「成り行きに身を委ねる」
「運を天に任せる」と同じ心境を表すことばに「成り行きに身を委ねる」(なりゆきにみをゆだねる)があります。「成り行き」(なりゆき)とは、「物事の移り変わりの様子や過程」のこと。「成り行きに身を委ねる」で、「自然な移り変わりや流れに自分自身も従っていく」ことです。
「成り行きに身を任せる」とも言いますが、「身を任せる」よりも「身を委ねる」方が、より全面的に従順に流れに従っていく感じを伝えることができるかもしれません。
「運を天に任せる」の対義語は?
次に「運を天に任せる」の対義語を見て行きましょう。
「為せば成る」
「運を天に任せる」が「やれることはすべてやりきって後は天の審判を待つのみ」という心境であるのに対して、「まだ、己(おのれ)自身の熱意と努力で克服できる状態にある」ときに発せられることばが「為せば成る」(なせばなる)です。これは、江戸時代、米沢藩主(よねざわはんしゅ)の上杉鷹山(うえすぎようざん)が家臣に対して言ったことばで、「どんなことでも強い意志と態度を持って行動すれば必ず成就する」という「やる気の大切さ」を説いたことわざとして知られています。
上杉鷹山の「為せば成る」には、続きがありますのでご紹介しましょう。「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」(なせばなる なさねばならね なにごとも ならぬはひとの なさぬなりけり)。「意思を持ってやれば何事も達成できる。達成できないのはその人間がやろうとしないからだ」という意味になります。
「断じて行えば鬼神も之を避く」
ご紹介する「断じて行えば鬼神も之を避く」(だんじておこなえばきしんもこれをさく)は、中国の『史記』(しき)の中に出てくる言葉で、秦の始皇帝(しこうてい)の死後、始皇帝の側近であった趙高(ちょうこう)が帝位に就こうとしたときに言ったとされることばで、現代でも中国や日本では使われている慣用句です。
「鬼神」の読み方は「きしん」で、荒々しくもあり、恐ろしい力を持つ神霊(神様)のことで神話にも登場します。「そんな恐ろしい鬼神が眼前に立ちはだかったとしても、決意を固くして行動すれば、勢いに押されて鬼神も道をよけるものだ」という意味になるそうです。
「I’ll let the gods decide my fate」
「運を天に任せる」を意味する英語表現の中で、比較的よく使われる表現のひとつが「I’ll let the gods decide my fate」(アイル レット ザ ゴッズ ディサイド マイ フェイト)ですね。
「gods」は神ですが「天」と同様に絶対的な存在として使われる場合が多いのです。「let」(lət)は、使役動詞で、「させる」「してもらう」の意味で「decide」(dɪsάɪd)は動詞で「決める」「決定する」の意味。「fate」(féɪt)は「運命」「宿命」を意味する名詞です。
ですから、全体で、「私は自分の運命を神にまかせるつもりだ」という意味になります。
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