この記事では「杯を交わす」について解説する。

端的に言えば杯を交わすの意味は「一緒に酒を飲む」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

語学好きで歴史好き、名古屋出身で5年間のライター経験を持つeastflowerを呼んです。一緒に「杯を交わす」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/eastflower

今回の記事を担当するのは語学好きで英語、中国語が得意な5年目のライター、eastflower。「杯を交わす」の意味や起源、どんな場面で使われるのかをわかりやすく解説していく。

「杯を交わす」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「杯を交わす」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「杯を交わす」の意味は?

まず、国語辞典で「杯を交わす」の「杯」(さかずき)と「交わす」(かわす)の意味を見ていきましょう。
「杯」は当初、「酒杯」と書かれ「さかづき」と読み書きされていましたが、現在は、「杯」は「さかずき」と仮名(かな)が降られる言葉です。

【杯】
酒を入れて飲む器。さかずき。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「杯」

交わす
1.互いに、やり取りする。交換する。
2.互いにまじえる。交錯させる。
3.移す。変える。
4.動詞の連用形に付いて、互いに…しあう意を表す。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「交わす」

酒を入れて飲む器(うつわ)である「さかずき」は、「杯」と書かれたり、「盃」と記載されたり、ときには、「酒杯」とも書かれますが、どれも基本的には同じ意味です。「杯を交わす」(さかずきをかわす)には、大きく二つの意味があり、一つは、文字通り「杯を手に一緒に酒を飲むことや酒席で酒を注いだり注がれたりすること」の意味で使われます。「親交」や「信頼」を深めることを目的に酒席が設けられる場合は多いですね。

もう一つは、「重要な約束を守るために、杯を交わしてお酒を飲むこと」を指します。結婚式で新郎と新婦が親族やゲストの前で「三々九度」の杯を交わす儀式が実施されますが、この儀式はその一例です。結婚の儀式は昔は家と家とのつながりという「固い約束」をするとともに「お互いに裏切らない」という意思表示を表す行為でもありましたが、現在では「不倫」や「浮気」「嘘をつかない」など新郎と新婦との間で交わされた約束を守ることを誓う場所でもあります。

「杯を交わす」の語源は?

研究者によれば、日本で最初にお米でお酒が造られるようになったのは、弥生時代(やよいじだい)になってからだと考えられています。奈良時代には、稲作作業もすっかり安定し朝廷のためのお酒も造られていました。奈良時代に編纂(へんさん)された『古事記』(こじき)の中には、スサノオノミコトがお酒を造らせて大蛇、ヤマタノオロチに飲ませ倒す物語がでてきますが、古来からお酒は神事には欠かせないものであり、神前に集まった人々は、お酒で乾杯することで心をひとつにしたと言われています。

時代は移り室町時代(むろまちじだい)になると、戦国大名たちが登場してきました。武家が力を持ち戦国の世に突入していったのです。戦いに勝利するためには外交が重要になっていきました。「誰と組むのか?どのように同盟関係を維持していくべきか?」は命に関わる問題になっていったのです。言い換えると、「相手をどのようにもてなし味方サイドにつくように仕向け、確認すべきか」が重要な事項になっていったのでした。

この室町時代に完成したもてなしの料理の膳(ぜん)が饗膳料理(きようぜんりょうり)です。この饗膳料理は「酒礼(しゅれい)」「饗膳(きょうぜん)」「酒宴(しゅえん)」の三部からなる本格的なフルコース料理で、「お酒の飲み方」を含む饗膳料理の配膳のしかたなどのマナーも同時に形成されていったと言われています。現在も多くの場面でお酒の飲み方などの所作が引き継がれているのです。

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「杯を交わす」の使い方・例文

「杯を交わす」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.久しぶりだな。今日の同窓会ではみんな集まっているし、この会の後、昔よく通っていたメニュー豊富なボヘミアンバーへ行って杯を交わして旧交をあたためよう。

2.後に三国志の英雄と呼ばれるようになった劉備(りゅうび)、関羽(かんう)、張飛(ちょうひ)の三人は、意気投合し出会ってから間もなく、お互い別々の日に生まれたが、同じ日に死のうと誓い合ったのち、義兄弟の契り(ちぎり)を結び杯を交わしました。

3.さきほど、貴社と弊社は技術提携(ぎじゅつていけい)の締結を無事に結びました。これまでの両社の履歴を振り返るとお互いが競合相手だったかもしれません。しかし、今日からはあなた方と私たちは同じ船にあいのりして一緒に進んでいくのです。競争は昨日までで終わりノーサイドとなりました。それでは、グラスを持って皆さん、お立ちください。両社の今後の発展を祈念して、杯を交わして、乾杯しましょう。

「杯を交わす」は今も昔と変わらず硬い約束を交わす際には相手方と一緒にお酒を飲むという習慣があるのです。

「杯を交わす」の類義語は?違いは?

