この記事では「御輿を担ぐ」について解説する。

端的に言えば御輿を担ぐの意味は「神や天皇が乗る乗り物」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

語学好きで歴史好き、名古屋出身で5年間のライター経験を持つEastflowerをを呼んです。一緒に「御輿を担ぐ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/eastflower

今回の記事を担当するのは語学好きで英語、中国語が得意な5年目のライター、eastflower。「御輿を担ぐ」は「神輿を担ぐ」と記載されることもあり、どちらの漢字を書いても正しく同じ意味で使われています。それでは「御輿を担ぐ」の言葉の起源やどんな場面で使えるのかをわかりやすく解説する。

「御輿を担ぐ」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速、「御輿を担ぐ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「御輿を担ぐ」の意味は?

それでは、まず、「御輿を担ぐ」の辞書の意味から見ていきましょう。

1.他人をおだて上げる。もちあげる。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「御輿を担ぐ」

2.人をおだててまつり上げる。また、それに一役買う。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「御輿を担ぐ」

「御輿を担ぐ」(みこしをかつぐ)の「御輿」「みこし」と読みます。「御輿」は「神輿」(みこし)と書く場合も多くありますが、意味としては同じで「天皇や神様が乗る乗り物」のことです。「天皇」が乗られる場合は「御輿」と書き、「神社の神様」が乗られる場合は「神輿」と書かれる場合が多いようですが現在ではどちらの文字を記載しても誤りではありません。

元号が令和に変わった昨年、「即位の礼」(そくいのれい)がテレビのニュースでも広く放送されましたが、天皇・皇后両陛下がお乗りになられていた台が皇室が乗られる「輿」(こし)です。御輿(みこし)には「鳳凰」(ほうおう)や「麒麟」(きりん)などが装飾されていたことを覚えている方も多いのではないでしょうか?

日常生活の中でなじみがあるのは、神様(ご神体)が乗る意味で使われる「みこし」の方で、子ども時代や成人してからも住んでいる地域の氏神様(うじがみさま)のお祭りで御輿を担がれた方も多いことでしょう。ちなみに「ご神体」とは、「神霊」(しんれい)が宿っている礼拝の対象となる神聖な物体のことです。

普段は神社にいらっしゃる「神様」ですが、祭りの日には、「御輿」に乗り町を見回ることで「厄」を退け、「幸福」をもたらします。この移動の乗り物である「輿」(こし)を担ぐのはその地域に住み普段からご加護を受けている氏子(うじこ) の人々になるのですね。

このような祭りの「御輿」から発展し、日常生活の中では「他人をおだてもちあげる」ことを「御輿を担ぐ」と例えるようになっていきました。

「御輿を担ぐ」の語源は?

次に「御輿を担ぐ」の語源や由来を確認しておきましょう。

今でも「神輿」を担ぐのはお祭りの日ですが、狩猟社会から稲作社会になった日本では、その年の豊作を願う春の「祈念祭」(きねんさい)収穫を終えた後、「田の神」を再び山に送る感謝祭が行われていたと伝えられています。もちろん、漁業地域では、海の神に大漁を願う祭りが行われ現在でも男性たちが「御輿」を担ぎながら浜辺から海に向かっていく儀式が開催されているところもありますね。

昔の人々は、「神霊」は天や海のむこうの場所に住んでいると考えていました。そのため神を招くための社(やしろ)をその都度増設し、神が帰るとその社を取り壊していました。しかし、後の時代になると人々は神霊が常にそばにいることを望むようになり、神社の建設がすすんでいったのです。やがて人々は神霊が神社にいつもいると考えるようになっていきました。

しかし、神社が建設されるようになった後も神霊にその年の豊作を祈願し、収穫の後感謝するという習慣や信仰は引き継がれ、祭りという形態で続いていき、祭りの日には神社の神霊に御輿に乗ってもらい、町中を練り歩くという行事になったのです。

現在では、「御輿を担ぐ」は、慣用句として他人をおだてて持ち上げることを意味し多くの場合、組織や集団の代表者の地位に据えて祭り上げる用語として使われています。

\次のページで「「御輿を担ぐ」の使い方・例文」を解説!/

「御輿を担ぐ」の使い方・例文

御輿を担ぐ」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1. 今まで断ってきたのだが、とうとう周りに「御輿を担がれて」町内会長をやることになった。想像していたのと違って案外楽しいものだ。

2. 彼はムード・メーカーというか盛り上げ役で、「御輿を担ぐ」のがうまくて、相手をその気にさせて、やる気を出させる人です。

「御輿を担ぐ」はおだてて、相手をその気にさせてやってもらうときなどに使われる言葉なのです。

「御輿を担ぐ」の類義語は?違いは?

