この記事では「腰が抜ける(こしがぬける)」という慣用句について解説する。

端的に言えば「腰が抜ける」の意味は「ひどく驚く」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「腰が抜ける」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「腰が抜ける」の意味や使い方のまとめ

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それでは早速「腰が抜ける」の意味や使い方を見ていきましょう。この慣用句には、いったいどのような意味や用法があるのでしょうか。

「腰が抜ける」の意味は?

まずは、国語辞典での定義から。「腰が抜ける」には、次のような意味があります。

1.腰に力がなくなって立つことができない。
2.驚きのあまり足腰が立たなくなる。
3.意気地がなくなる。気力がくじける。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「腰が抜ける」

国語辞典での定義にもあるように、「腰が抜ける」には大きく分けて三つの意味・用法があるのが特徴です。それぞれについて軽く触れておきましょう。

まずひとつめは、物理的に立ち上がることのできない状態を言い表しています。それが怪我や病気によるものなのか、心理的な要因によるものなのかは分かりません。

二つめの意味・用法は、まさに慣用句としてよく用いられるものです。こちらは、明らかに驚きという感情が原因でうまく立ち上がることができない状態を表しています。

三つめの「腰が抜ける」は、ほぼ精神的なものだけで肉体的に立ち上がれないこととは関係がありません。あくまでもたとえということで捉えておいてください。

「腰が抜ける」の使い方・例文

「腰が抜ける」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「腰が抜ける」の類義語は?違いは?」を解説!/

神経障害による腰痛か腰を支える筋肉が弱ってしまったのか、祖父はすっかり腰が抜けていて独りで立ち上がることすらままならない状況にある。

足立区の北千住にあるサロンで見かけた外国人の姿にすっかり腰が抜けてしまい、恥ずかしいことに整骨院へ向かうのにタクシーを呼んでしまった。

妻には腰椎を支えるゴムベルトの着用が常時求められると聞いて、私の方もこれからの通院のことなどを考えるとすっかり腰が抜けてしまった。

「腰が抜ける」という慣用句を見聞きした場合には、先ほど解説したどの意味・用法にあてはまるのかを考える必要があります。一番目の例文でキーワードとなるのが「腰痛」や「立ち上がる」という言葉です。

同時に「驚き」を感じさせるような描写はどこにも存在しないところにも注意しておきましょう。これらを考え合わせると、先ほどの説明にある1の用法に当てはまることが分かります。

それとは対照的に二番目の例文では、外国人の姿に驚いていることが読み取れるのではないでしょうか。したがって、これは2の用法に当てはまるといえそうです。

最後の例文では、旦那さんと思われる人の気力がなえている様子がうかがえます。また、本人の腰に何らかの障害があるわけでもなさそうなので3の用法であるといえるでしょう。

#2 「腰が抜ける」の類義語は?違いは?

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ところで、「腰が抜ける」と意味のよく似た慣用句にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、その中でも「驚いて立ち上がれない」という意味に焦点を当てて考えてみます。

「声を呑む」

「声を呑む」は、「腰が抜ける」の類義語の中でももっとも典型的なものだといえます。この慣用句が表すのは、驚きや緊張のあまり声が出ない様子です。

また、「息を吞む」や「言葉を呑む」といった、ほぼ同様の意味をもった表現もあります。人間、本当にびっくりしたときには声が出なくなったり呼吸が上手くできなくなったりするものですよね。

「耳を疑う」

「耳を疑う」もまた、「腰が抜ける」と似た意味を持った慣用句の一つです。この慣用句には、思いがけない発言を耳にして間違いではないかと疑うという意味があります。

たしかにそういったセリフが聞こえてきたものの、その内容が信じられずに驚いている様子が自分の「耳を疑う」という表現につながっているのでしょうね。では、これらの類義語を用いた例文をチェックしてみましょう。

\次のページで「「腰が抜ける」の対義語は?」を解説!/

脊椎管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)の治療のため千葉の松戸から上野まで通っているが、初めて病名を聞かされたときは、さすがの私も思わず声を呑んでしまったよ。

仙骨の関節が亜脱臼を起こしているがこれといった治療法がないと病院の専門医から聞かされて、私は思わず自分の耳を疑うとともに一生この痛みと付き合うことを覚悟させられた。

#3 「腰が抜ける」の対義語は?

