
科学の世界では一度間違いだとして忘れられていた理論が、新発見によって復活するということはよくあることです。大陸移動説はそのようなケースで最も有名なものでしょう。経緯も含めて学んでみよう。
今回は物理学科出身のライター・トオルさんと解説していくぞ

ライター/トオル
物理学科出身のライター。広く科学一般に興味を持つ。初学者でも理解できる記事を目指している。
大陸移動説の誕生と終焉

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大陸移動説が常識となった現在では、大陸移動説を疑うほうがおかしいと思われますが、大陸が動くということは冷静に考えれば奇妙なことです。大陸が動くなどという説が最初は受け入れられなくても、それは仕方のないことのようにも感じます。では、大陸移動説の発見と否定について見ていきましょう。
大陸移動説の誕生と終焉:その1
Template:E.Kuhlbrodt – Bildarchiv Foto Marburg Aufnahme-Nr. 426.294, パブリック・ドメイン, リンクによる
ドイツのベルリン生まれのアルフレート・ウェゲナーは気象学者でしたが、生涯を通じて四度グリーンランドの探検に赴きました。1910年、彼は世界地図を見て、大西洋によって隔てられている南米東海岸とアフリカ西海岸の海岸線が見事に一致することから、これらの大陸はもともとも合体していたと推測したのです。上記の画像は、ウェゲナーの写真になります。
大陸移動説の誕生と終焉:その2
Inductiveload – http://caliban.mpiz-koeln.mpg.de/~stueber/wegener/ (This was pubslished in Germany. German copyright law says that works enter the public domain 50 years after the death of the author, and Wegener died in 1930.), パブリック・ドメイン, リンクによる
さらに彼は、北米・ユーラシア・南極・インド・オーストリアも含めて、すべての大陸はかつて一つの超大陸パンゲアを構成していたが、その後、分裂・移動したと主張して大陸移動説を提唱しました。パンゲアのうち、北半球および南半球に広がっていた大陸は、それぞれローラシア大陸およびゴンドワナ大陸と呼ばれています。上記の画像は、ウェゲナーの主著「大陸と海洋の起源」に記載されている図です。
大陸移動説の誕生と終焉:その3
大陸移動説を主張する際、ウェゲナーは海岸線の一致のほかに複数の証拠を挙げています。一つは、現在分裂しているゴンドワナ大陸に共通に認められる古生代ペルム紀の陸生動植物化石で、特に裸子植物とシダ植物の中間型と考えられているグロッソプテリスは有名です。また、彼は、後に約20億年前と年代測定された西アフリカの楯状地がブラジルの楯状地に酷似していると述べています。上記の画像はグロッソプテリスの化石画像です。
大陸移動説の誕生と終焉:その4
他に、現在、北大西洋を挟んで北米アパラチア山脈・西アフリカ西岸・ニューファンドランド・イギリス・グリーンランド・スカンジナビア西岸に分布している古生代造山帯は、パンゲア分裂以前には一つの連続した造山帯であったと主張しました。さらに、ウェゲナーは、現在は分裂しているゴンドワナ大陸の各地に分布している古生代後半の氷河堆積物が、大陸移動の重要な証拠であると考えたのです。上記の画像は、パンゲア大陸の模式図になります。
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