今回のテーマ「筋組織の分類」を見ていこう。
筋組織は大きく分けて骨格筋、心筋、平滑筋、の3種からなる。
高校生物で学習するそれぞれの特徴や機能を踏まえながら理解することで、それらの筋組織の共通点や違いを把握できるようになるのが今回の目標です。
東大生物学科卒で筋肉に詳しいライターAEON2と一緒に解説していきます。

ライター/AEON2

東京大学理学部生物学科出身で、在学中は塾講師として高校受験生物の指導をすること多数。また高校時代には、国際生物学オリンピックの国内選考で銅メダルを受賞した経験あり。趣味はボディビルディング。

筋組織にはどのような種類がある?〜骨格筋・心筋・平滑筋〜

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筋組織(筋肉・筋線維)と聞くと、まず初めに連想するのが鍛え上げられた肉体の写真や画像ではないかと思われます。この鍛え上げられた肉体を構成するのは「骨格筋」と呼ばれる筋組織ですが、筋組織には他にも「心筋」「平滑筋」が存在することをご存知ですか。

これら3種の筋組織それぞれの特徴や機能を比較しながら、筋肉について理解を深めましょう。

骨格筋について

まずは、筋肉と聞いたときに誰もが一番に想像すると思われる骨格筋について解説していきます。

骨格筋の特徴

骨格筋は、顕微鏡で見たときに、組織が縞状に見える横紋筋から構成されるのが特徴です。この横紋筋は、後に紹介する平滑筋と比べて、迅速に強力な力を発揮できるという性質を持っています。

また、骨格筋は自分の意思で動かすことができる(肘を曲げたり伸ばしたりなど)随意筋です。骨格筋は運動神経(体性神経)によって制御を受けていますが、これが他の筋組織との特徴的な違いであり、それにより自分の意思での自由な運動(収縮や弛緩)が可能となります。

骨格筋の機能

骨格筋の機能は、大きく分けて、関節の曲げ伸ばし体熱生産の2つです。

私たちが体を動かす際には、いくつもの骨格筋が協調して収縮したり伸長したりすることで、関節の曲げ伸ばしが行われています。骨格筋は基本的には骨に付着しており、それゆえに、名称に「骨格」というワードが含まれるというわけです。

骨格筋は更に、熱を生み出す機能(体熱生産)も持っています。私たちの体温が、平熱である35度から37度の間に保たれているのは、骨格筋がエネルギーを消費しながら熱を生み出しているためなのです。

\次のページで「心筋について」を解説!/

心筋について

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骨格筋に続き、心臓を構成する心筋について見ていきましょう。

心筋の特徴

心筋は骨格筋と似た性質を持っている筋組織です。骨格筋が組織に縞模様を持つ横紋筋に分類されたのと同様に、心筋も縞模様を持つために横紋筋に分類されます。

骨格筋と異なるのは、骨格筋が1つの細胞にたくさんの核が存在する構造であるのに対し、心筋は1つの細胞に1つの核しか持たない点です。これにより心筋は単核細胞と呼ばれます。

また、心筋は自分の意思では動かせない不随意筋です。骨格筋が随意筋であったことと対応させて理解すると良いでしょう。

心筋の機能

心筋の機能は、その名称の通りで、心臓を動かすことにあります。

全身に血液を循環させるには強い力が必要となるため、横紋筋(迅速かつ強力な力発揮ができる)で構成されることは非常に好都合です。骨格筋と異なる点として、心筋は疲労に非常に強い点が挙げられます。心臓は24時間動き続ける必要があるため、力強さに加えて持久力も必要となるわけですね。

更に詳細を挙げると、心筋の中には、心臓を拍動させる信号を電気刺激として生み出す特殊心筋というものも存在します。この信号が心筋内を伝導することで、心筋全体の強調した拍動が生まれるというわけです。

平滑筋について

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最後は内臓の壁を構成する平滑筋の紹介となります。

平滑筋の特徴

平滑筋は主として内臓の壁を構成する筋組織で、消化管血管壁気管支壁などを構成します。

平滑筋には、骨格筋に存在した縞模様が存在せず、そのため、骨格筋のように強い力発揮を行うことはできません。しかしながら、平滑筋は収縮力は低いものの、疲労せずに長時間動き続けることができるという特徴があります。これにより、1日を通じて内臓の活動リズムを調整し続けることが可能になるというわけです。

また、平滑筋は自分の意思で動かすことはできないため、心筋と同様に不随意筋に分類されます。

\次のページで「平滑筋の機能」を解説!/

平滑筋の機能

平滑筋の主な機能は、内臓の活動にあります。食べたものを消化していく過程では、より先の消化器官へ食べたものを送り出す必要がありますが、この蠕動(ぜんどう)運動の要となるのが平滑筋です。1日を通して常に消化器官は活動しているため、平滑筋の特徴である疲労に強いという点が重要となります。