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では、「腰が抜ける」の対義語はどのようにとらえればよいのでしょうか。立ち上がれなくなるほど驚くことの反対は、何があってもまったく動じないことでしょう。

ここでは、そのような意味を持つ慣用句を二つほど紹介していきます。

「蛙の面に水」

「蛙の面に水(かえるのつらにみず)」は、「腰が抜ける」の対義語の中でももっとも有名なことわざ・慣用句のひとつでしょう。このフレーズには、何をされても驚かないという意味があります。

蛙は両生類であり、顔面に水をかけられても驚かないというところから来ているようなのですが、実際のところはどうなのでしょうか。

「腰を据える」

「腰を据える」もまた、「腰が抜ける」の対義語だといっても差し支えのない存在でしょう。こちらの慣用句には、落ち着いて物事に取り組むという意味があります。

そこには、何があっても動じずに冷静沈着とした姿が浮かび上がってくるようです。では、これらの対義語を用いた例文も忘れずにチェックしておきましょう。

蛙の面に水といえば、医師に腰部の痛みは応急処置だけではどうしようもなく完全に治すには手術が必要だと言われたときも、彼はどこ吹く風といった雰囲気でまったく驚いている様子はなかった。

私もこれからはじっくりと腰を据えて整体院や鍼灸院に通って症状の緩和に努めてまいりますので、中高年に差しかかった皆さんも下肢のケアには十分に気をつけて長生きできるようにしましょうね。

#4 「腰が抜ける」の英訳は?

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最後に「腰が抜ける」の英語訳についても忘れずに押さえておきましょう。この慣用句は、いったい英語でどのように表現すればいいのでしょうか。

\次のページで「「be unable to stand up」」を解説!/

「be unable to stand up」

「be unable to stand up」は、「腰が抜ける」の意味を忠実に英訳したものだといえるでしょう。このフレーズが表すのが「立ち上がることができない」という意味です。

これは、驚きの感情からかは分かりませんので、国語辞典にあった1の意味の英訳だと考えてください。

「scare someone's pants off」

「scare someone's pants off」もまた、「腰が抜ける」の英訳だといえるものです。この英語表現に出てくる「scare」は、「驚かせる」という意味を持っています。

また、後半の「pants off」は「徹底的に」という意味合いの表現です。これらを合わせると「誰かを徹底的に怖がらせる」という意味が見えてきますね。

「腰が抜ける」を使いこなそう

この記事では「腰が抜ける」の意味・使い方・類語などを説明しました。この慣用句には、驚きのあまり立ち上がれないという意味などがありましたね。

みなさんには、文字通り「腰が抜ける」ほどびっくりした経験はありますか。そのようなときでも驚いてばかりではなく、最善の手を打たなければならない場合もありますよね。

さて、今回の解説はいかがだったでしょうか。みなさんも、この慣用句を使う場面に恵まれたら、臆せずにどんどん使ってみてくださいね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「腰が抜ける」の意味や使い方は?例文や類語も含めて現役文系講師が詳しくわかりやすく解説!

この記事では「腰が抜ける(こしがぬける)」という慣用句について解説する。

端的に言えば「腰が抜ける」の意味は「ひどく驚く」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「腰が抜ける」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「腰が抜ける」の意味や使い方のまとめ

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それでは早速「腰が抜ける」の意味や使い方を見ていきましょう。この慣用句には、いったいどのような意味や用法があるのでしょうか。

「腰が抜ける」の意味は?

まずは、国語辞典での定義から。「腰が抜ける」には、次のような意味があります。

1.腰に力がなくなって立つことができない。
2.驚きのあまり足腰が立たなくなる。
3.意気地がなくなる。気力がくじける。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「腰が抜ける」

国語辞典での定義にもあるように、「腰が抜ける」には大きく分けて三つの意味・用法があるのが特徴です。それぞれについて軽く触れておきましょう。

まずひとつめは、物理的に立ち上がることのできない状態を言い表しています。それが怪我や病気によるものなのか、心理的な要因によるものなのかは分かりません。

二つめの意味・用法は、まさに慣用句としてよく用いられるものです。こちらは、明らかに驚きという感情が原因でうまく立ち上がることができない状態を表しています。

三つめの「腰が抜ける」は、ほぼ精神的なものだけで肉体的に立ち上がれないこととは関係がありません。あくまでもたとえということで捉えておいてください。

「腰が抜ける」の使い方・例文

「腰が抜ける」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

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