この記事では「鬼哭啾啾」について解説する。

端的に言えば鬼哭啾啾の意味は「成仏できない亡霊が泣き声が響くことや恐ろしい気配のこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「鬼哭啾啾」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「鬼哭啾啾」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「鬼哭啾啾」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。「鬼哭啾々」と書くこともあり、読み方は「きこくしゅうしゅう」です。見慣れない漢字が並びますが、意味から順に見ていきましょう。

「鬼哭啾啾」の意味は?

「鬼哭啾啾」には、次のような意味があります。まずは、辞書の意味を確認して正確な意味をつかんでから、漢字一文字ずつの意味や関連する情報などについて見ていきましょう。

1.悲惨な死に方をした者の浮かばれない亡霊の泣き声が、恨めしげに響くさま。転じてものすごい気配が漂い迫りくるさま。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)「鬼哭啾啾」

「鬼哭」は浮かばれない霊魂が声を上げて泣き悲しんでいること、「啾啾」はしくしくと悲しげに泣いているようすのことを表しています。

例えば戦場の跡地や事故があった場所などで、無念の死を遂げた人の想いが物言わずとも伝わってくるようなただならぬ恐ろしい雰囲気が感じられるということです。

「鬼哭啾啾」の語源は?

次に「鬼哭啾啾」の語源を確認しておきましょう。

「鬼哭啾啾」は、中国唐代の詩人杜甫(とほ)の『兵車行(へいしゃこう)』に由来します。杜甫は「詩聖(しせい)」と呼ばれ、李白の「詩仙(しせん)」とともに中国歴代最高の詩人と言われていますよ。『兵車行』は七言律詩で、反戦の気持ちを歌った詩です。

その中に「新たに亡くなった人の魂はもだえ、古くに亡くなった人の魂は嘆き叫ぶ。天が曇り雨で湿ると、亡霊の泣く声が聞こえてくる。」という内容が書かれています。「鬼」が亡くなった人、「哭」が嘆き叫ぶこと、「啾啾」が泣く声の部分を表していますよ。

\次のページで「「鬼哭啾啾」の使い方・例文」を解説!/

「鬼哭啾啾」の使い方・例文

「鬼哭啾啾」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。文法的な側面からも、チェックしていきますよ。

1.数多くの日本兵が亡くなった白骨街道と言われた地域では、今なお鬼哭啾啾とし死者が小声で語りかけてくるようであるらしい。
2.今日偶然通ったコースにニュースで見た事故現場があり、みんな鬼哭啾啾たる気配を感じた。

例文1.は、第二次世界大戦で参加した殆どの日本兵が死んだと言われるインパール作戦のことで、無念にも亡くなった兵士たちの声が聞こえてくるようであるということです。例文の2.では、偶然に通りかかった場所が事故現場であり、背筋が寒くなるような気配が感じられということを表しています。

文法的に見てみると、例文1.では「鬼哭啾啾と…」と名詞と使っており、例文2.のほうは「鬼哭啾啾たる…」と連体詞としての使い方です。主にこのような二つの使い方があります。

「鬼哭啾啾」の類義語は?違いは?

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それでは、「鬼哭啾啾」の類義語についての説明です。恐ろしい気配を感じる「鬼哭啾啾」のように、マイナスイメージの気配を感じる四字熟語について見ていきましょう。

「刀光剣影」

「鬼哭啾啾」の類義語には、「刀光剣影(とうこうけんえい)」があります。意味は、殺気がみなぎっていて今にも戦いが起こりそうな雰囲気のことです。「刀光」は刀がきらめいていること、「剣影」は剣の影がちらつくということを表しています。さらに、殺し合いの激しいようすそのもののことを指すこともありますよ。

何やら良からぬ雰囲気が漂うという意味では、「鬼哭啾啾」と似た意味になっていますね。

\次のページで「「陰陰滅滅」」を解説!/

「陰陰滅滅」

もう一つの類義語には、「陰陰滅滅(いんいんめつめつ)」があります。気が滅入るような暗い気分や薄暗く物寂しい雰囲気という意味です。「陰陰」は薄暗く物さびしいようすのこと、「滅滅」は生気がなく暗いようすのことを表しています。

不安になるような状況であったり、お化けでも出るかのような場所や特別な雰囲気が感じられるということです。

「鬼哭啾啾」の対義語は?

