今回は「アモントン-クーロンの法則」について解説していきます。
この法則は、高校生の物理で習う摩擦に関する法則のひとつだ!今回は、摩擦の法則について理系大学院卒のライター・こーじに解説してもらおう。

ライター/こーじ

元理系大学院卒。小さい頃から機械いじりが好きで、機械系を仕事にしたいと大学で工学部を専攻した。卒業後はメーカーで研究開発職に従事。
物理が苦手な人に、答案の答えではわからないおもしろさを伝える。

アモントンの法則とは

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アモントンの法則とは、基本的な摩擦現象の経験的な法則です。また、アモントン=クーロンの法則とも呼ばれており、3つまたは4つの法則から成り立っています。この法則は、トライボロジーの分野において基礎の一つです。この法則は15世紀から18世紀にかけてフランスの技術者、物理学者であるアモントンとフランスの物理学者・土木学者であるクーロンが発見しました。

アモントンとはどんな人物?

Guillaume Amontons.png
不明 - circa 1870: French physicist Guillaume Amontons (1663 - 1705) demonstrates the semaphore in the Luxembourg Gardens, Paris in 1690. Original Publication: From an illustration published in Paris circa 1870. Close-up approximating bust., パブリック・ドメイン, リンクによる

フランスのパリ生まれの物理学者。本名は、ギヨーム・アモントン。機械学や物理学、数学、晩年には天文学を研究していました。アモントンは科学機器も多数開発しており、湿度計、大気圧計、経度測定用の船上水時計、熱空気エンジンなどの製作もおこなっています。
アモントンは、摩擦の研究で二つの法則を発見しました。アモントンの第一法則とアモントンの第二法則と呼ばれています。その他にも、気体の熱的性質について様々な研究成果を発表しました。また、気体を用いて大気圧の変動を補正できる温度計を世界で初めて作成したのもアモントンです。
このように、アモントンは摩擦に限りません。気体関係においても偉業を成し遂げた物理学者です。

クーロンとはどんな人物?

Charles de Coulomb.png
Louis Hierle - 不明, パブリック・ドメイン, リンクによる

フランス出身の物理学者・土木技術者。本名はシャルル・ド・クーロン力学の分野では、摩擦力の法則、電磁気学の分野ではクーロンの法則を発見しています。実は、クーロンは摩擦の法則よりも電磁気学の法則で有名な学者です。彼の名前は、単位にもクーロン(C)が使われています。

実はレオナルド・ダ・ヴィンチが第一発見者!?

Leonardo da Vinci - presumed self-portrait - WGA12798.jpg
レオナルド・ダ・ヴィンチ - https://www.latitudinex.com/europa/leonardo-valle-della-loira-rinascimento.html Web Gallery of Art:   静止画  Info about artwork, パブリック・ドメイン, リンクによる

一番最初にアモントンの法則を発見したのは、レオナルド・ダ・ヴィンチといわれています。レオナルド・ダ・ヴィンチは、重さを二倍にすると摩擦も二倍になることや、接触面積は摩擦にほとんど影響しないことを書いていました。また、「あらゆる物体は、滑らそうとすると摩擦力という抵抗を生じる。その大きさは、その重量の4分の1である」とも記述しています。これが摩擦の大きさについて述べられた歴史上初めての記述です。

\次のページで「アモントン=クーロンの4つの法則」を解説!/

アモントン=クーロンの4つの法則

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アモントン=クーロンの法則は、実験から推測される経験則です。この経験を基に摩擦現象に対して、次の4つのことが示されています。

(1) 摩擦力と垂直荷重は比例の関係にある。
(2) 摩擦力は見かけの接触面積に依存しない。
(3) 運動している物体への摩擦力は滑り速度には依存しない。
(4) 静止している物体の摩擦力は運動している物体の摩擦力よりも大きい。

4番目の“静止している物体の摩擦力は運動している物体の摩擦力よりも大きい”は、法則に含める場合、含めない場合どちらもあります。今回は4番目の法則も交えて理解を深めていきましょう。

その1.摩擦力と垂直荷重は比例の関係にある

その1.摩擦力と垂直荷重は比例の関係にある

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アモントン第一の法則とも呼ばれます。
上の図は摩擦力と垂直荷重の関係を示したものです。
垂直抗力Nは、質量荷重mgに対する反力。Fは摩擦力 、μは摩擦係数、f は移動に必要な外力です。ここで、力の釣り合いを考えてみましょう。

水平方向の釣り合いの式は
F=f
垂直方向の力の釣り合いの式は、
mg=N
摩擦力は一般的に
F=μN
これらを整理すると
F=μmg
となります。

摩擦力は垂直荷重に対して摩擦係数をかけた式です。つまり、摩擦力は垂直荷重に比例することをこの式が示しています。

\次のページで「その2.摩擦力は見かけの接触面積に依存しない」を解説!/

その2.摩擦力は見かけの接触面積に依存しない

その2.摩擦力は見かけの接触面積に依存しない

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アモントン第二の法則です。
トライボロジーの世界では、見かけの接触面積と真実接触面積と二つの言葉で接触面積を定義しています。
見かけの接触面積とは、接触面と被っている面積です。上の図で赤い部分の面積を指しています。例えば、手のひらを合わせた時、手のひらの面積が見かけの接触面積です。
一方で、真実接触面積とは物理的に接触している面積になります。実は、物体が重なっている場合でも、実際に接触している面積は1/1000~1/1000000です。(上の図の右側の図)
この法則は、見かけの接触面積だけに着目したものになります。ここで摩擦力はF=μmg、”摩擦力と垂直荷重は比例の関係にある”を前提にすると、見かけの接触面積は関係ありません。つまり、摩擦力は質量荷重と接触面間の摩擦係数だけで決まることを示しています。

