今回は「逆2乗の法則」について解説していきます。

逆2乗の法則は、物理を学んでいると頻繁に目にする法則の形です。力学、電磁気学、光学などでこの形の法則が登場します。今回は、物理学においてなぜ逆2乗の法則を何度も見かけるのかを考察してみる。ぜひ、この機会に、逆2乗の法則に対する理解を深めてくれ。

塾講師として物理を高校生に教えていた経験もある通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻しており、物理学も幅広く勉強している。塾講師として物理を高校生に教えていた経験から、物理の学習において、つまずきやすい点や勘違いしやすい点も熟知している。

逆2乗の法則とは?

逆2乗の法則とは?

image by Study-Z編集部

物理学を勉強していると、様々な法則や公式に出会います。その中には、数式で表現されたものも数多くありますよね。ある程度、物理学を勉強したことがある方はわかると思いますが、これらの数式にはある傾向があるのです。

その傾向とは、ほとんどの数式が比例、反比例、勾配(微分)などの組み合わせで記述されているということですよ。例えば、運動方程式F=maやバネの伸びF=kxなどは比例の式、ボイルの法則pV=(一定)などは反比例の式、ニュートンの冷却の法則dQ/dt=αSΔTなどは勾配(微分)を含む式ですよね。このように、物理学の法則や公式でよく目にする式の形がいくつかあります。不思議ですよね。

そして、逆2乗の法則も物理学で頻繁に登場する式の形の一つです。逆2乗の法則は、y=a/(x2)の形で表されます。ここで、aは比例定数です。この記事では、物理学において、逆2乗の法則をよく目にする理由を考察します。そして、逆2乗の法則には、具体的にどのようなものがあるのかということも確認してみましょう

なぜ逆2乗の法則が多いのか?

なぜ逆2乗の法則が多いのか?

image by Study-Z編集部

物理学において、3次元の空間内にひとつの粒子や物体を置き、周囲にどのような場や力が生じるかを考える機会はよくありますよね。ここでは、このような状況を一般化して、考察します。3次元空間内に、あるエネルギー源をひとつ配置するという状況を仮定してみましょう。そして、エネルギー源からは全方位にエネルギーが放出・放射・発散しているとします。厳密には、エネルギーという言葉の使い方を誤っているかと思いますが、逆2乗の法則の説明には支障をきたさないので、このまま議論を進めましょう。

図のように、エネルギー源を中心として半径rの球面を考えます。このとき、球面の表面積は4πr2となりますよね。エネルギー源からすべての方向に均等にエネルギーが放出されているとすると、エネルギー源から距離rの場所における通過エネルギー密度はE/(4πr2)となります。ここで、Eはエネルギー源から放出される全エネルギーを表していますよ。

通過エネルギー密度の式E/(4πr2)より、通過エネルギー密度の大きさは距離の2乗に反比例することがわかりましたこの理論は、3次元空間中に1つの粒子などが存在する場合、あらゆる場面で適応することができます。これが、物理学において、逆2乗の法則が頻繁に登場する理由になりますよ。

逆2乗の法則の例

ここからは、逆2乗の法則の具体例をいくつか紹介します。先ほど説明した、物理学において逆2乗の法則が頻繁に登場する理由を頭の隅に置きつつ、読み進めてみてください。

\次のページで「万有引力の法則」を解説!/

万有引力の法則

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万有引力は、2つの質量のある物体の間に作用する力です。地球上において、重力が生じる理由も、万有引力を用いて説明することができますよ。ボールを空に向かって投げたとき、地球とボールが互いに引き合う力が作用して、ボールは地面に落下します。この引き合う力が、万有引力ですよ。

そして、万有引力の大きさを定式化したものが、万有引力の法則です。質量m[kg]の物体と質量M[kg]の物体の間に作用する万有引力の大きさF[N]は、F=(GmM)/(r2)で表されます。ここで、r[m]は物体の中心間距離を表していますよ。さらに、G[N・m2/kg2]は万有引力定数と呼ばれるもので、実際はG=6.67×10-11[N・m2/kg2]です。万有引力の法則は、天体や人工衛星の軌道の計算などに用いられています

クーロンの法則

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クーロン力(静電気力)は、2つの荷電粒子間に作用する力です。荷電粒子とは、電気的に中性でない粒子のことをさします。電子や陽子は、荷電粒子の代表格だと言えるでしょう。布でこすった下敷きを、髪の毛に近づけると、両者がくっつきます。この現象は、クーロン力によって説明ができますね。髪の毛と下敷きが電気的に中性でない状態になり、クーロン力が働くのですね。

クーロン力の大きさを定式化したものが、クーロンの法則です。電気量q[C]を帯びた粒子と電気量Q[C]を帯びた粒子の間に作用するクーロン力F[N]は、F=(kqQ)/(r2)で表されますよ。ここで、r[m]は2粒子間の距離を表しています。また、k[N・m2/C2]はクーロン定数です。クーロン定数の実際の値は、k=9.0×109[N・m2/C2]ですよ。この式は、電磁気学の基礎となる式です