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それでは、「御輿を担ぐ」の類義語を見ていきましょう。

「持ち上げる」

「持ち上げる」(もちあげる)には、「物を持って上にあげる」という意味のほかに「ほめる」や「おだてる」という意味があります。この点で、「持ち上げる」は「御輿を担ぐ」の類義語のひとつとして使うことができるのです。

\次のページで「「機嫌をとる」」を解説!/

「機嫌をとる」

「機嫌をとる」(きげんをとる)も「相手の気持ちを和らげるようにしむけること」、「相手が気に入るような言動によって喜ばれるように働きかけすること」を意味し「御輿を担ぐ」の類義語ということができるでしょう。

「御輿を担ぐ」の対義語は?

それでは、次に「御輿を担ぐ」の反対語を見ていきましょう。

「引きずり下ろす」

「御輿を担ぐ」は、「おだててもち上げる」ことですから、反対語は、「高いところから低いところへ移すことや高い地位や役割からはずす」意味を持つ言葉になります。また、「非難したり、欠点を強調して悪く言う」という言葉も反対語になりますね。

そんな意味を持つ言葉のひとつが「引きずり下ろす」(ひきずりおろす)です。特にこの「引きずり下ろす」には無理矢理に退かせるという強制的な語気を持った言葉でもあります。

「蹴落とす」

「蹴落とす」(けおとす)も「御輿を担ぐ」の反対語のひとつにあげられるでしょう。

「蹴落とす」には、「相手を足でけって落とす」という意味のほかにも、「自分がのしあがるために、地位のある人や競争相手をおしのける」という意味があります。「御輿を担ぐ」が「もちあげる」という意味を持つため、「蹴落とす」も反対語として適切でしょう。

「御輿を担ぐ」の英訳は?

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「御輿を担ぐ」を文字通り英語にすると「Carry a portable shrine on our shoulder」になります。「Portable shrine」は、「持ち運びのできるご神体」を意味しますから、全体の意味としては、「持ち運びのできるご神体を肩にのせて運ぶ」という意味です。この表現は日本を外国人に紹介するハンドブックでもひんぱんに使われています。しかし、この訳では、「御輿を担ぐ」が持つ「他人をおだて上げる。もちあげる。」という意味は伝わりません。

それでは、これらの雰囲気を伝えられることばをご紹介しましょう。

「Soft-soap」

「Soft-soap」(ソフトソープ)はそのまま訳すと「やわらかい石鹸」になりますが、口語では、よく「お世辞を言ってうまく相手を丸め込む」「おべっかを使う」という動詞として使われます。

名詞としても使われ、意味は「お世辞」や「おべっか」という意味です。覚えやすいことばなので是非覚えてください。

\次のページで「「Compliment」」を解説!/

He is very hard not like the person who will change a direction by soft-soap.
(彼は、お世辞で方向性を変えるような人間ではなく非常にむずかしい)

「Compliment」

「お世辞を言う」「おだてる」という意味を持つ単語で、ひんぱんに使われることばが

「Compliment (カンプリメント)」(kάmpləmənt)です。この単語は純粋な「賛辞やほめ言葉」という意味でも使えますし、「社交上のお世辞」という意味でも使えることばで動詞としても名詞としても使われます。

My boss complimented me on my current work.
(上司は私の現在の仕事のことを褒めてくれました。)

「御輿を担ぐ」を使いこなそう

ここまで「御輿を担ぐ」について見てきましたが、「御輿を担ぐ」には、「町内や市で行われるお祭りでおみこしを担ぐ」という意味のほかにも、「他人をおだててもち上げる。」という意味もあります。やはり、人は子供に限らず大人でも褒められて持ち上げられるのは嬉しいもの。人間関係がぎくしゃくしたり、亀裂が入るおそれがあれば、相手をおだてて持ち上げることで関係が改善できるかもしれません。一度、試してみてはいかがでしょうか?