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それでは、「杯を交わす」の類義語を見ていきましょう。

「酒を酌み交わす」

「酒を酌み交わす」(さけをくみかわす)も「杯を交わす」と同様に「相手と酒をつぎ合い一緒に酒を飲む」という意味です。樽酒(たるざけ)から柄杓(ひしゃく)で酒を酌んで升(ます)に入れて親しく飲み語ったり、中国のドラマで言えば、カメから柄杓で酒を酌んでそのまま柄杓で飲む場面もお馴染みのことですよね。

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「杯を貰う」

「杯を貰う」(さかずきをもらう)も「杯を交わす」と同様に相手が飲んでいた杯を受け、「注がれた酒を飲む」ことですが、「杯を交わす」の場合、お酒を飲む目的が「親交や信頼を深めるため」や「固い約束をして守るため」と多岐の場面で使われる用語であるのに対して「杯を貰う」は「非常に固い約束をする儀式」の場面で用いられることばです。

ご存知の方が多いと思いますが、1960年代や1970年代、映画制作会社の東映(とうえい)と言えば、「チャンバラ映画」と「ヤクザ映画」が二つの柱でした。「杯を貰う」はこの「ヤクザ映画」でひんぱんにでてきた台詞(せりふ)でもありました。

親分が子分になる者に杯を渡し、子分が注がれた酒を飲んだ際に「親分子分の契約」が成立し、子分にとって、何にもまして親分が大切なものになるのです。「兄貴分と弟分の契約」というのもあります。

「杯を交わす」の対義語は?

次に「杯を交わす」の対義語を見ていきましょう。

「杯を交わす」は、「親交や信頼を深めるたり固い約束をする」などの意味ですから人間関係が近づき、深くなっていくことを表す言葉なので、反対語は、近くにあった関係が遠くなり、疎遠になっていく言葉が反対語になります。

「縁を切る」

血縁や家族的なつながり、あるいは、なんらかのゆかりがあって親しくなっていた人間関係を解消することを「縁を切る」といいます。「杯を交わす」が人間関係の始まりを表すことばであるのに対して、「縁を切る」は関係の終焉(しゅうえん)や最後を示す用語になるのです。

「袂を分かつ」

「今まで親しく行動を共にしてきた人と離別する」や「近かった関係を断ち切る」ことを意味することばに「袂を分かつ」(たもとをわかつ)があります。「袂」(たもと)とは、「手(た)本(もと)」の意からできたことばで、和服の袖付けから下にある垂れた袋のようになっている部分のことです。近かった関係を解消し分かれていく、離れていく意味の言葉になりますね。

「杯を交わす」の英訳は?

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それでは、「杯を交わす」を英訳するとどうなるのかを見ていきましょう。

「Pledge」

「杯を交わす」が持つ意味の中でも、「固い約束をする」という意味を持つ「Pledge」(plédʒ)をご紹介しましょう。尚、文語として「Pledge」は、「乾杯する」という意味も持ちます。

「約束する」ということばで普段の生活の中でよく使われていることばに「Promise」や「Swear」がありますが、これら二つの言葉よりも「Pledge」はかなり強い語気があり、名詞として使われる場合には、「固い約束」「誓約」「公約」などと訳される言葉であり、動詞としては、「誓約をする」という意味なのです。

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「杯を交わす」を使いこなそう

この記事では「杯を交わす」の意味・使い方・類語などを説明しました。「杯を交わす」理由には、「親交」や「信頼」を深めるためという目的の他にも日本では「重要な約束をして約束を守るための誓い」としても杯が交わされる習慣があるのです。お酒を飲めない体質でなければ男女に関わらず、少しはお酒を飲めるように普段から練習しておいた方がいいと思うのですがみなさんはどう思われますか?

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【慣用句】「杯を交わす」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

「杯を交わす」を使いこなそう

この記事では「杯を交わす」の意味・使い方・類語などを説明しました。「杯を交わす」理由には、「親交」や「信頼」を深めるためという目的の他にも日本では「重要な約束をして約束を守るための誓い」としても杯が交わされる習慣があるのです。お酒を飲めない体質でなければ男女に関わらず、少しはお酒を飲めるように普段から練習しておいた方がいいと思うのですがみなさんはどう思われますか?

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