この記事では「余儀無くされる」について解説する。
端的に言えば、余儀無くされるの意味は「そうせざるを得ない」です。ニュースなどでよく見聞きする言葉なので、だいたいのニュアンスはわかるという人も多いでしょう。しかし「余儀」とは何かと問われたら答えられるか?ビジネスシーンでも出てくる言葉なので使い方もきちんと覚えておこう。
日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。「余儀無くされる」の意味を確認し、例文や類義語などを見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「余儀無くされる」の意味と例文

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「撤退を余儀無くされる」「休業を余儀無くされる」など、新聞やテレビ、ネットのニュースで「余儀無くされる」という表現をよく見かけます。ちょっと気になる言葉ですね。では、さっそく辞書で「余儀無くされる」の意味を確認し、例文で使い方を見ていきましょう。

「余儀無くされる」の意味

そもそも「余儀」って何でしょうか。まず「余儀」と「余儀無い」の意味をチェックしておきましょう。

他のこと。他にとるべき方法。また、別の意見。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「余儀」

1.他になすべき方法がない。やむをえない。
2.異議がない。
3.隔て心がない。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「余儀無い」

「余儀」という単語には「他のこと」「他の方法」「別の意見」などの意味があります。そして「余儀無い」は、別の方法がないことなので、「他になすべき方法がない」「やむを得ない」という意味になりますね。

「異議がない」「隔て心がない」という意味もありますが、「やむを得ない」の意味で使うことが多いようです。では「余儀無い」と「余儀無くされる」はどのように違うのでしょうか。

やむをえず、そうせざるを得ないさまを意味する表現。「余儀無い」が「やむを得ない」という意味。「余儀無い」という語形で用いる場面はほとんどなく、もっぱら「余儀なくされる」という言い回しで用いられる。

出典:実用日本語表現辞典「余儀なくされる」

「余儀無い」は「余儀無い事情で参加を辞退する」のように、そのままの形で用いられることがあります。しかし、多くの場合「やむを得ずそうせざるを得ない」という意味を表現する言葉として「余儀なくされる」という形で使われていますね。ニュースなどで使われる場合も「余儀無い」ではなく「余儀無くされる」がほとんどです。

\次のページで「「余儀無くされる」の例文」を解説!/

「余儀無くされる」の例文

「余儀無くされる」はどのように使えばいいのでしょうか。次は例文で使い方を見ていきましょう。

1.父親が事業の失敗で自殺し、パートを掛け持ちして必死に働いていた母が病気で亡くなった。大学受験を目指していた彼女だったが、弟妹を養うために就職を余儀無くされた。
2.コロナ禍のせいで需要の予測が大幅に変わり、新工場建設の計画は大幅な見直しを余儀無くされた。

最初の例文は、両親が亡くなり弟妹を養うために就職せざるを得ない状況になったという意味です。2番目の例文は、コロナ禍のせいで新工場建設の計画を変更せざるを得ないという意味ですね。「余儀無くされる」は、別の選択肢を選ぶつもりだったのに、本来望んでいなかった不利な選択肢を選ぶしかなくなったというニュアンスで使われますよ。

「余儀無くされる」の類義語

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「余儀無くされる」と同じような意味あいの言葉には、どのような言葉があるのでしょうか。「やむを得ない」「せざるを得ない」なども類義語ですが、もう少しほかの表現も見てみましょう。

「詮方(せんかた)ない」:どうしようもない

「詮方」は「手段」「なすべき仕方」という意味です。「詮方ない」「どうしようもない」「なすべき方法が見つからない」という意味ですね。「悔やんでも詮方ないことだ」という使い方をします。古語辞典を見ると「為む方無し(せむかたなし)」「為ん方無し(せんかたなし)」で載っていますよ。

「否応(いやおう)なし」:有無を言わせない

「否」は「不承知」という意味で、「応」は「承知」という意味です。「否応なし」「承知でも不承知でも関係ない様子」「有無を言わせない」という意味ですよ。「父は息子を否応なしに早朝のランニングに連れ出す」といった使い方をします。

\次のページで「「余儀無くされる」の反対語」を解説!/

「余儀無くされる」の反対語

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「余儀無くされる」と反対の意味あいの言葉には、どのような言葉があるのでしょうか。

