この記事では「大見得を切る」について解説する。

端的に言えば大見得を切るの意味は「歌舞伎の舞台で最高潮のときに役者がするポーズのこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

語学好きで歴史好き、名古屋出身で5年間のライター経験を持つeastflowerを呼んです。一緒に「大見得を切る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/eastflower

今回の記事を担当するのは語学好きで英語、中国語が得意な5年目のライター、eastflower。「大見得を切るのは誰なのか?」を含めて、「大見得を切る」の意味や起源、どんな場面で使われるのかをわかりやすく解説していく。

「大見得を切る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「大見得を切る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「大見得を切る」の意味は?

まず、「大見得を切る」の辞書の意味から見ていきましょう。

1. 歌舞伎で、役者が特に際だった見得の所作をする。
2.自信のあることを強調するために大げさな言動をとる。また、出来もしないことを出来るように言う。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「大見得を切る」

辞書での説明の通り、「大見得を切る」(おおみえをきる)の「見得」(みえ)とは、歌舞伎の演技のひとつで、クライマックスのときに歌舞伎役者さんが動作を止めて、目を寄せた後、左右それぞれの目は「天と地の二方向」に視線を分ける演技のことです。子供のころから訓練しないとできないこの表情の演技をすることを「見得を切る」と言います。

「大見得を切る」の語源は?

次に「大見得を切る」の語源を確認しておきましょう。

「見得」は「歌舞伎の演技の型(かた)の呼び名」のひとつですが、「歌舞伎」は、江戸時代、庶民文化が花開いた時代に確立されました。「歌舞伎」は、「能」(のう)「人形浄瑠璃」(にんぎょうじょうるり)と共に日本の三大古典劇のひとつに数えられ、「見得」をはじめとして、立ち回りやしゃべり方、化粧や舞台装置などの技術が今日まで継承され、歌舞伎の役者はワンランク上の芸能人としてテレビなどでもたくさん取り上げられています。現代の歌舞伎役者たちは、歌舞伎の中だけでなく、映画や現代ドラマ、あるいはNHKの大河ドラマにも広く出演しており、存在感のある演技で多くのドラマを引き締める役を演じ高視聴率を獲得しているのです。

しかし、歌舞伎が現在のように男性のみで演じられるようになったのは、江戸時代からであり、1500年代末から1600年代の初めに一世を風靡(ふうび)した出雲の阿国(いずものおくに)が女性ユニットで踊りを興行した際の「動作や踊りのスタイル」が歌舞伎の起源になったと言われていますね。阿国たちは目立つ奇抜な衣装を身につけ、勝手気ままな様子に見えたことから「傾く(かぶく)人たち」と形容され、そのの踊りは「傾(かぶ)き踊り」と呼ばれました。現在の「歌舞伎」という漢字は後の人々が「傾(かぶ)き踊り」という言葉からあてたものだと言われています。

大衆の心をつかんだ阿国の「傾(かぶ)き踊り」でしたが、その後、この踊りをまねした遊女たちが茶屋や風呂上がりなどにミュージカル風に演じた結果、幕府の目にとまり、風紀上の理由から女性が「傾(かぶ)き踊り」を踊ることを禁じたのでした。

しかし、「傾(かぶ)き踊り」は男性による「歌舞伎」のメニューとして引き継がれ、顔の表情をオーバーに表現する「大見得を切る」所作は、現在では、「自信に満ちた大げさな言動」や「できないことをできるように強調するハッタリ」の意味でも使われるようになったのです。

\次のページで「「大見得を切る」の使い方・例文」を解説!/

「大見得を切る」の使い方・例文

それでは、「大見得を切る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.その場の雰囲気でこの書類整理は一人でやれると大見得を切ってしまったが、今は後悔している。
2.酒の勢いもあって、「ここの支払いはオレが」と大見得を切ってしまったが、明日からのお小遣いどうすればよいのだろう。
3.「インタビューだから強気で」というアドバイスもあって「必ず優勝してみせます」と大見得を切って答えてしまったが、逆にプレッシャーになってしまった。

「大見得を切る」のは、その場ではカッコイイ思いをするかもしれませんが、あとで考えてみるとマズカッタと思い返すようなこともしばしば起こります。

「大見得を切る」の類義語は?違いは?

