この記事では「不問に付す(ふもんにふす)」という慣用句について解説する。

端的に言えば「不問に付す」の意味は「問題にはしない」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「不問に付す」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「不問に付す」の意味や使い方のまとめ

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それでは早速「不問に付す」の意味や使い方を見ていきましょう。この慣用句には、いったいどのような意味や用法があるのでしょうか。

「不問に付す」の意味は?

まずは、国語辞典での定義から。「不問に付す」には、次のような意味があります。

取り立てて問題にはしないでおく。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「不問に付す」

「不問に付す」は使用されている漢字は平易なものが多いものの、全体としてはやや堅く難しい印象の言葉ですよね。そこで、ひとつひとつの言葉を丁寧に見ていくことにしましょう。

まず、「不問」とは何のことなのでしょうか。これは、問いたださないことを意味します。

問いただすとは、相手に質問をすることですね。一方の「付す」とは、「~というかたちで処理をする」という意味の「付する」と同じ意味を持ちます。

さらに、国語辞典にある「取り立てて」とは「特別に」という意味のことばです。これらを総合すると「特別に問いただすこともなく処理する」つまり「問題にはしない」という意味が見えてきますね。

「不問に付す」の使い方・例文

「不問に付す」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「不問に付す」の類義語は?違いは?」を解説!/

携帯電話を用いた無断の写真撮影は禁じられていたが、健太側に悪意は見られなかったとして今回は不問に付されるというかたちになった。

新入社員の末広君は語彙力に乏しく誤字・脱字も少なくないのだが、なぜかそのことは不問に付されることも多く皆不思議に思っていた。

今回失敗した件だけは不問付てあげるから、どんどん出版の実務経験を積んで一日も早く一人前の編集マンに育ってほしいものだね。

「不問に付す」を使用する上でポイントとなるのが、「問題にしない」という部分です。これは、何かトラブルとなることがあったことを示唆していますよね。

それは、それぞれの例文で無断の写真撮影や誤字・脱字、失敗という言葉でうかがい知れます。それらの本来は問題視されるべき事柄がそうはならないというところが、「不問に付す」を理解するのに欠かせないポイントです。

また、最初の例文と二番目の例文のように「~される」と受け身の形で用いられやすいことも覚えておくとよいでしょう。

#2 「不問に付す」の類義語は?違いは?

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ところで、「不問に付す」と似た意味を持ったことばにはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、その中でも代表的なものを二つほど紹介していきます。

「お咎めなし」

「お咎めなし」は、「不問に付す」の類義語の中でもよく用いられるもののひとつです。この慣用句には、咎めだてがあえて行われないという意味があります。

「咎める」とは、注意したり責めたりするという意味の動詞です。「お咎めなし」という慣用句は多くの場合で「意外にも」というニュアンスを含みますので、覚えておくことをおすすめします。

「大目に見る」

「大目に見る」もまた、「不問に付す」の類義語として十分に通用するものです。こちらの慣用句には、不正を厳しくとがめることをしないという意味があります。

問題であるという認識はあるものの、法やルールに照らし合わせた厳密な処罰は行わないという意味合いです。では、これらの類義語を用いた例文をみていきましょう。

\次のページで「「不問に付す」の対義語は?」を解説!/

アプリに収録された音声データを無断で転用したことは、相手の会社からは特にお咎めなしだったのが本当に不思議でならない。

多少の失敗ぐらい大目にみてあげたり休暇をあげたりしないと、このままでは退社してしまう人がそれこそ後を絶ちませんよ。

#3 「不問に付す」の対義語は?

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さて、「不問に付す」の対義語は一体どのようにとらえればよいのでしょうか。特別に問題とはしないの反対は、もちろん問題にするということでしょう。

ここでは、そのような意味合いを持った表現を二つほどみていきます。

「問題視する」

「問題視する」は、「不問に付す」の対義語としてはもっともポピュラーな存在ではないでしょうか。このフレーズの意味は、まさに文字通り「問題だと考えている」です。

「〇〇視」というのは、「〇〇だと考える」という意味を持つ接尾辞なの覚えておくとよいでしょう。

「俎上に載せる」

「俎上(そじょう)に載せる」もまた、「不問に付す」の対義語だといえる存在です。こちらの慣用句には、議論や批評の対象として取り上げるという意味があります。

ここでいう「俎上」とは「俎(まないた)の上」という意味です。つまり、これから煮るなり焼くなりされる(=議論の対象となる)ことを意味しています。

では、ここでこれらの対義語を用いた例文も忘れずにチェックしておきましょう。

過失によるものとはいえ、未成年の子供にアルコール類を提供したことが急性アルコール中毒へつながったとして大きく問題視されている。

今回俎上に載せられているのは、ツアー会社で契約を結んだ時点では返金保証について何らの説明がなされていなかったという点でしょう。

#4 「不問に付す」の英訳は?

最後に「不問に付す」の英語訳についても忘れずに押さえておきましょう。この慣用句は、いったい英語でどのように表現すればいいのでしょうか。

\次のページで「「be willing to overlook」」を解説!/

「be willing to overlook」

「be willing to overlook」は、「不問に付す」の英語訳としてもよく知られた存在です。このフレーズを直訳すると「大目に見ようとする」になります。

「overlook」は、本来「見落とす」という意味の動詞です。それをあえて行うことで「不問に付す」へとつながっていきます。

「pass over」

「pass over」もまた、「不問に付す」の英語訳だといっても差し支えのないものです。こちらのフレーズには、「見て見ぬふりをする」「通り過ぎる」という意味があります。

そばで何かトラブルがあっても、それを気にせずに通過するというイメージですね。

「不問に付す」を使いこなそう

この記事では「不問に付す」の意味・使い方・類語などを説明しました。この慣用句には、特別に問題としないという意味がありましたね。

失敗やトラブルが不問に付される場合は意外と少なくないものです。その理由は、それ以外のメリットが多かったり採算に合わなかったりなどさまざまなのでしょう。

しかし、不問に付されたからといって喜んでばかりもいられません。今回はたまたまだっただけで、次回も同じような措置になるとはかぎらないからです。

さて、今回の解説はいかがだったでしょうか。みなさんも、この慣用句を使う機会に恵まれたら、臆せずにどんどん使ってみてくださいね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「不問に付す」の意味や使い方は?例文や類語も含めて現役文系講師が詳しくわかりやすく解説!

この記事では「不問に付す(ふもんにふす)」という慣用句について解説する。

端的に言えば「不問に付す」の意味は「問題にはしない」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「不問に付す」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「不問に付す」の意味や使い方のまとめ

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それでは早速「不問に付す」の意味や使い方を見ていきましょう。この慣用句には、いったいどのような意味や用法があるのでしょうか。

「不問に付す」の意味は?

まずは、国語辞典での定義から。「不問に付す」には、次のような意味があります。

取り立てて問題にはしないでおく。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「不問に付す」

「不問に付す」は使用されている漢字は平易なものが多いものの、全体としてはやや堅く難しい印象の言葉ですよね。そこで、ひとつひとつの言葉を丁寧に見ていくことにしましょう。

まず、「不問」とは何のことなのでしょうか。これは、問いたださないことを意味します。

問いただすとは、相手に質問をすることですね。一方の「付す」とは、「~というかたちで処理をする」という意味の「付する」と同じ意味を持ちます。

さらに、国語辞典にある「取り立てて」とは「特別に」という意味のことばです。これらを総合すると「特別に問いただすこともなく処理する」つまり「問題にはしない」という意味が見えてきますね。

「不問に付す」の使い方・例文

「不問に付す」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

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