消化器官以外の臓器の壁を構成する役割も平滑筋は持ちますが、これは具体的な機能というよりは、その構造の材料となっているという認識が正しいでしょう。

それぞれの筋組織の特徴の復習

それぞれの筋組織の特徴の復習

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3種の筋組織の解説を一通り終えましたので、簡単にその内容を復習しましょう。

骨格筋 → 縞状構造あり、随意運動可、強い力発揮、疲れやすい

心筋 → 縞状構造あり、随意運動不可、強い力発揮、疲れにくい

平滑筋 → 縞状構造なし、随意運動不可、弱い力発揮、疲れにくい

それぞれの筋組織は、それぞれが存在する場所や機能に適した特徴を有していることがご理解いただけたかと思います。

骨格筋は常に動き続ける必要がないため、強い力発揮ができるものの、その持続力は弱いということが特徴でした。

心筋は、全身に血液を送るというポンプとしての機能があるため、力強い力発揮に加えて、持久力も要求されます。心臓という器官の機能を考えると、心筋という筋組織についても理解がしやすいのではないかと思いました。

平滑筋は内臓の壁を作る筋肉でした。内臓と一括りにしてしまうと見落としがちですが、血管や気管支の壁を構成していることもよく覚えておく必要があります。また、1日中活動することが要求される筋肉ですので、疲れにくいという性質を持つことが重要でした。この辺りをまとめて理解しておくと良いでしょう。

筋組織にはそれぞれにふさわしい特徴と機能が存在する

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今回の記事では、骨格筋・心筋・平滑筋の3種の筋組織について解説しました。

今回は筋組織の全体像について掴んでいただきたかったので割愛いたしましたが、骨格筋の中でも持久力の強いものや弱いものが存在したり、骨格筋や平滑筋は再生が可能であるものの、心筋は一度壊れると再生しなかったりするなど、さらに詳細な情報も存在します。興味のある方は、是非調べてみてくださいね。

イラスト使用元:いらすとや

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タンパク質と生物体の機能理科生物

5分で分かる「筋組織」種類や特徴は?骨格筋・心筋・平滑筋とは?東大生物学科卒が分かりやすくわかりやすく解説

今回のテーマ「筋組織の分類」を見ていこう。
筋組織は大きく分けて骨格筋、心筋、平滑筋、の3種からなる。
高校生物で学習するそれぞれの特徴や機能を踏まえながら理解することで、それらの筋組織の共通点や違いを把握できるようになるのが今回の目標です。
東大生物学科卒で筋肉に詳しいライターAEON2と一緒に解説していきます。

ライター/AEON2

東京大学理学部生物学科出身で、在学中は塾講師として高校受験生物の指導をすること多数。また高校時代には、国際生物学オリンピックの国内選考で銅メダルを受賞した経験あり。趣味はボディビルディング。

筋組織にはどのような種類がある?〜骨格筋・心筋・平滑筋〜

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筋組織(筋肉・筋線維)と聞くと、まず初めに連想するのが鍛え上げられた肉体の写真や画像ではないかと思われます。この鍛え上げられた肉体を構成するのは「骨格筋」と呼ばれる筋組織ですが、筋組織には他にも「心筋」「平滑筋」が存在することをご存知ですか。

これら3種の筋組織それぞれの特徴や機能を比較しながら、筋肉について理解を深めましょう。

骨格筋について

まずは、筋肉と聞いたときに誰もが一番に想像すると思われる骨格筋について解説していきます。

骨格筋の特徴

骨格筋は、顕微鏡で見たときに、組織が縞状に見える横紋筋から構成されるのが特徴です。この横紋筋は、後に紹介する平滑筋と比べて、迅速に強力な力を発揮できるという性質を持っています。

また、骨格筋は自分の意思で動かすことができる(肘を曲げたり伸ばしたりなど)随意筋です。骨格筋は運動神経(体性神経)によって制御を受けていますが、これが他の筋組織との特徴的な違いであり、それにより自分の意思での自由な運動(収縮や弛緩)が可能となります。

骨格筋の機能

骨格筋の機能は、大きく分けて、関節の曲げ伸ばし体熱生産の2つです。

私たちが体を動かす際には、いくつもの骨格筋が協調して収縮したり伸長したりすることで、関節の曲げ伸ばしが行われています。骨格筋は基本的には骨に付着しており、それゆえに、名称に「骨格」というワードが含まれるというわけです。

骨格筋は更に、熱を生み出す機能(体熱生産)も持っています。私たちの体温が、平熱である35度から37度の間に保たれているのは、骨格筋がエネルギーを消費しながら熱を生み出しているためなのです。

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