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それでは、「大見得を切る」の類義語を見ていきましょう。

「顕示する」

「大見得を切る」に近い意味を持つ言葉のひとつに「顕示する」(けんじする)があります。

「顕示する」の「顕」(けん)には、「はっきりと目立つ」や「隠れていたものを明らかにする」という意味があり、「示」(じ)には、「わかるようにはっきりと見せる」や「実際に物を出して見せる」という意味があり、「顕示する」全体でも「わかるようにはっきりと示す」という意味になるのです。「大見得を切る」も「大げさな態度で外に見せる態度」ですから、この点で類義語のひとつとして考えられます。

\次のページで「「誇示する」」を解説!/

「誇示する」

「誇示する」(こじする)も「大見得を切る」に非常に近い意味ですね。「誇示する」の「誇」は訓読みすると「誇り」(ほこり)と読み、「誇りを持ち名誉を感じること」「自信を持つこと」の意です。ですから、「誇示する」は「誇らしく思って示すこと」「得意になって見せつけること」になります。「自信気に大げさな言動をする」意味である「大見得を切る」と非常に類似した用語であると言えるでしょう。

「大見得を切る」の対義語は?

それでは次に反対語を見ていきましょう。

「自粛」

「大見得を切る」の反対語は、「控えめに遠慮がちに言ったり、やったりする」ことを示す言葉になります。そんな意味を持つことばのひとつが「自粛」(じしゅく)です。

「自粛」は、「自分から進んで、行いや言動、態度をつつしむこと」で、緊急事態時に外出を控えたり、身内に不幸があった年には華やかなイベントは避けたりしますが、これらも自粛の例ですね。

「自制」

「大見得を切る」が「自信を持って臆せずに言動する」ことであるのに対して、「自制」(じせい)とは、「自らが進んで行いや態度をつつしむこと」です。人間ですから誰にでも怒りや悲しみをその場で吐き出したい場面もありますが、そのような自分の感情を自らで抑えて敢えて言動や行動を控えることを意味します。

「大見得を切る」の英訳は?

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「大見得を切る」には、「歌舞伎で演じられるポーズや所作」という意味と「自信を持って大げさな言動をとる」という二つの意味がありますので、それぞれ英語ではどのような表現になるのかを見ていきましょう。

「Pose for dramatic effect」

歌舞伎では、「大見得を切る」という所作は具体的に言うと、「立ち止まって、劇的な効果を狙ってポーズをとること」です。ポーズとは、カメラに向かって自信のある角度やスマイルなどの決めポーズをとることですね。

「ポーズをとる」は英語でもそのまま「pose」になり、「劇的な」は「dramatic」。そして「効果」は「effect」になります。

英語で表現すると、「Pose for dramatic effect」が適切な表現であると言えるでしょう。

\次のページで「「To declare impressively」」を解説!/

「To declare impressively」

「大見得を切る」のもうひとつの意味は「自信を持って大げさな言動をとる」であり、「大げさに言動をとる」とは、言い換えると「たからかに表明する」ということです。

これにピッタリとくる英単語のひとつが「declare」(dɪkléɚ)という動詞ですね。「declare」は一般的には、「宣言する」「公表する」「意思表示する」などと訳されています。「declare」の名詞は「Declaration」(dèkləréɪʃən)で、「アメリカの独立宣言」は、「United States Declaration of Independence」と言うのです。

「declare」だけでは、「どのように表明しているのかの様子が伝わらない」ため、例えば「impressively」(ɪmprɛsɪvli)(印象に残るような)をつけ加えて、「To declare impressively」とすると、「印象に残るような意思表示をする」となり、かなり「大見得を切る」に近い表現になりますね。

「自信に満ちた意思表示」としたい場合には、「proudly」(prάʊdli)を副詞に持ってきて「To declare proudly」とすればよいのです。

「大見得を切る」を使いこなそう

ここまで、「大見得を切る」の意味や使い方について見てきました。「大見得」は歌舞伎の中の演技のひとつで場面が最高潮に達したときに役者が立ち止まってポーズをとり、目の位置を工夫する熟練の技(わざ)のことでしたが、現在では、「大げさな言動をしたり、出来もしないことを出来るように言う」という意味で使われています。