「奥の手を使う」など:最後の手段をとる

「奥の手」「容易に人に教えないとっておきの策」「最後の手段」という意味があります。「奥の手を使う」は最後の手段をとるという意味です。いよいよという場合だけ使用する「伝家の宝刀」や、とっておきの最も有力な手段という意味の「切り札を出す」も意味が近い言葉ですよ。

「余儀無くされる」の英訳

次は「余儀無くされる」を英語でどう表現するか見ていきましょう。

「be forced to」:~せざるを得ない

「be forced to」「~せざるを得ない」「~を強いる」という意味の定型のフレーズです。

\次のページで「「have no choice but to」:~する以外に手がない」を解説!/

I was forced to work hard.
私は懸命に働かざるを得なかった。

「be forced to apologize」「謝罪を余儀無くされる」「be forced to make a decision」「決断を迫られる」、「be forced to leave school」「退学を余儀無くされる」です。

「have no choice but to」:~する以外に手がない

「have no choice」は「選択肢がない」、「but to + 動詞の原形」は「~する以外に」という意味なので「have no choice but to」「~する以外に手がない」「~せざるを得ない」という言いです。

She had no choice but to study Japanese.
彼女は日本語を勉強するしかなかった。

「have no choice but to depend on」「頼らざるを得ない」「have no choice but to follow」「~に従わざるを得ない」「have no other choice but to」「選択の余地がない」ですね。

「余儀無くされる」を使いこなそう!

この記事では、「余儀無くされる」の意味を調べ、使い方や類義語などを解説しました。

「余儀」「他のこと」「他の方法」「別の意見」という意味です。そして「余儀無い」は、別の方法がないので、「他になすべき方法がない」「やむを得ない」という意味ですね。「余儀無い」はそのままの形で使われるより「余儀無くされる」という形で使われることが多く、「やむを得ずそうせざるを得ない」という意味を表現しています。

「余儀無くされる」を使いこなしても、何かを「余儀無くされる」のは、できれば避けたいもの。窮地に陥っても奥の手を使ってピンチをチャンスに変えたいものですね。

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国語言葉の意味

余儀って何?「余儀無くされる」の意味・例文・類義語などを日本放送作家協会会員がわかりやすく解説

この記事では「余儀無くされる」について解説する。
端的に言えば、余儀無くされるの意味は「そうせざるを得ない」です。ニュースなどでよく見聞きする言葉なので、だいたいのニュアンスはわかるという人も多いでしょう。しかし「余儀」とは何かと問われたら答えられるか?ビジネスシーンでも出てくる言葉なので使い方もきちんと覚えておこう。
日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。「余儀無くされる」の意味を確認し、例文や類義語などを見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「余儀無くされる」の意味と例文

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「撤退を余儀無くされる」「休業を余儀無くされる」など、新聞やテレビ、ネットのニュースで「余儀無くされる」という表現をよく見かけます。ちょっと気になる言葉ですね。では、さっそく辞書で「余儀無くされる」の意味を確認し、例文で使い方を見ていきましょう。

「余儀無くされる」の意味

そもそも「余儀」って何でしょうか。まず「余儀」と「余儀無い」の意味をチェックしておきましょう。

他のこと。他にとるべき方法。また、別の意見。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「余儀」

1.他になすべき方法がない。やむをえない。
2.異議がない。
3.隔て心がない。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「余儀無い」

「余儀」という単語には「他のこと」「他の方法」「別の意見」などの意味があります。そして「余儀無い」は、別の方法がないことなので、「他になすべき方法がない」「やむを得ない」という意味になりますね。

「異議がない」「隔て心がない」という意味もありますが、「やむを得ない」の意味で使うことが多いようです。では「余儀無い」と「余儀無くされる」はどのように違うのでしょうか。

やむをえず、そうせざるを得ないさまを意味する表現。「余儀無い」が「やむを得ない」という意味。「余儀無い」という語形で用いる場面はほとんどなく、もっぱら「余儀なくされる」という言い回しで用いられる。

出典:実用日本語表現辞典「余儀なくされる」

「余儀無い」は「余儀無い事情で参加を辞退する」のように、そのままの形で用いられることがあります。しかし、多くの場合「やむを得ずそうせざるを得ない」という意味を表現する言葉として「余儀なくされる」という形で使われていますね。ニュースなどで使われる場合も「余儀無い」ではなく「余儀無くされる」がほとんどです。

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