発揮が必要なスポーツや筋トレの前には、スタティックストレッチは避けるべきでしょう。

バリスティックストレッチ

バリスティックストレッチは、筋肉を伸ばすという意味ではスタティックストレッチと同じですが、勢いをつけてストレッチ動作を行う点が異なります。例を挙げるならば、小学校の体操で行うアキレス腱伸ばしなどです。スタティックストレッチと同じメリットを持ちますが、やはり筋肉の発揮できる力が落ちてしまうというデメリットがあります。

ダイナミックストレッチ

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ダイナミックストレッチ動的ストレッチとも呼ばれ、スタティックストレッチやバリスティックストレッチと異なり、筋肉を伸ばすことそのものに意識を向けるのではなく、より競技に近いような運動を行う中で、自然と筋肉を伸ばしていこうとするタイプのストレッチになります。ラジオ体操やジャンプ動作等がこれに該当し、実施する中で筋肉が温まったり、心拍数を上昇させたりすることが効果の1例です。

筋肉を長時間引き伸ばす動作がないため、スタティックストレッチやバリスティックストレッチのように発揮できる筋力が低下することがありません。ストレッチを導入する目的によっても異なりますが、アクティブな運動を行う前ならば、このダイナミックストレッチがオススメです。

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