昔は、「オタク」というと「ネクラ」で「生気のない」人たちの代表でしたが、今ではパソコンやスマホの発達により、気軽に仲間を作れるようになったためなのか、マイナーな趣味でも胸を張って堂々と言える世の中になったような気がしますよね。街角で行われる「オタク」のインタビューを見ていても表情は明るく、多くの人が笑顔で答えている気がします。自分の好きな物や好きなことを人前で率直に語れる社会やそれをキチンと理解してくれる社会は素晴らしいと思いますが、みなさんはどう思いますか?

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【慣用句】「大見得を切る」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「大見得を切る」について解説する。

端的に言えば大見得を切るの意味は「歌舞伎の舞台で最高潮のときに役者がするポーズのこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

語学好きで歴史好き、名古屋出身で5年間のライター経験を持つeastflowerを呼んです。一緒に「大見得を切る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/eastflower

今回の記事を担当するのは語学好きで英語、中国語が得意な5年目のライター、eastflower。「大見得を切るのは誰なのか?」を含めて、「大見得を切る」の意味や起源、どんな場面で使われるのかをわかりやすく解説していく。

「大見得を切る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「大見得を切る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「大見得を切る」の意味は?

まず、「大見得を切る」の辞書の意味から見ていきましょう。

1. 歌舞伎で、役者が特に際だった見得の所作をする。
2.自信のあることを強調するために大げさな言動をとる。また、出来もしないことを出来るように言う。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「大見得を切る」

辞書での説明の通り、「大見得を切る」(おおみえをきる)の「見得」(みえ)とは、歌舞伎の演技のひとつで、クライマックスのときに歌舞伎役者さんが動作を止めて、目を寄せた後、左右それぞれの目は「天と地の二方向」に視線を分ける演技のことです。子供のころから訓練しないとできないこの表情の演技をすることを「見得を切る」と言います。

「大見得を切る」の語源は?

次に「大見得を切る」の語源を確認しておきましょう。

「見得」は「歌舞伎の演技の型(かた)の呼び名」のひとつですが、「歌舞伎」は、江戸時代、庶民文化が花開いた時代に確立されました。「歌舞伎」は、「能」(のう)「人形浄瑠璃」(にんぎょうじょうるり)と共に日本の三大古典劇のひとつに数えられ、「見得」をはじめとして、立ち回りやしゃべり方、化粧や舞台装置などの技術が今日まで継承され、歌舞伎の役者はワンランク上の芸能人としてテレビなどでもたくさん取り上げられています。現代の歌舞伎役者たちは、歌舞伎の中だけでなく、映画や現代ドラマ、あるいはNHKの大河ドラマにも広く出演しており、存在感のある演技で多くのドラマを引き締める役を演じ高視聴率を獲得しているのです。

しかし、歌舞伎が現在のように男性のみで演じられるようになったのは、江戸時代からであり、1500年代末から1600年代の初めに一世を風靡(ふうび)した出雲の阿国(いずものおくに)が女性ユニットで踊りを興行した際の「動作や踊りのスタイル」が歌舞伎の起源になったと言われていますね。阿国たちは目立つ奇抜な衣装を身につけ、勝手気ままな様子に見えたことから「傾く(かぶく)人たち」と形容され、そのの踊りは「傾(かぶ)き踊り」と呼ばれました。現在の「歌舞伎」という漢字は後の人々が「傾(かぶ)き踊り」という言葉からあてたものだと言われています。

大衆の心をつかんだ阿国の「傾(かぶ)き踊り」でしたが、その後、この踊りをまねした遊女たちが茶屋や風呂上がりなどにミュージカル風に演じた結果、幕府の目にとまり、風紀上の理由から女性が「傾(かぶ)き踊り」を踊ることを禁じたのでした。

しかし、「傾(かぶ)き踊り」は男性による「歌舞伎」のメニューとして引き継がれ、顔の表情をオーバーに表現する「大見得を切る」所作は、現在では、「自信に満ちた大げさな言動」や「できないことをできるように強調するハッタリ」の意味でも使われるようになったのです。

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