次に、「鬼哭啾啾」の対義語についての説明です。マイナスイメージの雰囲気が漂う「鬼哭啾啾」でしたので、対義語はプラスのイメージの四字熟語を一緒に見ていきましょう。

「一団和気」

「鬼哭啾啾」の対義語には、「一団和気(いちだんのわき)」があります。意味は、和らいだなごやかな雰囲気や親しみやすい態度のことです。「一団」は一つにまとまっていることやひとかたまりのこと、「和気」なごやかな雰囲気のことを表しています。

基本的な意味は、ちょうど「鬼哭啾啾」の対義語となりますが、表面的に和らいでいるように見せることに対する皮肉として使うこともあるので注意が必要です。

「和気藹藹」

もう一つの対義語には、「和気藹藹(わきあいあい)」があります。心と心が通じ合って和やかな雰囲気に満ちているという意味です。「和気」は穏やかな気分や仲良くむつまじい様子のこと、「藹藹」は和やかなようすのことを表しています。

「和気藹藹」は主に人と人とが作り出す雰囲気を表しており、雰囲気としてはプラスのイメージのものになっていますよ。

「鬼哭啾啾」の英訳は?

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最後に、「鬼哭啾啾」の英訳についての説明です。漢字と英語の違いはありますが、キーワードとなる単語を使って似た意味を表す表現を一緒に見ていきましょう。

「a very frightening sight」

「鬼哭啾啾」の英訳には、「a very frightening sight」があります。直訳すると「ぞっとするような恐ろしい気配」です。「frightening」は「ぎょっとさせる」という意味ですが、「恐れや不安などを引き起こす」というニュアンスがあります。

その他、「hair-raising(身の毛がよだつような)」という単語を使った表現でも、十分に同じような意味を表すことができますよ。

\次のページで「「鬼哭啾啾」を使いこなそう」を解説!/

「鬼哭啾啾」を使いこなそう

今回の記事では「鬼哭啾啾」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「鬼哭啾啾」の基本の意味は、恐ろしい気配が迫りくるようすのことです。現実や科学的な考察は別として、実際にゾッとしたり、恐ろしいことが頭をよぎったりすることはあります。難しい表現ではありますが、特別な用語ではないので必要な場面で使えるよう用意できているといいですね。

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国語言葉の意味

【四字熟語】「鬼哭啾啾」の意味や使い方は?例文や類語などを現役塾講師がわかりやすく解説!

この記事では「鬼哭啾啾」について解説する。

端的に言えば鬼哭啾啾の意味は「成仏できない亡霊が泣き声が響くことや恐ろしい気配のこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「鬼哭啾啾」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「鬼哭啾啾」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「鬼哭啾啾」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。「鬼哭啾々」と書くこともあり、読み方は「きこくしゅうしゅう」です。見慣れない漢字が並びますが、意味から順に見ていきましょう。

「鬼哭啾啾」の意味は?

「鬼哭啾啾」には、次のような意味があります。まずは、辞書の意味を確認して正確な意味をつかんでから、漢字一文字ずつの意味や関連する情報などについて見ていきましょう。

1.悲惨な死に方をした者の浮かばれない亡霊の泣き声が、恨めしげに響くさま。転じてものすごい気配が漂い迫りくるさま。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)「鬼哭啾啾」

「鬼哭」は浮かばれない霊魂が声を上げて泣き悲しんでいること、「啾啾」はしくしくと悲しげに泣いているようすのことを表しています。

例えば戦場の跡地や事故があった場所などで、無念の死を遂げた人の想いが物言わずとも伝わってくるようなただならぬ恐ろしい雰囲気が感じられるということです。

「鬼哭啾啾」の語源は?

次に「鬼哭啾啾」の語源を確認しておきましょう。

「鬼哭啾啾」は、中国唐代の詩人杜甫(とほ)の『兵車行(へいしゃこう)』に由来します。杜甫は「詩聖(しせい)」と呼ばれ、李白の「詩仙(しせん)」とともに中国歴代最高の詩人と言われていますよ。『兵車行』は七言律詩で、反戦の気持ちを歌った詩です。

その中に「新たに亡くなった人の魂はもだえ、古くに亡くなった人の魂は嘆き叫ぶ。天が曇り雨で湿ると、亡霊の泣く声が聞こえてくる。」という内容が書かれています。「鬼」が亡くなった人、「哭」が嘆き叫ぶこと、「啾啾」が泣く声の部分を表していますよ。

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