また、クーロンの法則は電荷によるクーロン力だけでなく、磁荷(磁石)による磁力の大きさの計算にも用いることができますよ。磁気量m[Wb]の極と磁気量M[Wb]の極の間に作用する磁力F[N]は、F=(KmM)/(r2)で表されます。ここで、K[N・m2/Wb2]は磁気力に関するクーロン定数です。磁気力に関するクーロン定数の実際の値は、K=6.3×104[N・m2/Wb2]ですよ。

光の減衰の法則

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最後に光の減衰の法則について解説します。まず、光の減衰について考えてみましょう。例えば、暗い部屋の中に小さな電球を設置し、点灯させたとします。電球の近くでは、本に書いてある文字がはっきりと読むことができるでしょう。しかしながら、電球から離れた部屋の隅では、本に十分な量の光が当たらず、文字を読むことはできません。このように、光源から離れるほど、光が弱くなることを光の減衰といいます

そして、光の減衰の程度を定式化したものが、光の減衰の法則です。理想的な点光源の光度がI[cd]のとき、その点光源からr[m]だけ離れた場所の照度E[lx]は、E=I/(r2)で表されます。この式は、照明の設計などに用いられる式ですこの式は、点光源を対象とした式ですが、積分を用いることにより、蛍光灯のような線光源やシーリングライトのような面光源の計算を行うこともできますよ

\次のページで「逆2乗の法則について学ぶ意義」を解説!/

逆2乗の法則について学ぶ意義

物理学を学んでいると、逆2乗の法則に出会うことが、頻繁にあります。このとき、逆2乗の法則について本質的な理解があると、混乱したり、誤った解釈をしてしまう心配がありません。今回紹介した、一般的な逆2乗の法則のモデルを理解しておけば十分です。

ぜひ、この機会に、逆2乗の法則について学んでみてくださいね。

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物理物理学・力学理科電磁気学・光学・天文学

3分で簡単逆2乗の法則!どんな例がある?理系学生ライターがわかりやすく解説

今回は「逆2乗の法則」について解説していきます。

逆2乗の法則は、物理を学んでいると頻繁に目にする法則の形です。力学、電磁気学、光学などでこの形の法則が登場します。今回は、物理学においてなぜ逆2乗の法則を何度も見かけるのかを考察してみる。ぜひ、この機会に、逆2乗の法則に対する理解を深めてくれ。

塾講師として物理を高校生に教えていた経験もある通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻しており、物理学も幅広く勉強している。塾講師として物理を高校生に教えていた経験から、物理の学習において、つまずきやすい点や勘違いしやすい点も熟知している。

逆2乗の法則とは?

逆2乗の法則とは?

image by Study-Z編集部

物理学を勉強していると、様々な法則や公式に出会います。その中には、数式で表現されたものも数多くありますよね。ある程度、物理学を勉強したことがある方はわかると思いますが、これらの数式にはある傾向があるのです。

その傾向とは、ほとんどの数式が比例、反比例、勾配(微分)などの組み合わせで記述されているということですよ。例えば、運動方程式F=maやバネの伸びF=kxなどは比例の式、ボイルの法則pV=(一定)などは反比例の式、ニュートンの冷却の法則dQ/dt=αSΔTなどは勾配(微分)を含む式ですよね。このように、物理学の法則や公式でよく目にする式の形がいくつかあります。不思議ですよね。

そして、逆2乗の法則も物理学で頻繁に登場する式の形の一つです。逆2乗の法則は、y=a/(x2)の形で表されます。ここで、aは比例定数です。この記事では、物理学において、逆2乗の法則をよく目にする理由を考察します。そして、逆2乗の法則には、具体的にどのようなものがあるのかということも確認してみましょう

なぜ逆2乗の法則が多いのか?

なぜ逆2乗の法則が多いのか?

image by Study-Z編集部

物理学において、3次元の空間内にひとつの粒子や物体を置き、周囲にどのような場や力が生じるかを考える機会はよくありますよね。ここでは、このような状況を一般化して、考察します。3次元空間内に、あるエネルギー源をひとつ配置するという状況を仮定してみましょう。そして、エネルギー源からは全方位にエネルギーが放出・放射・発散しているとします。厳密には、エネルギーという言葉の使い方を誤っているかと思いますが、逆2乗の法則の説明には支障をきたさないので、このまま議論を進めましょう。

図のように、エネルギー源を中心として半径rの球面を考えます。このとき、球面の表面積は4πr2となりますよね。エネルギー源からすべての方向に均等にエネルギーが放出されているとすると、エネルギー源から距離rの場所における通過エネルギー密度はE/(4πr2)となります。ここで、Eはエネルギー源から放出される全エネルギーを表していますよ。

通過エネルギー密度の式E/(4πr2)より、通過エネルギー密度の大きさは距離の2乗に反比例することがわかりましたこの理論は、3次元空間中に1つの粒子などが存在する場合、あらゆる場面で適応することができます。これが、物理学において、逆2乗の法則が頻繁に登場する理由になりますよ。

逆2乗の法則の例

ここからは、逆2乗の法則の具体例をいくつか紹介します。先ほど説明した、物理学において逆2乗の法則が頻繁に登場する理由を頭の隅に置きつつ、読み進めてみてください。

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