その3.運動している物体への摩擦力は滑り速度には依存しない

クーロンが発見した一つ目の法則です。静止している物体の摩擦力は静止摩擦力といい、動いている物体の摩擦力は動摩擦といいます。その摩擦力を垂直荷重で割ったものがそれぞれ静止摩擦係数、動摩擦係数です。
動いている物体であっても摩擦力の基礎式は変わりません。そのため、動摩擦係数は以下の式で表すことができます。この式には滑り速度の変数は見受けられません。つまり、動摩擦力は滑り速度に影響を受けないことが示されています。

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その4.静止している物体の摩擦力は運動している物体の摩擦力よりも大きい

その4.静止している物体の摩擦力は運動している物体の摩擦力よりも大きい

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クーロンが発見した二つ目の摩擦の法則です。地面に置いてある物体を動かす場合を考えます。上の図は、横軸に外力、縦軸に摩擦力を示した図です。この図からも、静止摩擦力は動摩擦力より小さいことがわかります。
青い線は、静止摩擦力を示しており青い線の傾きが静止摩擦係数です。つまり、静止摩擦係数は一定。赤い線は、動摩擦力を示しています。外力が増加しても動摩擦力は一定。動摩擦係数は外力の増加に伴い、減少することを示しています。
自転車で考えてみましょう。最初のひとこぎは力が必要です。自転車が動き出すまでに必要な力が静止摩擦力になります。動いてからは、ペダルをこぐのが軽くなりますよね。この力が動摩擦力です。このように、静止摩擦力は動摩擦力よりも大きいことが直感的にもわかります。
以上のことからも、静止摩擦力は動摩擦力よりも大きいです。

アモントン=クーロンの法則が成り立たない場合

最後に、アモントン=クーロンの法則が成立しない条件を説明します。材料そのものの特性や、接触界面に第3の物質が介在するときです。例えば、ゴム材料やゲルなどの超弾性体や物体間に潤滑剤などの流体になります。
ゴム材料やゲル材料は接触面積に依存することが多く、潤滑剤が介在すると流体の粘性に依存するからです。本法則は、すべての条件に当てはまるわけではありません。しかし、多くの物理の摩擦現象について有効な法則であることには違いないです。

\次のページで「どんな法則にも成り立つ条件があります!」を解説!/

どんな法則にも成り立つ条件があります!

アモントン=クーロンの法則は、数世紀かけて発見された偉大な法則です。しかしながら、その法則には成立条件が存在します。どんな法則にも、適用条件はあるのです。
あなたも、公式を丸暗記するのではなく”どのような条件だと成立するのか”を常に意識しましょう。そうすれば、物理現象をより理解できるようになります。

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物理物理学・力学理科

3分で簡単「アモントンの法則」!歴史的背景を含めて理系大学院卒ライターがわかりやすく解説

今回は「アモントン-クーロンの法則」について解説していきます。
この法則は、高校生の物理で習う摩擦に関する法則のひとつだ!今回は、摩擦の法則について理系大学院卒のライター・こーじに解説してもらおう。

ライター/こーじ

元理系大学院卒。小さい頃から機械いじりが好きで、機械系を仕事にしたいと大学で工学部を専攻した。卒業後はメーカーで研究開発職に従事。
物理が苦手な人に、答案の答えではわからないおもしろさを伝える。

アモントンの法則とは

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アモントンの法則とは、基本的な摩擦現象の経験的な法則です。また、アモントン=クーロンの法則とも呼ばれており、3つまたは4つの法則から成り立っています。この法則は、トライボロジーの分野において基礎の一つです。この法則は15世紀から18世紀にかけてフランスの技術者、物理学者であるアモントンとフランスの物理学者・土木学者であるクーロンが発見しました。

アモントンとはどんな人物?

Guillaume Amontons.png
不明 – circa 1870: French physicist Guillaume Amontons (1663 – 1705) demonstrates the semaphore in the Luxembourg Gardens, Paris in 1690. Original Publication: From an illustration published in Paris circa 1870. Close-up approximating bust., パブリック・ドメイン, リンクによる

フランスのパリ生まれの物理学者。本名は、ギヨーム・アモントン。機械学や物理学、数学、晩年には天文学を研究していました。アモントンは科学機器も多数開発しており、湿度計、大気圧計、経度測定用の船上水時計、熱空気エンジンなどの製作もおこなっています。
アモントンは、摩擦の研究で二つの法則を発見しました。アモントンの第一法則とアモントンの第二法則と呼ばれています。その他にも、気体の熱的性質について様々な研究成果を発表しました。また、気体を用いて大気圧の変動を補正できる温度計を世界で初めて作成したのもアモントンです。
このように、アモントンは摩擦に限りません。気体関係においても偉業を成し遂げた物理学者です。

クーロンとはどんな人物?

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Louis Hierle – 不明, パブリック・ドメイン, リンクによる

フランス出身の物理学者・土木技術者。本名はシャルル・ド・クーロン力学の分野では、摩擦力の法則、電磁気学の分野ではクーロンの法則を発見しています。実は、クーロンは摩擦の法則よりも電磁気学の法則で有名な学者です。彼の名前は、単位にもクーロン(C)が使われています。

実はレオナルド・ダ・ヴィンチが第一発見者!?

一番最初にアモントンの法則を発見したのは、レオナルド・ダ・ヴィンチといわれています。レオナルド・ダ・ヴィンチは、重さを二倍にすると摩擦も二倍になることや、接触面積は摩擦にほとんど影響しないことを書いていました。また、「あらゆる物体は、滑らそうとすると摩擦力という抵抗を生じる。その大きさは、その重量の4分の1である」とも記述しています。これが摩擦の大きさについて述べられた歴史上初めての記述です。

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