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国語言葉の意味

【慣用句】「御輿を担ぐ」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「御輿を担ぐ」について解説する。

端的に言えば御輿を担ぐの意味は「神や天皇が乗る乗り物」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

語学好きで歴史好き、名古屋出身で5年間のライター経験を持つEastflowerをを呼んです。一緒に「御輿を担ぐ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/eastflower

今回の記事を担当するのは語学好きで英語、中国語が得意な5年目のライター、eastflower。「御輿を担ぐ」は「神輿を担ぐ」と記載されることもあり、どちらの漢字を書いても正しく同じ意味で使われています。それでは「御輿を担ぐ」の言葉の起源やどんな場面で使えるのかをわかりやすく解説する。

「御輿を担ぐ」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速、「御輿を担ぐ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「御輿を担ぐ」の意味は?

それでは、まず、「御輿を担ぐ」の辞書の意味から見ていきましょう。

1.他人をおだて上げる。もちあげる。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「御輿を担ぐ」

2.人をおだててまつり上げる。また、それに一役買う。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「御輿を担ぐ」

「御輿を担ぐ」(みこしをかつぐ)の「御輿」「みこし」と読みます。「御輿」は「神輿」(みこし)と書く場合も多くありますが、意味としては同じで「天皇や神様が乗る乗り物」のことです。「天皇」が乗られる場合は「御輿」と書き、「神社の神様」が乗られる場合は「神輿」と書かれる場合が多いようですが現在ではどちらの文字を記載しても誤りではありません。

元号が令和に変わった昨年、「即位の礼」(そくいのれい)がテレビのニュースでも広く放送されましたが、天皇・皇后両陛下がお乗りになられていた台が皇室が乗られる「輿」(こし)です。御輿(みこし)には「鳳凰」(ほうおう)や「麒麟」(きりん)などが装飾されていたことを覚えている方も多いのではないでしょうか?

日常生活の中でなじみがあるのは、神様(ご神体)が乗る意味で使われる「みこし」の方で、子ども時代や成人してからも住んでいる地域の氏神様(うじがみさま)のお祭りで御輿を担がれた方も多いことでしょう。ちなみに「ご神体」とは、「神霊」(しんれい)が宿っている礼拝の対象となる神聖な物体のことです。

普段は神社にいらっしゃる「神様」ですが、祭りの日には、「御輿」に乗り町を見回ることで「厄」を退け、「幸福」をもたらします。この移動の乗り物である「輿」(こし)を担ぐのはその地域に住み普段からご加護を受けている氏子(うじこ) の人々になるのですね。

このような祭りの「御輿」から発展し、日常生活の中では「他人をおだてもちあげる」ことを「御輿を担ぐ」と例えるようになっていきました。

「御輿を担ぐ」の語源は?

次に「御輿を担ぐ」の語源や由来を確認しておきましょう。

今でも「神輿」を担ぐのはお祭りの日ですが、狩猟社会から稲作社会になった日本では、その年の豊作を願う春の「祈念祭」(きねんさい)収穫を終えた後、「田の神」を再び山に送る感謝祭が行われていたと伝えられています。もちろん、漁業地域では、海の神に大漁を願う祭りが行われ現在でも男性たちが「御輿」を担ぎながら浜辺から海に向かっていく儀式が開催されているところもありますね。

昔の人々は、「神霊」は天や海のむこうの場所に住んでいると考えていました。そのため神を招くための社(やしろ)をその都度増設し、神が帰るとその社を取り壊していました。しかし、後の時代になると人々は神霊が常にそばにいることを望むようになり、神社の建設がすすんでいったのです。やがて人々は神霊が神社にいつもいると考えるようになっていきました。

しかし、神社が建設されるようになった後も神霊にその年の豊作を祈願し、収穫の後感謝するという習慣や信仰は引き継がれ、祭りという形態で続いていき、祭りの日には神社の神霊に御輿に乗ってもらい、町中を練り歩くという行事になったのです。

現在では、「御輿を担ぐ」は、慣用句として他人をおだてて持ち上げることを意味し多くの場合、組織や集団の代表者の地位に据えて祭り上げる用語として使われています。

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